まほまほろば

まほろばのように日々の思いを書き綴った日記

2月の読書録(小説)

2017-03-26 18:12:48 | 本(漫画、小説)
すっかり遅くなりましたが、2月に読んだ本を簡単にまとめていこうと思います。

先月も書きましたが、今年は小説と哲学書(思想書)の2種類を並行して読んでいるのでそれぞれについて書いていきます。


○小説

(1)カラマーゾフの兄弟4:ドストエフスキー
 
 1月に引き続き、光文社古典新訳文庫で読みました。ちょうど第四部に該当しまして、ここは次兄イワンとスメルジャコフの対決や長兄ドミートリーの裁判などがあったりとクライマックスでありながら読み応えがある内容でした。印象に残った部分を以下に挙げます。

 ・人間って時によると罪を好きになる瞬間があるもんなんです。
 ・無限の神がなければ、どんな善行もありえないし、そうなったら善行なんてまったく必要なくなる。
 ・苦しみこそが人だからですよ。苦しみのない人生にどんな満足があるのか。
 ・人間がひとり残らず神を否定すれば、今までの世界観や過去の道徳はすべて崩壊し、何もかも新しいものが訪れてくる。神が
  なければ全てが許される。
 ・人間の魂の営みは合理主義的かつ科学的な思考では捉えきれない。

 無神論、ニヒリズムなど当時の混乱状態にあったロシア社会やそこに住む人々の内面に潜む精神的な心をうまく表しているなと思いました。


(2)カラマーゾフの兄弟5:ドストエフスキー
 
 エピローグ、そして豊富な解説。この解説を読むだけでカラマーゾフの兄弟について、さらにはドストエフスキーという人物・作品群についてがわかるようになります。印象に残ったのは、この物語が三層構造(象徴層・自伝層・物語層)をなしており、三兄弟(アレクセイ・イワン、ドミートリー)がそれぞれ対応しているということやイワンにはスメルジャコフだけでなくリーザという影も持っていたということです。また、物語のダイアグラムが載っていたため、それぞれの人物がある時間のときに何をしていたのかがわかりやすくて助かりました。
 このカラマーゾフの兄弟は久しぶりに再読しましたが、読むたびに新しい発見があるのでまさに良書ですね。読み終えるのに1ヶ月近くかかりましたが、読書している時間はドストエフスキーマジックといいますか、セリフの応酬に引き込まれっぱなしであっという間に過ぎてしまいました。



(3)嘔吐:サルトル
 カラマーゾフの兄弟を読み終えてから、さて次は何を読もうかと考えました。影響を与えた作家に遡るのもいいなと思いつつ、影響を受けた作家にシフトしていくのも面白そうだと思って色々と調べていったところとあるサイトにサルトルがあるのを見つけました。サルトルの作品は今まで読んだことがありませんでした。サルトルは哲学者という印象が強かったのですが、小説も結構書いていまして、その中でも一番有名な作品を読もうということでこの作品を選んでみました。
 物が存在することに違和感・嘔吐感を感じてしまう主人公。存在することの偶然性に気づき、さらに物だけでなく人も同様に存在であるということがわかってしまったことで我々人間がこの世界に生きていることは偶然で、何の理由もなく、余計なものであるという結論に達する。不条理な世界で主人公がクライマックスに選んだ生き方は小説を書くということでした。ただ、それでも自分の存在は過去において受け入れられるが現在の自分が余計なものであることには変わりはない。

 サルトルの哲学も盛り込まれている小説であるだけに非常に難解な小説でした。2回読みましたが、正直理解できたかというと曖昧です。ただ、この小説を読んだことで「不条理」、「存在」というキーワードに興味を持ちました。


(4)群盗:シラー
 次はカラマーゾフの兄弟に影響を与えた作品を読もうということで、この作品を選びました。戯曲でして、内容は、王族の主人公が野心的な弟に騙されて城を追放された後、盗賊団を結成し悪の限りを尽くしたのですが、騙されていたことに気づかされて弟に復讐をするという悲劇です。
 ドストエフスキーはこの演劇を10歳くらいの時に親に連れられて見たらしいですが、そのときの印象が鮮明に残っており、実際カラマーゾフの兄弟でも引用されていました。
「人間とは偽りと偽善の仮面をかぶったわにの一族だ。唇には接吻を、しかも胸には短刀を」
また、セリフの中で「何が一番重い罪だ?一つは父殺し、もう一つは兄弟殺し。」があり、カラマーゾフの兄弟のテーマの一つでもある父殺しにも関係してきています。
 久しぶりに戯曲を読みましたが、やっぱり戯曲は実際に劇場で観るのが一番だと実感しました。

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