扇子と手拭い

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弾んだ声で「アリガトー」

2015-03-28 22:05:22 | 落語
▼4月からすべて有料
 定期的に無料落語会を開いている場所が4月から有料になる。私たちは交通費からポスター、プログラムの作成、印刷まですべて自前。この先、会場費として数万円取られるというなら、落語会は続けられない。さっそく掛け合った。

 邸内の桃や梅、桜、もみじが四季を染める。そばに竹林の緑が生える。国の重要文化財に指定された歴史的建造物、旧吉田家住宅である。江戸落語を披露するには打って付けの場所だ。

▼当代の当主は43代目
 関東屈指の名家で、現在の当主は43代目。様々な事業に手を染めたがそのうちの一つ、醤油醸造業は大正11年にキッコーマンに譲渡した。広い旧吉田家住宅の維持管理するのは困難ということで、土地も併せて柏市に無償譲渡した。

 市では数億円かけ補修した後、「旧吉田家住宅歴史公園」として無料開放。このたびの管理者移管に伴い有料となった。新たな管理は市の外郭団体、「柏市みどりの基金」が担当する。

▼四角い話を繰り返す
 入園料は大人200円、子供100円。茶会などで使う場合は、これまでも書院の利用料が1万円ほどかかった。私たちは東と西の書院を合わせて使うので2万円になる。「市民のためのチャリティー落語会」と言うことで、利用料は取られなかった。

 それが、料金値上げとともに書院以外もすべて有料になった。さっそく「みどりの基金」と掛け合った。彼らは、「独立採算になったので」「規則なので」と四角い話を繰り返す。毎度のことだが、杓子定規の話しかできない連中に説明した。

▼実績を忘れないでね
 「東日本大震災で沈んでいる市民に笑いを、との要請で出前寄席を実施。私たちには4年間の実績があり、落語会は定着している。市民の皆さんはこの落語会を楽しみにしており、“次はいつ、やるの”と毎回、催促される次第。前回も会場に入り切れないほどの客が集まった」。

 出演者は1時間から2時間かけ、片道1500円ほど使って駆けつけている。その上に「会場の利用料を出せ」と言うなら、だれも落語をやらないよ、と私。

 この説明にやっと納得したらしく、「分かりました。市民が落語会を楽しんでいるのは承知していますので、なんとか考えてみます」と、「みどりの基金」は応えた。

▼学生に募集をかけて
 BS朝日で先日、旧吉田家住宅を紹介する1時間番組を放映していた。「あれはよくまとまっていた。映像が使えるようテレビ局に掛け合ったらどうか」と言ったところ、出演者やプロダクションなどとの権利関係がややこしくて「難しい」とのことだった。

 それなら、いっそのこと自前のビデオを作ったらどうか、と私。「学生に募集をかけてごらんよ。映像大好き学生はゴマンといる。彼らは発表の場がなくてウズウズしている」と言って続けた。

▼弾んだ声で「アリガトー」
 「キミの手で、歴史的建造物紹介の番組を作ろう」と言えば、「オレにやらせろ」という若者がたくさんいると思う。プロの業者に頼むのではないから経費もかからない。「どうだい、やってみては?」と言ったら、管理者は弾んだ声で「アリガトー、ゴザイマース」と言った。

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旧吉田家住宅の詳報はここをクリック
http://www.y-yamasita.com/diary.cgi?no=68

ここもクリック
http://naga294.jugem.jp/?eid=117

志ん朝は娼婦の館から

2015-03-26 02:33:27 | 落語
▼ためになる本は3割
 落語を初めて今年5月で6年目を迎えるがまだまだ、知らないことばかり。「過去の落語」については本に頼っている。だが、読んで「良かった」と思える書物は3割程度。図書館で借りた「新宿末廣亭うら、喫茶”楽屋”」は期待はずれだった。

 新宿・末廣亭の初代席亭、北村銀太郎が父で、祖父が五代目柳亭左楽だという石川光子の著書だと聞き、目を通したが、書き屋が別にいた。光子が昔の話を思い出すままに一方的にしゃべるだけ。

▼新宿2丁目は「赤線」だった
 書き屋は内容を整理することなく、光子のしゃべるに任せて、ただ綴った。なので、まとまりがなく、とても読みづらい。これで作家だというからお笑いだ。内容が薄く250ページを数時間で読み通した。古今亭志ん朝に関心があるので、その部分を紹介する。

 売春防止法が施行になる前の新宿2丁目あたりは私娼屈、つまり「赤線」だった。前座時代の志ん朝は”娼婦の館”から寄席に通っていたそうだ。おとっつあんの志ん生同様に、志ん朝も”有意義”な青春時代を送っていたようだ。芸の肥やしに?

 ウィキペディアによると、当時、所轄の警察署では、特殊飲食店として売春行為を許容、黙認する区域を地図に赤い線で囲み、これら特殊飲食店街(特飲街)を俗に「赤線」あるいは「赤線地帯」と呼んだ。早い話が、お上が公認した売春地帯である。

▼「休演」は定席の悪しき風習
 末廣亭など定席の悪しき風習に、病気でもないのに「休演」と言うのがある。定席は上、中、下席と10日ごとに協会と演者が代わる。「来月は中席に○○師匠が出るので聴きに行こう」と当日、行ったところ、ほかの落語家が「代演」と聞かされ、ガッカリなんてことがよくある。

 ファンは、お目当ての○○師匠の落語が聴きたいために都合をつけて駆けつける。ひどいときは3人、4人と「代演」が続くことがある。これでは「木戸銭返せ」と言いたくなる。あたしは前々から、これを改めるべきだと主張している1人だ。

▼遅れても寄席に出た
 光子によると、寄席の出番を休むことを「抜き」と言うのだそうだ。先代の桂文治や春風亭柳昇などの大御所は、営業が終わってから遅刻しても寄席に出ていたという。

 だが、今は割のいい仕事(営業)が飛び込むと、平気で寄席をすっぽかす。寄席にばかり出ていると、「どんだけ売れてねえんだ」と思われるのが嫌で、「見栄で休んだ」などという者がいるそうだ。

▼寄席から客を遠ざける
 光子はその話を聞いたとき、「お客様って何?」と思った。「お客さま不在はないよね」と言いながら、「でも、直接寄席に携わっていると、なかなか言えない」ー。

会場に入り切れない客

2015-03-24 11:45:51 | 落語
▼大盛況だった落語会
 第8回「にこにこ柏寄席」は、快晴に恵まれた22日午後、千葉県柏市の旧吉田家住宅で開かれた。会場となった二間続きの書院には、入りきれないほどの客が詰めかけた。約2時間半にわたる落語会は大盛況のうちにお開きとなった。

 旧吉田家は、国の重要文化財に指定された歴史的建造物。だから、建物の敷地内での飲食は一切禁止だ。机一つ動かすにも管理者の許可がいる。足腰が不自由住な人のためにパイプいすを置くことにした。そのまま置くと畳を傷つける恐れがあるので上敷きを借りた。

▼廊下に座ってもらった
 午後1時の開演直前になり、急に客の数が増えた。準備した座布団だけでは間に合わない。納戸にある座布団を全部出したがまだ、足りない。仕方がないので後から来た客は、申し訳ないが廊下に座ってもらった。

 そこからでも高座がよく見えるように障子を取っ払った。幸い、ポカポカ陽気と人いきれで、開けっ放しでも寒くはない。屋敷の前庭には梅の花が咲き誇り、長屋門わきの桜はつぼみを膨らませた。落語会には最高の環境である。

▼思い込みでしくじり
 ところが大変なしくじりをやらかした。客に配った番組表には「手紙無筆」と印刷してあるのに、あたしが取り違えて「粗忽長屋」をやってしまった。今朝も出がけに「粗忽長屋」を2度、さらった。

 その後、「粗忽長屋」を「手紙無筆」に差し替えたのを忘れていた。「粗忽長屋」をやるものと、思い込んでいたため、とんだしくじりをやった。高座から降りて来て、ほかの出演者に言われて初めて気が付いた。

▼本人が一番の粗忽者
 知らないものだから、「世の中には、そそっかしい、慌て者、おっちょこちょいが大勢おりましてー」などと得意になってしゃべっていた。「粗忽」の噺をしている本人が一番の粗忽者だった。これが本当の“落伍者”。

 この後登壇した仲間たちは、マクラの格好のネタが出来たと大喜びで、会場を盛り上げていた。この日かけた演目は、「悋気の独楽(こま)」「粗忽長屋」「棒鱈」「ずっこけ」「三味線弾き語り」「明烏」の6席だった。

▼好きな落語は「そば清」
 父親に連れられて来た7、8歳とみられる小学生は、落語が大好きだという。好きな落語を尋ねたところ、「そば清」。子供だから「寿限無」や「饅頭こわい」と応えると思っていたら、玄人好みの渋い演目が飛び出しびっくり。

 いつものご贔屓さまに加えて新しい客が顔を見せてくれた。先月27日、会場の使用許可を取りに柏市役所に行った。昼食時に市内のレストランに入った。隣の席にいた人に落語会のお知らせをした。その方が来てくれた。

▼大事な普段の積み重ね
 もう1組は先ごろ、四万温泉で知り合ったご夫婦だ。宿で「柏から来た」と聞いたので、「柏で落語会をやります。ぜひ来てください」と誘った。2人揃ってきてくださった。有難い限りである。

いつも聞かれる出演料

2015-03-24 11:44:31 | 落語
▼上州路でワラジ脱ぐ
 腕を磨くには武者修行だ。初対面の人たちの前でやる落語は緊張する。つまらないと思ったら、彼らは笑わないどころか途中で帰ってしまう。こちらも真剣勝負。だが毎回、上手くコトが運ぶとは限らない。諸国漫遊の落語旅。今回は上州路でワラジを脱いだ。

 四万温泉やまぐち館は毎晩、田村女将が紙芝居や歌のサービスをする。若手従業員たちの和太鼓が後を引き取った。こうした手作りのイベントで宿泊客を楽しませる。今回はそこに、あたしの落語が加わった。

▼道楽、ボランティア
 初日は「粗忽長屋」「明烏」を披露した。三遊亭鳳楽を応援しているという落語好きの客が「楽しかった。二つ目を超えている」と、お褒めの言葉をいただいた。世辞と分かっていても嬉しい限り。司会を務めた女将も大喜びで、「明晩もお願いします」と言った。

 湯に浸かっていると、とっつあんが出演料はいくらと質問。「またか」と思ったが、説明してやった。「あたしは本職の噺家ではないので金は一切もらっていない。ボランティアです。ですから皆さんと同じに宿賃を払って泊っています」。

▼気になる幼児の騒ぎ声
 二晩目は「時そば」の後、「蛙茶番」を高座にかけた。噺が佳境に入ったところで、若夫婦の幼児が騒ぎ出した。しばらくガマンして続けたが、甲高い声が気になって噺に集中できない。

 承知の通り落語は想像芸だ。高座でポーンと発した言葉を客が受け止め、頭の中で情景を思いめぐらす。子供の声が気になるようで、客も落ち着かない様子。だが、若夫婦は、そんなことはお構いなしに騒ぐ幼児を放置。

▼礼儀を欠く若夫婦
 客が幼児の声を気にしている。落語が聞き取れないようだ。マナーをわきまえない夫婦にガマンの緒が切れた。「これでは落語を続けられないので、子供さんを別の場所に移してもらえないか」と頼んだ。

 「イベントはみんなで楽しむものだ。子供が聴いても構わないではないか」と若い父親は、捨て台詞を吐いて立ち去った。天に唾するお粗末な男だ。「みんなで楽しむもの」だからこそ、周囲の迷惑にならないようにすべきではないか。

▼自己中心の考え方
 自分たちは親だから気にならないかも知れないが、落語を聴きたいと思っている人には迷惑だ。他人の立場に立って考えることが出来ないらしい。自己中心のモノの見方しかできない哀れな父親だ。

 コンサートはもとより、寄席なども幼児の入場は断っている。騒がれるとイベント自体が成り立たないからだ。最後まで「蛙茶番」を話したが気持ちが乗らず、後味の悪い落語会だった。

 気が利く宿の者がいたら、「恐れ入りますが」と言って、親子を上手に会場から連れ出すのだが残念ながら、やまぐち館にはいなかった。

▼割れんばかりの拍手
 浅草の寄席で桂歌丸師匠の落語の最中に、最前列にいた酔った男がポチ袋を渡そうとした。ご祝儀は楽屋で渡すものだ。「およしなさい」と言って師匠は噺を続けた。ところが男はなおもしつこく渡そうとした。客席がざわついた。男が気になって客も落語に集中できないようだ。

 師匠が噺を中断、「オイ、これ、片づけろ」と言って、袖に控えていた前座を呼び、退席した。前座は慌てて師匠の湯呑を引っ込めた。係員が男を引っ張り出した後、再び姿を見せた歌丸師匠。「お口直しにあたくしが舞います」と言って、姉さんだか、奴さんだかを披露した。割れんばかりの拍手が起きた。

創業は江戸延宝年間 2

2015-03-24 11:43:37 | 落語
▼温泉好きへの贈り物
 若いころから温泉巡りをしている私は、北海道から九州まで数百か所の温泉宿やホテルに泊まった。だが、いくら湯量が多くても毎日、湯を全部抜き、清掃し入れ替えるというのはあまりない。

 良くて三日に一度だ。一週間に一度、中には湯量が少なく循環して使い回しているところでは1か月に一回と言うところがある。その点、やまぐち館は毎日湯を交換するので湯船がきれいだ。こういうのは温泉好きにとっては、最高の贈り物だ。

▼残念なのは食事の質
 広い客室、隅々まで行き届いた清掃、100%源泉のかけ流し、そして田村女将のおもてなし。私の評価は、ここまですべてAランク。

 残念なのは食事。器の数は多いが中身がお粗末過ぎる。生ぬるい茶碗蒸し、だしが効かない味噌汁。ひとくち口にして箸を置いた。和食料理の基本はだしである。それがなっていない。だから食べるものがない。朝から刺身、それも生きがよくないシロモノ。これを起き掛けに食えというのは酷だ。

 2日間とも生卵が出た。「ナマは苦手なので卵焼きにしてほしい」と注文したところ、若い女性は「やっておりません」と拒否。私のリトマス紙は「赤」と出た。こんな些細なことに対応できないとは・・・。「ひどい」の一語に尽きる。

▼ツアー客を甘く見るな
 ひと昔と異なり、企業を停年退職した連中はよく旅をする。子供にカネを残す、という発想がないからだ。一番、カネを落とすのは停年退職組のツアー客。この客を軽んじてはいけない。宿、ホテルの情報にも通じている。悪い情報は瞬時に伝わる。

 高度成長を支えてきた者たちは、若い時代に一通りのモノは口にした。今更、腹いっぱい食べたい、などと思わない。「量は少なくていい。ちゃんとしたものを出してほしい」が共通の思いである。

 その点、九十九里サンライズや奥入瀬渓流ホテル、道後温泉の椿館は、結構な料理を振る舞う。だからリピーター客が多い。私は、サンライズの常連だ。奥入瀬渓流ホテルは年に3度訪ねた。椿館にもまた、行きたいと思っている。リピーターが多いのには理由がある。

▼簡素だが味は一級
 やまぐち館はツアー向けの食事を早急に改善すべきだ。品数は少なくし、客が喜んで口にするものを出してほしい。食べ残し残した料理は廃棄する。もったいない気がしてならない。残さず食べるものを出してもらいたい。

 例えば朝食。干物、だしの効いた味噌汁に新鮮な三つ葉かネギを散らす、焼きのりに納豆、おしんこがあれば十分だ。品数少なく、簡素だが、味は一級となれば宿の新しい“売り”になるのではないか。

 テーブルを埋め尽くすように並ぶ料理を見て喜ぶ時代は終わった。時代は変わった。考え方を変えないと客は呼べない。