豊後ピートのブログ

元北アルプス槍ヶ岳の小屋番&白馬岳周辺の夏山パトロールを13シーズン。今はただのおっさん

ストック依存症 その2

2007年09月14日 | 山ネタ そのほか
白馬乗鞍岳周辺は、大きな岩がゴロゴロしています。大きな岩を伝うように歩く場所であり、初心者には喜ばれない場所のようです。よく登山者から「あそこを通らないで下山できるコースはありますか?」と相談を受けます。


私は大好きなんですけどね・・・・



ある日、私は白馬乗鞍岳周辺をパトロールしていました。すると7~8名のパーティが上からゆっくり降りてきます。私は登りでしたが、脇に避けました。

真ん中あたりにダブルストックの登山者がいるのですが、彼女の歩きが非常に遅く、それで全体のスピードが落ちているようです。で、しばらく彼女を観察していました。どうもストックを突く場所を一生懸命探しているために、遅いようです。以前当ブログで書いた、ストック依存症ってヤツですね。


私の目の前まで彼女が来た時、動きが止まりました。ストックを突く場所が適当でなく、うまく決まらないのです。それもそのはず、前傾した滑りやすい岩の上に一生懸命ストックを突いているのですから・・・・・・





十数回も同じ岩を突いてガリガリやっているのを見て、思わず私は「そんなトコ突いたってダメでしょ。ストックに頼らないで一気に上がりなさい!」とツッコミを入れました。

しかし彼女はそんな忠告には耳を貸さず、ストックが滑るのも構わずに強引に通過していました。とにかく両方のストックをどこかに突いていないと、歩けないと思いこんでいるようです。

大きな岩ではないので、ほんの少し脇にストックを突けば楽に行けるのですが、それすら考えが及ばないようです。私はリーダーらしい男性に注文をつけました。

「こんなストックの使い方では、そのうちケガしますよ。ストックを仕舞って足だけで歩かせたほうがいいですよ」男性も少々ヤバいと思ったのでしょうか、彼女に「このままストックを使うか、仕舞うか、好きな方を選びなさい」と言います。

好きな方を選ぶとか、そういう場合ではないと思うのですが、これ以上のツッコミはトラブルの元なので止めておきます。彼女は当然、ストックの使用を継続しました。




ウチらパトロールの忠告って、登山の教科書を受け売りしたものではないんです。2~3割は自分の経験ですが、残りはすべて遭難者が骨折したり血を流したり、あるいは生命を落とすのを直接目撃して得た知見なのです。もうちょっと耳を傾けてくれると、ありがたいのですけどね・・・・・



前にも同じコト書きましたが、十数年前に日本にダブルストックを紹介した連中は、元々ストックを使わずに山を歩く体力も筋力も技術もあった人達です。そういう人が使うと楽なのはもちろん、安全に歩けます。

で、何も考えずに「ダブルストックは楽ですよ~」と初心者に勧めたのが間違いの元ってヤツです。初心者が使っても楽ですが、使い方がヤバいので転落滑落転倒のモトです。

岩場の下りで前屈みになり、片手で滑りやすい岩にストックを突き、片手で鎖をつかんで降りるなんて光景を、白馬岳周辺でも見かけます。それで万が一ストックが滑ったら、確実に転落してあの世行きだってことを理解していない人、多過ぎですね。



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