まほまほろば

まほろばのように日々の思いを書き綴った日記

2月の読書録(哲学書・思想書)

2017-04-13 18:24:04 | 本(漫画、小説)
だいぶ遅くなりましたが、2月に読んだ哲学書・思想書の簡単な感想をまとめていこうと思います。


(1)「帝国主義論」:レーニン
 1月にルソーの「人間不平等起源論」を読んだときに資本主義の欺瞞について興味を持ったために読んでみました。レーニンというと左というイメージが強いですが、実際に読んでみるとちゃんと統計データを元に資本主義の欠点を述べているので意外とまともな本でした。帝国主義とは資本主義の行き過ぎた形態であり、資本主義が自由から離れて独占の状態に移行してしまっている状態を示します。グローバリズムの名のもとに植民地支配へと結びついた流れは、現代社会でも経済的な面で同じようなことが起こっているような気がしてなりません。
 断っておきますが、私は別に資本主義を否定しているわけではありません。むしろ恩恵を日々受けているので感謝しています。ただ、欠点もあるということを知っておくべきだと思うのです。その欠点について100年以上も前に気づいた人たちがいたということが驚きでした。



(2)「政治の約束」:アレント
 ミルの自由論を読んで、もう少し自由について掘り下げてみたいと思って読んだのがこの本でした。アレントの中でもマイナーな本でして、死後に残っていた遺稿を編纂して書き上げられた作品です。とは言っても、難解な哲学者アレントの本だけあって、独特の定義付けされた言葉群は読みこなすのに時間がかかりました。
 アレントがいう政治というのは、いわゆる法を定めて秩序を形成する政治とは意味が異なっていまして、一言で言えば自由な活動を意味しています。さらに政治は人間の複数性に基づいており、人間と人間の間に発生するものである(つまり対話を重視している)として、全体主義や内省的な生活を批判しました。実際、別の著書である「全体主義の起源」や「人間の条件」の中でも似たようなことが書かれていまして、ユダヤ人であるアレントがナチスによる迫害を受けた経験なども背景としてあったのかと思われます。
 また、印象的だったのが現代社会は世界(価値観)が喪失した砂漠であるという例えです。心理学や自己分析などは自分の内面にこもることでこの砂漠に順応する手段であり、生きる希望を奪い去ってしまう。なぜおかしい砂漠で生活できるように順応しようとするのか、なぜ砂漠をおかしいと思わないのか、そして砂漠を変えようとしないのか。最近本屋で自己分析書や心理学の本が店頭で山積みになっている世相をまさに痛烈に批判している部分であります。



(3)「ソクラテスの弁明」:プラトン
 アレントの「政治の約束」の中で書かれていた、ソクラテスとプラトンの対比に興味を持ったので読んでみました。ソクラテスは対話、そして意見を重視していましたが、よく思わない人たちから疑いをかけられ、その重視していた意見によって死刑となってしまいました。弟子であったプラトンはそれをひどく悲しみ、対話は重要であるが、雑多な意見ではなく一つの真理が重要であると思い立ち、イデアという思想に至ったそうです。
 この本の内容は、そのソクラテスがあらぬ疑いをかけられた後の裁判の様子が描かれていまして、原告と被告(ソクラテス)の激しい問答は読んでいて生き生きしていました。ソクラテスは現在生きていたら相当に理屈っぽくて面倒くさい人間なのでしょうが、無知の知、そして哲学とは知を愛するということなど哲学の原点となった人間でもあるため読む価値はあるかと思います。対話で話が進んでいくので哲学書のわりには読みやすいですし、その中にプラトンの思想が盛り込まれているので純粋に読み物として面白かったです。



(4)「実存主義とは何か」:サルトル
 「嘔吐」を読んだことでサルトルの思想をもう少し掘り下げてみたいと思って読んでみました。「実存主義とはヒューマニズムである」、「実存は本質に先立つ」、「人間は自由の刑に処せられている」など有名なフレーズの意味が述べられており、実存について参考になりました。サルトルが影響を受けていたハイデガーの実存との違いも書かれていまして、サルトルのそれは人間の主体性に重きを置いているということや人間は自由そのものであり、孤独の世界の中で自らを選び取っていく必要があるということが特徴的だと思いました。

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