どんぽのばぶさん61~

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お話し森の山小屋で (第8稿) ~2/4~

2017-05-10 21:01:22 | ばぶさん童話
 ③ ティーパーティー 

子ども達はわくわくしながらお部屋の中に入っていきました。
ちょっとばかり小さなお部屋です。
みんながいちどに入りきれるかなぁと心配しながら入りました。
ところが不思議なことにみんな一緒に入れました。
しかも、お部屋の中はちっとも窮屈でなくて、
広すぎもせず狭すぎもせず、
なんというか『ちょうどいい広さ』なのです。
小さなテーブルを挟んでベンチが二つありました。
藤色のベンチが言いました。
「どうぞみなさん座ってください。」
みんなが一度に座れるかなぁと心配しながら座りました。
ところが不思議なことにみんな一緒に座れました。
しかもベンチはちっとも窮屈でなくて
硬すぎもせず柔らかすぎもせず
そのうえとても座り心地がいいのです。
テーブルの上には白い陶器のポットがありました。
ポットはふたをパタパタさせながら子どもたちに訊きました。
「のどの乾いている人はいますか?」
「はーい」
「はーい」
とみんな勢いよく手をあげました。
するとどうでしょう。
不思議なことにその手には
それぞれガラスのコップが握られていました。
ポットさんがちょっと胸を張っておすましで訊きました。
「何を飲みたいですか?」
お茶を飲みたい、ジュースを飲みたい、冷たいおみずがいい、
子どもたちはそれぞれに自分の好きなものを注文しました。
「はい、あなたはお茶ですね、・・・お茶は紅茶ですか緑茶ですか?
あなたはジュースですね。 
どんなジュースがいいですか?
え?『ブドウのジュース』お隣のあなたは『さくらんぼのジュース』
そしてあなたは『冷たいおみず』・・・はい解りました。」
とても不思議なポットです。
コップに注ぐ度に注文どおりの飲み物が次々と出てきます。
ガラスのコップは色とりどりの飲み物で賑やかにに輝いています。
「飲み物はいきわたりましたね。それでは皆さん さあどうぞ」
「カンパ~イ!」
ごくごくふつうの子どもたちはゴクゴク喉をうるおしました。
コップも大変不思議でした。
もっとお代わりが飲みたいなって思って
「おかわり!」って言おうとすると
コップの底から湧き出るように飲み物が増えているのです。
しかも、たっぷりお替りの欲しい子にはたっぷりと、
ちょっぴり一口分だけ欲しいという子にはちょっぴり一口分だけ
多過ぎもせず少な過ぎもせず、ぴったりなのです。
そしてそれを飲み切ると身体の中を爽やかな風が吹き抜けて
自分も風になったようないい気分でした。
「ごちそうさま」みんなコップをテーブルの上に置くと
コップはみるみる色がうすくなりポワッと見えなくなりました。
「それじゃあ、こんどはおはなしだよ。」
とテーブルさんの脚がカタリとタップダンスしました。

④ 妖精さんの背負い籠 

テーブルさんが子どもたちにききました。
「妖精さんのお話をしようか?」
「ききたい」「ききたい」
「おはなしききたい」
子ども達は目をキラキラさせて答えました。
「それでは始めようね
ようせいさんのせおいかごというお話だよ。
ある時サニー坊やが私にこんな質問をしたんだ。  
『ありがとうのことばがとどくのはなぜ?』
それはね、ありがとうの妖精さんが背中の背負い籠に
ありがとうを入れて届けに行くからだよ
『ごめんなさいのことばがとどくのはなぜ?』
それはね、ごめんなさいの妖精さんが背中の背負い籠に
ごめんなさいを入れて届けに行くからだよ
『ありがとうもごめんなさいも
ことばがとどかないときもあるよ。どうして?』
妖精さんが、ちょっとあわてんぼして
背負い籠の中にことばを入れ忘れて出かけたり
籠に入れた言葉を途中で落としたりして
籠の中身が空っぽになっていると
せっかく届けに行っても手渡せないのだよ
妖精さんの背負い籠にはふたがないんだ
だからことばをしっかり中に入れないとね
妖精さんも困っちゃうね
『せおいかごのなかにことばをしっかりいれたのに
とどかないときもあるのはなぜ?』
妖精さんはね、お家のドアや窓を
一度だけそっとノックするんだ。
けれどもね、ドアも窓も固く閉まっていると
開けてもらえないから手渡せないんだ
『どんどん・・・ってもっとつよくノックしたらきこえるよ』
そんなふうにノックしたらドアも窓も、
もっと堅く閉まっちゃうことを妖精さんは知っているんだ
外側から無理やりあけようとしてもだめなのさ
ドアも窓も内側からしか開かないんだ
だから、そっとノックするのだよ
 
『どうしてようせいさんのせおいかごにはふたがないの?
ふたがあればことばがそとにおっこちたりしないよ』
それはね、背負い籠に蓋をするとことばが腐ってしまうのだよ
蓋をしたら呼吸ができなくなるからね。
いつも新鮮な風に触れているからことばはみずみずしいのだよ。
『ようせいさんのせおいかごってこわれちゃうことがある?』
時には壊れちゃうこともあるかもしれないね。
妖精さんにとって背負い籠はとっても大切な道具なのだ。
だから妖精さんは背負い籠の手入れを毎日しているよ。
籠が壊れそうになっているのを見つけるとすぐに直して、
また使っているよ。直すのがとっても上手なんだ。 
『ようせいさんのせおいかごってどのくらいのおおきさなの?』

おおきいのもあれば、ちいさいのもあるよ。
というよりも、ことばにふさわしい大きさに
大きくもなれば小さくもなる不思議な籠だよ。
『ようせいさんのせおいかごにはことばをたくさんいれられる?』
一度にあれもこれものことばは入らない。
大抵は一つ入ると満杯だよ。
けれども妖精さんは沢山いるから大丈夫さ。
子ども達は身を乗り出して訊きました。
「ねえ、ベンチさん。たくさんってどのくらいたくさん?」
そうだなぁ、数えきれないくらい沢山いるよ。
みんなのワクワクドキドキを全部合わせたくらい沢山だよ。
子ども達はベンチから立ち上がって
「わー、すごいなぁ」って叫びました。  

お話森の山小屋で (第8稿) ~1/4~

2017-05-10 06:06:56 | ばぶさん童話
①あいことば
むかしむかし、ある国のかたすみに小さな村がありました。
その村はどこにでもあるごくごくふつうの村で、
村にはどこにでもいるごくごくふつうの子ども達が、   
ごくごくふつうの暮らしをしていました。
さてその村のとなりに大きな森がありました。
その森は不思議の森でした。
その森のまん中には小高い丘があり、
丘のてっぺんには広場がひとつありました。
その広場は不思議の広場でした。
その広場のまん中に山小屋が一軒ありました。
その山小屋は不思議の山小屋でした。
その山小屋には小さなドアがありました。
そのドアには看板がかかっていました。
その看板には不思議の文字でこう書かれていました。
「だれでもどうぞ。いつでもどうぞ。
ノックを3回してください。ドアが開きます。」
ドアの奥には小さな部屋がひとつありました。
その小さな部屋は不思議の部屋でした。
部屋の中では不思議の時間が流れていました。
部屋の扉には小さな貼り紙が不思議のピンでとめられていました。
その貼り紙には不思議の文字で「合言葉は『入れて』です。
『いいよ』と返事が聞こえたら扉を開けてください。」
と、こう書かれてありました。
さあ扉を開けたらどんな楽しいお話が待っているでしょう。

 ② 扉をあけた子どもたち 

森には素敵なこと楽しいことがいっぱいありました。
ある日、村の子ども達が8人、その森に出かけて行きました。
森の中には不思議の小道がありました。
子供たちがためらいもせずどんどん歩いて行くと
歩いていきたいその先につぎからつぎへと道ができました。
なぜってそれは不思議の小道だったからです。
その小道をどんどん行くと小高い丘が見えました。
その丘のてっぺんまで登っていくと見晴らしの良い広場に出ました。
その広場の真ん中に山小屋が一軒見えました。
子ども達は『よーい、ドン』と広場をまっすぐに突っ切りました。
息がハアハアする前にもう山小屋に到着しました。
なぜってそれは不思議の広場だったからです。
山小屋にはドアがあり看板が揺れて掛かっていました。
なぜ看板が揺れていたかというと
子ども達がみんな元気に走って来たからです。
大きな子どもも小さな子どもも
みんな一緒に声をそろえて看板の文字を読みました。
なぜ読めたのかというとその文字は不思議の文字だったからです。
「だれでもどうぞ。いつでもどうぞ。
ノックを3回してください。ドアが開きます。」
子ども達はドアをノックしました。
『トントントン』
シャラリラ シャラリロ シャラランラン
と鳴りながらドアが楽し気に開きました。
子ども達がドアの中に入っていくと
小さな部屋が一つありました。
部屋の扉には小さな貼り紙がありました。
その貼り紙は不思議のピンでとめられていました。
不思議のピンがプルプルっと小さくゆれながら言いました。 
「あいことばをどうぞ」
子ども達は声をそろえて言いました。
「い・れ・て」
すると部屋の中から
「い・い・よ」
と返事が返ってきました。
子ども達はわくわくしながら扉を開けました。