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《中身》と《入れ物》

 空間を内・外に仕分けるために境界がつくられるのですが、それを指し示すためにマーカーがつくられます。瀬戸賢一さん*01によれば、このマーカーのうち、内の空間に明瞭な輪郭(形)を与える役目を果すものが、内の空間を代表するものとなります。つまりこの明瞭な輪郭は、内の空間の中にある《中身》とセットになって認識されるのです。そしてこの明瞭な輪郭が、現実世界の中で、物理的に堅固な形となって存在するとき、それは《中身》と仕分けられた《もの》として“理解”され、そこに人為的な操作が加わった時、それが《入れ物》として認識されるのです。《入れ物》の代表例は椀のような食器ですが、それはもっとも初期の時代から人類が人工的につくりだしたものとして多くの遺跡からも見つかっています。
 
一方で、瀬戸賢一さんも指摘するように、境界が内の空間を代表する資格を得るのは、必ずしも境界が内の空間を物理的にていねいに取り巻いている必要はありません。境界としてのマーカーの象徴的な意味が強ければ、物理的な力不足は補われる*01のです。
 
「出来事」が「もの」ではなく「こと」であったにもかかわらず、メタファーとして《もの》になり得たように、「こと」がまず《もの》化します。そして、さらに《入れ物》化していく、と瀬戸さん*01は説明します。なぜなら、「こと」には「重要な意味」が「含まれている」からです。抽象概念である「意味」は、《もの》化し、かつ《中身》)化していきます。《中身》としての「意味」が《入れ物》としての「こと」に「含まれている」のです。


*01:空間のレトリック/瀬戸賢一/海鳴社 1995.04.12

 

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