タクシードライバー 『こころ日記』

どこでどう間違えたのかタクシードライバーに転職。ならば目指すは日本一のタクシードライバー。今後の活躍に乞うご期待!

憐れ親父か!

2014-05-04 19:54:11 | 営業報告




平成26年5月2日午後2時37分。
某市立病院から乗車した60代初老男性の話しです。

女性看護士に車いすに引かれタクシー乗り場まで来られ乗車した初老男性。
このような場面はよくあることです。

しかし、本件は少しばかり違っていました。
それは看護士 の後に家族と思われる男女二人が付いてきているのです。

一人は息子と思われる30代男性、もう一人は初老男性の妻とも思われる中年女性。
女性看護士の手助けでようやく乗車できた初老男性。

その間、家族と思われる男女二人は“我関せず”他人事のように手を貸すどころか、
談笑しているのです。

当然、家族の方も同乗するものと思っていた私です。
しかし、その気配はまったくありません。

そこで、私は家族二人に不安げに尋ねたのです。
『家族の方はお乗りしないのですか?、お一人で大丈夫なのですか?』

すると、妻と思われる中年女性が軽い口調で、
『大丈夫でよ!』と。

私は不安ながらも、家族の方が『大丈夫!』と言うのだからと初老男性に行先を確認した。
しかし、ろれつが回らないのかよく聞き取れない。

何度も聞き直すが、私には聞き取れなかった。
その間も、家族と思われる男女二人は看護士と談笑している。

私は憮然と、家族と思われる二人に行先を確認すると、
息子と思われる30代男性が中年女性に向かって、
『どうすんだよ、一緒に付いて行くのかよ?』

中年女性は、『嫌よ! 私は自転車で来ているから、一人で大丈夫よ!』
『運転手さん、隣町のあの辺まで行ってちょうだい。そこまで行けばいいから』だと。

こんないい加減な案内があるものか! この家族はどうなっているのか??
もう一度、乗車している初老男性に確認すると、そこまで行ってくれればあとは案内すると。

私は大きな不安を抱えながらも車を発進させた。
本来ならば、行先がハッキリと分からない場合は乗車をお断りしてもいいのだが、、、。

車を発進させてすぐ気付いたのが、初老男性の体臭。
何日もお風呂に入っていないかのような悪臭。

さすがの私も悪臭に耐えられず運手席の窓を半開させてしまった。
初老男性は車中、ずーっと無言。

私は家族と思われる男女二人の無慈悲な態度に怒りを通り越し
悲しみを覚えた。

無言だった初老男性が目的近くに来た時ボソッと、
『運転手さん、悪いけど降りる時に肩を貸して欲しい』と力ない声で懇願してきた。

私は、その言葉を聞いて悲しみから怒りに感情が変わったのがすぐに分かった。
『自力で歩けないのに何故、家族の方は同乗しなかったのですか?』

初老男性は無言であった。
私もそれ以上、言葉にするのはできなかった。

初老男性の自宅に着き、言われる通り肩や手を貸し何とか玄関先までたどり着く。
玄関回りの雑草はのび放題、障子は破れ玄関のドアを開けると・・・悪臭、、、。

どんな経緯があったのか知らないが、自力で歩けない者を
タクシー運転手に何の説明もせずに放り投げた家族と思われる男女二人に、

とても虚しい怒りを覚えた。
その後の営業は、すべてが空回りしてしまった。