タクシードライバー 『こころ日記』

どこでどう間違えたのかタクシードライバーに転職。ならば目指すは日本一のタクシードライバー。今後の活躍に乞うご期待!

“小便坊主” ← 遂に完成!最初よりお読み下さい・・・ペコリ

2010-03-30 14:02:41 | 営業報告

お坊さんといえば仏の道に入り、人生の悟りを説く崇高な存在と
思っていました・・・。

でも、その思いは間違っていたようです。
例外中の例外かも知れませんが、我が目を疑うような光景が・・・

夕方、迎車地のコンビニでお客様をお待ちしていた時のお話しです。
5分過ぎてもお客様が現れず、店内にもお客様らしき人もおらず、

駐車場には浮浪者(←不適切な表現?)らしき男性以外には誰も
いません。これはキャンセルだなと思い会社へ連絡しようとした時、

その薄汚れた服、ボサボサ頭、無精ヒゲを生やした浮浪者らしき
男性がこちらに向って来るではないか! まさか!!!!!???

そうです、 その “まさか” が見事に的中してしまったのです。
その時の私の気持ちを正直に申し上げますと、
こんな感じです ⇒ このまま乗せず、逃げたーい!

その薄汚れたボサボサ頭で無精ヒゲが似合わない中年男が、
「お待たせして申し訳ない、迎車依頼した○○です」

「近くて申し訳ないけど、シダックス(カラオケ)までお願いします」
プロである私は、「ガッテンですお客様」と平静を装い車を発進させた。

その時の私の本音を申し上げますと ↓
「近場でよかった、ホッ・・・。   でも、所持金は大丈夫??」

車中、その薄汚れたボサボサ頭で無精ヒゲの似合わない中年男が
ボソボソと、「私はこう見えても仏の道を歩む者なのです」と。

私は返す言葉もなく、「はぁー、そうですか。それはそれは・・・」
その時の私の本音 ⇒ 「ほんまかいな、それよりも何か嫌な臭い?」

確かに鼻をつく嫌な臭い。でもワンメーターの距離だ、我慢ガマン。
しかし、その我慢が裏目に出るとは、あ~ぁ人生無情の情けなさ・・・。

その薄汚れたボサボサ頭で無精ヒゲの似合わないお坊さんが、
「ちょっと運転手さん私の話を聞いてください」とボソボソ言うのです。

当然、お客様の要望には極力お応えするのがサービス業の基本と
心得ている私は、「どうぞ、心行くまでお話ください」とセオリー通りに。

その薄汚れたボサボサ頭で無精ヒゲの似合わないお坊さんのお話しを
要約すると次の通りです。

住職の次男として生まれたボサボサ男は、当然のごとく幼少の頃より
仏の道を歩まされた。それも勉強も運動も優秀な長男と共に・・・。

常にシャキシャキ長男と比較されたボサボサ次男。
劣等感という言葉はボサボサ男のためにあったように思える幼少期だった。

そんなこんなで、常に脚光を浴びる長男と相反する人生を歩むボサボサ次男。
ボサボサ次男の心の中は、劣等感という消極的な気持ちで充満している。

そのためか、ボサボサ次男は猫背で青白い顔をしている。
そんな勉強も運動も苦手なボ男(←ボサボサ次男の略です)でもお坊さんに。

当然ながら、ボ男は恋をしたことがありません。決して女性が嫌いなわけでは
ないのですが、劣等感の塊りが女性との接点を遮断しているとボ男は言うのです。

ボ男から出てくる言葉は、愚痴と不平不満のオンパレードでございます。
その原因は、親であり長兄であり、そして世間だと言うのです。

ボ男が32歳のときに住職であった父親が他界した。当然のごとく長兄が父親の
跡を継ぎ住職となった。ボ男は世間一般の仕事に就く勇気も自信もなく長兄の

お手伝いという形で、そのまま長男家族と実家に住むことになったと言う。
それが、ボ男の人生を狂わすことになるとは夢にも思っていなかったと・・・。

長兄がまだ健在で住職として頑張っていた時は、どんな愚弟の俺でも兄弟は
兄弟ということで長兄は何かと守ってくれたと言う。特に義姉からは・・・。

その長兄がボ男が51歳の時に、父と同じ肝硬変で逝ってしまった。
それからである、我が人一倍強かった義姉からの嫌がらせがエスカレートしたのは。

実家から追い出され住む家が無くしたボ男は実家の物置を寝所にした。
当然、お風呂に入ることも許されず水道水で体を拭く程度、それも1週間に一度。

お寺や実家の草むしりや掃除などの報酬として、義姉から不定期に500円程度の
お金をもらう生活が始まったと言う。

ボ男はその500円を食費分(と言ってもコンビニで値引きのおにぎり)の残りを
少しづつ貯めて、安居酒屋で一杯飲むのが唯一の楽しみだと言う。

ボ男は酒は好きだが、元々強くはなく少しの酒でも酔っ払ってしまうと言う。
そして致命的なことにボ男は酒乱だったのである。

酔っては居酒屋の客や店主と喧嘩三昧。酒と喧嘩に弱いボ男はいつもボコボコ。
ボサボサ頭にボコボコ顔のボ男のもう一つの楽しみがカラオケ。

酒も喧嘩も頭も弱いボ男が唯一自慢できるのが歌だと言う。
ボコボコされた日は、決まってカラオケで自分の歌でを自分を慰めるのだと。

そうです、今日も居酒屋の客と喧嘩になりボコボコにされ店からつまみ出され、
慰めのカラオケに行くためにタクシーを呼んだのである。

その呼ばれたタクシードライバーが私だったのであります。幸か不幸か???
そんなボ男の生い立ちを無理やり聴かされ(←失言)、ようやくカラオケに到着。

料金は980円。私がボ男(←これまた失礼しましたお客様に対して)様に、
料金を告げますと、ボ男様が汚い(←失言)ショルダーバックの中をゴソゴソと。

私は早く嫌な臭いがするボ男様を下車させ、嫌臭から開放されたかったのです。
しかし、ボ男様はまだバックの中をゴソゴソしながらブツブツ言うのです。

『オカシイな・・・お金がないぞ・・・、あっ、そうだ盗まれたんだあの店で・・・』

ボ男様は、ブツブツゴソゴソと薄汚れたバックの中を一所懸命(←もしかしてフリ?)
お金を探しているのです。私の心情も知らずブツブツゴソゴソと・・・。

さすがの仏の私もイライラと異臭からの脱出心で、
『あのー、本当にお金ないのですか? 盗まれたっていうの本当ですか?』

この私の言葉にボ男様はぶ然と、
『とんでもない! 確かにあったんですよ、バックの中に。』

このボ男様と言い争っても何の価値も解決にもならずと判断、
『ハィハィ、それでバックの中にはお幾らあるのですか?』 と解決策へ。

ボ男様は、『全部で630円あります、残りは必ずお支払います。
なんなら、この数珠を担保にしてください。』
 と宣ふ(のたまう)のです。

数珠(じゅず)といえばお坊さんの大事な大事な無くてはならない商売道具。
それをたった350円の借金の担保にするとは・・・。いやはや、呆れ果てたクソ坊主!
何度も言いますが、仏の私もこれにはムッとひと言!
『さすがに数珠はお預かり出来かねます。数珠はお客様の大事な商売道具であり、
お坊さんの魂ではありませんか。そんな大事な数珠を預かっては罰が当たります。
でも、残額は必ず返金してくださいね。期待しないで待ってますから』
 とチクリ。

どっちが坊さんなのかわからなくなってしまうお客様とタクシードライバーとのやり取り。
いずれにしても、そんなことはどうでも良いことで早くボ男様を下車させることが
今の私にとって最重要課題なのである。 しかし、どうしても気になるのが後部座席の異臭。

ボ男様から630円受ける時にチラッと見てしまったのです・・・、ボ男様の股間を!
ちょうど“社会の窓”のチャック周辺が濡れているのをハッキリと見てしまったのです。
私はまさかと思いながらもボ男様に躊躇(ちゅうちょ)することなく尋ねました。
『あのー、濡れていますが・・・、大丈夫ですか?』

すると、ボ男様は平然と答えるのです。
『これね、小便漏らしたの。でも大丈夫、座席シートは染みてないから』

おいおいー! 冗談じゃないぞ! このクソ坊主!(←失言だけど本心)
この異臭の原因は、お前(←お客様に対して失言だけど本心)の小便だったのか!
こうなったら、一刻も早くこのクソ坊主を追い出すことが大優先事項だ!
『あのー、お客様。次の予約が入っていますので速やかに降りていただけますか』
こうなったら嘘も方便じゃい!

やっとのことで小便垂れ坊主のお客様を下車せせることに成功したのですが、
あの嫌な異臭は残ったまま・・・。
シーツを取替え消臭剤を吹きかけるも小便臭は消えません。
そんなこんなで2時間ほど営業はできませんでした。(弁償しろー、クソ坊主め!)

ボ男様のおかげで、その日の売上は散々たるものでした・・・本当にガックリ。
当然のことながら残金350円返金のことなんか期待すること自体愚かなことと
思いつつ、重い足取りで帰路に着くのでした。(←実際は車で帰ったのですが)

      ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

それから一週間後の点呼時。(完全に小便坊主のことを忘れていました)
私の乗車袋(日報、乗車証等が入っている袋)の上に980円のレシートと
350円の硬貨が置いてあったのです。

読者の皆さま、その時の私の気持ちが分かりますか?

あの憎き小便坊主様のお顔が仏様に思えたのです。
たった350円という小金を1週間かけて作って返金してくれたボ男様の誠意、
確かに受け止めました!合掌




読者の皆さまへ、
本当に永らくお待たせしました。言い訳三昧で根性なしの私のこと、
時間がないとか忙しいとか眠たいとかの理由で、読者の皆さまに多大なご迷惑を
おかけしました。何っ、ちっとも迷惑なんて思っちゃいないって!もともと期待なんか
していないし、暇つぶしに読む程度だから・・・。 あ~ぁ、そうなんですか。ショボン

何はさておき、今回の汚点を猛省しまして次回からは記事は一気に書き上げ、
ブログ更新は少なくても週に2回を目標にします。
そういう訳(←さっそく言い訳)ですので、
今後とも輪太郎のタクシードライバー“こころ日記”をよろしくお願い申し上げます。
                              ぺこり   輪太郎