本能寺の変 「明智憲三郎的世界 天下布文!」

『本能寺の変 431年目の真実』著者の公式ブログです。
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「セクシー田中さん」原作者の自死に思う

2024年02月04日 | このブログのガイド
 「セクシー田中さん」の漫画原作者芦原妃名子さんの自死には心が痛みます。私も自分の著書を原作としてコミックを書いていただいているからです。原作を使って二次作品を描いた作家や脚本家と原作者の間の確執は2016年に起きた「土屋アンナ事件」など、しばしば発生しています。
 私も出版社から「あなたの著書を原作としてコミックを出版したい」とお話をいただいた際には、このことをとても心配しました。私もコミックの作者もお互いに表現者なので、どうしても齟齬が起きると思ったからです。出版社からはコミックの出版前に必ずチェックを受けるなどの条件を提示いただきましたが、月刊誌掲載なので、毎月そのような手続きを踏んで調整していくのは恐らく日程的に現実的ではないと考えました。芦原さんもテレビ番組の脚本に加筆・修正を加えていたようですが、それでも思い通りにはならなかったようです。
 そこで、私は2つの条件の順守だけをお願いして、一切コミックの原稿には口を出さないことにしました。それが下記の条件です。
条件1:私の見出した歴史の真実は曲げないこと。
条件2:その真実の前後をつなぐ話はコミック作家の自由な創作に任せる。ただし、通説となっている軍記物の話は使わない。

 コミック作家の藤堂裕先生はこの条件をしっかり守ってくださっただけでなく、自ら研究を深めて、実に素晴らしいコミックを書いてくださいました。このような漫画家に巡り合えたことは、ただただ幸運と言うしかありません。藤堂先生の私の原作著作への理解力の深さがあったればこそのことと感謝しています。。
 こうして私は自死を免れましたので藤堂先生は私の命の恩人です。もし、運悪く無理解な作家に巡り合ってしまっていたら?と考えるとぞっとします。正に天国と地獄です。
 こうして『信長を殺した男』には印象深い数々の名シーンが生まれました。
 光秀が信長に初めて会う場面では、麒麟の化身の信長が現れるシーン。
 戦勝祝いの日に信長が庭にたたずむ光秀に「何をしている?」と問うと、光秀は「戦をしております」と答える信長と光秀の最初のからみのシーン。など、など。

 結局、この問題は原作者と二次制作者との信頼感次第に思えます。
 私の場合は拙著出版直後に「お前の本を小説にしてやる」と言ってきた友人(脚本家)がいました。出版前から私の出版に協力してくれた友人なのでむげに断るわけにもいかず、何とかしたいと思いましたが、私が本を書くにあたって「歴史捜査などはどうでもよい、子孫が書いた本ということだけで売れる」と言っていた人物なので、私の歴史捜査の真髄を理解してはいないだろうという危惧がありました。
 そのため、私も警戒して、後々問題が起きないようにあれこれ調整していたら、そのうちに「面倒な話をするなら俺は降りる」と勝手に降りてしまいました。
彼の脚本家としての自尊心をいたく傷付けてしまったようです。でも、おかげで助かりました。そのまま書いてもらっていたら、多分後々抜き差しならない事態に陥っていたに違いありません。
 突き詰めると藤堂先生とこの友人の違いは原作に寄り添って、原作をどこまで深く理解しているかの違いだったと思います。このような条件のそろった二次制作者に巡り合えることは非常に稀なことだと思わざるを得ません。今回の「セクシー田中さん」のような問題は今後もしばしば起きることでしょう。
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