心にうつりゆくよしなしごと / 小嶋基弘建築アトリエ

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木組み:台持ち継ぎ1標準型

2012年08月04日 | 日記・エッセイ・コラム
構造材現わしの家、木造伝統構法の設計について。


引っ張り力の発生する部位に、【台持ち継ぎ標準型】 を用いてはいけない
特に、吹き抜けでの持ち出し継ぎ使用は、大地震で間違いなく崩落する


設計士は何故か【台持ち継ぎ】が好きみたいです。斜めに入り組んだ接合線が材の側面に出る意匠がデザイン心をくすぐるからでしょうか。しかも吹き抜けの化粧梁で、真継ぎではなく持ち出し継ぎの指示ばかり。


【真継ぎ(芯継ぎ):柱芯で左右材を継ぐ方法】
【持ち出し継ぎ  :柱芯より持ち出したポイントを中心にして左右材を継ぐ方法】


実は、【台持ち継ぎ標準型(木組みだけ・ボルト無し)】の持ち出し継ぎ使用は禁じ手。
理由を説明します。


↓台持ち継ぎ標準型。【大工の手仕事 木組み・伝統技術から。

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引っ張り力(左右材が離れない様)に抵抗するのは、【銚子口】という2箇所のダボ(画像で凸部の材の事)だけ。3cm×3cm×3cm程度の2箇所の凸突起だけで、左右材が離れるのを防げる訳がない。


しかも直下型地震での突き上げ(垂直方向加速度)に対しては、上木の自重以外、無抵抗。
実際の地震動は、水平・垂直方向同時に揺れる。ダボを3cm×3cm×3cmのほぞと考えてみるとどうだろうか?


設計士にしろ大工にしろ、設計者は木組みのメカニズムを知らないといけない。部位に応じた木組みの技法を採用しなければいけない。接合線がデザインの売りになるからといって、ファッション的な木組みの使い方をしてはいけない。


引っ張り力の発生する部位に、【台持ち継ぎ標準型】 を用いてはいけない
特に、吹き抜けでの持ち出し継ぎ使用は、大地震で間違いなく崩落する


どうしても台持ち継ぎを持ち出し継ぎで用いたいのであれば、銚子口近辺にボルトを使用して上下材を縫い、引っ張り力に対してダボ+ボルトの剪断力を働かせる様な使い方をしないといけない。しかもM16以上の径のボルト。


続く。次回は、台持ち継ぎ実践型を紹介。

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