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ちくわの夜明け

アウトサイダーアート展に行ってきた

2010-09-16 04:42:00 | 映画制作
先日、根津のギャラリーTENにて開催された「獄中画の世界-25人のアウトサイダーアート展」に行ってきました。

アウトサイダーアートっていうのはいわゆる山下清画伯とかそういった障害者のアート一般のことを指すそうです。
どっかで読んだことがあるのですが、ある障害者が長年にわたって独自の世界の絵物語を、誰にも発表せずえんえんと創り上げていたそうです。つまりそういった本来の意味での芸術、創造行為に則したもの。

それと同じ意味で言えば獄中者が描いた絵もそれと同じ世界である、と。ここらへんゲージツを理解してないわたしには、難しくてよく分からないのですが、だいたい言わんとしていることは分かるような気がするようなそんな秋の気配。

簡単に言えば何にも誰にも影響を受けずに、幼児が画用紙いっぱいに想像力をはたらかせて描くイキイキと描いたかのような絵、そういったものに宿る作品のことかと思います。


以下がそんな作品たち。


反日武装戦線の荒井まり子さんによる絵。

元日本赤軍最高指導者・重信房子さんによる絵。

日本赤軍に合流、後にレバノンにて逮捕された足立監督による絵。

連合赤軍・永田洋子さんによる絵。

発表された当時から永田洋子さんの絵は「あんな女が少女漫画みたいな絵を」と言われていたようですが、同じ連合赤軍の植垣さんからの助言「漫画の模写でもかまわないんだ」という言葉に応えるかたちで描き始めた絵が、彼女の絵の始まりだったようです。
まさしく「絵」なのに、フキダシで台詞が書いてあったりします。

この日、ギャラリーではトークショーが行われ、連合赤軍の植垣康博さん、反日武装戦線“さそり”の宇賀神寿一さん、足立監督、さらに飛び入りで(ご本人はお客として来たつもりだったらしいですが)一水会顧問・鈴木邦男さんも参加。
獄中で描く絵をそれぞれの視点から語ってくれました。

植垣康博さん

描く権利をいかにして獄中からつかむか、という内容。「自著の挿絵」という口実からどんどん権利を広げていった。ボールペンを手に入れるまで一年半かかった、とのこと。
何かの時に描いた絵があまりにデキがよく、捨てるのはもったいない、と言われその絵は今でも甲府刑務所に飾ってあるとか。
文化的なことをできるかできないかで、獄中は大きく変わってくる。自分にとって絵は大きな存在だった、とのこと。ちなみに今はもう描けないらしい。

余談ですが・・・イブニングにて連載中の山本直樹先生による連合赤軍事件をモチーフにした漫画『レッド』について聞いたところ、あれは良く出来ている、とほめていました。ちなみに植垣さんがモデルのキャラクターは主人公格。もうひとりの主人公格である永田洋子さんについて。「あんなに可愛らしい人だったんですか?」「あそこまで可愛くはないけど、普通の、頑張り屋の女の子だったよ」と。


足立監督

レバノン・ルミエ刑務所でのこと。
基本的に第三世界の刑務所はどこも同じで、ご飯は朝にパンとスープしか出なく、差し入れなしでは生きていけない。そのため身寄りのない囚人は金持ちの下男になる。
そこで刑務所内の通貨であるタバコを手に入れ、売店に卸して代償としてサンドイッチをもらってしのぐ。
獄中ではホモ事件が一番罪が重かった。フルーツの香りですら性浴を刺激した。
監督自身は針、灸を覚えていたため、最終的には刑務所の中を自由に動き回れる特権的な身分となった。


鈴木邦男さん

聞き役に徹していました。
監督との会話。
監督「アメリカ行けるんだ?」
鈴木さん「行けますよ」
監督「そうか、平和な人なんだなあ」


この後懇親会が開かれ、酒などを飲みながらゲストと出席者の交流の場がもたれました。
中には元オウムの荒木さんの姿も。
わたしは“さそり”の宇賀神さんと約3年ぶりに再開。前回お会いした時の不勉強をお詫びし、改めて撮影ではなくともお話を聞かせてもらいたい旨伝え、了承していただく。


さて。
書き物にしても、絵にしてもそうですが、獄中では感覚が研ぎ澄まされるようで・・・
最近取材や下調べのために読む本がことごとく獄中で書かれたものだったのですが、どれも「よくこんな細かいこと書けるなあ」と思わせるものばかりでした。
元死刑囚の永山則夫さんも、自殺した一水会の見沢知廉さんも獄中受賞しておりますように、獄中という環境は「自分と向き合う」にはもってこいの場所なのかもしれません。

閉鎖された状況から精神の開放を力強く懇願する魂の叫びが、そういった作品を生み出す源泉となっているのでしょうか。

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5 コメント

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特別対談 (ギャラリーTEN)
2010-09-23 13:29:43
ギャラリーTENの松橋です。
特別対談に参加していただきありがとうございます。
こちらのHPがすばらしいので、リンクをはらせていただきました。
http://blogs.dion.ne.jp/blogten/archives/9635830.html
25人のアウトサイダーによる獄中画の世界 下部の特別対談部分です。
今後ともよろしくお願いします。
返信する
Unknown (赤目)
2010-09-23 18:08:48
ギャラリーTEN松橋様

リンクご報告の件、ご丁寧にありがとうございます。
また、会そのものも大変勉強になり、楽しませていただきました。
お店でのご丁寧な対応にも感謝しております。

また是非お邪魔させていただきます。
返信する
Unknown (Unknown)
2010-09-26 18:36:27
鈴木邦男さんってこの手のイベントには必ず顔を出しますね、
マメな方なんですねぇ。
そして荒井まり子さんと言えばあの絵ですよねw
ボクが思うに永田さんの絵の少女チックさは、逮捕されてから時が止まってしまっているように思うのです。
要するに運動に入る前の少女時代の画風がそのまま描かれてるといいますか。
ああ、でも植垣さんの方が若く逮捕されたわけだから単にただの少女チックなだけかwww

『レッド』は本当によく描かれてると思います。
キャラ分けがもうちょいわかりやすいといいんですけど(笑
永田さんって実際は「鬼ババ」「かわいい人」どっちだったんでしょうね。
どっちにしても本来あまり前に出るべき人ではなかった気がします今更ですが。
返信する
 (メル斗)
2010-09-26 18:51:01
ああ、名前忘れちゃいました
さっきアイスコーシー溢しちゃったからだな。
返信する
Unknown (赤目)
2010-09-28 02:46:07
そうですねえ。僕もちょっとびっくりしました。ゲストで呼ばれてたわけでもなかったので。

荒井まり子さんの絵はすごくほのぼのとしていて、人柄があらわれていますよね。実際お会いしたときも、ほんわかとした可愛らしい感じの方でした。

永田さんの本を読むと、芸術とかそういったものが人格形成に影響するということを全く意識していなかったみたいですね。なので興味もなかったのでしょうか。
実際はどうなのか、もう確かめる手立てもなく・・・今は昏睡状態が続いているようですね。
レッドを読むと切なくなってきます。

しかし『レッド』は確かに「えーと、この人誰だっけ。実際は誰にあたるんだっけ・・・」と頭がこんがらがってきますねw

アイスコーシーじゅるじゅる
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