どんぽのばぶさん61~

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母の思い出

2019-08-27 13:34:36 | ばぶさん童話
おてんとうさまはおみとおし


母が子供の頃、祖父からよく聞かされてきた
言葉です。母は正直で真面目な人でした。 
何より創意工夫の人でした。
知恵の働かせ方の多くも祖父から学んだのです。
口数は少ないけど人の悪口を言わない人でした。
簡単に激高などしない穏やかな人でした。
ある時台風の大風で庭木の幹がブロック塀で
ゴリゴリ擦られたのを見て「かわいそうに」と
ボロキレを巻いた人でした。
次男が受験浪人で住み込み店員となり、
新聞配りを始めて最初の雨が降った夜明け
「この雨んなか新聞配りしてんだよぉ」と
わんわん号泣した人でした。
長男が心筋梗塞のため47歳7カ月で死んだ時
悲しみが大き過ぎて受け止め切れなかったので
葬儀の際には一粒の涙も出ませんでした。
祥月命日には欠かさず墓参りしました。
4年目の墓参りの時初めてポロポロ泣きました。
「母さん、僕らを産んでくれてありがとう。」

天寿・・・

2019-08-25 23:49:46 | 日々の暮らしの中で
天寿・・・

母が死んで2週間が経ちました。
人は生まれてきたからにはいつか死ぬのが定め。
と判っていてもそれでも訪れる『死』は遺族にとって
どのような死に方であってもやはり「突然死」ですね。
不思議です。 
「天寿」という言葉があります。
「天寿を全うする」という言葉があります。
天寿・・・

母が背中を押してくれていたのでしょうか

2019-08-18 05:02:55 | 感動のおすそ分け
母が背中を押してくれていたのでしょうか




まるで何かにとりつかれるようにして
「王様の新しい服2019」の朗読台本を書きあげたのが
先週の日曜日(8/11)の明け方です。
豆本に製本して2時間ぐらいたった時でした。
実家の妹から一本の電話「さっき母が死にました」という知らせ。
介護のパートの無い曜日にはできるだけ実家に帰って母を介護し
併せて母の面倒を見てきてくれた妹の介護疲れの慰労に家事の応援を
ささやかながらも自分なりにしてきていましたので
訃報に耳を疑うことはありませんでしたが、正直驚きました。
ともかく取り急ぎ実家に駆け付けました。

自宅のベッドで静かに息を引き取ったのです。
92歳1か月の生涯でした。
母は母らしい生涯をやり遂げたと思います。
まるで眠っているような実に穏やかな顔でした。
骨髄腫の手術を6年前に受けています。
死因は多発性骨髄腫と老衰です。

実は亡くなる前日の土曜日は迷いました。
実家に帰って介護しようかという思いと、それとも
書きかけのこの朗読台本の脚色を仕上げたいという思いも強く
どちらにしようかと迷いました。
ここ数日書きあげようと推敲を重ね、取り組んできていました。
特に先週末は書き進めるうちに勢いがついて、完成間近の予感。
日曜日(8/11)は朝の4時半に目が覚めて脚色は一気に仕上がりました。 
そして母の訃報です。
もしかしたら、母が背中を押してくれていたのかもしれません。

葬儀は家族葬で行いました。通夜は8/14でした。葬儀場に一人泊まった私は
夜中に棺の前で感謝を込めて朗読しました。
告別式は8/15でした。
朗読した豆本を棺の中にありがとうの感謝を込めて収めました。

母は穏やかな人でした。人の悪口を言わない人でした。
めったに激高するようなことのない人でした。
母さん僕たち兄妹を産んでくれてありがとう。

王様の新しい服 2019 第3回 (3/3)

2019-08-17 20:35:36 | ばぶさん童話
王様の新しい服 2019 The Emperoe`s New Suit  第3回 (3/3)


原作 ハンス・クリスチャン・アンデルセン  
朗読台本  脚色 曵田原 宏  


詐欺師はまず布をはた織り機から外すふりをしました。
そしてハサミでショキッショキッショキンと切る真似をして
糸のついていない針で 
チクチクツンツン チクチクツンツン
チクチクツンツン チクチクツンツン
縫い上げ服を完成させました。
「♪ラッパラパッパ ラッパラパッパ ラッパラパッパッパー♪
たった今、王様の新し服が出来上がりました!」
その知らせに王様と大臣全員が大広間に
ざわざわ そわそわ どきどき と集まりました。 

詐欺師はあたかも手のひらの中に服があるかのように披露しました。
「あ~皆様、まずはズボンです。」
「は~い、続きまして上着です。」
「え~最後に…」
「マントです!」
「これらの服はクモの巣よりもはるかに軽いのです。」
「まるで何も身に着けていないように感じる方も
大勢おられるでしょう。 けれども、 世にも珍しいこの服が
『特別で、価値がある』という理由がまさにここにあるのです。」
二人の詐欺師は誇らしげに宣言しました。
「なるほど。確かにその通りだ。!」
みんなは声をそろえて感心しました。
とは言っても本当のところは何も見えていません。
もともとそこには何もないのですから。
ノッポの詐欺師が言いました。
「どうか王様、ただいまお召しになっているお洋服を
お脱ぎになってくださいませんか?」
デブの詐欺師もたたみかけるように言いました。
「よろしければこの大きな鏡の前で
王様のお着替えをお手伝いさせていただきたいのです。」
王様は身も心も軽やかに うきうきと服を脱ぎました。※♪小さな喫茶店♪
タラタ タッタン タターララッタン タターララッタン タターラ上着も    
タラタ ラッタン タターラ チョッキも タターララッタン タターラスカーフも
タタラ ラターラ タッタララッタ ラッタン タターラタラ タラララベルトも
タラタ ラッタン タターララッタン タターララッタン スッポンポンのポン 
ズボンも靴下もなにもかも
ぱっぱっ ぱぱぱと脱ぎ捨てて
瞬く間にパンツ一丁になりました。 

二人の詐欺師は
あれやこれやと新しい服を着つけるふりをしました。
着替え終わると王様は あっちからもこっちからも
鏡に映る自分の姿を興味津々覗き込み
実に満足そうに大きくうなずきました。
「な な なんと美しい!……よくお似合いです、王様。」
「この世のものとは思えないほどの美しさ。」
「色合いも、模様も、言葉ではとても言い表せません。」
「まさに素晴らしい服で目がくらくらしてしまいます!」
その場にいた誰も彼もが口々に褒め讃えました。

その時パレード係の隊長がやってきて王様に言いました。
「パレードの用意が整いました。」
「うむ、予も身支度は す・べ・てぇ~え おわったずぉ~~お。
どうだぁ皆の者、この服は予に似合っておるかな?」
王様は鏡の前で
バレリーナのようにクルッと鮮やかに回って見せました。
なぜなら王様は自分の服に
見とれているふりをしなければならなかったからです。
ラッパラパッパ ラッパラパッパ ラッパラ パッパ ダー
ラッパラパッパ ラッパラパッパ ラッパラ パッパ ドォヴァー
ズンツッツッツッツッツン 
ズンツッツッツッツッツン         ※♪ボレロのリズム♪
いよいよパレードの出発です。
お付きの召使はありもしない服の裾を軽やかに持ちました。
王様はきらびやかな天蓋の下、威風堂々と行進していきました。

街の人々は通りや窓から王様を見てこんな風に叫んでいました。
「ひゃぁ新しい王様の服は、  なんて…なんて珍しいのでしょう!」
「それにあの長い裾と言ったら、本当に良くお似合いだこと」
誰も彼もが自分には新しい服が見えないということを
気づかれないようにしていました。
今の仕事は自分にはふさわしくないだとか
自分は馬鹿だとか思われたくなかったからです。
「でも、おうさま、はだかだよ」
突然、小さな子供が王様を指さして言いました。
「だって、おうさま、はだかだよ。
おなかのまわりのお肉がプルンプルンしてるし」
「なんてこった!ちょっと皆の衆聴いておくれ、
無邪気な子供の言うことなんだ。」
横にいたその子の父親が思わず叫びました。
子供の言ったその一言が街中の人々の間に
ひそひそ ざわざわ ぞわぞわぞわぁあ っと伝わっていきました。
「おいっ、おうさまははだかだって・・・よ。」
「え?王様がどうしたってぇ?」
「おうさま は・・・はだか」
「はっ・だっ・かぁあ?」
「うん。はだか!」
人々は面白がって口々に言いました。
「王様は はだかだ」
「王様は はだかだ」
「王様は はだかだ」
ついに人々は大きな声で一斉に言いました。  せ~の。
「おうさまは は だ か だ」
王様は大弱りでした。
王様だってこの時にはすでに判りきっていたのです。
みんなの言うことのほうが間違いなく正しいと。
《でも、今更パレードを止めることなどできるものか》
と、そのまま、今まで以上にもったいぶって歩き続けました。
召使は仕方なく、ありもしない裾を持ち続け
恥ずかしそうにうなだれて
王様のあとをしょぼしょぼ歩いていきました。


ふと見上げると
どこまでも青い空に白い雲が一つ、
ぽっかりと 浮かんでいました。
                       
                     (おわり)

王様の新しい服2019 第2回(2/3)

2019-08-17 00:31:57 | ばぶさん童話
王様の新しい服 2019 The Emperoe`s New Suit   第2回 (2/3)


原作 ハンス・クリスチャン・アンデルセン  
朗読台本  脚色 曵田原 宏 

 

大臣は盛んに眼鏡を動かして、
何もないはた織り機を隅から隅までじっくり見ました。
デブとノッポの詐欺師は思わずニンマリ。 口を揃えて言いました。
「そのことばをうかがえて」
「ありがたき幸せです」
「それでは、王様にもっとお解りいただく為に、
布について、さらに細かくご説明申し上げます。」
デブの詐欺師はからっぽのはた織り機の前で
滔々としゃべり始めました。
このあたりが特に色が濃いだとか薄いだとか、あのあたりは、
リズミカルな模様が二つの曲線になって愛を語り合っていますだとか。 
実に事細やかに説明するのです。
大臣は吹き出てくる額の脂汗を拭いもせず
その説明を一言も漏らさず聴き取りました。
なぜなら、お城に戻ってもう一度
全く同じことを王様に報告しなければならないからです。
もしここで一言でも聞き漏らしたり聞き違えたりしたら
《…さては大臣には布が見えなかったな…》
と王様に気づかれてしまいます。
そうなっては大変だと大臣は聴き取った説明を
最初っから最後まで丸ごと王様に報告しました。

その次の日、詐欺師たちは「材料がもっと必要です」と申し出ました。
けれど今度もやっぱり、絹糸も金の糸も一本も使わないで
みんな自分たちのカバンの中にしまい込みました。
そしてからっぽのはた織り機の前で
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と布を織るふりをし続けました。
それから間もなく王様は念の為もう一人使いを出しました。
こんどは若さバリバリの役人頭を使いに選びました。
この人も年寄りの大臣と同じくらい「正直で真面目」です。
若い役人頭に下された命令は、
『布の仕上がり具合』と『完成する日にち』を調べてくることでした。
しかし役人頭が目にしたものは、
やはり からっぽのはた織り機だけでした。
背伸びをしたり腰をかがめたり頭を左右に傾けたりして
何度も見ようとしましたが・・・、
ダメです。
どうしても空っぽにしか見えません。

デブの詐欺師は何もない布を両てのひらで掬い上げ
愛おしそうに目を潤ませうっとりと布に語り掛けます。 
「ほぉら、こちらの王様の偉さにぴったりの布でございます。
この色艶は王様の健康と長寿の証。
くっきりとした模様は王様の聡明さと潔癖さの象徴。
そよ風のようなふんわりとした肌ざわりは王様のお人柄そのもの。
・・・おや?どうなされたのです?もしかしておきに召さないとか?・・・」
《うぅ~。私は馬鹿ではない。本当は見えているはずなのだ。
これはきっと、自分にふさわしくないちっぽけな仕事ばかりを
朝から晩まで、うんざりする程させられているからこうなるのだ》
役人頭はあたかも布が見えているように胸を張って言いました。
「大変見事な布だ!
色合いも美しいし…模様も素晴らしい。
私はこれほどの布を見ることができてとても嬉しいよ!」
役人頭はお城に戻ると王様にこう報告しました。
「たいへんけっこうな 申し分のない 布 でした。」
街の人々は口を開けばその珍しい布の噂ばかりです。
話はどんどん盛り上がっていきます。
こうなっては王様も自分の目で確かめずにはいられません。
日に日にその思いは強くなる一方です。
けれども肝心の布はいつまでたっても織り上がってきません。
これ以上は一日たりとも待っていられないとばかりに王様は
65人の家来を引き連れ、
二人のずるがしこい詐欺師の仕事場に出向きました。
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お供に連れて行った家来たちの中には、一足先に布を見に行かされた
年寄りの大臣と役人頭も含まれていました。
年寄りの大臣ははた織り機を指さすと
眼鏡をずり上げ顔を真っ赤にして声を張り上げ言いました。
「さぁ皆さん、どうです、よくご覧ください。
我らが王様にぴったりの、たいそう立派な布でございます。」
役人頭も胸を張り反身になって真顔で言いました。
「王様、いかがなものでしょう。
この布の色合いや模様をお気に召しましたでしょうか?」
二人ともほかの家来たちには「当然布が見えている」と
思い込んでいましたので真剣に言いました。
ところが王様は心の中で叫びました。
《なんだぁこれは?何もないじゃないか!》
ああ——、これこそが王様の一番恐れていたことでした。 
自分は王様にふさわしくないのだ。
明らかに自分は馬鹿なのだ。もう絶対間違いない。
王様が王様でいられなくなるなんてとても耐えられません。
激しく思い込むと途端に膝がガクガク震えそうになりました。
「ふむ、まさしくそうであるな。
この布が素晴らしいのは予も認めるところであるぞ。うふ~む」
布が見えていないということを知られたくなかったので、
眩しそうに目を細め、いかにも満足そうに何度も頷いて
からっぽのはた織り機を眺めました。
家来たちは王様が見ているよりももっと熱心に見ました。
けれどもどう頑張っても何も見えてはきません。
しばらく続いた沈黙にたまりかねた家来の一人が
「やんや やんや、おみごとです」 
と叫びました。
その声をきっかけに他の家来たちも口々に
「素晴らしい」 「これは美しい」 「鮮やかなものです」
「王様この布で作った立派な服を、近々行われる
パレードの時にお召しになっては如何でしょう。」
「これこそは王様にふさわしい品格です!」

王様は、二人の詐欺師に『王国特別機織り士』の称号を与え、
沢山の褒美を与えることを約束し、お城に還っていきました。

いよいよパレードの行われる前の晩、
詐欺師たちはさも熱心に働き続けているように見せようと、
ロウソクを二十八本も灯しました。
街の人々は詐欺師の仕事場を窓越しに覗いて、
王様の新しい服を仕上げる為に彼らはあんなにも忙しいのだ、
と思わずにはいられませんでした。
                        (つづく)