このところ設計関係の話題が続いていたので、【Let's enjoy 構造計算③ (^-^)v】に行く前に、大工の手仕事の話を少し。大工といえば、やっぱりこれでしょう、『かんな掛け』。
マスターすれば自然体で行える技能なのですが(もちろん技能に終着点は無いので、そういう意味では簡単である筈がないのですけれども)、こんなにシンプルな道具なのに、或る程度さえも出来る様になる迄ですら泣きたくなる程(;_;)難しいのですよ、これ。砥ぎ、鉋刃の調整、二枚鉋使用であれば裏金の調整、鉋台の調整、仕込みの調整、そして削りの実技等々、出来ない見習いにとっては、『俺は永遠に出来ないんじゃないだろうか…』と”へこまされて”、”ぼこぼこに”されちゃうんですよね~(x_x;)。私もそうでしたよ。ヽ(^^ )
ですけどね、毎日毎日砥ぎの練習を欠かさなかった者は、必ず出来るようになります。とにかく、大工実技にとっての”良い仕事”は、『砥ぎに始まって砥ぎに終わる』と言っても過言ではありません。大工自身の手の延長である鑿や鉋といった刃物が良く切れるということは、丁寧で美しい仕事が出来るということ。だから上手に砥げない大工は、絶対に良い仕事が出来ないのですね。ぶっつけ大工ではなく伝統大工を目指している人は避けて通れないハードルなので、今は出来ないけれども出来るようになった自分を信じて、ガンバレ!p(^-^)q …そういう私もまだまだなので、偉そうなことは言えないのですけれども…
ということで、先週、ヒノキの柱を私が鉋掛けした時の画像です。二枚鉋で削りました。地金は生地、鋼(はがね)は青紙1号の2万円位の鉋です。【削ろう会】という、楽しみ(愉しみ?)ながら鉋削りを通して、大工お互いが切磋琢磨して技能向上と親睦を深めて盛り上げていきましょうや!という大会がありますが、そこに集うツワモノ達が出す鉋屑(彼らは”削り華”と呼んでいるようです)には到底及びませんけれども、まあ、20ミクロン位は行ってそうでしょ?でも、砥ぎがまだ全然ダメですね…
そしてこの ”手鉋仕上げ ” と ”サンディング仕上げ(ン百万円?ン千万円?もするマシンによる、紙やすり♯240+ウールバフ仕上げ)” とを比較してみると、
となります。番付け【つ五】が手鉋仕上げ、【A十二】がサンディング仕上げです。一目瞭然ですね。手鉋仕上げがいかに光沢に富み、シルクのような風合いを醸し出しているかが、所詮携帯カメラのエコノミー画像からでも感じとって貰えると思います。実際はもっと違うのですよ。ね、ホンモノって良いと思いませんか?。手間や時間やコストはかかってしまいますけれども、手仕事は、こんなにも美しいテクスチュアーを無垢の木から引き出すことが出来るのです。
注) サンディングマシンの名誉?の為に申し上げておきますが、ぶっつけ大工が削る”鉋まくら”はあるわ、”耳の筋”はあるわ、”逆目”はあるわ、”粉吹き”はあるわの鉋掛けと比べれば、それらが全く無い上に遥かに均質で美しい化粧面が得られます。ただ、伝統大工の技能と比べてしまうと、完全に見劣りするということです。しかしながら、木部の塗装仕上げを前提にするのならば、最も適した仕上げ方法と言えるでしょう。
追伸:シルクといえば、ボズ・スキャッグス/シルク・ディグリーズですね、私は。ミッドナイト・クルージングにはこのアルバムです!