最近、ストーカーによる悲惨な事件が続出している。
ヤクザや暴力団などの反社会的集団の犯行以上の目を覆いたくなるような事件が続いている。
そんな悲惨な事件をテレビで見ていた時ふと、1年以上の前のことが頭をよぎった。
それは、夏の早朝であった。迎車で呼ばれたのが個人宅ではなく総合庁舎の前。
当然、庁舎がやっている時間帯ではない。少し変な感じはしたが、お客様は色々様々である。
あまり考え込まず迎車地に向かった。
待っていたのは、30代の半ばの男性。
どう見ても会社員風には見えない、いわゆる遊び人風のいでたちであった。
我々タクシードライバーにしてみれば、遊び人風であれ会社員風であれ、
お客様には変わりない。目的地まで安全・確実に送り届けるだけである。
乗車直後に、その遊び人風の男が言った。
『運転手さん、仕事は何時までだい?』
私はこの唐突もない質問に、
『どうしてですか?私の帰り時間に何か意味でも?』
すると、遊び人風の男は言葉を続けた。
『実は、人を探している。それで少し時間が必要なんだ。』
この遊び人風の男は、タクシーの勤務体系をよく知っている。私は答えた。
『あと1時間位であれば帰庫に間に合うので、それまでなら。』
男は(←お客様に対して非礼な言葉をご理解を)、安堵の表情を浮かべ私に語りかけた。
『親から預かっている20代前半の女の子が家から無断で出て行ったしまった。
お金も持っていないし、多分裸足で出て行ったようなんだ。早急に探し出さないと。』
私は男の話に違和感を感じ、素朴な疑問を尋ねた。
『何故、お金もなく裸足で家を出たのですかね?』
男は意外にも率直に答えてくれた。
『半年前にも今日と同じように家出したことがあった。
その時は、実家に戻っていたので無事引き取ることができた。』
その実家とは、20キロ以上も離れた場所である。
どうしても不可解である。裸足で若い女の子が歩ける距離ではない。まして所持金もなく。
さらに、どうして親が、こんな遊び人風の男に実の娘を預からせたのか?
私は事件性を感じ、男に言った。
『お客様が探している女性に何かがあったら大変です。警察にお願いしたらどうですか?』
すると男は・・・。 出勤時間がきました。恐縮ですがこの続きは明日ということで。