がんの情報Tips

海外のがん情報を紹介。『海外癌医療情報リファレンス』https://www.cancerit.jp/関連ブログ。

化学療法による聴覚障害の過小評価、そして予防薬

2005-12-17 | 支持療法
ジョンソンは手術と集中的放射線治療によって脳腫瘍治療を受けた。そして肩の腫瘍に化学療法を受けてから1年後難聴を発症した。「骨折とは異なり、癌を克服した生存者には数多くの後遺症が日々新たに発症し続ける。」と彼は言う。
オレゴンヘルス&サイエンス大学(Oregon Health & Science University(OHSU))の研究者らによると、このようなことは珍しくないという。Journal of Clinical Oncology最新号では、聴神経障害の発症、頻度、重症度はこれまで医療側から十分報告されなかったことが判明した。その難聴の度合いを測定することが難しいことが原因のひとつと思われる。医師が分類基準として用いる米国国立癌研究所のCommon Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)は、高頻度におこる聴覚障害を顧慮していない。
1200人の小児を対象に行われた1998年の研究では、健常児では3%なのに対し、軽度の聴覚障害児さえ学力と社会的情緒機能において1学年37%が劣るという結果が出された。
この研究は、OHSUのDoernbecher小児病院の小児聴覚学者Knight氏によって行われたもので、人々が考えているより難聴は高頻度に起きており、この問題に取り組んでいく必要があるという意識を持って欲しいというのが研究の目的である。
OHSU研究者らは年齢8歳から23歳までのプラチナ系化学療法を受けた67人を調査した結果、61%で聴覚障害がみられた。発症時期の平均は治療後135日目であった。シスプラチンを受けた患者の55%、シスプラチンより毒性の少ないカルボプラチンでは38%、両方の併用患者では84%であった。
研究者らはこの化学療法による聴覚障害は予防可能であることを強調する。チオ硫酸ナトリウム(STS)をカルボプラチンの4時間後に投与することにより、悪性脳腫瘍患者において聴覚障害の発症が患者の84%から29%に減少した。
また、第2の化学保護剤としてNアセチルシステイン(NAC)をOHSU研究チームは開発している。NACはタイレノールの毒性治療に多く用いられるが、2004年マウスの研究でプラチナ剤による聴覚障害を予防すると発表された。NACのヒトでの安全投与量が決定されれば、STSと併用での第2相試験が行われる。
OHSU原文
全文訳N0189
癌と難聴のHP:わいはまーる 


コメントを投稿