格安CDエクスプローラー

<100円からのCD批評>
~主に中古CDを漁り歩いて幾年月/好きなジャズ、ラテン音楽を中心に勝手・気ままな音楽批評

いや~、ラテン音楽のフィールドは広く奥深いですよね~、水野さん?!??

2015年11月30日 | ラテン音楽


Omar Sosa [Sentir/センティール]
    (Warner/2002) 日本盤    165円    星4つ

 

~遅ればせながら、このところ当方一押しのピアニスト。彼のルーツであるキューバから飛び出し、モロッコ経由でアフリカに根差した音楽にスケッチとアフリカ音楽の種々の要素をコラージュ・構成しなおした作品である。
英語のラップやアフロのチャント的メッセージを加え、前衛的な音のコラージュを正統派のピアノタッチが後追いしていく。キューバン・ミュージックの背景には、その音楽を支えている多彩なアフロ文化があるのだという点を主張しているようでもある。ここには、ピアニストとしてのソーサではなく、音楽家が考えるワールド・ミュージックとしてのアフロ・キューバンがある。
面白いのは、最後のボーナストラックは不思議な無音のあと楽器(コラ)とバタドラムがアフリカン・チャントによって彩を持ち、ピアノが特に多くを語らない。曲者:ソーサの面目躍如である。


Astor Piazzolla [La Camorra]     (Nonesuch/1989) アメリカ盤     165円    星4つ

 

~NYのラテン狂:キップ・ハンラハンのプロデュースによるもので、病に倒れる2年前のピアソラ66歳の時に吹き込んだノンサッチでの録音。話題を集めた「Tango:Zero Hour」の2年後で、どうやら、ピアソラ自身が気にいっていたアルバムらしい。「Camorra」とは、“口論、口げんか”の意味だが、そうしたイメージはあまり喚起されず、もっと情景が濃く太い。彼のキャリアでの集大成的なアルバム構成になっていて、組曲となっているスタイルはいつものようにガッシリと無駄なく敷き詰められた緻密な音によって、審美的な味わいさえ感じさせる。
 予断なしで本アルバムと向き合い、聴きこんでいくとスゴイのは判る。…だが、小生もうこの路線は相当お付き合いして来たので、少々食傷気味。やはり彼によって生み出された作品を他のアーティストがプレイしているアルバムへと興味は移りつつある。美品で安かったから買ってはいるが、数回聞いて棚に鎮座されました、ゴメンナサイ。

 


あの曲・この歌:その3/「ジプシー・イン・マイ・ソウル」

2015年11月27日 | あの曲・この歌

≪あの曲・この歌:その3≫

第3回   「ジプシー・イン・マイ・ソウル」

~ボーカルものとして一部には知られているナンバー。オリジナルは、1930年代の大学にて盛んだった軽演劇のミュージカルナンバーとして作られたという。ペンシルベニア大学のOBでプロのコンポーザーが書いたもの。

 

(要約)

もし私が自由奔放で、
それに放浪するのが好きだとしても、
それはただジプシーの魂がそうさせるだけ……

何かが呼んでいる、
どこか変なところから、
それはただジプシーの魂がそうさせるだけなのよ……

感情をありのままに出すのが私、
 そういう生き方で満足しているの。
             ~~~~云々


 まあ、たわいない歌詞だが、それを言い始めるとジャズボーカルものの半数以上が大同小異の世界だと思えるから、そんな野暮は言いっこ無し。さらに、現代では「ジプシー」=自由奔放で、欲求の赴くままの破天荒さ…なるステロタイプのレッテルは、人種問題を抱え、透けて見える差別意識云々などと言ったあらぬ方向の非難も起こらないとは限らず、時代のあり方も歌詞に大きく影響してくることもこんな内容の歌詞を見て、改めて想ってしまう。権利意識に未熟な時代性かな。


戦後のアメリカショービズ界で黄金期を迎えていた、白人の女性シンガーが多く取り上げていた事は、この歌の持つ伸びやかで、ある意味おバカな軽さが丁度美人シンガーたちの少し〝おきゃん”でセクシーな魅力とマッチしていたからではないのか。
アニタ・オディ、アニー・ロス、ジューン・クリスティ、パティ・ペイジら有名どころは、皆、こぞって取り上げる何かがこの曲にはあったのだろう。

   


<ジョー・スタッフォード「Gypsy in My Soul」>

   

*当方の一番印象に残るレコーディングは、ジョー・スタッフォードの録音。1957年のアルバム『Once Over Lightly』に入っているのだが、このLPは当時人気のあったアコーディオン奏者:アート・ヴァン・ダム・クインテットの伴奏によるアルバムで、洒落たタッチのアコーディオンに乗せて、「A Foggy Day」「枯葉」「A Lady is A Tramp」「But Not for Me」といった知られたナンバーばかりだが、すこぶる素敵なボーカルと伴奏が売り。アコーディオンという音に対してジャズファンとしての抵抗はあっても、心を掴む、隠れたポップス的ジャズボーカルの名盤ではないかと思っています。
ジョーといえば、1961年の『JO+JAZZ』という素晴らしきアルバムも思い出されるが、このジャズミュージシャン揃い踏みの豪華王道アルバムとは違ったシンプルな編成のアート・ヴァン・ダムとの相性も『Once Over Lightly』で発揮されていて、当時の女性シンガーたちの輝ける歌声を半世紀以上経った今日楽しめるのは、ジャズボーカルマニアにとどまらず、ポップス好きな人にとってもやはりウレシイもの。いかにも黄金期アメリカのちょいと能天気で、ポップなジャケ写真といい、愛すべきアルバムだと思います。


シリーズ『あの曲・この歌』/第2回  「ベサメ・ムーチョ」Besame Mucho の巻

2015年11月23日 | あの曲・この歌

●第2回●  「ベサメ・ムーチョ」Besame Mucho の巻

 

*ベタすぎるネタですが、ラテン歌謡の中で、まずイの一番に思い出す楽曲・抜群に知られ、誰でもイントロの旋律くらいは歌えるナンバーである。メキシコのコンスエロ・ベラスケス(Consuelo Velázquez)によって1940年に書かれたもので、Kiss Me More(またはKiss Me Mucho)という題名であるが、ボーカルものではスペイン語で歌われるケースが多い。

ラテン歌謡の分野に限らず、世界中でこれほどカバーされた曲は、おそらくジョビンの「イパネマの娘」くらいであって、双璧のラテンカバー曲として、ポップスからジャズまで幅広い支持を得ている。オドロク事に、初期のビートルスLPにカバー曲として存在するし、ジャズマンでは、ラテン好きなアート・ペッパーやM.カミロ、M.ペトルチアーニにA・ボッチェリまで。パンチョスらのラテンシンガーの多く、時としてジョアン・ジルベルトなど彼のボサアルバム(C.オガーマンのオケ付き)でもスペイン語で甘く歌っている。秋元順子などの日本人歌手もよく取り上げる。
私には、ちょいと違う様に思えるのが、ダイアナ・クラールがアルバム「The Look of Love」(2001)で披露した同曲。トニー・リピューマ&クラウス・オガーマンがコラボしているアルバムで、収められている「ベサメ・ムーチョ」はハッキリ言って駄作!何故なら、その前に2人が作ったJ.ジルベルトの「Amoroso」(1977)の同曲の世界をそのままコピぺしたようなウリ二つなオーケストラ編曲は、まったく手抜き以外何者でもなく、初めてダイアナ版を聞いた時、「オイオイそりゃないぜ、クラールさん!」と思ったもの。ダイアナ・クラールは、もっとジャージーでイカシタ音楽を作ってほしいものデス!(これ余談……)

    


{要約} 
“私にキスをして、たくさんキスをして
  今夜が最後かもしれないから
  私にキスをして、たくさんキスをして
   あなたを失うのが怖い、この後あなたを失うのが怖い”


~という訳で、ラテンのイメージは強くとも、歌詞内容が恋の喪失という事態を前にして、身を引き割く程の熱情から求めた接吻の美しい情感をテーマにしているから、普遍的なイメージが存在するということだろうか(尤も、作者がこの作品を生み出したのが15才の時とのことで、いくら早熟なメキシコ女性であっても、死や愛情の大きな世界をどれほど理解していたか、疑問が残る。若い女性の浪漫な想いや失恋への淡い空想が生んだと言う方が本質をついているのかも?)。

 

今回は、ジャズ&ラテン世界から、2枚ピックアップしました。

<ゴンサロ・ルブルカバ「Besame Mucho」>

~これは、アルバム「The Bkessing(1991)」収録のもの。チャーリー・ヘイデンとJ.ディジネットによるリズム陣を従えたトリオ演奏で、技巧派のピアニスト:ゴンサロがジャズの名曲の合間にみせるラテンの情感が堪らない。シンプルな旋律からゆったりと始まる演奏で、耽美的な美しきピアノタッチが心に残る。ここでは、技術に走らないプレイが聴ける。


<ルイス・ミゲル「Besame Mucho」>

~ラテン歌謡の世界では、ポップス歌手がある程度人気と実力を兼ね備えたと世間から評価されると、こうしたラテン名曲集を必ずと言ってよい程、制作する。その一番すごかったのが、90年代初頭のルイス・ミゲル。彼のヒットアルバム「Romance」シリーズは、大ベストセラーとして長い期間チャートを賑わせた。その第三弾たる「Romances」(1997)に収録。普通、スローでボレロやバラードとして歌われるケースが多いが、この時期のルイスは発想を変えてアップビートのロックナンバーに仕立てている。その辺の感性が面白く、ティーンの若き日からポップス業界を歩いてきた人気者の才気が感じられる。


「格安CDエクスプローラー:エッセイ新企画」=あの曲・この歌

2015年11月20日 | あの曲・この歌

 ≪あの曲・この歌≫

*口上*

~世にあまたの曲があり、その音楽の背景にはそれぞれにそれぞれの由来やエピソードなどが付随しています。中古CDアルバムでも色々と面白そうな楽曲に出会い、新しい発見、思わぬ気づきなどがあるのも少なくないのでした。ジャズ、ラテン、ポップス~音楽カテゴリーが多々あっても、あくまでもこれが便宜的なものなので、本当に皆に愛され、古くならずいわば“エバーグリーン”として今に至るまで生き続ける音の世界には、何か特別な力=魔力に似たサムシングがあるのではないのかと愚考する次第です。今に至るまで数多くのアーティスト達の手によって、吹き込まれた音源を頼りに、アルバム購入をしている当方にとって、そんな楽曲こそ大いなる味方(?)なのデシタ…。
そんな訳有りな曲、歌い演奏され続けてきた楽曲にまつわる名演(迷演?)・快演(怪演?)を中古CD盤に見つけたアレコレを書いてみたいものです。

第一回: 「You’d so nice to be come home to」

 

~まずは、「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」(You'd be so nice to come home to)から始めませう。

この曲は、ジャズのスタンダード曲。コール・ポーター作曲で、1942年に発表された。映画 "Something to shout about" の挿入歌であるとのこと。映画自体、どうやら戦意高揚の目的に作られた作品らしい。
ジャズ界では、もう超有名な楽曲で数多くのミュージシャンに取り上げられ、名演も多いのでご存知だろうと思います。やはり、ヘレン・メリルがクインシーのペンによってアレンジされた曲を、クリフォード・ブラウンと共演したEmercyのアルバムがジャズ・ボーカルの人気盤。そして、アート・ペッパーの「Meets The Rythmsection」(1957)のトップに収録されたものが想い出に残る名盤。当時のマイルス楽団のリズムセクションだったガーランド/ポルチェン/フィリー・ジョーンズの鉄壁なサポートを得て、瑞々しく唄うペッパーのアルトこそ、我が青春のジャズである。これは、もう定食コース!

   

日本語の題名(『帰ってくれたら嬉しいわ』)についてはあれこれ言われるが、歌詞の内容は、どうやら第二次世界大戦中の出征兵士への祖国に残った恋人からの慕情がテーマで、暖かい暖炉の前で2人で語らいあいたい女性の心情が甘く切ない情景で描かれる。ここでは、少し変則気味のナンバーを選びたい。

<ニーナ・シモン「You'd be so nice to come home to」>

  

*これが、今回一番取り上げたいバージョン。彼女がニューポートジャズフェスティバルにてライブ録音したものにある{オリジナル盤は、1961年リリースのColpix版}。小生は、2枚LPを1枚に組見直したCollectable Recordの中古CDにて入手。

~まあ、このバージョンのすごいのは、まさにニーナ・シモンの陰々滅滅としたブラックネスな感覚が横溢していて、前記のH.メリル、A.ペッパーの歌い上げる雰囲気とは正反対な暗さが印象的なので、初めて聞いてホントに驚いた。クラシックピアノからスタートしたN.シモンだけに、この曲のイントロからピアノが対位法的な旋律で始まる。そして、全くスイングしないトリオとの長い演奏の後、重い歌声が、まさに戦争に駆り出された恋人への想いと戦地の恋人と故郷に残った者の間にある怨念のように響き渡るのである。
ペッパーやH.メリルの軽やかで美しいジャズ表現とは、180度異なる戦争賛美的な音作りを一切排除していて、彼女がこの歌のバックグラウンドを意識してドス黒い不安と煽り立てるようにわざと演出したのでは…と勘ぐってしまう程、怪演であり、ニーナ・シモンのスゴさを記録しているナンバーです。

 


ジャズはスウィング&グルーヴィと考える場合~やはりイカシてるアルバムか?

2015年11月17日 | ジャズ


Shelly Mann & his Friends [My Fair Lady/マイフェア・レディ]
   (Contemporary/1956)再発:1996   日本盤   165円     星4つ

~ジャズアルバムとして、一時は大ベストセラーであり続け、ジャズ喫茶でもこのアルバムジャケットがよく『Now Playing』になっていたのを見ていた、有名な超ヒットアルバム。ヒットしたミュージカル(のちに映画化)の馴染みあるナンバーを爽やかにかつスインギーに仕立てたのが、シェリー・マンのドラムとアンドレ・プレビンの白人センスで、ブラックネスな感覚が本当に薄く、ジャズ味でミュージカルナンバーを歌う雰囲気が一杯なのでした(尤も、そのリズムのベースを固めていたのが黒人のルロイ・ビネガーだけどね)。アルバム丸ごとがミュージカルもので、ブルーノート辺りの脂ぎった汗(-_-;)を感じない物足りなさを嫌がるか、その辺りが好きかで自ずと価値が違っている。
このアルバムから編纂したナンバーを色んなコンピアルバムで見る程、プレビンの優れたジャズセンスを表す記録としても今や楽しく聴ける、やはりウェストコーストジャズの中で、コンテンポラリーの力ある時代を象徴するアルバム。シェリー・マンのスインギーで、当時は一歩進んでいたドラミングを味わう好盤であろう。

 

John Patton [Understanding]      (Bluenote/1968)  再発:1995     アメリカ盤  165円    星3つ

~<レア・グルーブ・シリーズ>として再発されたブルーノートのオルガン奏者:ジョン・パットン。親父世代にはなじみのないキャッチフレーズだが、「レア・グルーブ」とはヒップホップやクラブ世代の若者にとって、サンプリングしやすく、切り取ってフレーズが判りやすくノリが良いサウンドに使われる用語のようだ。“過去の音楽を現在の価値観で捉え直す際、当時には評価されなかった楽曲の価値が新たに見出される事”を指すらしく、本アルバムも60年代のオルガン奏者としては、旧ジャズ世代は評価しなかったに近いアーティストであっても、≪今日的にはイカス!!≫らしい。やはり昔からのジャズファンが聴いてみた時、その時代の流行や限界も一緒に存在する。見えるのは時代の単純なファンクネスであって、60年代の音だったし、その中身の限界が判っていてその辺りが親父にはつまらなくも映る。
オルガン奏者のパットンが、テナーとドラムスのトリオで録音したアルバムだが、結局ダンスミュージックとしてアレンジしなおすという感じでは面白いが、“ジャズらしさ”で言うとちょいと食い足りない感じは否めません。


<多民族による混沌の歴史が生んだジャズ2題>

2015年11月14日 | ジャズ

*ワールドミュージックとしてカテゴライズされる種の音楽に限らず、現代の商業音楽世界にあっても国境、民族に関わらず音楽の融合は当たり前になっている。今更言うまでもないが、欧州のジャズ世界でも様々な民族の文化と歴史が音楽を形成して来た。そうした音の姿がジャズ、ポップスの中でも脈々と息づいて現代の音楽世界を作っていることがCDアルバムを通じて理解も出来る。欧州では、そうしたユニバーサルなノンカテゴリー的音楽が多数生み出されている。それを知る楽しみが音楽の素晴らしい事と改めて実感しています。
反対に現代の世界情勢で社会・政治状況はきな臭く、いわゆるレイシズム、愛国や宗教の名の元に反融合、民族の隔離・保守的伝統文化への回帰等の動きが少しずつ見られるのが、どうにもヤリキレナイ。そんな風潮に風穴を開けてほしいと思う2枚のアルバム。陳腐で月並みな表現になってしまうが、音楽こそシンプルな〔友愛・平和〕の統合的価値の芯になってもらいたいものです、ホント。

 

Note Manouche [Note Manouche /ノート・マヌーシュ]    (Vivo/2003)   日本盤    165円   星4つ

~ジャンゴ・ラインハルトは、ベルギー出身でジプシー(ロマ)の天才的ジャズギタリストであり、彼の創りだした音楽が後世のジャズ音楽に多大な影響を及ぼしたのだが、そのジャンルの音楽は"マヌーシュ(スウィング・ジャズ・ギター)音楽"と呼ばれるそうな。今回、本CDの解説から内容を知った。マヌーシュは、フランス北西部アルザス地域に住むジプシー民族を指すとのこと。また、本アルバムメンバーには、ラインハルト姓のミュージシャンが居るが、この氏名は当民族ではありふれて存在するらしい。このバンドは、盲目のジプシー・アコーディオン奏者とラインハルト姓のギタリストらによる、正真正銘のジャンゴ・ラインハルト直系バンド=マヌーシュ・サウンド。
音の作りは、パリの街角風アコーディオンとギターがくりなす軽きスイングジャズは、快適そのもの。オシャレな恋愛コメディ映画のシーンが想起されるようで、当方には若干オシャレなテイストすぎて、ジャズの風味が足りない所も事実(ただし、実験的でアグレッシブな楽曲も数曲収録されてはいる)。ジプシーギターでジャズというと、やはりフランスのビレリ・ラグレーンが有名だが、彼の音楽よりも全体にライト感覚だがアンサンブルの妙は高く、やはりジャケットのイラストが示すように楽しく明るき音楽世界である。曲によっては、各楽器のインタープレイが優れて現代的ではある。興味深いワールドミュージック。

 


Boris Kovac & Ladaaba Orchest [The Last Balkan Tango] 
     (Piranha/2001)   ドイツ盤  165円    星2

~全く正体不明なバンドで、ジャケ買いしたアルバム。惹句に『世界の終りの日に催されるタンゴパーティで流れるユーゴ、チェコ、バルカン半島の音楽というコンセプト…』云々というちょいとギミックなサウンド・パフォーマンスアルバムなのだが、面白いのではないかと思った次第。以前観た映画「アンダーグラウンド」(監督/エミール・クストリッツア:1995)の世界観とピッタシに思える音楽世界で、まさにこの映画がユーゴスラビアのサラエボで作られたものと言う事実とも符合している。
でもって、まともなジャズを期待してはいけません。変な掛け声の後、ポルカやタンゴをベースにしたジプシー音楽、民族系パーティ・ダンス楽曲(これで踊るのはかの民族?)が繰り広げられ、サーカスに行った気分で、快楽の刹那に目まぐるしく動く音の連なりを体験しませう。クラリネットとバイオリンの間で、アコーディオンがすすり泣く切ないジンタみたいなサウンドで、そこが好きか嫌いかでアルバムの意味合いが違ってきます。
やはり音楽自体、パフォーマンスの映像的な雰囲気を映し出していて、アルバムだけで聴いていくというより、実際のライブを見たらもっとこのバンドの本質が味わえるのだと思う(YouTubeでこのバンド演奏、パフォーマンスが見られる)。


ヨーロピアンジャズの対極的な味わい

2015年11月11日 | ジャズ



Peter Nordahl [The Look of Love/恋のおもかげ]
    (Arietta Disc/2002) 日本盤   165円  星3つ

~スウェーデンのピアニストで、可愛い子ちゃんジャズシンガー:リサ・エクダールのアルバムを制作し、バックでピアノを弾いていた人。スムースで居心地の良いプレイは、あっさりしすぎていて物足りないくらいの綺麗なジャズ世界である。ピアノタッチに誰 それの影響が見て取れるという風情なしだが、要は端正でまとまった上手いサウンド作りがこの人の持ち味だろう。収録ナンバーも 、ジャズスタンダード4曲、バカラックナンバー、オリジナルは1曲、興味深いのが母国の民族音楽をアレンジしたナンバーも1曲とい う構成で、全般的にあまり玄人筋を唸らせようという考えは無さそうで、スタイリッシュ&スインギーでイカシタジャズを作りたいというスタイル。とっつきやすくシンプルな演奏で悪くないが、あまり噛みしめて聴きたいというジャズではない。それとベースラインが単純すぎるのが少々退屈。
欧州系のピアノジャズトリオを集中的に聞いている方々には、楽しく安定したプレイが良いのだと仰られそうだが、当方には少しそ の辺りが不満なアルバム。澤野商会のアルバムが好きな方には良いのでは?


Kevin Brady Trio [Common Ground]   (Living Room /1967)   アイルランド盤    165円   星3つ

~アイルランドのドラマーらしいが、このアルバムでは、アメリカのピアニストであるビル・キャラザースなる人とギターを含むカルテット構成のバンドで、オリジナルと既存のジャズ曲、そしてスタンダードをやっている。それも、J.カーンの「Yesterdays」、パーカー、モンク「Bemsha Swing」からマイルスで知られるW.ショーターの「Water Babies」やランディ・ウェストンの作品まで~どういう感性をしてこのような選曲をするのかが面白い点。知られたメロディを、尖った感覚でアレンジするのが良い。さらに2曲ほどスぺイシーでポストモダン的なジャズセッションを織り込んでいるのも、少々分裂気味でなかなか興味もそそられて面白いものだ。メンバーの個々のプレイは、特段どのプレイヤーが光る演奏を見せるという風ではなく、コンボとしての完成度をあげる事がこのドラマーが目指したものかも知れない。
へそ曲がりなジャズファンには、そこそこ楽しめるB級ジャズ盤だと思います。


<キューバとメキシコからの心地よきラテンサウンド>

2015年11月08日 | ラテン音楽



Horacio “El Negro” Hernandez [Italuba]
   (ewe/2004)    日本盤 280円   星4つ

~キップ・ハンラハンの『ディープ・ルンバ』プロジェクトなどで活躍し、ジャズ&ラテンフュージョン畑で活躍するオラシオ・エルナンデスがキューバ人のアーティスト3人とイタリアにて結成したグループがこのItaluba(ItaliaとCubaの融合から出来た造語)と言う話。本ジャケットイメージがどこかハンラハンのレーベル≪American Clave≫に似ているが、日本のレーベルEWEによる制作で、プロデュースがネグロ自身なので、ハンラハンのようなどこか斜に構えた音楽作りが全く為されていない。どうしても、≪American Clave≫はニューヨーク的先鋭さと理知的な冷たさのあるラテン志向が強いのだが、ここにあるのはイタリアの大地の元にキューバ人たちが思う存分やりまくったラテンの解放感が強いのである。編成は、トランペット、ピアノ、ベース、そしてオラシオのドラム。欧州にちなんだ曲名は、イタリア音楽シーンで活動していた彼らキューバ人からの欧州への挨拶らしいが、キューバ由来の明るさが欧州の雰囲気と合致し、のびのび奔放でも技巧派ならではのスリリングなプレイに満ちている。いかしたラテンフュージョン&ジャズ。


Luis Miguel [Mis Romances]    (Warner/2001)    ドイツ盤 200円    星4つ

~ルイス・ミゲルの代表作のシリーズ化第4弾(なのかな?)。毎回、こちとらお付き合いしているラテン歌謡ファンの1人ではあるが、彼は大人のスタンダード歌手としての芸風になってしまった感が強い。ただ、さすがにラテン歌謡スタンダード集も4回目となると、親しまれ巷間に広まっている楽曲の取扱い方(例えば、アレンジや楽器編成など)が段々マンネリ化してくる場合もあり、今回はその部分を払拭しようと無理にアップテンポのロック調に変えたり、腐心した跡も伺える。やはり、ラテン歌謡の王道路線は、どんな風にアーティストが向き合い、過去の名曲、スタンダードナンバーをビッグスターの知られた歌唱とは違った味わいをそのアーティストが生み出すかをリスナーは聴きたいのだから、従来のパターンから豹変したようなアプローチでもある程度許される。その一方で、聞き手にある名曲の世界を足蹴にしてしまう無体はNG。そのサジ加減は、シンガーの実力と制作サイドのコンセプトがガッチリと組み立てられ、時代のニーズを受け止めている事、それに尽きる。そうした点を考えると、ミゲル・ルイスは十分にそのレベルをクリアしており、安定感と歌手としての円熟味が味わえる1枚。


<ギンギンギラギラ~ギターが唸るか!?>

2015年11月06日 | ジャズ

 

  
M.Landau, R.Ford, J.Halsap & G.Novak    [Renegade Creation/レネゲイド・クリエイション] 
(Seven Seas/2010)   日本盤   165円   星3つ

~マイケル・ランドゥ、ロベン・フォード、ジミー・ハリサップ、ゲイリー・ノバックからなるロック&ブルースバンド4人組。「Renegade」とは、“背教者、変節者、裏切り者”てな意味のようだ。つまりは、変わり者集団の因果な音楽という風情だろうか。アラ環(Around 60)の親父ミュージシャンは、若き日にガンガンやりまくったハードなロック&ブルース世界には、郷愁・未練・愛着を持ち続けているのだというのがよく分かる。普通は、スタジオミュージシャンとしても活躍し、ジャズからフュージョン畑で重宝されるスタープレイヤーだが、今更若い連中に対抗するまでもなく見せる本格的な実力ギター。12曲中殆どボーカルが入り、インストが2曲だけというのも、普通は声に出す仕事が廻ってこない?鬱憤を晴らすような親父の生き様があるアルバム。

 

Mike Stern [Give and Take]   (Atlantic/1997)    アメリカ盤     165円  星4つ

~いつもはギンギン引きまくるマイク・スターンが、殊勝にもジャズの先達の作品(ロリンズ、コルトレーンら)に挑戦というスタイルが気になって購入。メンバーも、J.パトゥッチ、J.ディジョネット、G.ゴールドスタインにブレッカー&サンボーンという有名どころが顔を揃えて、従来の路線との違いスタンダードな方向でのジャズになっているが、この狙いは悪くない。ギタートリオとピアノ、そしてサックスが入った編成と少し変化を加えたフォーマットで制作されるが、アルバムトップが、コール・ポーターの「I Love You」からスタートし、心なしかいつもより歌う。リズムセクションが安定していて、勝手に繰り広げるフュージョンギターがなりを潜める。この人は、どちらかというとメロディを大切にして歌いアドリブを繰り広げるギタープレイではないので、オリジナル曲の面白みに欠ける点が問題だから、本当はメロディラインがしっかりした曲調をやった方が聴きごたえも出て来るのではないのか?
やはり、本音はギンギンなタイプをやりたいみたいで、ジミヘンの「Who Knows」てなロックベースの曲もプレイして、最後にロリンズの「Oleo」でアルバムは終わるという構成も良い。


クロスフィールドで幅広く活躍したハーモニカサウンド~T.シールマンス

2015年11月04日 | ジャズ

*ジャズ、ポップス、ロック界で幅広く活躍したアーティストでありながら、ジャズフィールドでは意外と過小評価なのでは思えるのが、トゥ―ツ・シールマン翁。若き日に、パーカー、ジャンゴの影響を受け、G.シアリングやクインシーらビッグネームからも重宝された御大。ハーモニカというジャズには一種不利なツールも、彼の腕にかかれば凡百のホーン楽器など有象無象のリードになり果てる始末。彼のフォロワーがなかなか育たないのも、彼自身傑出した個性と才能を持っていた、クロスオーバーなジャズ奏者であった証左であるとも言えるのでは…。
2014年に引退を宣言して90数歳になるまで活躍したのだから凄いアーティストだった。そんな彼のアルバムを3枚拾い上げます。


Toots Thielemans [Toots Thielemans:The Silver Collection]    (Polydor/1985) ドイツ盤  165円  星3つ

~ドイツのポリドール盤らしく、1974~5年のオランダ公演におけるライブ演奏とオーケストラとの共演の2部構成にしたアルバムとなっていて、アメリカでのアクトとは違うものになっている様子が感じられる。ライブは、おそらく地元のクラブといった環境でギター、口笛という旧来のスタイルもかなりリラックスした雰囲気の中で、ホームグランドにてプレイしている楽しさが伝わってくる。M.ルグラン、P.サイモンらのヒット曲を中心に、自作の「ブルーセット」やパーカー、エリントン曲のジャズプレイも披露しているもの。こちらは出来良し…。
一方、オーケストラをバックに演奏した後半の内容は、かなり流麗で装飾過多なストリングスを伴っているので、凝ったクインシーのようなサウンドをあまり期待してしまうと正直ガッカリする、無難なハーモニカによるポップス演奏である。味付けが凡庸すぎるが、そうした一般受けするイメージで彼のハーモニカを愛す音楽市場、欧州での彼の人気ベスト盤としてとらえるべきアルバムだろう。

Toots Thielmans [East Coast West Coast/イースト・コースト、ウェスト・コースト]    (BMG/1994) 日本盤    165円  星4つ

~トゥ―ツがこれまた次掲の[The Brasil Project]に引き続き、O.C.ネビスらと立ち上げた超ビッグでゲロ凄い?プロジェクトであるジャズのビッグプロジェクト録音。超ビッグなジャズマン(ハンコック、C.ヘイデン、J.スコフィールド、J.レッドマン、R.フォード、P.アースキン、M.マイニアリ、C.マクブライト、L.メイズ等々……ああ、いちいち挙げていたら大変な面子ばかり)を引き連れて、ジャズの有名なナンバーばかりをトゥ―ツのテイストを100%引き出さんとばかりに共演したもので、アメリカ西海岸・東海岸と便宜上分類したNYとロスでのセッションが13曲収められている。いわば、彼の長年にわたるキャリアとその人柄への同業者からのいわばご褒美的なレコーディング企画ものなのデシタ。参加メンバーの凄さばかりに目が捕られ、個々の楽曲にはあまり思い入れが出来ず困ったものだが、私的にはハンコックとのデュオというシンプルなもの「The Child is Born」くらいのスタイルが、やはりトゥ―ツの良さをタップリ味わえると考えます。
まあ、出来栄えは総花的なスタイルになりすぎる正月映画的な味わいだが、これもまた彼の音楽界でのビッグな立場の証拠だと受け止め、楽しみましょう!!



Toots Thielemans [The Brasil Project 2]
    (Private/1993) アメリカ盤    165円 星4つ

~第一作に続いて、ブラジルの10人コンポーザー(カエターノ、ミルトン、シコ、ジョアン・ボスコ、ジャバン、G.ジルといった錚々たる顔ぶれ)の自作・自演にトゥ―ツが独自のプレイを加味し、加えてE.エリアス、L.リトナー、D.グルーシンというアメリカジャズ界のブラジル好きが結集している凄いプロジェクト第二弾アルバム。70~80年代にかけて、E.ヘジーナとの共演やシブーカとのデュオアルバムを作っていて、ブラジル音楽との親和性・クォリティもかなり高いし、今回の面子から言って間違いはないのは当然でした。まあ、安心して楽しめるキャッチ―だしヒットチューンが目白押し、コンポーザーが各人1曲ずつトゥ―ツと共演しているのが、オリジナル発表時とどれだけ感じが変わったというMPBファンの期待を裏切らない。個人的には、ボスコとの共演「Papel Machel」がマイルドなテイストで、ボスコの熱を首尾よく包んでいて好きです。
うまく出来すぎていて、反対にこんな快適なサウンドばかりじゃあ、トゥ―ツさんズルいですよ!てなボヤキがフォロワーのスムーズ&BGMジャズ連から出てきそうな位、うまく仕上げてある。

 


日本の企画・プロデュースの特徴をよく示すジャズアルバム

2015年11月01日 | ジャズ

*当たり前の話だけれど、ジャズアルバムでは、国々によってプロデュースの姿勢がかなり違っている。その中でも、我が国はそれなりにジャズレーベルが御盛んで、数多くのアルバムが生まれます。というのも、そのベースには日本人のジャズ志向があるのでしょう。居酒屋から街の商店街アーケードにまでも流れるジャズサウンドなんて日本だけの生活風景なのじゃないかな??外国でこれほどジャズの持て囃され方ってあり??また、ジャズ喫茶なる業態が存在しうるのが、この東洋の島国だけかい??

 80年代以降、バブルを挟んでジャズアルバムの制作は、アメリカに次いで御盛んな日本。特に大手レーベルは、自社ブランドのアルバムは粗製濫造?し放題。良くあるパターンが、円の力を借りて超有名ミュージシャンのユニットを組んだもので、安易なネーミングが特徴!H.ジョーンズ、R.カーター、T.ウィリアムスのGreat Jazz Trioが本家本元で、彼らはそのジャズテクを溢れるスピリットでジャズシーンを輝かせたものです。しかし、その後のNY系スタジオミュージシャンが始めた過去の名作ジャズカバー路線は、当初それなりの意味はあったかもしれませんが、どれも大同小異の横並びジャズ。つまらないのよね~、同じ柳の下のどぜうは沢山居ませんよ!

 大手レーベルは、他者の成功体験を追従する日本的志向性で、その後同じような企画連発ではイタダケマセン~。そんな中、小生、日本企画モノでは、大手音楽業者さんよりも小ぶりで律儀なマイナーレーベルの一貫したセンスの方が好きだし、信頼が持てます(例えば、澤野工房、Vernusなど)。今回は、如何にも“売らんかな”の見え見えなスタイルと一方では、それなりに良い趣味のアルバムの対比が出来ました。

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Various Artists [Miles Favorite Songs/Dream session ‘96 ]    (Meldac/1996)   日本盤   165円   星3つ

~スイングジャーナルらしい発想の企画から生まれたアルバムで、経緯は同誌の読者投稿によって面白そうな企画を元にして実際にアーティストを招聘して制作し、それを自分たちの賞(スイングジャーナル選定ジャズ)にしてしまった、お手盛り企画じゃないのかと言いたくなる自前の自画自賛もの。
マイルスの過去に録音されたナンバーのベストプレイを当代きってのアーティストが演奏するとなれば、本当にドリームセッション(R.ハーグローブ、E.ヘンダーソン、G.ワシントン、B.ゴルソン、R.カーター等々スゴイ面子)です。まあ結果はハッキリしてますよね。良く知られたマイルスの名演再現もどきは綺麗に仕上がっていて、上手いし、すんなりと聴き心地もオーライ!でも……落胆の溜息?
予定調和と既製品的ジャズワールドで、予想外の展開、ジャズのもつ即興性が生むスピリットのほとばしり…などがほとんど無い、いわばデパートでのジャズ風景なのです。もっとジャズのアドリブは、街なか、雑踏、居酒屋(スピーク・イージー的なバー酒場)などで生まれる風景を描いてほしい!、そう切に望む企画でありました。

 

NY4 [Sweet And Lovely]  (Swing Bloss/2006)   日本盤   165円    星3つ

~ジャズ界の超ベテランアーティスト2人(J.バンチ、B.ピザレリ)と中堅ベーシストが加わったトリオにペットのW.バシェが加わったカルテットは、日本側の提案でスタートしたらしいので、初めはどうせ定番のジャズ路線と思って聞いたのだが、いやに安易な感じの商売感覚ではないジャズの味わいがあり、タイトルに通じる優しく寛いだスイングする楽しいアルバムになっている。懐かしい回顧のジャズになっていないのは、ベースのJ.レオンハートの存在で、Venusレーベルでの優れている活動で知られるB.チャーロップのサイドマンとしてやっている実績そのまま。現代の感性があることで録音当時80歳すぎのお爺ちゃんの古い感覚が違う味になる。その上で、温かいコルネットが謳いあげるというスタイルは、週末の夕刻にワイン片手に聴いているオジサンの心を鷲掴み??なのデシタ。