※従来から、本ブログにてはCD音楽というのは『コンテンツ』だと記載してきました。今回は、まさにその<「コンテンツ」としての映像+音楽>というアルバムに関して、一言文句も含めた能書きとなります。中古屋CD漁りをしていて良く感じるのが、良くも悪くもこうした『コンテンツ』ビジネスとしての音楽業界の時代を後になって振り返る事です。
例えば、1990年代の終わり頃から2000年代初頭によく流行った「コピーコントロール」付きCDを最近はついぞ見かけません。複製防止のために設けたコピー制限が、音質の低下を招くらしいというハナシでしたが、それだけではなく、ある意味で複製を黙認しておかないと一定程度の売り上げが望めない事情もある旨の話を知人から聞いた事もあります。真偽の程は確かではないのですが、ともあれ見事に「コピーコントロール」付きCDは現在の市場流通が限りなくゼロになっています。
マルチメディアのコンテンツとして、CDに収録されたPC再生可能なクリップやギャラリー映像も同様に、21世紀のWEB時代には全くアナクロコンテンツになりました。
ある意味で、あまり流行の最先端技術を持ったというファッションコンセプトだけで、音楽コンテンツを提供しようとすると後日、後悔するのに似た“使え物にならない{音楽}”を市場に流通させかねない状況もあるという点、そんな当時の流行という極めて時代性を感じさせる、今や却ってその手法が鬱陶しい結果となっている興味深しという感慨をもつCDアルバムを今回取り上げます。
Ojos De Brujo [Techari] (Pias/2006) 2枚組 CD+CD-ROM スペイン盤 108円 星4つ
~Flashを用いたアニメーションClipsがボーナスCD-ROMとしてカップリングされているアルバム。厚いブックレットも組み合わせられた作りで、制作者が相当気合いを入れて制作したというコンテンツ(CDとビデオ:アニメCD-ROMの2枚組)である。まずこの作品、サウンドは優れてユニークであるスペイン人8名(男7女1)から構成されたグループによるもので、音楽性は若い感性によるフラメンコを基礎に、ラテン、ヒップ・ヒップ、ジャズ&フュージョン、エスニック(インド)音楽のゴタマゼで、強烈な個性のぶつかり合いとして、非常に新鮮でクリエイティビティに溢れている。伝統的なフラメンコがベースであり、継承された技法に新たな感性で、時代とメッセージを載せて攻撃的なまでに音を紡ぎだす。しかし、その基本がルンバ・フラメンカにある点が見事の一言で、新鮮であり凄い!
今回、その事以外で評価は、本作CDに出来栄えとそのクリエイティブワークたるパッケージデザインや、Flashアニメ技法を多用したビデオ:アニメCD-ROMなのだが、2000年代初頭は猫も杓子もWEBでのFlash公開を意識して、技法テンコ盛りの作品をFlashで制作した潮流の中で作られているので、当時その仕掛けは大したものだったろうが、今となってはもう陳腐化した、昔の記録すぎる作品と化す始末である。ライナーノーツはアメリカ、日本、スペイン等の各国クリエーターを集めたグラフィック作品とその他のアイデアを詰め込み過ぎな位の力の入れようで、その意図は理解し、悪くはないのだが、如何せん時代の洗礼を受けると陳腐なのでした、残念!
結局、音楽CDは良くとも、もう一方でのなかなかクリエイティビティに富んだ表現の作品(CD-ROM)だが、それが反対に今となっては下らなさに繋がってしまう妙なコンテンツだ。つまり、鑑賞するには今更PCを起ち上げて、必要に応じたソフトを動かさねばならないという面倒臭さを押し付ける結果で、よほど興味があるリスナーしか相手に出来ない不自由さ満載のコンテンツでもある。YouTube見た方が早いよ!…………続いて紹介するアルバムも同様デシタ…。
Sheila Majid [Legenda The Concert] (Warner/1992) 2枚組VIDEO-CD インドネシア盤 108円 星3つ
~日本でも90年代に若干だが巻き起こったエスニックな音楽バブル時期に、ヒットチャートでも若干注目されたアジアン・ポップスで知られたのが、このシーラ・マジッド。本国の人気に牽引されてか、何曲か日本でも紹介されて、そのキャッチ―なサウンドでそれなりに人気もあった様子だった。当時は、我が国にても女性シンガーがノリのよいビートを叩きだす大編成のバンドでスマッシュヒットを量産していた時期で、世界的にこうした傾向があって、そのインドネシア版女性シンガーとして、ヒットを出しその中でも「Legenda」というアルバムは、マレーシアの国民的歌手のカバーアルバムでミリオンヒットを記録。その流れのコンサートとして、このビデオCDアルバムが制作されたものと想像する。観客の反能、嬌声を受けてノリノリで展開するステージングは楽しいし、彼女の人気の秘密も判る内容となっている。また、そのポップな歌謡曲としての出来上がり具合も良く、理屈抜きに楽しめるコンサート風景だ。興味深いのが、本作のライブコンサートのサポートメンバーに、パーカッショニスト/S.ソートンが入っている事で、米国フュージョン&ジャズではかなり知られた存在だが、おそらく招聘されて参加した様子で、バンドのグルーブ感を盛り上げる一翼を担った形だ。
但し、コンテンツの作り込みが全くなっておらず、トップから突然コンサート本番になり、全くメニュー選択画面にアクセスできない不親切さ。長尺なのとスキップできず、兎も角最初から最後まで一気通貫的な見方しか出来ない。その面倒臭さは、時代を20数年前に巻き戻してくれます~。
YouTubeにて好き放題様々なコンテンツ(コンサートや音楽配信、ビデオクリップ等々)を観られる今日、面倒な手間かけてPCの操作してまでCD-ROMを観たいなどと奇特なお考えの方のみ、二作品とも今更トライして下さい(但し、スペインの若い8人組は赤丸で注目のアーティスト集団だ!)。