goo

空間を仕分ける

 地球上に生息する多くの動物たちは、自分を捕食しようとする敵の攻撃をできるだけ避けるために、周囲の空間の中から岩山の影やほら穴、地面の窪地など、自らの身体を少しでも周囲と隔てるものの影に身を寄せる傾向があります。それらに囲まれることはそれだけ敵から攻撃される範囲を少なくすることになるからです。
 このような空間に身を寄せることは動物たちにとって、安心とやすらぎを得ることにつながっていったのでしょう。それがこうした空間と、そのほかの危険に満ちた空間とを仕分けるきっかけとなっていったのです。
 
この仕分けられた空間は、“外なる空間”に対する“内なる空間”として区別されていきました。そして、こうした内なるやすらぎの空間を確保するために動物たちは、明瞭な境界を設定する努力を積極的におこなっていったのです。自ら進んで土を掘るなどしてそのような空間をつくり出し、安心とやすらぎの場である“巣”として利用していったのです。
 
“言葉”の生成と“理解”の生成の自己再帰的構造が出来上がり、“考える”「自己」意識を持った人間は、空間を我が物にするために、ことばという絵筆を用いて空間をまだらに色分けしていきました*01。原点、方位・方向、特異点、凹凸、境界・・言語的に、認識的にこれらを空間の構図に付与することによって、よそよそしい空間を親しみある空間に変えていった*01のです。


ドイツ語の「空間」を意味するRaum(英語のroomと同根)の語源は、人間が移住する場所として森林内に開墾して作られた間伐地のことで、もともとは、空洞を意味した*02といいます。

*01:空間のレトリック/瀬戸賢一/海鳴社 1995.04.12
*02:人間と空間/オットー・フリードリッヒ・ボルノウ/1978.03.03 大塚恵一・池上健司・中村浩平訳 せりか書房

 

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 〈容器〉の理解 「こと」の《... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。