先日、ご縁があって
月蝕歌劇団『英雄伝説 馬賊・矢吹丈 ―決闘白夜オーロラ篇―』という演劇を観にいきました。
お芝居とか昔は付き合いでよく行ってたのですが、そういうの行かなくなって久しかったので数年ぶりでありました。
内容はこんな感じ。以下、HPから転載。
矢吹丈は、リングで死なず満州に行き馬賊になったという噂は本当か?
英雄が死んだあとには伝説が噂となって生まれる
噂の真実を求め、少年とヒロインが中国をさまよう
メフィストもどきの詩人の目的は?
馬賊・片目のハイエナの実体は?
高取英が学生時代に書いた戯曲第2作
月蝕歌劇団の源流
芝居砦・満天星にて 上演!
月蝕歌劇団って知ってはいたんですよね。
むかーーーしアックスというガロの後継のような漫画誌を読んでたのですが、コラムに載ってた。
『ウテナ』ってのが時代を感じさせます。
ちなみになんでこの号のアックスを後生大事に持っているかというと、東陽片岡大センセーの特集だったからであります。
豪華付録として山下さん(独身中年男性)の電動フグ使用ピンナップという誰も得しない絵がはさみ込まれておりました。
さて。
「ご縁があって」のご縁とは、さる12月4日新宿ロフトにて行われた『渚ようこリサイタル2014<新宿アウトロウショー~五悪人色不異空篇>』内で公開された足立正生監督による渚ようこさん新曲『ガセネタの荒野』PVの撮影(ドキュメント映画カメラマンの山内大堂さんも参加)と編集を担当させていただき……
そのPVに月蝕歌劇団の方々が出演されていたのでした。
特に出演と制作進行を兼任した友利栄太郎さんのお誘いによるところが大きく、この機会に1回は観に行くべきだと思ったのであります。
当日。
入口が非常に分かり辛くどこから入れば良いのか分からない。というか、普通のボロいマンションの地下が劇場なのでなお分からない。
すると、入口付近と思われる階段に黒猫が。
「ニャーーーン!」
あ、すごい。誘っている。ここだこの建物に間違いない。さすが謎めいたアングラな感じのする月蝕歌劇団だぜすごい!と思って入ってみたらぜんぜん違って隣の建物が正解でした。
黒猫は普通の野良猫でした。ナデナデ。
劇場はとても雰囲気のある地下の一室で、特殊なバーかスナックのようでした。
あとなんか尿くさかった。
内容は……てっきり、ものすごく前衛的で高尚な、もしかしたら暗黒舞踏的なあれだったらどうしようと恐れつつ観たのですが、
普通に分かりやすいお話でした。
面白かったです。
劇団員に美人が多いのもたいへん良かった。
話を戻しますが、今回のPV撮影で新宿のアングラ界隈の方々とご一緒できたのは自分にとってとても刺激になりました。
新宿を中心としたアングラ文化の歴史は、足立監督の『映画/革命』という本で知りました。いわゆる現代の『サブカル』の源流のひとつとでも言うのか。
もはやアングラとサブカルは別で、アングラはアングラでたくましく別のものとして生きているし、進化しているんだな、と思いました。
そう言えば今回の演劇に「永山則夫」というキーワードが出てきた。
永山則夫とわたしの接点はほぼ無いのですが、風景論としての永山則夫はおおいに影響があるので、そういう意味でも今回のPV制作は自分の中の点と点、そのまた源流の点と点を探り、繋いでいくような作業でもありました。
新宿の街中、カメラの前でバンバンと鉄砲を撃つ渚ようこは、まるで目玉のおまわりさんで、編集をして繋いでいくうちにやっと「ああ、監督は赤塚不二夫の世界がやりたいのか」と分かってきました。
わたしが子供の頃アニメで観てた『平成天才バカボン』は分かりやすい子供向けのギャグアニメでした。コミックボンボン(コロコロ派ではなくボンボン派だった)で連載していた原作の方も、そういうスラップスティックな分かりやすいものだったように思います。
ところがある日、古本で買った昔のバカボンを読んだら、ものすごいブラックユーモアな内容でついていけなかった。
そんな話も編集の途中で監督としていました。
自分がある作品から感じたこういう感情の元はこれだったのか、こういういきさつがあってこんな表現が生まれたのか……
そんな体験が何度かありました。
唐十郎も、寺山修司も、ATGもよく分かってない自分が、と不思議に思います。
そもそもの話をすると、自分は足立映画信者でも風景論信者でもなんでもなく、かつての押井守監督作品、特に『ケルベロス-地獄の番犬』『機動警察パトレイバー 2 the Movie』『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』のファンでした。
観れば分かる通り、これらの作品は風景で埋め尽くされています。それが作品の核であるとさえ思わせます。
ところが数年前「元日本赤軍の映画監督、足立正生さんの取材をしよう!」と思ってからいくつかの作品を観た中のひとつ『略称・連続射殺魔』には衝撃を受けました。ああ、こういうの風景論っていうのか!ていうかそういうのわざわざ論理立てて撮ってた人がいるんだ……と。
ちなみに『略称・連続射殺魔』はググれば観れるので観てください。
監督自身は「映画なんてどんどんネットに上げちまえばいいんだ。俺はそう言ってんだ」とのことなのでうしろめたさを感じずに観るがよいでしょう。
ちょっと散漫な文章になりましたが、PV撮影後今でも引きずっている感情のあらわれと思って勘弁して下さい。
足立監督をはじめ、渚ようこさん他、今回関われた方々にはたいへん感謝しております。
という話。
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