オートバイで行くインド・アフガニスタンの旅

写真やイラストつきのオートバイ旅行記

no.85  変な目薬

2017-05-09 18:23:47 | オートバイ旅行記
   チョッキダールに聞いた薬局で買った目薬をさっそくさしてみるが、やはり
全然効かない。  そこで「これではダメだ。」と思い、この町に病院はあるかと訊くと
「街外れにある。」というので、さっそく行ってみた。

 行ってみると、病院は人出溢れかえっていた。 こんな小さな町でも病人はやはり多い
のだなぁーと思った。 近郷近在からもやって来るのだろう。 
以前ボンベイで病院に行った時のことを思い出した。 あの麻薬をやり過ぎて倒れた
日本人を雨の中、バイクに乗せて市立病院に運び込んだ時のことである。

 今度はこちらが患者である。 順番がきて診てもらったところ、「アイフル―」だ、
という。「アイフル―」がなんだかは知らないが、とにかく細菌感染性のものだということは
分かった。 それで処方箋をもらい病院の薬局でチューブ入りの軟膏をもらい帰ってきた。


 日本人の常識でいえば、目薬は液体というのが相場だが、軟膏というのは初めてだった。

 グルドアラに帰ってさっそくその軟膏を眼にすりこんだ。 
「おお、全く見えない!」 べっとりとして、まるでグリースを塗りたくったような
ものである。 「こりゃーすごい!」「とにかくすごい!」」
そりゃーすごいわけだ。 かえってまったく見えなくなってしまったのだから。

 「本当に治るのかなぁー?」と思わず愚痴る。 これでは目ヤニで塞がったのが、
代わりに軟膏で塞がっただけではないか!

 そんなふうに半信半疑だったが、驚いたことに翌朝になると早くもやや良くなって
いたので、驚いた。 目ヤニがやや減ったとみえて、自力で眼を開けることができたのだ。
こうしてさしもの(?)アイフル―も数日を経て元の眼に戻ったのだった。
とにかく良かった。 ここでもうこれ以上長丁場になったら大変だ。
この先の旅はまだまだ長いのだ。 それにしてもこのところご難続きだった。 
ちょっとした軽い気持ちで子供にさしてあげた目薬が、逆にこちらが眼病になって
しまうとは・・・。 親切もままならない。
皆さん「手洗いは億劫がらずに!」とここで注意を喚起しておきたい。
特に、旅先では・・・。


 さて、こうしたハプニングで思わぬ長逗留になってしまったが、ここらで
そろそろこのグルドアラともお別れしないことには、まだこの先が長いのである。

 それにしても随分と厄介になったものである。 
なにしろ、食・住共に「無料(ただ)」なのである。
乏しい軍資金を思えば、これほど助かったことはない。
それにグルドアラの世話をするチョッキダール(彼は同時に祈祷時の太鼓の奏者
でもある)や盲目の音楽師など、また子供たちを含めここの住人たちには名残惜しい。
そのおかげで日々退屈しないどころか、ふつうの旅では味わえない日々の生活を
垣間見ることができたのであった。


 そういったフェロセプールのグルドアラであったが、いよいよインドを去ることと
なると、それまでオートバイで走り抜けてきたインド各地での思い出が走馬灯のごとく
深く、大きく胸に去来するのだった。

 そういった思いをむねに抱きつつ印パ国境に向かうのであった。


  次回からは中近東編です。 お楽しみに!

  
  グルドアラのトイレ、右にある金属の壺に水を入れ、それでお尻を洗う。
  慣れるとこれが気持ちがいい。

  
   夜は暑く、室内ではとても寝られないので、屋上で寝る。 その屋上から見た
   隣家の中庭、そこで家事をするお母さん方とひとりでに声を掛け合うようになる。
   他人の家を覗くのは楽しい。