さわやかな日曜の朝である。
しかしちょいとノドが痛い、ような気がする。痛いというかイガラっぽいというか、何かがひっかかっている感じ。こういうちょっとしたことを見逃したまま外をへらへら歩き回ったりすると、春なのに(注)風邪を引いてしまうことになりかねない。
ここは必殺「いろはでウガイ」だ。ノドの中の何者かよ、去れ。
やりかた:
人肌程度の温度のぬるま湯かお茶に塩をひとつまみ、小さじ半分程度入れて、それでウガイをする。ふつう、ウガイは「がらがらがら」とやるものだが、ここでは「いろは四十八文字」を唱えながらウガイをするのである。ノドがいろんな形に動くので微妙なところにひっかかった異物も押し出されやすいのではなかろうかと思われる。
まずは件の塩湯を一口含む。通常のウガイの場合よりは少なめ、大さじ一杯分程度。アゴを上げ背筋を伸ばし、気管入り口ギリギリのところまで水を落とすようにする。素人の場合はこの時点で既に不充分なのであって、ガラガラガラと音だけは威勢がいいもののその実、ノドの入り口付近だけでのウガイになってしまいがちである。ノドの奥、気管ギリギリまでの水の到達が成された場合、ウガイ音はむしろ小さくなり、「gorrr…」もしくは「gurrrr…」のようになるのである。
(ウガイ技に上達し、円熟味が増してくれば、さらにそこからアゴを下げる、つまり顔を真正面に向けた状態でのウガイということも可能になるのだが、この「いろはでウガイ」ではそこまでの高度な技は必要としていない。上を向いたままで結構である)
静かなるウガイをしつつ口を横に広げ、「い~」と発音する。うまくいくようなら次は舌の先端を口蓋上部に軽く押し当て、なめらかに前方に滑らせつつ口を丸く開き、「ろ~」と発音する。そして次にはもちろん「は~」「に~」と息の続く限り発音していくのだ。そしてそのまま最後の「ゑ~ひ~も~せ~す~ん~」まで続けるのだが、注意すべきは「ナ行」「マ行」、すなわちn音およびm音のごとき鼻へ抜ける音である。発音の際に水が鼻の方まで上ってくるのである。日常的に「鼻ウガイ」をしない者にとって、鼻腔への水の侵入というのは相当な恐怖感をもたらすものであり、死への恐怖すら覚えるかもしれぬ。「に~」のところ(まだたかだか四文字目である。「四」は「死」につながるなどと考えてはいけない)で鼻腔へ上る水にうろたえ水を吐き出し、洗面所の鏡やシャツあるいは配偶者の顔面などを水浸しにすることのないよう、心を落ち着けて臨んでいただきたい。特に最後の「ん~」の際、息は口からではなく全て鼻から抜ける。油断をしているとウガイの水で溺れてしまうこととなる。本末転倒である。
ところで、もちろんのこと「いろは四十八文字」を唱えることに特別な意味があるわけではないので、同様の方法であなたの好きなひとかたまりの言葉、詩や何かの歌詞などを使ってもまた結構なものである。
ただし上に書いたように、「ん」で終わるものには気をつけること。子供と一緒にウガイをしながら「ドラえもん」を歌い、親子そろって洗面所で悶え苦しむなどというのは想像するだにヤリキレナイのだ。
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(*旧ブログ2005年4月24日付より移動)