格安CDエクスプローラー

<100円からのCD批評>
~主に中古CDを漁り歩いて幾年月/好きなジャズ、ラテン音楽を中心に勝手・気ままな音楽批評

映画「ボヘミアン・ラプソディ」を観に行くの巻

2019年01月06日 | 映画・DVD

~正月気分で、久しぶりに配偶者と共に映画を見に行く事となった。配偶者は、いま話題の「ボヘミアン・ラプソディ」を観たいという事だったので、まあ~我が青春時期に戻った気分でQueenを聴くというか、センセーショナルな話題(ヒット映画)を追いかけてみたくもなった次第。興行収入も公開以来ガンガン上がってきたというし、我らおっさん世代だけではなく、若い世代まで巻き込んだ世界的なクイーンリバイバルの先鞭となった映画というので、期待もしてみたが、案の定良く作り上げた作品で、2時間少々の時間があっという間に過ぎた程、のめりこんでしまった。

 何せ、クイーンに扮したキャスト4人のそっくりさ加減と言ったら驚くほど!主人公のフレディー・マーキュリーは、若干小柄で、動作や格好はまあ完コピだったが、少しニュアンスが違う雰囲気ではあった。ギターのブライアン・メイやロジャー・テイラー役、ベースのジョンなどまあ酷似と言えそうな趣きで、良くもまあここまでやってくれるというもの。音楽は、全てオリジナルのまま使われ、口パクとシンクロパフォーマンスは出演者みなスゴイ!!
相当時間をかけて制作され、またCGのスゴイ効果も相まって、全く違和感無くクイーンのライブをそのまま見ている感覚にさえ襲われる。理屈抜きに十二分に楽しめる、エンターテインメント映画である。

 私自身、当時はロックからジャズへと音楽的志向が変化していた為、このグループは実力あるブリティッシュロックとしての認識くらいはあって、ヒット曲なのでよくラジオを通じて耳にしてはいたが、熱狂的に好きになった訳ではなかった。しかし、その奇妙なパフォーマンスや変わった音楽作り(~はじめて『ボヘミアン・ラプソディ』を聞いた時は、何じゃこれ?ロックか??と思い、どこか違和感ばかり感じていたのも事実)は、とりわけ好きになっていく要素にはならなかった。


 その後、F.マーキュリーの死に至るまで、しっかりと聞いてこなかったが、今回改めて歌詞の内容と彼の生い立ち、経験を追っていくことで、どこかその違和感と不思議に感じていた音作りの意味合いが理解できたようにさえ思えた、そんな2時間余であった。

 耳なじみのあるヒット曲の誕生秘話(音楽監修はクイーンメンバーが行ったので、その中身は非常に興味深いもの)も知ることも出来たし、フレディーの生涯に背負っていたモノゴトが改めて理解できたのも本作の核として素晴らしいものだ。歌詞の意味合いもあって、想いは尽きないし、何はともあれ、おススメの映画なので、観ていない方はどうぞ劇場へ足をお運び下さい。 

 


お軽いBGMジャズと侮っていたが見直したドリューのDVD

2018年10月03日 | 映画・DVD

「ケニー・ドリュー/ライブ・イン・ヨーロッパ‘92  (Columbia/ 1992)  200円   星3つ

~ケニー・ドリューは、我が国においてどの時代が一番評価されているかといえば、やはり70年代にSteeple Chaseレ-ベルでの諸作ではないだろうか。いやいや、50年代のジャズも良いと言うリスナーも多いかも知れないが、80年代のバブル期以降、日本企画:アルファジャズでのファッショナブルな装いを持った欧州的な叙情ジャズ系はコアなジャズファンにとっては、あまり高い評価は受けて居ないのではないだろうか??当方にとって、アルファレーベルの諸作は今ひとつ琴線に触れず、正直なところお気楽なカフェBGM的ジャズという扱いである。
 今回話のタネにビデオという訳だが、ライブ収録の本ビデオが意外とまともで90年代以降の活動も見直したということになった。

さて………………
我が国でのジャズ文化が色々な意味で変容したのは、おそらく80年代からバブル期にかけてではないかと考えている。それというのも、ジャズ音楽がオーディオ技術の変化、音楽と生活環境の関係性が高度経済成長期とは次第に質的に変わって来たこと、ロックやフュージョン音楽の潮流および音楽業界の地盤変化といった要因が大きかったと勝手な素人分析をしている。
 特に「ジャズの風景」は5、60年代から続いたジャズ喫茶という特別な空間から、一般の飲食店・商業施設の環境BGMという方向性に一般大衆化、ファッション化にシフトしていった。当然ながら、リスナー層もジャズ愛好家にとどまらず、女性を含めて若年層からの支持を集めるようになったと言えるのではないか。

 そんな時代のニーズにフィットしたジャズスタイルを、ピアノトリオとして作った1人がケニー・ドリューではなかったか。バブル期から90年代にかけて、K・ドリューはおしゃれでライトな感覚で欧州の香りをジャズに吹き込んで、我が国では相当人気が出た。特に、アルファのジャズ・レーベルにて日本制作によりシリーズ化されたアルバムは、そのCDデザインやイメージ作りがなかなかのもの(というか、ファッショナブルなイラストが売りもの)だった。しかし、当方のような旧来型のジャズファンには、どうにも迎合的な姿勢に映っていたことも事実。70年代のSteepleChaseの諸作は、日本で高く評価されたが、バブル期以降日本で制作されるようになった作品群は、やはり欧州の味わいよりもお茶漬け的抒情性がミックスされたように思えてならない。
 スタンダードと自作、または欧州のメロディアスな楽曲をよい割合にてブレンドし、CDシリーズも旅情もの、欧州要素のもの、スタンダードなものなど連作シリーズに評判に集まった。また、日本のリスナーからのリクエストに応じたジャズ楽曲コンピとしても相当数リリースしていたので、新しいリスナー層の気持ちをうまくつかんだのだが、当初お付き合いしていた当方でも、その辺りのアザトサが見えるので、ある時期から距離を置くようになった。

 本作は、彼が1994年に亡くなる前、92年頃のライブ録音を記録したもので、定番トリオ(ドリューにベースのO.ペデルセン、ドラムがA.クイーン)の安定したプレイはさすがである。アルバムだとマーケットの受けを狙った傾向が出て居たり、日本の制作意図を強く持った抒情系ナンバーが多かったのが、やはりライブだと様相が一変する。その昔(5~60年代)、ドリューのRiversideレーベルでの活躍の一端を垣間見せるようなスインギーなノリの良さで、アドリブも冴えを見せる。ペデルセンのソロ、ドラミングの闊達なプレイは、スタジオ録音では味わえない、スポンティニアスなジャズの面白さ・醍醐味を伝えてくれるのだ。

 日本的なジャズマーケットとは違う欧州の観客のレスポンスに押されて、抒情系タッチよりのびのびした軽やかさを身にまとった、ドリューの音楽ルーツのようなジャズトリオのプレイとして楽しめる内容になっている。


音楽史を語る上で貴重なアーカイブDVD

2018年09月30日 | 映画・DVD

※リサイクルショップでのジャンク品の中から、レンタル落ちだが非常に貴重な掘り出し物DVDと遭遇したので、今回はそのレポートです。

「ビリーホリディ/ビリーホリディの真実」   (Columbia/ 1991)    200円     星5つ

 

 ~ビリー・ホリディのお宝映像の数々が収められているビリーの信奉者のみならずジャズファンにとって非常に価値ある記録的な資料となるDVD作品だ。
 当方にとっては、ビリー・ホリディといえば40年代中ごろから50年代にかけて録音した音源ばかり聴いて来たので、彼女が30年代にすでに大スターとなった時期の事柄はほとんどノーマークであった。そうした訳から、彼女のデビュー当時のエピソードあれこれや晩年期の老成したボーカルとは全く違う声質に魅了された聴衆の反応ぶりなども判った事は大いに収穫であった。彼女の人となりをカーメン・マクレイ、ハリー・エディソンらの親交のあったミュージシャンらが語るインタビューと併せて、アニー・ロスやマル・ウォルドロン達の説くジャズボーカルの上手さ、独特のセンスというテーマも大変勉強になる。
 「奇妙な果実」が発表当時いかにセンセーショナルだったかという事、楽器のインプロビゼーションにも似せて歌う手法など改めてジャズ史においての功績も実感できる内容はスゴイもの。最後の方にG.マリガン、B.ウェブスター、L.ヤングらのオールスターキャストとのジャムセッションで有名なシーンも挿入されるが、各ソロパーツをホーン奏者がプレイする間、ビリーの醸し出す雰囲気やまなざしは本当に美しく、何かを物語る。不世出のシンガーの生涯をコンパクトにまとめたジャズの教材としての逸品でもある。

「フェスティバルエクスプレス」     (ポニーキャニオン/2003)    200円     星3つ半   

 

~ウッドストックの翌年に企画されたライブイベントだったが、ミュージシャン達がカナダの主要都市を列車を借り切って移動しながら、各地でフリーコンサートを含めたイベントの記録映画だ。
 <Love&Peace>という流行のテーマが、観客とアーティスト間にて共有されていた時期から若干時間的なズレもあって、無茶苦茶で暴徒化する観客たちは、のちの粗暴で悪辣なモンタレーフェスでの事故(ヘルスエンジェルスによる暴力と殺人)を暗示させる。
グレイトフルデッド、ジャニス・ジョプリン、デラニー&ボニー、オティス・ラッシュ、E.アンダーソン、フライング・バリット・ブラザースといった当時のスター連中以外に、地元カナダからはザ・バンドがホークスと言っていた時代の雰囲気を残した粗削りなプレイを見せているのもオモシロイ。ジャニスの貴重な映像も彼女の素顔を含めた、パフォーマーとしての輝きが伝わって来た。

 アーティスト皆クレイジーな連中ばかりで、正にカウンターカルチャー華やかな時代であった60年代にふさわしいイベントだったが、ウッドストックの二番煎じ的なイベントという事や、規模の小ささと出演メンバーの面子からか、ほとんどかえみられずに闇に葬られたような恰好になっていた。ロック界の隠れた事実として、こうやってレアなDVD記録として蘇るのは同時代を生きた親父世代には何よりも良きプレゼントである。


いまどき『CD-Movie』なんてね~時代遅れのおかしさと悲しさ

2017年11月12日 | 映画・DVD

※従来から、本ブログにてはCD音楽というのは『コンテンツ』だと記載してきました。今回は、まさにその<「コンテンツ」としての映像+音楽>というアルバムに関して、一言文句も含めた能書きとなります。中古屋CD漁りをしていて良く感じるのが、良くも悪くもこうした『コンテンツ』ビジネスとしての音楽業界の時代を後になって振り返る事です。

 例えば、1990年代の終わり頃から2000年代初頭によく流行った「コピーコントロール」付きCDを最近はついぞ見かけません。複製防止のために設けたコピー制限が、音質の低下を招くらしいというハナシでしたが、それだけではなく、ある意味で複製を黙認しておかないと一定程度の売り上げが望めない事情もある旨の話を知人から聞いた事もあります。真偽の程は確かではないのですが、ともあれ見事に「コピーコントロール」付きCDは現在の市場流通が限りなくゼロになっています。
 マルチメディアのコンテンツとして、CDに収録されたPC再生可能なクリップやギャラリー映像も同様に、21世紀のWEB時代には全くアナクロコンテンツになりました。 

 
 ある意味で、あまり流行の最先端技術を持ったというファッションコンセプトだけで、音楽コンテンツを提供しようとすると後日、後悔するのに似た“使え物にならない{音楽}”を市場に流通させかねない状況もあるという点、そんな当時の流行という極めて時代性を感じさせる、今や却ってその手法が鬱陶しい結果となっている興味深しという感慨をもつCDアルバムを今回取り上げます。

  

Ojos De Brujo  [Techari]     (Pias/2006) 2枚組 CD+CD-ROM    スペイン盤  108円   星4つ

  

~Flashを用いたアニメーションClipsがボーナスCD-ROMとしてカップリングされているアルバム。厚いブックレットも組み合わせられた作りで、制作者が相当気合いを入れて制作したというコンテンツ(CDとビデオ:アニメCD-ROMの2枚組)である。まずこの作品、サウンドは優れてユニークであるスペイン人8名(男7女1)から構成されたグループによるもので、音楽性は若い感性によるフラメンコを基礎に、ラテン、ヒップ・ヒップ、ジャズ&フュージョン、エスニック(インド)音楽のゴタマゼで、強烈な個性のぶつかり合いとして、非常に新鮮でクリエイティビティに溢れている。伝統的なフラメンコがベースであり、継承された技法に新たな感性で、時代とメッセージを載せて攻撃的なまでに音を紡ぎだす。しかし、その基本がルンバ・フラメンカにある点が見事の一言で、新鮮であり凄い!

 今回、その事以外で評価は、本作CDに出来栄えとそのクリエイティブワークたるパッケージデザインや、Flashアニメ技法を多用したビデオ:アニメCD-ROMなのだが、2000年代初頭は猫も杓子もWEBでのFlash公開を意識して、技法テンコ盛りの作品をFlashで制作した潮流の中で作られているので、当時その仕掛けは大したものだったろうが、今となってはもう陳腐化した、昔の記録すぎる作品と化す始末である。ライナーノーツはアメリカ、日本、スペイン等の各国クリエーターを集めたグラフィック作品とその他のアイデアを詰め込み過ぎな位の力の入れようで、その意図は理解し、悪くはないのだが、如何せん時代の洗礼を受けると陳腐なのでした、残念!

結局、音楽CDは良くとも、もう一方でのなかなかクリエイティビティに富んだ表現の作品(CD-ROM)だが、それが反対に今となっては下らなさに繋がってしまう妙なコンテンツだ。つまり、鑑賞するには今更PCを起ち上げて、必要に応じたソフトを動かさねばならないという面倒臭さを押し付ける結果で、よほど興味があるリスナーしか相手に出来ない不自由さ満載のコンテンツでもある。YouTube見た方が早いよ!…………続いて紹介するアルバムも同様デシタ…。

Sheila Majid [Legenda The Concert]     (Warner/1992) 2枚組VIDEO-CD   インドネシア盤  108円   星3つ

~日本でも90年代に若干だが巻き起こったエスニックな音楽バブル時期に、ヒットチャートでも若干注目されたアジアン・ポップスで知られたのが、このシーラ・マジッド。本国の人気に牽引されてか、何曲か日本でも紹介されて、そのキャッチ―なサウンドでそれなりに人気もあった様子だった。当時は、我が国にても女性シンガーがノリのよいビートを叩きだす大編成のバンドでスマッシュヒットを量産していた時期で、世界的にこうした傾向があって、そのインドネシア版女性シンガーとして、ヒットを出しその中でも「Legenda」というアルバムは、マレーシアの国民的歌手のカバーアルバムでミリオンヒットを記録。その流れのコンサートとして、このビデオCDアルバムが制作されたものと想像する。観客の反能、嬌声を受けてノリノリで展開するステージングは楽しいし、彼女の人気の秘密も判る内容となっている。また、そのポップな歌謡曲としての出来上がり具合も良く、理屈抜きに楽しめるコンサート風景だ。興味深いのが、本作のライブコンサートのサポートメンバーに、パーカッショニスト/S.ソートンが入っている事で、米国フュージョン&ジャズではかなり知られた存在だが、おそらく招聘されて参加した様子で、バンドのグルーブ感を盛り上げる一翼を担った形だ。
 但し、コンテンツの作り込みが全くなっておらず、トップから突然コンサート本番になり、全くメニュー選択画面にアクセスできない不親切さ。長尺なのとスキップできず、兎も角最初から最後まで一気通貫的な見方しか出来ない。その面倒臭さは、時代を20数年前に巻き戻してくれます~。

 YouTubeにて好き放題様々なコンテンツ(コンサートや音楽配信、ビデオクリップ等々)を観られる今日、面倒な手間かけてPCの操作してまでCD-ROMを観たいなどと奇特なお考えの方のみ、二作品とも今更トライして下さい(但し、スペインの若い8人組は赤丸で注目のアーティスト集団だ!)。


JAZZの中古DVDを買うの巻~トリスターノによる孤高のピアノソロ

2016年07月25日 | 映画・DVD

*中古DVDにて初めてトリスターノの姿を見た。

本作は、1965年10月にコペンハーゲンのチボリ・ガーデン・ホールにてソロピアノの演奏会を記録した貴重なもの。隠れたジャズの名門:StreetvilleレーベルによるDVDである。

<DVD >   Lenny Toristano   [レニー・トリスターノ・ソロ~コペンハーゲン・コンサート]      日本盤    165円    星4つ


~1965年10月にコペンハーゲンのチボリ・ガーデン・ホールにてソロピアノの演奏会を記録した貴重なもの。隠れたジャズの名門:StreetvilleレーベルによるDVDである。ピアノソロとして、記録されている画像はモノクロだが、丁度彼のスタイルをそのままイメージ作るにはまったく違和感なしの貴重なアーカイブ映像ではある。

 

 このヒトを形容するコトバとして、「孤高のピアニスト」といった表現が用いられるように今から半世紀以上も前のジャズピアニストとしての立ち位置は全くワン&オンリーのものであることが、本作には短いながら(40分程度のモノクロ映像として)記録されている。現代のピアニストでは普通に見られる脱ジャズ的言語表現というのか、ポストモダンのノンジャンル的ピアノスタイルがここにはある。
1曲目にある「Darn That Dream」の崩し方は、同時代のジャズピアノマンには思いもよらないようなアプローチであり、スタンダードナンバーである明確なメロディを大幅に崩し、主題にある旋律から派生する「別物」のトリスターノ節によって世界を作り直している。「木の葉の子守歌」「あなたは恋を知らない」「ゴースト・オブ・チャンス」といったスタンダードをやっていても、原曲のイメージが残らずに彼の内面的な世界を提示する旋律とそのアドリブプレイに置き換わっている。ジャズのコンサートというより、クラシックピアノソロに近い演奏スタイルである。良く言うトリスターノ門下生(リー・コニッツ、W.マーシュら)のクールだがリズミカルで大衆受けするような装飾的音付けはほぼ皆無なので、ある意味素っ気が無い程の理知的、理論的音楽世界なので感情、熱情といったジャズが生み出す体感が全くないのが、今聞いていても新鮮な音に映るのだ。

 おそらく彼には、スイング感とは別のシンコペーションがあって、独特の感覚で若干クラシカルな手法も内苞しつつ違うリズムパターンでのピアノソロを繰り広げていくのがスゴイ!音楽ジャーナリズムの世界では“クールジャズ”としか表現しようがなかったのは、ある意味進み過ぎたジャズ音楽の表現だったからではないだろうか。

~ある意味で現代ジャズピアノの源流として彼のプレイは位置づけられるように思える程、時代を飛び越えたピアノプレイが本DVDには記録されている。やはりユニークなアプローチすぎて、当時はジャズにおけるメインストリームには成りえなかったが、その奏法は後発の理知的なプレイを行うエバンスやジャレットらの先駆者として評価できるのだと実感できる。

 

 


時代考察とストーリー構成が秀逸なミュージカル映画「Across The Universe」

2015年06月12日 | 映画・DVD

 

~先日、CS放送で結構楽しめるミュージカル映画を見た。ビートルズの歌曲を用いた青春ミュージカルという触れこみで、60年代を舞台にしたものだと言う。正直なハナシ、このところ、真面目に映画を集中して観ることも少なくなったが、本編は期待せずの流れで一気に観てしまった。普通、BS、CSで音楽番組や映画を録画しても、真っ当に最後まで見ている本数は、録画全体の3分の1あれば良い。昔は、映画館でじっくりと腰を落ち着けて観ていたのだが、簡便に家で好きな映画を自由に観られるようになったのに、反面まっとうに観るという事が無くなったのは、要因のほとんどは自分のせいなのだろうが、一方親父世代を凄く面白がらせてくれる雰囲気を持った作品も少なくなったのでは?てな与太を言いたくなるのが、だらしない親父の言い方…(反省)。

 『アクロス・ザ・ユニバース』(Across The Universe)は、2007年製作のミュージカル映画でビートルズの楽曲33曲で描かれた60年代の青春絵巻。ビートルズ、ストーンズで自分の音楽原体験を作ってきた人間にとっては、なかなか泣かせる心憎い演出があちこち散りばめられている。作品はアメリカ、イギリスの制作スタッフによるものらしいが、今時のハリウッドらしさが垂れ流され過ぎておらず、適宜ほろ苦い風景も描かれるのはビートルズのお国:イギリスのペーソスとアイロニーがうまくブレンドされている為ではないだろうか。

冒頭の主人公:ジュード(いかにもベタな名前で、これが例の『ヘイ・ジュード』の楽曲と関連つけられすぐネタばれしてしまうし、ヒロインがルーシー、友人の女性がプルーデンスと来たらまあこれじゃあ安物のキャラクターじゃないかと最初は誰しも思うだろう)が、海辺で忘れられないヒロインへの思慕を『ガール』の歌詞そのままに歌い出し、それとオーバーラップするモノクロ画像で、あまりこれじゃあ大したスクリプトではない、ハリウッド青春モノという予想をしたのだがそれが裏切られ、その後のシークエンスから中々侮れないストーリー展開をしていく。
あらすじを書いてしまうと陳腐なのだが、イギリスのリバプールに母子家庭の労働者階級として生まれた主人公が、その生い立ちを巡る事柄からアメリカへ渡り、社会や様々な人間とのかかわり、恋愛、青春の葛藤をビートルズナンバーをベースにした歌詞の内容や、激動の60年代アメリカの社会とポップカルチャーなどと組合せながら、あくまでもミュージカルの”ダンス&シング”という十八番の舞台で描き切るカッコよさ。そう、やはりその辺りの技巧・描写はさすがアメリカ映画の実力発揮。

 しかし、主にレノン&マッカトニー、時にジョージの歌詞をストーリーに上手くあてはめ、登場人物の独白、台詞につなげていると、歌詞を知っている観客も思わず口ずさむ、当事者になってしまうという現象があって、制作者はその部分をうまく共感させ、観ている者を映画にドンドン引き込んでいくのだから、大したアイデアを具体化したものだと唸ってしまう。時代の社会情勢、事件をキャラクターの行動とマッチングさせ、変革期にあった社会やベトナム戦争、キング牧師の公民権運動、徴兵問題などとシンクロさせる演出は安定したエンターテイメント性を持ちつつ、こなれたメッセージにもなっている。キャラクターの中でも、女性シンガーがどこかJ.ジョプリンを想起させ、彼女のバックバンドだったホールディングカンパニーとのイザコザを知っているポップスファンにも面白いエピソードになっていたり、最後の方でビル屋上でのゲリラ・ライブ演奏は、例の<レット・イット・ビー>そのままだったり、若い世代ではなく中年以降のロック世代への目配り?も忘れない辺り、本作の脚本家は大したものだと思った。

 実力もある若いアクターばかりではなく、オッサンROCKスター(ネタ晴らしはシマセン。ご自身で確かめて下さい)も何人か登場するが、うまいキャスティングになっていて、サイケデリック時代、カウンターカルチャーのパワーを十分知っているアーティストならではの場面も楽しめる。普段は、映画のエンドロールを最後までじっくり見たりしないのだが、本作ではどんなアーティスト、スタッフが加わっていたのかを目を皿のようにしてずーっと見ていた。すると、当方の知った範囲だけでも、サウンドクリエートのミュージシャンには、J.ケルトナー、R.キューバ―、T.ボーン・バーネット、G.ゴールドスタインらのクレジットもあったので、結構音楽好きには隠れた楽しみ方もできる映画だ。

よく調べたら、何やらYouTubeで映画丸ごとアップされてはいるが、どうせならビデオで借りて大画面と良いサウンドシステムで鑑賞される事をお勧めします。なお、エンディングのシークエンスは、誰もが予想した通りの楽曲が歌われます。ああ、やっぱりね~……。

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映画『アクロス・ザ・ユニバース/Across The Universe』

監督  :ジュリー・テイモア
脚本  :ジュリー・テイモア   ディック・クレメント
製作  :ジェニファー・トッド  スザンヌ・トッド  レボルーション・スタジオ

出演者 :エヴァン・レイチェル・ウッド  ジム・スタージェス  ジョー・アンダーソン  ら
音楽  :エリオット・ゴールデンサール
撮影  :ブリュノ・デルボネル
編集  :フランソワーズ・ボノー

上映時間   133分

 

 


たまたま入手の『ファネスDVD/El Diario de ~』

2014年11月05日 | 映画・DVD

JUANES 「El Diario de ~」  (Universal/2003) 日本盤DVD  108円  星3つ

  

~何気なくブックオフのバッタDVDコーナーで値段に惹かれて気に留めてはいたが、当初は別に即購入にはならかった。こうした今風のラテン・ポップス、ロックは、どうにも音楽(CD)だけだと当方のアンテナに引っかからないし、以前もシャキーラ、C.アギレラ、J.ロペスといった女性のMTVビデオでは、良いなと思ってCD買ってみたら皆期待外れの“CD棚・死蔵組”にすぐなってしまい、失敗続きで来ていたから…。

 

 そんな訳で買わずにスルーしていた。ある時、TVの番組でペルーの男性人気歌手のレポートをしていたのをキッカケに思いだし、「あれ?どこかで聴いていたかな?あの人、名前は何となく知っていた…」が、と不思議に思い、ネットで調べたらYouTubeでサンタナのコラボやハンコックとのジョイントをしていたのを知る。それで思い出したのが、前に彼のアルバム「Mi Sangre(2004)」てなCDを買っていて大した事なかったので人にあげていたこと。
 ところが、その後H.ハンコックの[The Imagine Project]にて『Mi Tierra』というナンバーをやっていて、キャッチ―な雰囲気(当然ハンコックのアレンジ力が大きい)で好きなものだった。それで気分を変えて、またまた駅前のブックオフにて再会で入手(108円)。所詮、ラテン歌手の人気は我が国ではそれ程無いので、急がなくとも手に入るんだなと少々可愛そうになった。反対に、CDのナンバーをほぼビデオクリップに仕立てあげてくれると、こちらとしてもそれなりに観られるのですよ。

 という訳で、映像と組み合わさるとラテンポップスも、流行おくれの親父世代でも楽しめるのでした。
 彼の特長である、南米のルーツミュージック(クンビア、バジェーナなど)と今日のロック感性がうまくミックスされて、なるほど若いラティーノはこうした雰囲気が好きなのかとか、今風のスペイン語「Timba~」とかスラングが溢れるドキュメントと一緒に楽しんだ。クリップとは違ったライブ映像や彼の日常風景から音楽への取り組み方がインタビューを通して汲み取ることも出来て、中々のナイスガイじゃあないかと思ったりもする。

 ビデオクリップとしては、「マラヘンテ(小悪魔)」と「Podemos Hacer Daño」は小生好みのラテンフレーバーに満ちて好きなナンバーです。出ているラテン系女性は、みなさま相当美人で、デュエットしているN.ファタードなど当方のアンテナにビンビン来ているが、おそらくもう少し経つとラテン系女性にありがちな体型にならないかと他人事ながら心配してしまう、ビデオを見終えたお節介親父が此処に居ました。

 

(追記)サンタナのビデオクリップでファネス結構頑張ってますね~、これってサンタナのアルバム[Corazon]で共演してるんでしょうね、きっと…。


ブルース・ムービー・プロジェクトの中古DVDを入手

2011年01月05日 | 映画・DVD

 

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~昨年末の気まぐれ中古品買い漁り納めをした際に、ビデオレンタル屋に行ってみたらワゴンのレンタル落ちセールで、300円で『マーティン・スコセッシ製作総指揮:ザ・ブルース・ムービー・プロジェクト』なるDVDのシリーズものが出ていました。

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ヴィム・ベンダース監督     「ソウル・オブ・マン」 (2003/USA)  星4つ

マーティン・スコセッシ監督   「フィール・ライク・ゴーイングホーム」 (2003/USA) 星3つ

チャールス・バーネット監督   「デビルズ・ファイア」 (2003USA) 2つ

 

 ~これは面白そうと即購入。いずれも興味深い描き方でブルースの歴史をその監督なりの視点で切り取っていて、音楽評論家とはかなり違う部分でその監督なりの“こだわり”やブルースへの想いが描かれていた。

やはり一番“ガ~ン”ときた映画は、ベンダースの「ソウル・オブ・マン」で3人のブルースマンをモチーフにして彼らの音楽界での足跡を追っている。なかでもJ.B.ルノアーなるブルースマンのレアな映像と音楽は、これまた大発見もので埋もれていたこのアーティストのカバー曲をカサンドラ・ウイルソンやらベックらがプレイするシーンもなかなか見物となっている。

マーティン・スコセッシは数々の音楽ドキュメンタリーを撮っているこの世界でも屈指の音楽通。ブルースのルーツとなったアフリカ音楽へのルポ的映像作りがそれなりの説得力を以って迫ってくる。

このシリーズの唯一ストリー仕立て映画がチャールス・バーネットの作品で、映画自体は面白くも無いが、ブルース・アーカイブともいえるお宝映像がかなり楽しめた。

 出来ればシリーズ残りの4作品も何とか手に入れたいが、どこかで格安品として放出されないかな~??!!