~今回から、CD批評とは別の企画として、『カセットテープ番外地』シリーズを始めます。最近になって、身辺の整理をしていたら、本棚の片隅の埃をかぶった音楽カセットの塊を見つけた。ついぞ、この10年近く聞いたことのないテープが100数本あったので、引っ張り出して少し聴いてみたりしています。
殆どが、70年代末から80年代中盤までのもので、今となってはそれなりにレアであるし、これが結構楽しい作品ばかり!!!
若い日には、ラジオやLPから音楽をもっぱらカセットで録音し、自作のテープにしたものだったが、日本の音楽愛好家の多くがカセットテープで音楽を聴くというスタイルは殆どしないのが普通。やはり、レコード購入によるというのが定番 。しかし、海外ではテープでの音楽愛好も盛んであった為、中米や欧州に行った時、オミアゲ代わりに色々と買 ってしまったのが、少しずつ溜まってしまった結果、部屋に残っていました。折角なので、数回にわたってあれこれ想い出を書き連ねてみます。
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「ミュージックテープ回顧噺:その1~MPB女性アーティストの巻」
<マリア・クレウーザ>
*私が、クレウーザを初めて聞いたのが、ここにある「Sabor A Samba」でした。声質に惹かれ、レコード屋で見つけては少しずつ買っていった。ブラジルのシンガーで人気のある人は、多国語で吹き込むアルバムも好まれるため、この人も「マリア・クレウーザ/スペイン語で唄う」とベストアルバムもスペイン語盤です(すべてスペイン製音楽テープ)。
<エリス・ヘジーナ>
*私が、エリスにハマったキッカケとなったテープで、文字通り擦り切れるまで繰り返し聴き倒した、愛着のあるテープ。J.ボスコ作「酔っ払いと綱渡り芸人」から始まり、ジョイスの名曲、さらにはカルトーラのサンバに至るA面の数曲を今でもこよなく愛しています。残念なことに、こうした素晴らしい作品を残しつつ、ドラッグの影響でこの数年後に彼女は亡くなる。
<ガル・コスタ>
*ガルは、日本のFMで聴いてから好きになって、 追い続けて、たまたまこの「Minha Voz」は持っていなかったので購入。名曲「Luz do Sol」やB面ラストのカエターノ、シコ、ジルのヒット曲メドレーも爽快な秀逸なアルバム。面白い事に、スペインでのカセットでA・B面のトップの曲は、スマッシュヒットしたナンバーをスペイン語バージョンで吹き込んでいるスペイン語圏仕様。
<ナラ・レオン>
*ブラジルに行った時に購入。彼女の青春期に親しんだアメリカのスタンダードソングがボサノバに変身。聴きやすく、モタレないスタイリイッシュ音楽の定型。このスタイルが今やボサノバのポップススタンダードになっている(小野リサなどの手法は、この人の影響ではないだろうか?)
<シモーニ>
*元バスケットの選手という大柄の女性シンガーで、マニッシュな雰囲気が売りだったシンガー。日本でも一時CBSから数枚アルバムがリリースされたが、あまり人気に火は付かなかったようだ。
<マリア・ベターニャ>
*「Pássaro Proibido」(1976)「A Beira e O Mar」(1984)の2作でブラジルにて購入。やはり、後者のアルバムの方が親しみやすく、好きなのでこの感じをず~っと続けてほしかったのだが、90年代以降段々と面倒くさい感じの歌世界に入って行ってしまう彼女。
<イヴォンニ・ララ>
*"サンバ界の女主人”という異名を持つ、女性サンビスタの第一人者。これは、1987年頃の作品。いわゆるパゴージなのだが、彼女自身作曲する作品を唄い、多くのシンガーの影響を与えている。近年までずーっと第一線で活躍し、色んな人との共演作品が楽しい。
<エルバ・ハマーリョ>
*派手なパフォーマンスと衣裳に、やたら明るく元気な派手派手シンガー。バイーヤ発の音楽をポピューラーにした、チンバラーダにつながるイケイケシンガーの草分け。当方には、この人の明るく元気すぎる軽薄なスタイルが少々苦手だった。
<アル・シオーネ>
*この人のデビュー盤「愛のサンバは永遠に(NAO DEIXE SAMBA MORRER)」でヒットした時に好きになり、FilippesからRCAに移籍したが、ともかくアルバムを暫く追っていった。 サンバを唄わせたら上手い歌手の筆頭格で、野太い声質はブラジル・サンバの楽しさと明るさを体現している。
<ベッチ・カリバーリョ>
*パゴージの優れたシンガーとして、日本でもRCAから70年代後半に続けざまにアルバムをリリースし、注目された女性サンバシンガー。その傑作アルバムとして評価が高いこの「Mundo Mehhor」(1976)では、カルトーラやゴンサガのサンバの良さを再認識させる。当方のカセットは、スペイン製なのでアルバム表記がスペイン語。
<バニア・バストス>
*中間派というか、MPBのサウンドとして非常に都会的なスタイルを持ち味にしている人。このアルバムの[O Gato(猫)]という曲が、可愛くキャッチ―で好きになって、テープにて買ってしまった。記憶違いでなければ、これが彼女のデビュー盤ではないだろうか。
<ナザレ・ぺレイラ>
* ブラジルのルーツ音楽として、素朴だが味わい深い楽曲を唄っていた人。LPを買って気にいってから、少し買うようになった。このアルバムは、文字通り「Naturareza(自然)」な雰囲気が横溢し、なかなか捨てがたい素朴さを味わえる。
<ヒタ・リー>
*70年代、ブラジルのロックで一番先端を行っていた女性がR.リー。夫で相棒のR.カルバーリョとのコンビでスマッシュヒットを連発していたが、その後、彼女の極めて個性的なスタイルが進んで、ソロ活動を中心になっていった。このアルバム「Zona Zen」は1988年の作品。
<ジジ・ポッシ>
*都会的なMPBシンガーとして日本でも一部のラテン音楽マニアにも知られていた女性シンガー。瓜実顔で物憂い雰囲気で堪らない(今ではかなりオバサンではあるが、その色っぽさは健在みたい…)
<マルゲリッチ・メネゼス>
*D.バーンが、ブラジル音楽を欧米マーケットに紹介するプロジェクトをキッカケに、アメリカや日本で注目されて購入したカセット。同じ時期に確か、M.ローク主演の映画でも彼女の歌が挿入されていた。アフロ感覚を盛り込んだブラジルの濃さが感じられる歌いっぷりは好みが分かれるかも?