扇子と手拭い

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「フラがある」って何だ?

2015-06-10 08:12:49 | 落語
6年前に綴った落語日記のアーカイブ。ご笑覧ください。


▼さらってから来い
 「廊下に出てさらってから、もう一度、後でやってください」ー。三遊亭遊雀師匠の一声で稽古場に緊張した。落語塾の稽古日。「誰から始めますか」の遊雀師匠に中年女性が手を挙げた。だが、5分も話したところで噺が止まった。きっちり覚えて高座に上がれ。外の廊下でさらってから出直して来い、となった。

 落語で「さらう」というのは、覚えた噺を予習、復習することで、プロの噺家は、必ず出番の前に高座にかける噺をさらうそうだ。百も二百もある持ちネタすべてが、すぐスラスラ出てくるわけではない。記憶を蘇らせるために予習をするために「さらう」のだ。

▼本で稽古は愚の骨頂
 それにしても、メリハリの効いた遊雀師匠の指導は心持ちがいい。師匠は繰り返し強調した。ネタを「本で稽古した」という者に対して、「落語は口伝。どの噺家の落語でもいいから音を聴く。とにかく浴びるほど聴くこと。そうして”間”を学ぶ。出来れば、寄席に行ってナマを聴いて欲しい」。「本はあくまで(噺を覚えた後で)確認のため読むものだ」と師匠は重ねて注意した。

 
 ▼そのままでと絶賛
 この日の稽古で唯一、光ったのは笑龍さん。愉快な噺、「堀の内」を語ったが、随所で笑いが起きた。師匠は「間もいい、語り口も文句なし。表情も落語家向き。ヘンにいじらないで、これからも、そのまんまでおやんなさい」とベタ褒めだった。この人は元商社マンだが、いるだけで人を和ませる雰囲気を持っている。

 こういう人のことを「フラがある」と言う。落語の雰囲気があって高座に上がった瞬間、何というのか、「フワッ」とした和やかな感じを醸し出す。「フラがある」は、落語の最高の褒め言葉である。(2010年6月25日記)以下次号に続く。

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