Akatsuki庵

日々と向き合って

大西浄雪と奥平了保

2014年10月04日 06時05分51秒 | 美術館・博物館etc.
★大西清右衛門美術館 サイト
 平成26年秋季企画展『十代浄雪と奥平了保』
   ※12月23日(祝・火)まで

奥平了保は浄清の次に好き
だけど、浄雪の弟だったとは知らなかったなぁ。

浄雪は1777年~1852年。
子どもの頃に天明の大火に遭い、文化文政年間に活躍。
41歳で剃髪し「浄雪」となる。
幕末に入るちょっと前までの江戸後期を生きた。

了保は生年は不詳。兄の浄雪に少し先立つこと嘉永5年2月26日に没す。
(浄雪は同じ年の11月18日に没す)

2人を語る前に父親の九代浄元、その前の八代浄本、
さらにその先代の七代浄玄との関係を理解する必要がある。

兄弟の父親はもとは信州飯田出身。名を奥平佐兵衛といった。
京都に出てきて、七代浄玄に入門。

浄玄を助け、師亡き後は浄玄の実子で八代を継いだ浄本と補佐した。
年も近かったようだ。(浄本の方が2つ上)

ところが、浄本は後をついでから間もなく(=2年くらいか)39歳の若さで亡くなってしまう。

佐兵衛は浄本の養子・清吉を盛り立てようとするが、
なぜか清吉は家を出てしまう。

そこで、自ら九代めを襲名することになった。
37歳の時である。

つまり、浄雪は生まれてから物心つくまで奥平姓だったわけで、
父親が主家に入る形で「大西」姓となったことから、
長男として大西家を継ぐことになり、
弟の了保が奥平家を継ぐことになったわけ。

たぶん、同じ屋根の下か近所で助け合って茶釜製作にいそしんだことが想像される。

了保が千家家元の出入りとなるるよう奔走とした文書も残っている。

もしかすると、浄雪は才能的にが弟の方が自分よりも優れていると感じていたのかもしれない。

表千家の了々斎から贈られたという竹茶杓「伯夷」はそれを物語るような。
ちなみに了保には竹茶杓「叔斉」が贈られたという。
中国の周王朝時代の兄弟に由来する銘が兄弟のありようを表しているのかも。

そんな予備知識を頭に入れながら、展示されている茶釜を鑑賞すると面白い。

二口釜は浄雪の代表作。
何度か拝見済みだけど、片方には湯、片方にはお燗用だと思っていた。

改めて説明文を読み返すと名水の飲み比べやお菓子を蒸す用途にも使えるとのこと。

なるほど。
多機能釜!

浄雪は「写し」釜も多く手がけたようだ。

残雪釜は与え次郎の大尻張釜の写し。
万代屋手取釜(=口がついた薬缶みたいな茶釜)は利休が女婿の万代屋に贈った与次郎作の釜を本歌とするという。

同じように了保も「写し」釜を作っている。
責紐釜。ただし蓋の細工が細かい。なんと、これは浄元が如心斎に託された古鏡を蓋にあつらえたもの。

蒲団釜も表千家が所蔵する与次郎作・利休好の釜の「写し」とのこと。
修繕した羽落ちの後も再現されている。

九代浄元作の鉄道安風炉と了保作の平べったい刷毛目釜の取り合わせはいい感じ。

ほかにも旭釜や鶴首釜など優雅なフォルムの釜はさすが。

浄雪も鶴亀青海波地文丸釜はとても雅。
鯉地文達磨釜も。
茄子ノ釜もステキ。(鐶付がナス)


浄雪はいろいろな名物釜を見て歩いては記録したそうで、
「名物釜由緒聞伝控」という文書も残している。

けっこうな量の文書なので、ぜひ現代語訳して出版してほしい。

十代浄雪の後を継いだのは森家から養子に入った十一代浄寿。
肩衝透木釜と鉄格子風炉。

こうしてみると、浄寿が活躍したのは幕末から明治維新にかけての激動の時代。
そういった背景もあるのかな。

そして、最後に了保の御所車風炉。
こちらのは何度も拝見しているけど、
野村美術館で見た翌日の再見だったので、
より細かく拝見できた。

野村美術館のよりも細工が細かいし、より優雅。

ただ、茶釜がない。
以前から「この風炉にはどんな茶釜が合わせられていたのかな」と不思議だった。

野村美術館の方は茶釜が載っていたこともあり、
実は大西さんのほうにもあるのかも、、、、

と思って、帰り際に学芸員さんに質問してみた。

「当館にはこの風炉に合う釜は探しているんですけど、未だ見つかっていないのです」
とのこと。

ちなみに、「ふら~り美術館」の関係もあるのか、今回の展示品を照合して、
野村美術館の学芸員さんと「同じ風炉があるなんて」と感動したとのこと。

やっぱり、あの御所車風炉は目玉なのねと嬉しかったりして。


楽家と違い、なかなか頭に入らない大西家の歴代。

1年1回、ある時代のみを取り上げたテーマの展覧会は本当におもしろい。

今のところは点と点だけど、それが線につながりつつある手ごたえを感じる。





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