Summer Triangle
「♪ ちぃさな星の 小さな光が・・・・」
「見上げてごらん夜の星を」の一節の歌詞だが、夜空の星々は、太陽系の惑星や月などを除き、光って見える星は、「小さい」どころか「大きさ」がない。
正確に言えば、どんなに精巧な望遠鏡を使っても、恒星の姿を観測することができず、光っている「点」にしか見えない。
「点」とは、空間の位置を定義し、体積、面積、長さをもたない(by Wiki)。 大きさがないから、どれだけ望遠鏡の倍率を上げても姿は見えない。
ときどき、地球と似た惑星が「発見」された、とかの報道があるが、それも、ある恒星の前を、惑星が横切ったであろうという仮定で恒星の明るさがわずかに陰ることを調べ、それが周期的であるということを確認したり、惑星のわずかな重力で恒星が揺さぶられているなど、気の遠くなるほど精密な観測を蓄積していって初めて惑星があるという仮説が正しいようだ、ということを発表する訳である。
恒星たちは、それだけ遠くにある、ということであり、そんな遠くからでも、そこから来ている「小さな光」を見ることができる、ということでもある。
どちらも驚きに満ちている。
ほとんど全ての星は「球状」と考えられているが、星を表す「☆」は、地球の大気の動きで、星からの光が揺らいでいるように見えるから、だけであり、上述のように、丸い形でさえ見ることはできない。
七夕の「おりひめ星」や「彦星」、北十字星(Northern Cross)の はくちょう座「デネブ」を結ぶ 「夏の大三角」は、星を探す一番の近道である。
英語では「Summer Triangle」、夏の三角形だが、なぜか呼び方は 「三角」。「三角形」とは呼ばれていない。
・・・蛇足だが、
ネット用語で、「本田△」とは、本田「さんかくけい」 → 本田「さんかっけ~」→ 本田「さんかっこいい」、ということなんだそうだ。こういう感覚は素晴らしいと思う。
たまたま地球から見れば三角形に見えているのだが、3つの星は、距離も大きさも、明るさも各々違っている。
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ベガ |
アルタイル |
デネブ |
和名 |
おりひめ星 (織女星) |
彦星 (牽牛星) |
古七夕 (ふるたなばた) |
星座 |
こと座 |
わし座 |
はくちょう座 |
視等級 |
0.03 |
0.77 |
1.25 |
距離 |
25光年 |
17光年 |
1411光年 |
半径 |
2.73 R☉ |
1.63 - 2.03 R☉ |
200~300R☉ |
質量 |
2.6 M☉ |
1.79 M☉ |
20~25 M☉ |
表面温度 |
9,300 K |
6,900 - 8,500 K |
8,400 K |
光度 |
51 L☉ |
10.7 L☉ |
>65,000L☉ |
年齢 |
4億年 |
10億年未満 |
200万年 |
☉は、太陽を1とした単位 (太陽の年齢は46億年)
・・・・デネブだけ別格なので後述。
んにしても、みんな若い!!。太陽は壮年の星というが、3者とも少年か幼児みたいな年齢だ。
夏空の夜半(午後9時~11時頃)、見上げた真上に光る最も明るい星が、こと座のベガ、「おりひめ星」である。
因みに、
午後8時~10時頃は「夜分」
午後9時~11時頃が「夜半」
午後10時~12時頃は「夜更け」
その後から午前2~3時頃が「真夜中」
とされている。日本語の微妙な使い分けだ。
ベガ は、夏の北半球ではもっとも明るいので、「夏の夜の女王」とも呼ばれる。
地球の「歳差運動」(コマの首振りのような動き)によって、12,000年後には北半球の天頂近くに位置することとなる。つまり、ベガが「北極星」になる。
地球の歳差運動による北極星の位置変化
(http://ryutao.main.jp/kyokujiku.html)
ベガは、太陽の3倍近い大きさだが、自転周期が12.5時間という高速で自転しており、遠心力で「自壊」する(吹っ飛ぶ・・・)速度の94%にも達している、という。
で、想像図がこちら。
(http://en.wikipedia.org/wiki/Vega)
あまりの自転の速さに、扁平な形になっている。
因みに、太陽の扁平率は0.01%以下という、「ほぼ」を付ける必要がないほど「完全な」球体である。
また、太陽の自転周期は、赤道部分で約25日、極付近で約30日。これだけ違うと、太陽がねじれ、ねじれて変形した磁力線が黒点や紅炎(プロミネンス)、太陽フレアと呼ばれる爆発現象を引き起こしたりする。
アルタイルは、と言えば、非常に若い星であるが、ヘリウムが中心核を形成していると考えられており、35億歳前後ともなれば「赤色巨星」へと変化し、最終的に白色矮星になって姿を消すとみられる。
生まれながらに短命な運命の星のようだ。
太陽からアルタイルまでの距離は16.774光年、ベガまでの距離が25.103光年で、その角度は33.364°であり、三角比の余弦定理から、ベガとアルタイルは14.428光年離れていると求められる。
そんなに離れてて逢瀬かよ?などというヤボは承知の上だが、地上の川が 地の果てで銀河と繋がっている、と信じられていた時代の お話しである。
科学的にどうこう、なのではないが、古代中国では、実際の天空上に見える銀河(天の川)は、地上の漢水が地の涯で天の川に繋がっており、天の川の流れが地上の漢水になったと考えられていた。(同様な発想は天の川を「天上のナイル」と呼び、ナイル川と繋がっていると見るエジプト等にもあった。)
漢水連天河 絵:脇本 弘
まぁ、地上の川なら、なんとか逢瀬も可能というものだろう。
「七夕」寓話は中国起源のように言われるが、何のことはない、世界中に似たような話が溢れていて、日本では何から何まで中国起源にしたかったのではないか、と推察される。
星については、現代人も ひょっとしたら及ばないのではないか、というくらいに詳細について知っていた古代エジプトであるが、そんな一端を、ピラミッドが無言で語りかけている。
デネブ については、質量が太陽の20倍以上、半径は200倍、光度も65000倍以上と、「ベガ」や「アルタイル」と比較しても圧倒的に 大きく 明るい 白色超巨星なのである。
(はくちょう座)
全天中、恒星として最大級の明るさを持っており、銀河系全体の中でも、ほとんどの場所から肉眼視が可能であろうと考えられている。
200万年という年齢だが、もの凄いエネルギーを放出しており、数千万年後には赤色超巨星となり、超新星爆発を起こして「中性子星」か「ブラックホール」になると考えられている。
あまりに「太く、短く、激しい」生き方のようだ。
デネブは、「♪ちぃさな星の 小さな光」とは無縁だった・・・
星の世界も いろいろ、なのである。