まほまほろば

まほろばのように日々の思いを書き綴った日記

父と子

2015-04-13 21:46:27 | 本(漫画、小説)
ツルゲーネフ著「父と子」を再読しました。

この本は主人公バザーロフにニヒリストなる新語を与えて当時のロシア社会の情勢を表した作品です。

物語の中ではこのバザーロフは何事にも否定的な人間として描かれており、会う人会う人に喧嘩をふっかけては問題を起こすトラブルメーカーのような存在でした。

彼は破壊を信念としており、古い考えを否定し、新しいものを打ち立てることにやっきになって行動していくのですが、ある1人の壮麗な貴婦人オジンツォーワとの出会いをきっかけにして心が揺らぎ始めました。すなわち、自らがバカにするように否定していた愛という感情をこのオジンツォーワに抱いてしまったのです。

この矛盾をどう解決したらいいのかわからないバザーロフは結局故郷に逃げるように帰って家族と過ごすのですが、途中でチフスにかかって症状が激しく悪化しました。死の間際にオジンツォーワが見舞いにやってきたときはバザーロフは自分に対して素直になり、愛の告白をし、そして息を引き取りました。



私がこの本を読んで感じたことはここで言うニヒリストというのは初期のニヒリズムではないかということです。
ニヒリズムとは絶対的な価値が崩壊した状態のことを意味しますが、そこに至るまでは全てを否定するという過程が必要です。この物語ではまさにこの過程を表していたのではないのでしょうか。

余談ですが、このニヒリズムについて深く考察した哲学者の代表例としてニーチェが挙げられます。
ニーチェはこのニヒリズムに陥ってしまった場合にとりうる態度を二種類に分類しました。

①受動的なニヒリズム:全てに絶望し、流されるままに生きていく
②能動的なニヒリズム:全てが無価値であることを認めたうえで前向きに生きていく

ヨーロッパ社会は行くつく先はニヒリズムである。そして、ニヒリズムに陥った場合にどのように生きていけばよいのかをさぐっていったわけですが、私はこのニヒリズムという現象は現代社会にも蔓延しているのではないのかという疑問を数年前から感じるようになりました。そして、これを突き詰めていくのは面白そうだと感じて現在物語にしようかと考えています。現代社会に潜むニヒリズムとはどういったものなのか、そして、それを克服するすべはあるのかなど今の社会がどのように変遷していくのかを予想するのに非常に興味があります。

もう少し具体化できたら紹介していきます。


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