1ヶ月の期間をかけて,脳の学習の仕方について研究を進めてきました。
結果の概要は前回の記事↓
漢字テストの結果から,子どもたちの漢字の定着率には大きな違いが出ていました。
個人的な小さな研究ですので,研究の仕方自体に問題がある可能性もありますが,おおむね妥当な方法でできていると思っていますので,ある程度の信頼性・妥当性があるものとさせてください。
結果をおおまかにまとめると
◆子どもの感情にはたらきかける指導をした漢字は,翌日から1ヶ月後までずっと定着率が高い
◆単純に2回書かせるだけの指導をした漢字は,翌日から1ヶ月後までずっと定着率が著しく低い
◆復習をした漢字としない漢字の1ヶ月後の定着率にはかなりの差が生じる
この3つが際立った結果だと言えると思います。
まあ,こうして結果を見てみると,
「そりゃそうでしょ」
ってなことになってますね。
「わざわざ言われなくても分かるよ」
って声も聞こえてきそうです。
でも,(自分で自分にフォローを入れて)やはり今回の検証活動をやってみて,生の現場の子どもたちから,具体的な数値が結果として得られたことには意味があると思っています。
当たり前と言われていたことが,本当に子どもの姿で現れる。
そして,教師の指導観がまた一つ形成され,今後の指導の在り方を考える際の拠り所となります。
今回の結果について考えてみます。
まず一番定着率の低かった「単純に2回書かせるだけの指導」について。
クラス30人の子にこのやり方で漢字指導をした場合,翌日まで覚えている子はわずか4人ということになります。
これでは「指導した・教えた」なんてうちには入りません。
これで子どもがテストの点が悪くて,「できない子だな」なんて嘆く先生は,自分がしっかり反省しなくてはいけないということです。
毎日の授業に置き換えて考えてみると,漢字指導をこんな簡素なやり方でしている先生というのは,実際ほとんどいないと思います。(いないことを願います)
しかし,漢字でなく他の学習に関してはどうでしょう。
国語・算数・社会・理科・・・・
覚えさせたいことはたくさんあります。
それらを,その日一時間の授業でサラッと取り扱っただけで,「教えた」というつもりになっているものは,実は所々に潜んでいるのではないでしょうか。
私も自分の授業を振り返ってみると,はっとさせられるところがあるようで反省させられます。
30人中4人しか覚えさせられていないのでは,とんでもないダメ教師ですね。
次に,一番定着率のよかった「感情にはたらきかける指導」について。
「操る」という漢字を,「手品を木の上で操る」と教えると,子どもたちは
「あ~なるほど」
「おもしろ~い」
なんて声を上げながら,うれしそうに書いていました。
この「驚き」「喜び」「納得」「感動」「不思議」こういった感情が学習にともなうと,記憶はより確かなものになるのですね。
脳科学的に言うと,
「感情の働きに関係している扁桃体が刺激されると,記憶に関わる海馬の神経細胞に働きかけ始める」
そうです。
これは私たちにも共感できることが多々ありますね。
学生時代,先生の話で覚えていることと覚えていないことがあります。
覚えていることは,やっぱりそのときに何らかの感情を抱いているものです。
先生が年号を言葉にして教えてくれたとか,先生が首都名を歌にして教えてくれたとか。
「おおさかという地名は,昔は『大坂』としていたのだが,『坂』という字が,『武士が反乱する』ととらえられるために,『大阪』とするようになった」
という先生の話におおいに納得させられ,私はこれはずっと忘れません。
そういうことでしょう。
脳って賢いんですね。
私たちは,授業の中でどれだけ子どもたちの感情にはたらきかけられているでしょうか。
もちろん,言われなくてもできるだけそうしようとは皆努めていると思います。
「楽しい授業」をつくろうとすることは,そういうことだからです。
そして,それが成功するとしないとでは学習の定着率に大きな影響が出てくることを改めて認識したいところです。
「授業を盛り上げるために楽しくする」という発想に,「より定着させるために楽しくする」という発想も加えてみたいと思います。
~次号に続く