阿部ブログ

日々思うこと

太陽活動が電力システムにあたえる影響

2011年06月01日 | 日記
総務省隷下の独立行政法人 情報通信研究機構(以下、NICT)は宇宙天気予報とも言うべき、電離層や太陽風、黒点観測などのデータを毎日配信している。特に大規模な太陽フレアが発生した際には、メールで緊急配信されるが、何故、宇宙天気予報が必要なのか?

NASAの磁気圏観測衛星『THEMIS』(Time History of Events and Macroscale Interactions during Substorms)の観測データから判明している事実は、太陽からの磁場線の向きは、11年周期の太陽活動に合わせて変化し、太陽からの磁場線が地球の磁場線と同じ方向を向く場合、太陽粒子の層が厚くなり地球の磁気シールドを通過する粒子の量が20倍以上になるとしている。
太陽活動の極大期に入ったと言われる今年、太陽活動はどのような影響があるのか?

例えば太陽活動が極大期にあった1989年には、激しい磁気嵐がカナダのケベック州の電力システムを破壊し9時間にわたって停電。約600万人に影響を与えた事例がある。これは太陽フレアが放出するエネルギーによる地球の磁気圏が擾乱されると、磁化プラズマが発生し、これが地球の磁力線を刺激して電流が発生する。これらの電流が良質の伝導体の塊である送電網に流れ込む事により変圧器が破壊され、電力の供給が停止した事が原因。

現在の変圧器は、電力需要量が大きくなればなるほど不安定になり、これら変圧器にもし磁気嵐による強い電流が何度か加わると、限界値を越えて破壊される可能性が高い事がケベックの事例から懸念されている。中でも50万~70万キロボルト級の高圧変圧器は特に脆弱だとされる。

現在中国の国家電網は数百万キロボルト級の超高圧変圧器の設置を計画しているが、このような電力網に接続された超高圧変圧器は一度破壊されると修理しての再利用できず、新規発注となるため数年は電力供給がストップする事になる。この変圧器の脆弱性をどのように克服するかは、今の所、解決の目処がたっていない。

電力システムは、遠隔地の発電所から送電網を経由して需要家に供給される垂直型が主流であり、それ故の脆弱性が様々指摘されはいるが、地球外の影響をも考慮したリスク回避、若しくは被害の最小化の対策が急務であり、想定外であるとの言い訳は通用しない。福島第一原発の事故を踏まえ、我が国においても垂直統合型電力システムと分散型電力システムが融合したハイブリッドな電力システムへの移行と共に太陽からの影響を考慮した電力システムの構築が欠かせない。

(NICTの宇宙天気予報センター:http://swc.nict.go.jp/contents/index.php )

最新の画像もっと見る