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私は猫になりたい

昔の特撮やドラマを紹介します。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第20話「唯、絶叫!礼亜・壮烈な死」

2024-11-04 20:16:14 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇
 第20話「唯、絶叫!礼亜・壮烈な死」(1987年3月26日)

 タイトルから分かるように礼亜の死を描いたエピソードである。

 冒頭、珍しく唯と礼亜が二人きりで話している。

  
 礼亜「もう何年も夕暮れを眺めることなんか忘れてたわ……毎日、日は昇り、落ちてるのにね」
 唯「礼亜さんがそんげなこち言うの初めち聞いた。今日の礼亜さん、おかしか。こんだけ一緒におっても、わち礼亜さんのこと何も知らんとよね。風魔に生まれて、いつ自分の運命を知ったと?」
 礼亜「8才になった時、突然父に告げられたんです」
 唯「普通の人たちみたいにもっと自由に生きたいとは思わんね」
 礼亜「思ったわ、でも、それは運命。私に今の運命がなかったら、唯にも結花や由真にも出会えなかったわ。今あなたたちが私の人生を輝かせてくれる。そう信じられるだけで私は幸せよ。たくさんの人たちが笑ったり泣いたりして、懸命に街に生きてる。そんな人たちの幸せをそっと見詰めるの。私、とても好きだわ……誰にもこの世界を壊させたくない。すべては翔とあなたをめぐって動き出したわ。結花と由真は安夫君の残してくれた手掛かり、東野成美と言う影の草として生きる少女を追ってる。東野成美は必ず翔と言う謎の人物と接触する筈……唯、あなたは成美と言う少女の心の扉を開いて翔の謎を解くことになるわ。その時、私の運命も、結花や由真の運命も決まる……新しい未来へ向かって」

 礼亜、予知能力でもあるのか、それとも、台本を読んだのか、未来のことを見通すようにつぶやくのだった。

 タイトル表示後、とある警察署から放免された制服姿の少女の前に、結花と由真があらわれる。

 
 結花「あなたが東野成美さんね、私たち、安夫君の友達よ。心配しなくて良いわ」
 成美「……」

 結花がにこやかに話し掛け、その腕を掴むが、成美はその手を掴むと、思いっきり噛み付く。

 由真が引き離すが、成美は頭突きを食らわしてさっさと駆け出す。

 途中、立ち止まってこらちを振り向くが、その野獣のような眼差しに、さすがの二人も威圧される。

 その後、いつもの忍者ルーム。

 
 礼亜「東野成美、幼くして父が死亡した後、母は蒸発、養護院にて育てられる。そこで成美の草としての血を知った影が接触した模様……」
 般若「成美の心の中には凄まじいほどの人への憎しみが渦巻いている。自分を受け入れてくれなかった世の中への憎悪、それが成美を草とさせたのだ」
 由真「確かにゾッとさせられたよ、あの目には……」
 唯「じゃけど、憎むことができるっちゅうことは、感情があるってことじゃろう、じゃったら愛することも出来る筈じゃ」
 結花「唯の言う通りよ、自分たちを逃がしてくれたのは成美だって、安夫君が言ってたわ、もしそれが本当だったら……」
 般若「うん、時間がない、お前たちの手で成美の心を早急に開かせるのだ。翔なるものが草の根を広げぬうちに」

 三人が立ち上がると、カメラは礼亜の顔を映し、

 
 礼亜「唯、もし失敗したら、東野成美は影に殺されるわ。それを忘れないで」

 どうでもいいが、カメラの位置、おかしくないか?

 タイトル表示後、翔たちの秘密基地。

 
 翔「逃げた草どもが風魔の手にな?」
 ミヨズ「もうしばらくお待ちくださりませ、翔様、その草どもらは必ず」
 翔「言い訳は聞かぬ、この翔はな、子供であって子供ではない、わかりおるか」
 ミヨズ「はい」
 翔「わかっておらぬ、オトヒもようお聞き」

 
 翔「この翔はな、人間以上、そう、みしるしを与えられたのじゃ、あるお方にな」

 
 ミヨズ「どなたにでございましょうか?」

 
 翔(え~っ、それ、聞いちゃう?)

 まさかの問い掛けに頭がパニックになる翔であったが、嘘である。

 嘘だけど、普通、そう言うことは聞かないよね。

 翔「神なる者じゃ、ふふふふ、わからぬか、ふふふふふ、わからぬであろう、ふっふっふっ、あっはっはっはっ」

 老婆の声で謎めいたことを言い、愉快そうに笑う翔を見て、

 

 
 ミヨズ&オトヒ(さては知らねーな、こいつ……)

 心の中でそっとツッコミを入れる二人だったが、嘘である。

 嘘だけど、笑って誤魔化しているようにしか聞こえないのは確かである。

 翔は少女の声に戻ると、

 翔「ミヨズ、オトヒ、人の心の半面に必ずや悪魔がおるのじゃ。互いに憎しみ殺しあう弱肉強食の血が人の中に脈々と流れておる。人間を血で血を洗う本来の姿に戻すため天がわらわを遣わしたのだ……わらわが草どもの代表らと会う日も近い、風魔ごときのことでいつまでもわらわを煩わすでない」

 ちなみに、この台詞と言うか世界観、今更ながら気付いたけど、「スターウォーズ」の暗黒面が元ネタなんだね。

 しかし、「互いに憎しみ殺しあう」と、「弱肉強食」は、ちょっと意味が違うような気がする。

 
 ここから、「シャドウハンター」の流れるなか、唯が成美につきまとい、その心を開かせようとするイメージシーンとなる。

 
 深夜、自殺でもするつもりなのか、成美がレールをベッド代わりにして横たわっていると、唯がやってきて、自分も同じように体を横たえる。

 やがて、踏み切りの警報が鳴り響き、一台の列車が唯の寝ている方から接近してくる。

 だが、唯は本当に眠ったように身動きひとつしない。

 
 成美(どうせこいつは逃げるに決まってる。カッコだけに決まってる……)

 その様子を、結花と由真が物陰から見詰めていた。

 
 由真「姉貴、とめよーよ、あいつドッカンだから電車に轢かれたらどうなるか分かってないんだよ」
 結花「まさか、それじゃドッカン通り越してズッコンじゃない!!」
 由真「……こんな時に冗談言ってる場合かよ」

 真顔で叫ぶ結花に、由真が冷たくツッコミを入れる。

 何気に、二人のやりとりとしては、最高に笑えるシーンかもしれない。

 
 二人が話しているうちにも、列車はすぐ近くまで迫ってくる。

 これ、実際に女優が寝ているレールの上を走らせてるんだよね。

 今ではありえない撮影である。

 結花「轢かれる!!」

 さすがにシャレにならないと、二人が隠れ場所から飛び出す。

 成美「ちくしょう!!」

 ほぼ同時に、成美が叫んで唯の体を抱えてレールの外へ出る。

 電車はその横を何事もなかったように通り過ぎる。

 
 唯「やっぱり助けてくれたんじゃね」

 成美は唯の顔を思いっきり引っ叩く。

 成美「誰だ、お前は?」
 唯「成美さん、あんたほんとは優しい人じゃ。だから安夫さんたちを助けたんじゃろう、わちを助けて……」
 成美「ううーっ!!」

 唯の言葉も終わらぬうちに、いきなりその首を締める成美。

 唯「……いくらでも絞めればええ、じゃけん、あんたは影にはなれん。優しいもん。人を愛したくてたまらん人じゃ。安夫さんも令子さんも元気じゃ……もうひとりぼっちはいいじゃろ」

 無抵抗のまま必死で語りかける唯の言葉に、成美は腕にこめた力をゆるめ、その場に座り込む。

 
 そして、心の奥底から込み上げてくる悲しみを爆発させ、母を求める幼子のように唯の体に抱き付き、号泣するのだった。

 お恥ずかしい話ですが、管理人、このシーンでちょっと泣いちゃいました。

 加齢で、涙腺がバカになっちゃってるらしいです。こないだも「西遊記2」見てて号泣したもんなぁ。

 それにしても、前回の隆夫といい、成美といい、草のみなさん、あまりに簡単に「改心」し過ぎじゃないですか?

 この分だと、他にも影を裏切る草が続出して、その始末に追われてミヨズさんが泣きそうになっているのではないかと心配になる。

 CM後、成美が放った伝書鳩が唯たちの教室に飛び込む。

 手紙には「翔様と草の人々が会う日時をお知らせします。もう一度唯たちと人間らしく生きてみたい」と記してあった。

 電話しろよ……

 つーか、肝心の日時と場所が書いてないんですが……

 
 般若「自分の命と引き換えに成美はこれを書いた。唯、そこへ潜入し、成美の命を守り、翔の正体を突き止めることがお前に出来るか」
 唯「やる、やっちゃるわい!!」
 般若「うむ、結花と由真は唯の影となり、潜んで唯を助けるのだ」
 由真「唯、てめえひとり死なせはしないよ、安心しな」
 唯(全然安心できん……)

 前回、草にあっさり捕まった人に言われてもねえ……

 と、珍しく礼亜が般若に異を唱える。

 礼亜「私は反対です。敵の中に潜入するほどまだ唯にも、結花や由真にも力がないわ。危険過ぎます!!」
 般若「甘いことを言うな、礼亜」

 いや、甘いことって……礼亜はただ事実を指摘してるだけだと思うんだけどね。

 唯「大丈夫じゃ、礼亜さん、心配は要らん」
 礼亜「唯……」
 唯「わちは三代目麻宮サキじゃ。一代目も二代目もそうやって生きてきたんじゃろう……それにわちにはごっつう強か姉ちゃんらもついとる。弱音は吐かん!! 翔の正体、このわちが必ずつかんじゃる」

 全く根拠のない唯の自信だったが、結花と由真はなんとなくその気になり、

 礼亜(唯、由真、結花……)

 礼亜の懸念も、雰囲気で押し流されるのだった。

 三人を送り出したあと、職員室で話す般若と礼亜。

 
 般若「礼亜、君は唯たちと別行動で、影の動きを探ってくれ」
 礼亜「それは般若にお願いします。私に唯たちを見守らせて下さい」
 般若「なにぃ」
 礼亜「唯たちはどうあっても死なせてはいけない人たちです。唯は私たちの運命さえ切り開いていつか明るいところへみんなを連れて行ってくれる人です。誰がなんと言っても、私は唯たちを見守りたいんです」
 般若「命令が聞けんと言うのか?」
 礼亜「そうです」
 般若「……勝手にするが良い」

 突き放す般若だったが、礼亜が一礼して出て行こうとすると「待て!!」と呼び止め、愛用の杖を礼亜に投げ渡す。

 
 般若「持って行け、何かの役に立つかも知れん」
 礼亜「般若……ありがとう」

 礼亜、もう一度深々とお辞儀すると、部屋を出て行く。

 そしてこれが、二人の最後の会話となった。

 深夜……と言うより、夜明け前、手に手に松明を持った若者たちが、「アービラウンケンソワカー」と唱えながら、道なき道を踏み越え、広場に集まってくる。

 広場の奥には簡単な祭壇が設けてあり、その上にミヨズとオトヒが向かい合って座っていた。

 その前に敷かれた布の上に、草たちが整然と座っていく。

 
 その中には、当然、東野成美と、おばさんパーマのかつらと黒ぶちのメガネを付けた唯の姿も混じっていた。

 やがて、草たちの唱和の高まりが最高潮に達したとき、祭壇に激しい閃光が走る。

 
 次の瞬間、小柄な少女が祭壇の中央に忽然とあらわれる。

 が、なにしろ暗いので、その顔形まではわからない。

 草たち「翔様ーっ!! 翔様ーっ!!」

 右手を掲げ、憑かれたようにその名を叫ぶ若者たち。

 ちょうどその時、昇り始めた朝日が山の向こうから眩しいほどの光を投げかけてきて、

 
 息を詰めて見守る唯たちの前で、謎に包まれてきた翔の素顔が、遂に白日の下に晒される。

 これだけ見ると可愛いが、獲物を狙う蛇のように、眼球を左右に動かす仕草が、かなり不気味である。

 
 唯「あれが、翔……」

 翔は、額につけた銅鏡のような冠に光を反射させ、草たちひとりひとりの顔を照らしていく。

 やがて成美の番となるが、何事もなく光が次のものに移った直後、思わず安堵の表情を浮かべてしまい、翔に裏切りを見抜かれる。

 
 翔、冠から電撃ビームを放ち、成美を吹っ飛ばす。

 うーん、まんま、「スターウォーズ」の皇帝である。

 唯「成美さん!!」
 ミヨズ「風間」
 オトヒ「唯!!」

 成美に駆け寄る唯を見て、ミヨズたちがその正体に気付く。

 翔たちはさっさと退散しようとするが、唯は変装を解くと、

 
 唯「待てぇ、あんたのもんじゃ、返しちょく」

 10話でミヨズに殺された風花良に託された翔のネーム入りの短刀を投げ付ける。

 いや、別に返さなくてもいいと思うのだが……

 翔は目を赤く光らせ、念力でそれを空中で停止させて鞘から抜き、

 
 翔「滅びよ、風魔のものどもよ!!」

 老婆の声で叫ぶと、短刀を媒介にして、唯たちの周辺をドーム状のバリアのようなもので覆ってしまう。

 唯と成美に激しい風が吹きつけてきて、成美は岩に頭をぶつけて動かなくなる。

 近くの岩場に隠れていた結花と由真が、折鶴とリリアンを投げつけるが、そんなチンケな武器ではバリアはびくともしない。

 はっきり言って、礼亜の指摘したとおり、彼らだけでは全くの力不足で、その意見を退けた般若までが無能に見えてしまう。

 ミヨズたちが得意の布攻撃を仕掛けるが、草の中に紛れ込んでいた礼亜が飛び出してきて、般若に貰った杖で布を切り裂く。

 そして、唯を庇うように、その前に移動する。

 
 唯「礼亜さん!!」

 
 特に意味はないが、ミヨズの顔でも貼っておこう。

 
 礼亜「唯、この空間を抜け出すのよ!!」
 唯「いやじゃ」
 礼亜「あなたはこんなところで死んじゃいけない」
 唯「礼亜さんを残してなんかいけん」

 礼亜、駄々をこねる唯を突き飛ばすと、

 礼亜「生きるのよ、唯!!」

 
 礼亜「この空間は私が破って見せる、般若……」

 般若から貰った杖を握り締め、祈るように般若の名を呼ぶ礼亜。

 礼亜(つーか、なんであいつは来ないの?)

 ふと、根本的な疑問が浮かぶのだったが、嘘である。

 嘘だけど、肝心な時になんで般若が現場に来ないのか、極めて不可解なのは事実である。

 オトヒの布や、ミヨズの含み針をかわしつつ、敵に突っ込む礼亜。

 
 と、杖が、ライトセーバーあるいはレーザーブレードのような青白い光を放つ。

 布を首に巻かれた状態で、礼亜が杖を振り回し、結界を切り裂く。

 だが、次の瞬間、翔が念力で飛ばした短刀が礼亜の背中に突き刺さる。

 唯が短刀を持ってこなければ、こんなことにはならなかったような気がする……

 礼亜、スローモーションで倒れる。

 それと同時に、結界が消滅する。

 
 唯「礼亜さん、礼亜さん!!」
 礼亜「結花、由真、唯を頼んだわ。唯、あなたはこの世にいなくてはならない人なのよ……」

 礼亜、そう言い残すと、あえなくあの世へ旅立つ。

 唯はその目を閉じさせると、満身に怒りのマグマをみなぎらせて立ち上がる。

 
 額にいつもの梵字を浮かび上がらせ、壇上の翔を睨み付ける唯。

 
 それを、無表情で受け止める翔。

 唯、ヨーヨーを投げようとするが、翔が冠からビームを放って唯の周りに炎の輪を作る。

 一瞬たじろいた唯が、祭壇を見ると、翔たちはいつの間にか消えていた。

 翔の姿を目視できたものの、風魔の完敗であった。

 だが、翔は逆に警戒心を強めていた。

 
 翔「風間唯、あの娘、恐ろしい心の力を持っておる。草どもがあの娘の心に打たれ、わらわを裏切っていく。あの娘がおる限り、我らの目的は達せられまいぞ」

 一方、唯は、自分の部屋に閉じ篭もり、ひたすら自分の無力さを噛み締めていた。

 
 唯「わちは、わちは礼亜さんも成美さんも助けようと思えば助けられたんじゃ……じゃけん、わちの体は怖くて怖くて動かんかった!! わちの為に礼亜さんは死んだんじゃ!!」

 そう叫ぶと、ヨーヨーを叩き付ける唯。

 ま、前記したように、礼亜の命を奪った短刀を持って来たのは唯なので、見てる方も100パーセント否定できないのがつらいところ。

 唯「わちはもうダメじゃ、わちはもうダメじゃ、 わちはもうダメじゃーっ!! 礼亜さん、もう何もかもいやじゃーっ!!」

 畳に身を投げ出し、子供のように泣き叫ぶ唯の姿を映しつつ、「つづく」のだった。

 ちなみに唯の台詞だと、成美もついでに死んでしまったように聞こえるが、実際は重傷を負っただけで生きており、のちに風魔の一員として再登場することになる。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第19話「対決の日近し!!影の姫・翔を追え!」

2024-10-20 19:11:59 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇
 第19話「対決の日近し!!影の姫・翔を追え!」(1987年3月19日)

 朝、例によって唯と由真が派手な喧嘩をやらかして、取っ組み合ったまま階段を転げ落ち、唯が足を捻挫してしまう。

 
 由真「ったくぅ、階段から落ちたぐらいで捻挫なんかしやがってよー、忍びの子が聞いて呆れるよ」
 唯「なんてやーっ」
 由真「なんだよ」
 結花「やめなさい!! 日曜の朝ぐらい大人しく出来ないの? 喧嘩の原因はなんなのよ?」
 由真「こいつがあたしの洋服を黙って着ようとするんだもん」
 唯「こないだ貸してくれるっちゅったがね!! じゃからわちは」
 由真「でも、今日は私が着ようと思ったの」
 唯「じゃけんど」
 結花「もう、そんなことで喧嘩してんのー? いい加減にしてよねー!!」

 唯の手当てをしていた結花が、うんざりしたような声を上げる。

 
 由真「だってさー、今日は中学の時の同窓会だったんだもん」
 結花「だった? だったって、行かないの、同窓会?」
 由真「だって、こんなツラで行けるかよ」

 由真も、階段から落ちた時に額に怪我をしていた。

 結花「安夫君も来るんでしょう」
 由真「あいつが幹事だもん」
 結花「分かった、安夫君に見られるのが恥ずかしいんでしょう?」
 唯「安夫君?」
 由真「バカ言ってんなよ、そんなんじゃない」
 結花「大丈夫よ、それくらいの傷だったら前髪で隠せば分からないから、ね」
 由真「そうかな……」
 唯「安夫君て誰ね?」
 由真「うるせえな、お前には関係ないんだよ」
 唯「そんげなケチなこつ言わんと、教えちくり」
 結花「安夫君って言うのはね……」
 由真「姉貴」

 興味津々の唯に話そうとする結花を、笑顔で脅迫する由真だったが、

 結花「安夫君って言うのはねー」
 由真「しゃべんなよーっ!!」

 タイトル表示後、唯と結花が歩きながら話している。

 唯「へーっ、安夫君って由真姉ちゃんの初恋の人やったと?」
 結花「そっ、残念ながら片思いだったみたいだけどね」
 唯「なんじゃ片思いか」
 結花「も、大変だったんだから……溜息ばっかりついてるかと思ったら、急にボーって考え込んじゃったり、胸が苦しいーって涙ぐんじゃったりね」
 唯「へーっ、由真姉ちゃんが胸が苦しい? 信じられん」
 結花「からかったりしちゃダメよ、また喧嘩になるから」
 唯「うん、じゃけん、胸が苦しいか、こりゃええこと聞いた」

 由真をおちょくる格好のネタが手に入ったと、いかにも嬉しそうな唯。

 二人が家の前まで来ると、めかしこんだ由真が、つまらなそうに立っていた。

 唯「あーれー、もう帰ってきちょる」
 結花「どうしたのかしら」

 次のシーンでは三人とも家の中。

 由真「鍵ぐらいちゃんと置いとけよな」
 結花「だって、こんなに早く帰ってくるとは思わなかったもの……唯を接骨院に連れて行って診て貰ってたの」
 由真「ふーく」
 唯「三日は安静にしとれって、学校も休めって、わち、胸が苦しか~」

 唯、手に入れたばかりのネタで由真をからかう。

 結花、口だけ動かして「馬鹿」と、唯をたしなめる。

 ちなみにこの唯の捻挫、ストーリー的には何の意味もないので、今回も浅香唯さんのスケジュールが厳しく、学校での撮影に参加できないので、それをカバーする為の苦肉の策であろう。

 
 結花「それでどうだったの、同窓会」
 唯「うん、どんげやったと」
 由真「幹事が来ないんだもん、もうめちゃくちゃだよ」

 由真はそう言ってテーブルに突っ伏す。

 唯「そりゃ残念やったねえ~、折角初恋の人に会えるとおもうちょったとに……」

 
 由真「……」

 由真、パッと顔を上げると、唯に鋭い視線を向ける。

 
 由真「姉貴、喋ったな」
 結花「いいえ、知りませんよ」
 唯「私、胸が苦しい!!」
 由真「なんだと、この野郎……」
 唯「わちゃ、怪我人じゃ」
 由真「うるせえな、もう」

 その夜、その安夫から由真に電話がかかってくる。

 
 由真「もしもし、由真ですけど……あらー、安夫君、お久しぶり!!」
 唯「ほほほほっ……」

 由真が、初恋相手によそ行きの喋り方で話すのを聞いて、世にも嬉しそうに笑う唯。

 由真「えっ、これから? ……別にいいけど、うん、わかった、じゃああと10分ぐらいかな、20分ぐらいかな、えっ、急ぐの? うん、わかった、じゃ、なるべく早く行きます」

 由真は受話器を置き、

 由真「ちょっと出掛けて来るから」
 結花「あんまり遅くならないようにね」
 由真「分かってる」
 唯「胸が苦しか~」
 由真「うるせえなぁ!!」
 唯「いてぇーっ!!」

 さすがに腹に据えかねて、唯の頭をグーで殴る由真であった。

 由真が夜の公園で康男を待ってると、闇夜からベーゴマのようなつぶてが飛んでくる。

 またしても「影」の襲撃か、と思いきや、それは意外にも安夫の投げたものだった。

 
 由真「安夫君!!」
 安夫「やっぱりほんとだったんだね、君が風魔の血を引いている忍びだって言う噂は」

 ……

 あのう、もう少しイケメンにしません?

 仮にも由真の初恋の相手なんだから。

 安夫はその場に両手を突くと、

 安夫「頼みがある、お願いだ、妹を匿ってくれないか」
 由真「えっ」
 安夫「お願いします!! 令子、出て来い」

 安夫の言葉に、中学生くらいの女の子が出てくる。

 
 安夫「二人とも追われてるんだよ、日本じゅう逃げ回っても、逃げ切れない奴らに、だからお願いします」
 由真「ちょっと待ってよ、いきなりそんなこと言われても……ちゃんとわけを話して。一体何があったの? 誰に追われてるの?」
 安夫「俺たちを追っているのは影、そして影を操る翔と言う姫の下で俺たちは働いていた忍びなんだ」
 由真「忍びって安夫君が? 嘘」
 安夫「さっきのつぶてを見れば分かるだろ? あれは印字打鉄礫と言って、俺たち、草が使う武器……俺たちは翔と言う女に騙されていたんだ。恐ろしい女だよ」

 
 翔「影星輝く時、天下麻のごとく乱れる、我ら影の手によりて人の心に眠りし悪を目覚めさせる時が来た。欲望と憎しみに満ちた世の中こそが人が本来生きるべき世の中じゃ。世を乱し、腐らせるのじゃ!! 血で血を洗う戦いに引きずり込むのじゃ!! そして天下を滅ぼすのじゃ、そのときこそ、我ら影にひそみしものたちに日が当たる時、我らの夜明けは近い。わらわのもとに集いしものよ、立ち上がるのじゃ」
 三人「ははーっ!!」

 安夫たち三人が、翔じきじきに言葉を掛けられているシーンが回想される。

 しかし、影の草に過ぎない彼らが、直々に翔から訓示を受けると言うのは、いささか解せない。

 安夫から翔の言葉を聞かされた唯は、10話で影に殺された風花良が残した、翔の持ち物だと言う短刀を握り締め、怒りに身を震わせる。

 
 唯「そんげなこつ言うて、自分たちの為なら何をしてもいいっちゅうとぉ?」

 三姉妹の脳裏に、影との戦いで非業の死を遂げていった人たちの面影がよぎる。

 結花「許せないわ」
 安夫「俺たちは影の草として代々働いてきたんだ」
 唯「影の草ってなんね」

 
 令子「日本中に散らばり、その土地に住み着いていく忍びのことです」
 安夫「草の使命は、その土地の情報を集め、影へ送ること、それと、影が動く時は色々な下準備をすること、草の使命は親から子、子から孫へと引き継がれていくんだ。その土地に住み着き、根を下ろし、情報を吸い上げていくから、草と呼ばれるんだ」

 令子を演じるのは池田智子さん。

 安夫「オヤジが死んだあと、当然のことのように俺と兄貴は草の使命を継がされた、兄貴は翔の命令で帝星(?)大学に入り、その大学を潰すための情報を送り続けていた」
 由真「じゃあ、安夫君も?」
 安夫「いや、俺は自分の高校を潰したりしたくなかった。だから嘘の情報を送り続けたんだ。それが翔にバレて」
 結花「それで追われてるの、影に?」
 安夫「もし捕まったら、俺もこいつも殺される。俺たち、国外に逃げることにしたんだ。横浜で乗せてくれる船を探したいんだけど……」

 安夫の頼みと言うのは、その間、妹の令子を匿って欲しいと言うことなのだった。

 結花「そう言うことなら喜んで」
 安夫「ありがとう、良かったな、令子」

 安夫はすぐに横浜へ出かける。

 
 令子「兄さん!!」
 由真「だいじょうぶだって、影ぐらいどうってことないよ。私たちが守ってやるから」
 令子「兄さん、言わなかったけど、草たちの中から裏切り者が出ると、その草の一族は連帯責任を取らされることになってるんです」
 結花「連帯責任って?」
 令子「裏切り者は血の繋がりのあるものが殺し、忠誠のしるしとして翔様に差し出さなければいけないんです。私たちを追ってるの、誰だと思いますか? 一番上の隆夫兄さんやイトコたちなんです!!」

 翌日、登校した結花と由真は、般若にその話をする。

 
 般若「罠かも知れんぞ、その兄妹」
 由真「じゃあ、なに、安夫が私に嘘ついたって言うのかよ」
 般若「よしんば、安夫と令子が嘘をついていないとしても、相手は影だぞ、二人を操ることぐらいたやすい筈」
 由真「ったく、こんな奴に相談したって話になんねえよ、姉貴行こう」
 結花「ちょっと由真」
 般若「待て」
 由真「私が頼まれたんだ、あんたなんかに頼んなくたって、立派に守って見せる」

 相手が初恋の相手なので、由真もつい感情的になってしまい、結花の手を引っ張って行く。

 由真「ったく、なんだよ、依田の奴、ぶさけんなよ」
 結花「ねえ、唯と二人きりっで大丈夫かしら」
 由真「なんだよ、姉貴まで疑ってんのかよ」
 結花「そうじゃないの、だけど、唯は今自由に動けないでしょう、もしものことがあったら」
 由真「あっそ、わかった」

 由真は拗ねたように言うと、学校を早引けして自宅に向かう。

 その頃、唯たちは、昼食を食べようとしていた。

 
 唯「さっ、結花姉ちゃんが作ってくれたお昼御飯は何かなー? うわー、オムレツじゃあ、うれしかぁ」

 子供のように目を輝かせる唯を見て、令子が思わず吹き出す。

 
 唯「どんげしたと、おかしいと?」
 令子「だって、唯さんってとっても素直な人なんだもんー、一緒にいると楽しくなっちゃう」
 唯「素直っちゅわれればまだいいけど、由真姉ちゃんなんかわちのことドッカンちゅうとよ。ほんとは自分のほうがもっとドッカンの癖して……」
 令子「うっふふ」
 唯「あんた、家に来て初めて笑ったねえ」
 令子「そう言えば、父さんが死んでからこんなに笑ったことなかった……」
 唯「……」
 令子「兄さんたちが草を引き継いだ時から、いつか私も草にならなければならないんだなぁって考えるようになって……私、ほんとはピアノの勉強がしたいんです、でも」

 ここで再び回想シーン。

 
 隆夫「どうしてこんなに成績が下がったんだ? お前は翔様のご命令どおりにセシリア女学院に入らなければならないんだぞ、こんな成績で入れると思うか」
 安夫「兄さん、令子もどうしても草として働かなければならないのかよ」
 隆夫「当たり前だろ、それが俺たちの使命じゃないか」
 安夫「草として働くのは俺と兄さんだけで十分じゃないか、せめて令子だけは自分のやりたいことやらせてやろうじゃないか!!」
 隆夫「馬鹿を言うな、そんなことをして翔様に分かってみろ、俺たちだけじゃなく、一族みんなに迷惑が掛かるんだぞ」
 安夫「だってそれじゃ令子が……」

 令子は、二人の兄が自分のために争うのに耐えられず、

 令子「やめて!! 私、ピアノは諦めるから、セシリア女学院に入って草として頑張るから……兄さんたち、喧嘩しないで、お願い!!」

 回想シーン終わり。

 
 令子「私、唯さんたちが羨ましくって」
 唯「なんで?」
 令子「だって、凄く仲が良いし、兄弟で力をあわせて影と戦ってるし……」
 唯「また泣いてしもうた、令子さんは泣き虫やねえ、そんげ泣いてばっかりおったら、なぁーんもできんじゃろ。泣く前に走る、走る前に食べる、腹が減っては戦はできんちゅうやろ、さぁ、元気出して食べよ!!」

 二人がご飯を食べようとすると、結花から電話が掛かってくる。

 
 結花「由真いるでしょう?」
 令子「え、由真さん学校じゃあ?」
 唯「もしもし、結花姉ちゃん、由真姉ちゃん、どうにかしたと」
 結花「由真、まだ帰ってないの? 分かった、すぐ帰るから気をつけるのよ」

 
 令子「由真さん、どうかしたんですか」
 唯「ううん、なんでんなか、心配いらん」
 令子「でもぉ」

 唯は玲子に心配掛けまいとするが、そこに、窓ガラスを割って、手紙でくるんだ石つぶてが飛び込んでくる。

 唯「なんやと、風間由真は我らが預かった、返して欲しければ田島安夫、令子を連れて東京港材木埠頭に来い」

 手紙を読んだ令子は一人で家を飛び出す。

 唯は追いかけようとするが、捻挫のせいでそれもままならない。

 唯が意味もなく額に梵字を浮かび上がらせていると、結花が帰ってくる。

 唯「令子さん、飛び出していってしもうた」
 結花「そう、実は般若と話しあってたの、隆夫って人を説得できたら般若が兄弟三人、風魔の里に匿ってくれるって言うの」

 唯と結花は、隆夫を説得するために指定の場所へ向かう。

 
 材木の積んである埠頭へ入ると、由真がクレーンで吊るされていた。

 
 由真「姉貴ぃーっ!! 唯ぃーっ!!」
 唯「由真姉ちゃん!!」
 結花「由真!!」

 しかし、由真、ヘボ過ぎんか?

 どういう状況で捕まったのか不明だが、相手は影の草やで?

 と、同時に、なんでこんな未熟な忍びを、いまだに影が殺せずにいるのか、甚だ疑問に思われる。

 オトヒやミヨズが出張れば、唯はともかく、結花や由真程度なら瞬殺できただろうに……

 それはともかく、すぐに隆夫と、イトコらしき二人の青年があらわれる。

 
 隆夫「令子はどうした」
 唯「あんたが隆夫さんね」
 隆夫「令子を連れて来いと言った筈だぞ」
 唯「連れてきたらどうするつもりやったと? 殺すつもりやったと」
 隆夫「お前たちには関係ない」
 唯「ある!!」

 一旦ファイティングポーズを取る二人だったが、頷き合うと、それぞれの武器を投げ捨てる。

 
 結花「私たちは話し合いに来たんです、あなたと……安夫さんと令子さんを見逃してあげて」
 唯「隆夫さん、なんで兄弟同士で殺しおうたりせにゃいかんと? どうしたらそんげな気持ちになると? 血を分けた兄弟じゃろ」
 隆夫「……」

 唯の言葉に視線を逸らし、黙り込む隆夫。

 結花「あなたたちが影から抜け出してくれれば、風魔一族はあなたたちを快く迎えるつもりです!!」
 唯「風魔の里で兄弟仲よう暮らせるとよ」
 隆夫「……」
 イトコ「隆夫、何を考えているのだ」
 イトコ「こいつらは風魔だぞ、惑わされるな」
 唯「しゃからしかーっ、惑わされちょるのはあんたらのほうじゃっ、影に、翔とか言う女に惑わされちょるんじゃっ!!」
 隆夫「ええいっ、黙れ!! 分かったような御託を並べやがって!! 貴様たちに何が分かると言うのだ、我ら草として生きるものの悲しみなど、分かる筈がない!!」
 唯「隆夫さん!!」
 隆夫「それほどまでに言うのなら、安夫と令子の代わりにお前たちを片付けてやろう。お前たちを差し出せば翔様もお喜びになるしな!!」

 一触即発の状態となるが、そこに安夫と令子が駆けつける。

 
 安夫「やめろ、兄さん、もしこの人たちの誰か一人でも傷つけたら、俺は兄貴たちと本気で戦うぞ」
 唯「いかん、そんげなことしたらいかん」

 と、令子が彼らの間に割って入り、

 
 令子「どうして、どうしてなの? どうして兄弟なのに戦わなきゃいけないの? どうして唯さんたちのように力をあわせてくれないの? 安夫兄さん、隆夫兄さん、どうして?」
 隆夫「……」
 令子「お願い、お願いだから、やめて、兄弟なんだからもうやめて……う、うう」

 令子は耐えられなくなったように、涙を噛み殺しながらその場に座り込む。

 それを見た隆夫やイトコたちは、戦意をなくしたように印字打鉄礫を手から落としてしまう。

 長年にわたる宿命や確執を、涙ひとつでおさめてしまうとは、げにも処女、いや、少女の力は偉大である。

 つーか、多分、令子は今までもこんな風に訴えてきたと思うのだが、ここに来て急に改心してしまうと言うのも、あまりにご都合主義的である。

 
 隆夫「安夫、令子」
 安夫「兄さん」
 隆夫「あっ」

 だが、二人に歩み寄ろうとした隆夫の背中に、何者かが投げた苦無が突き刺さる。

 物陰から忍びが出てきて、

 忍び「愚か者めが、影に背きし草は刈られる運命にあるのだ!!」

 影の忍びたちと戦う結花と唯。

 イトコたちがピンチに陥った唯を助けると言う爽やかな一幕もあり、唯たちの完勝となる。

 しかし、彼らはれっきとした忍びなのに、下っ端に過ぎない草に何で勝てないの?

 
 隆夫「安夫、令子、お前たち、力を合わせてこの人たちと一緒に翔を倒すんだ」
 安夫「兄さん、兄さんも一緒に戦おうよ!!」
 令子「兄さん……」
 隆夫「だけど、俺は……弟たちを頼みます……」

 隆夫は、それだけ言い残すとあっけなく死ぬ。

 ぶっちゃけ、とても死ぬような傷じゃないと思うのだが、毒でも塗られていたのかもしれない。

 唯「許さん、絶対に許さんぞ!! 翔!!」

 しかし、今回の話、一応由真が主役の筈なのに、肝心のラス殺陣では、ずーっとクレーンに吊るされたままなんだよね。

 これではあまりに由真がみじめである。

 ラスト、風魔の里へ向かう安夫、令子、イトコの二人を港から見送る三人姉妹。

 
 由真「あのさぁ、風魔の里に行っても、たまには電話ぐらいしていいんだからね」
 唯「おうおう、また胸がくるしゅうなっても知らんかいね」
 安夫「翔のことなんだけど……翔は年に一度だけ草たちの代表の前に姿をあらわすんだ。東野成美と言う草に接触すればいい、彼女は必ず翔に会う筈だ」

 こうして安夫は重大な情報を置き土産に風魔の里へ行き、それっきり登場することはないのだった。

 唯「東野成美か、ようし!!」

 ただ、前記したように、安夫の言葉が事実なら、翔が、ただの草に過ぎない安夫たちにじかに言葉を掛けたのは、やっぱり変だよね。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第18話「影のカラテキッド 三姉妹最大のピンチ」

2024-10-05 19:53:34 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇

 第18話「影のカラテキッド 三姉妹最大のピンチ」(1987年3月12日)

 冒頭、成南高校の空手部道場に、道着姿の生徒が座っている。

 と、顧問の教師がつかつかとやってきて、

 
 教師「連道武昭、貴様は全国高校空手道クラブ連盟から永久追放処分と決定した!!」

 その旨が書かれた辞令書を、連道の前に投げ捨てる。
 
 教師「お前と言う奴は、学生空手家の恥だ。重傷を負わされたものの痛みを考えてみろ!!」
 連道「真の強さをきわめなくて、何の空手道でしょうか? 先生、自分は……」
 教師「バカモン、さっさと出て行け。二度と当クラブの敷居を跨ぐことはあい許さん!!」

 教師は連道の言葉に耳を貸さず、荒々しい足取りで去って行く。

 連道「ふぬけどもめ、何故俺の空手道にかける真心を理解せんのだーっ!! ええーいっ!!」

 抑えきれない憤りを、サンドバックや積み重ねられた瓦にぶつける連道。

 と、何処からか「アービラウンケンソワカー」と言う、呪文を唱える声が聞こえてくる。

 
 連道「またあらわれやがったか、忍者ども!!」
 声「世紀末は近い、連道武昭、草としての宿命に目覚めよ。その鍛えぬいた空手技を我らの為に使え」
 連道「しつこい!! 俺が草だとか、忍者としての宿命だとか、そんな寝言なぞ、聞く耳持たん!!」

 これだけ見ると、電波系の人みたいだが、

 
 左源太「しかし、お前は生まれながらに草なのだ。お前の稀に見る才能を用いて、高校空手道界を征服し、その勢力で反乱を起こして世の中を覆す」

 実際に忍者が出てきて語り掛けたので、連道の幻聴ではないことが分かる。

 どうでもいいが、忍者が世紀末とか言うなよ……

 連道「どいつもこいつも勝手なことを抜かしやがる、消えろ、でねえとぶったおすぞ」
 左源太「貴様」
 連道「俺の才能は俺のために使う、誰が貴様らの手先などになるか」
 左源太「草ごときがその増長、許せん!!」

 部下の忍者たちが襲い掛かるが、連道の敵ではない。

 だが、左源太が放った「屍毒」を目に受けて、悶え苦しみながら道場を飛び出す。

 OP後、星流学園の屋上。

 由真たちが進級試験に向けての勉強をしている。

 
 ゴロウ「1789年には何が起こったでしょう?」
 由真「1789年でしょ? ひなわくすぶる……火縄燻ぶる、だから、あ、種子島への鉄砲伝来」
 ヒデ「カーン、外れ、だめだなぁ、由真姐御は……ひなわくすぶるバスチーユ、フランス革命に決まってんじゃないですか」
 由真「次!!」
 ゴロウ「375年は?」
 由真「375年……みな、皆殺し、ハンパな野郎は皆殺し!! 隣町のスケバングループとの果し合いの年!!」
 ヒデ「ブーッ!!」

 ヤケになって、芸人のおもしろ回答みたいなことを言う由真に、ヒデが思わず吹き出す。

 ゴロウ「あの、ゲルマン民族の大移動なんすけどね」
 唯「ほんと、由真姉ちゃんのおつむは勉強向きに出来ちょらんとやねえ。かわいそう」

 横で聞いていた唯が、しみじみとつぶやく。

 由真「お前にだけは言われたくないんだよ!!」

 由真、唯の頭をグーで殴る。

 いつもの兄弟喧嘩を始める二人を、保護者のような顔で眺めているクマと結花。

 
 クマ「年度末の進級試験が明日だってのに、姐御、さぞやご心配でしょうね、心中お察しいたします」
 結花「私が卒業したら、ちゃんと二人で星流を仕切っていけるのかしらね」
 クマ「どうでしょうねえ」

 二人は三年生なので、順当に行けば4月からこの学校からいなくなってしまうことになる。

 ……

 いや、結花、大学受験は?

 それはともかく、三人は般若に呼び出される。

 
 般若「連道武昭、天才と言われる学生空手家だが、他校の空手部へ道場破りを続け、数人に重傷を負わせ、学生空手界を永久追放された。その連道に影が接触したらしい」
 礼亜「しかも、連道は街で狂ったように暴れています。連道と影たちの間に一体何が起こったのか」
 般若「唯、結花、由真、行って連道を取り押さえろ、おそらく連道は草だ。影どもが彼の力を利用しようとしたのだ。それをお前たちの力で防げ」

 試験勉強でストレスのたまっていた由真と唯は、願ってもないチャンスとばかりに立ち上がるが、結花が鋭い声で止める。

 結花「お待ち!! この指令、明日まで待って貰えないかしら? 明日は年度末の進級試験、この二人はそれでもなくても危ないの……勉強させなくちゃならないのよ」
 唯「なに言うとね、結花姉ちゃん、わちゃ三代目スケバン刑事やじ、かつこわりぃこと言わんでよ」
 由真「だいじょうぶだよ、姉貴、行こうよ」
 結花「おだまり、父さんも母さんも亡くなった今、私はあんたたちに対する責任があるわ。落第なんてさせられない。明日まで待って頂戴!!」

 二人の親代わりとして、正々堂々と要求する結花であったが、

 
 般若「それは出来ん。結花、こうしてる間にも影たちは着々と世界を覆っていこうとしているのだ。それと戦うのはお前たちの宿命!! 試験と任務、両立させてこそ、風魔の子であろう」
 結花「そんな……」
 般若「甘いぞ結花!! 逆を返せばたかがこの二つを両立させることもできないで、影の陰謀を防げると思うか? 元より甘えの許されない修羅の道、ゆけっ!! そして使命を果たせ!!」

 般若はむちゃくちゃな理屈で却下し、追い立てるように叫ぶ。

 結花はいかにも納得行かない様子だったが、それでも命令に従う。

 しかし、世界が滅ぶかどうかの瀬戸際なのに、試験もクソもないと思うのだが……

 それに、もっと重大な任務ならともかく、連道を確保する仕事なんて、別に三姉妹じゃなくても般若の部下でも十分務まる仕事だろう。

 それはともかく、連道は、道着姿のまま、街中で狂ったように暴れていた。

 ……

 なんでケーサツは来ないんだーっ?

 三姉妹が彼を取り押さえようとするが、空手の天才をそう簡単に捕まえられるわけがない。

 だが、連道の動きを冷静に観察していた唯は、連道が犬や子供にぶつかりそうになると、意識的に避けているのに気付く。

 左源太たちの妨害もあって、三人は連道を取り逃がしてしまう。

 
 結花「この任務これまでよ!! 連道は手強いわ、それに影の忍びたちも彼を追ってる。明日の為の試験勉強どころか、試験そのものも受けられるかどうか……」
 唯「じゃけえ、般若が言うちょったやろ、試験と任務を……」
 結花「般若は所詮他人よ!! 影と戦うのが私たちの宿命とあの人は言うけど、その前に私たちは高校生なのよ。進学問題や、将来の夢だってあるわ。私は大学へ進みたいの」

 いや、「大学へ進みたい」って、もう3月なんですけど……

 結花「この任務は中止して、わき目も振らず試験勉強すること、いいわね」
 由真「姉貴ぃ」
 唯「わちは連道を追う」
 結花「唯!!」
 唯「わちは見たんじゃ、連道は子犬を踏み潰すまいとし、ちっちゃな子供を庇いよった。あいつが暴れちょるのには何か訳があるんじゃ。放っておくわけに行かん。姉ちゃん、勘弁ね」

 唯、姉の言葉に逆らって連道の後を追う。

 
 その夜、由真のほうは姉に従って家に戻り、一応、試験勉強に励んでいる。

 由真「唯の奴、だいじょうぶかねえ」
 結花「よっぽど放っておこうかと思ったんだけど、私、これから探しに行くわ」
 由真「ええっ、これから?」
 結花「唯も私の妹よ、みすみす落第するのを黙って見ている訳には行かないわ」
 由真「だって、それじゃあ姉貴が勉強できないじゃん」
 結花「私はあなたたちとは違うの」

 由真の使ってる壁掛けハンガー、どっかで見たことあるなぁと思ったら、マヨネーズの模様に似ているのだ。

 一方、唯は、倉庫の片隅に身を潜めている連道を発見する。

 唯「連道武昭さんじゃね」

 連道は問答無用とばかり、段ボールの箱を投げつける。

 唯「ちょっと待ちない、わちは話し合いにきたんじゃ」
 連道「うるせえーっ!!」

 連道、殴りかかろうとするが、苦しそうに喉を押さえて座り込む。

 唯「やっぱしあんた、どっか具合悪いんじゃろう、分かった、水持ってきちゃる」

 同じ頃、左源太は、翔の前に畏まっていた。

 
 翔「兵部(ひょうぶ)の左源太、たかが草ごとき一匹、思うままに操れいで、お主、それでも忍びか!!」
 左源太「はっ」

 
 オトヒ「如何にその天才が惜しかろうと言え、影星の宿命に従わぬとは」
 ミヨズ「連道武昭、許しておくわけにはいかぬぞ」
 左源太「きゃつは私が放ちました屍毒によって恐ろしい苦しみを味わっている筈です、そう遠くへは逃げられませぬ」
 翔「呪い呪わば影の○○、それ妄執の吹き溜まり、人の心は火にくべい、人の命は火に捨てよ、連道武昭の命を取れ

 途中から老婆の声になって、非情の命令を下す翔。

 CM後、唯がどこからか汲んできた水を差し出すが、手負いの獣のように人を信じられなくなっている連道は、それを払い除けて唯の腹に拳を叩き込む。

 
 連道「お前が影ではないと言う証はない。油断させて俺に近付き、倒そうとしているんだろう」
 唯「そんなに人が信用できんのか」
 連道「草の宿命などに負けぬ為だ!! 自分の才能で世を渡り、望むものを掴む。その為には他人は信用せん!! 頼れるのは己ひとりだっ!!」
 唯「さびしか男やね、あんた……」
 連道「うるせえーっ!!」

 連道、唯の顔に正拳突きを放つが、唯は微動だにしない。

 
 連道「何故よけん?」
 唯「あんたは無闇に人を殴る人じゃなか」

 連道は再び激しく咳き込む。

 唯「何があったんじゃ」
 連道「屍毒……」
 唯「屍毒?」

 唯は、学校の忍者ルームへ行き、屍毒について調べる。

 唯「屍毒……ネズミやイタチ、たぬきなどの死体を腐らせ、その体液を採集して……きたなかぁ、解毒剤はただひとつ、カッパノミソギ草……」

 唯は池の周りを駆けずり回ってその草を見付け出し、連道のところに戻る。

 
 唯「解毒剤じゃ、今すぐ飲ましてやるからね」

 唯はありあわせの道具で草を煎じる。

 それを、探しに来た結花が物陰から見ていた。

 
 唯「さ、飲んでみない。おっと、もうひっくり返したらいかんとよ」

 もう逆らう気力もないのか、連道は素直にその液体を口にする。

 連道「……うっ」

 
 唯「ひひ、おもしりぃ顔!! そんげ苦い?」

 あまりの苦さに顔をしかめる連道を、唯が悪戯っぽい笑顔でからかい、自らも口に含んで、わざとしかめっ面をして見せる。

 
 それを見て、連道も思わず笑みをこぼす。

 唯「うふっ、笑った!!」
 連道「……」
 唯「ああ、照れちょる、照れちょる、笑うと結構可愛いの……はい、最後までちゃんとのまにゃいかんとよ」

 連道が言われたとおり飲み干して器を返そうとすると、疲れ果てた唯は積まれたパレットに凭れて眠っていた。

 そこへ結花があらわれ、

 
 結花「唯は連れて帰るわ」
 連道「……」
 結花「あなたを守ってあげられないのはつらいけど、明日の試験には私たちの進級がかかっているの」
 連道(いや、こっちは命がかかってるんですが……)

 結花が、眠りこけている唯の体を抱き上げようとすると、

 連道「その子の名前、教えてくれないか」
 結花「風間、唯」
 連道「風間、唯……天使だな、その子……俺は自分のことしか考えなかったのかも知れん。あんたたちが何者か知らんがありがとう、もしこの命、長らえることが出来たら友達になってくれるか?」

 翌日、恐らくあれから徹夜で詰め込み勉強していたのだろう、肝心のテスト中に居眠りをしてしまう唯であった。

 その頭をゴツンと殴り、

 依田「進級試験ですよ、風間唯君、よしなに……」

 
 勉強しなくても余裕で試験をパスできる学力を持つ結花は、普段と変わらぬ様子で試験を受けていたが、ふと脳裏に、連道の「俺は自分のことしか考えなかったのかも知れん」と言う言葉がリフレインする。

 結花(なのに私は……)

 自分のことしか考えていないのは、自分も同じではないかと胸を突かれる結花。

 不意に立ち上がると、教室を出て行こうとする。

 
 小坂「何処行くんですか、風間結花さん!!」
 結花「人の命と、自分の進学を天秤にかけたりして……私も自分のことしか考えてなかった。失礼します」

 結花は頭を下げると、そのまま教室を飛び出す。

 
 小坂「風間さん!!」
 クマ「姐御!!」
 小坂「山田君!! 山田君!!」

 クマも結花を追いかけ、試験を放棄してしまう。

 にしても、久しぶりの小坂先生(松香ふたみ)の出番なのに、その顔を大きく映してくれず、実に勿体無い話だ。

 ……

 つーかさぁ、結花、なんで昨夜のうちに、連道も保護しなかったのだろう?

 自分で保護する余裕がなくても、般若に知らせればそれで済んだ筈である。

 無論、結花にはどうしても試験に落第して女子高生を続けてもらわねばならないという、番組サイドの都合によるものなんだけどね。

 それはともかく、連道は左源太たちに見付かり孤軍奮闘していたが、そこに結花が駆けつける。

 ちなみにクマは途中ではぐれちゃったようで、全く何の役にも立ちませんでした。

 
 結花「連道」
 連道「だいじょぶだ、負けられん、俺のために無償の看病をしてくれ唯ちゃんの為にも俺は負けられないんだっ!!」

 左源太はかなりの使い手で、結花も苦戦を余儀なくされる。

 そこに、試験官やってる筈の般若があらわれ、

 
 般若「結花、鳥は羽ばたくものぞ!!」

 般若のアドバイスに、

 
 結花「こうですか?」
 般若「いや、そういうことぢゃなくて……」

 大ボケをかます結花であったが、嘘である。

 余人には意味不明のアドバイスだったが、結花は理解したようで、折鶴の羽を折ってから飛ばす。

 左源太はそれをかわすが、鶴の羽がひとりでに開いて、ブーメランのように旋回し、無防備な左源太の背中に命中する。

 左源太はそのままぶっ倒れるが、あんなものが当たったくらいで気絶するかしら?

 部下はとっとと逃げ出し、連道はその場に座り込む。

 
 結花「連道、連道」
 般若「心配するな、命に別状はない……結花、試験は気の毒だった」

 般若の慰めの言葉に、結花は笑顔で首を横に振り、

 結花「唯に負けたわ、あの子は天性の何かを持っている。それに触れてこの人は……私、恥ずかしかった。これで良かったのよ」

 留年をサバサバした表情で受け入れる結花。

 
 それでも、掲示板に貼られた試験の結果の横に、自分たちの名前が留年決定者として麗々しく貼り出されているのを見ては、結花もクマもショックを隠せない。

 特に、成績優秀な結花には相当の屈辱だったようで、涙までこぼす。

 そこに唯と由真が来て、

 唯「結花姉ちゃん」
 由真「ごめん、何にも気付かないでのほほんと試験なんか受けちゃって」

 結花は涙を拭いて振り向くと、つとめて明るい声で、

 結花「いいのよ、あんたたち進級できたと言っても落第ぎりぎりなんだから、気を抜いちゃダメよ」
 唯「わちゃだいじょぶなんじゃけどぉ、由真姉ちゃんがなぁ」
 由真「なんだとぉ、このドッカン娘が」
 結花「由真、これからは同じ星流高校の3年生よ、頑張ろうね」

 ヒロインが留年と言う、学園ドラマでも空前絶後と思われる不祥事を、前向きに受け止めようとする結花。

 結花「唯、教わったわ、ありがとう」
 唯「はぁ……」

 ついでに唯に礼を言うが、無論、唯には何のことだかさっぱりわからない。

 と、依田が結花の肩を叩き、

 
 依田「連道武昭からの伝言です。傷が良くなったら共に影の忍びと戦おうと……彼は我々の組織の病院に運びました。完治すれば心強い味方になりますよ」

 それだけ言って立ち去る。

 その言葉どおり、のちに、連道は風魔の一員として唯たちの前に姿をあらわすことになる。

 ちなみに、彼らの背後に3年C組の成績表が見えるのだが、それによると、最下位は500満点中170点である。

 と言うことは、平均35点くらいになるのだが、それでも合格はしているわけである。

 しかし、13話で唯の受けた学期末試験は60点が赤点ラインだったので、いささか低過ぎるような気もする。

 しかも、追試と言う救済手段もなしにいきなり落第と言うのは厳し過ぎる。

 あと、高校なのに科目が5つしかないと言うのも変だけどね。

 ともあれ、結花とクマはスタッフの思惑通り留年し、番組に残ることになったのである。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第17話「仕掛けられた死の罠 唯のアブナイ休日」

2024-09-16 17:42:01 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇

 第17話「仕掛けられた死の罠 唯のアブナイ休日」(1987年3月5日)

 冒頭、ららぽーとの前で、制服姿の高校生が、横浜銀蝿風のチンピラたちにカツを揚げられそうになっていた。

 例によって、まわりの人は見て見ぬふりだが、そこに唯が颯爽とあらわれる。

 
 唯「あんたたち、やめない、大の男が二人でみっともなか」
 チンピラ「おい、こいつ、プッツンか」
 チンピラ「かわいがってもらいてえんだろ」

 唯はヨーヨーを投げつけ、チンピラたちを撃退する。

 高校生「ありがとうございます、さぞや名のあるお方で、名前をお聞かせ願えないでしょうか」
 唯「清流学園1年B組、風間唯」

 唯が名乗ると、ギャラリーから拍手と歓声が起こる。 

 調子に乗った唯、ヨーヨーの代紋を見せて、「またの名を三代目スケバン刑事、麻宮サキ!!」とその正体まで明かしてしまう。

 その一部始終を、「小癋見の大介」と言う般若の部下に撮られているとも知らず。

 OP後、大介が学校で依田に報告している。

 
 大介「風間唯は忍びの戦いに自信をつけております。しかし、自信と思い上がりは紙一重、大怪我をせぬうちになにか手を打たねば取り返しのつかぬことに……」
 依田「困った奴だ、少し手綱を締めねばなるまい」

 
 意気揚々と代紋を見せびらかす唯の写真を見ながらつぶやく依田。

 依田は、図書館の忍者ルームに三姉妹を呼び寄せる。

 依田「本日はみなさんにご注意願いたいことがあって、集まって頂いたわけです。戦うものの心理とは奇妙な物で、はじめ戦いを恐れていたものも次第にその中に溺れていく、ま、戦いの魔力とでも申しましょうか」
 由真「どういうことだよ、水もないのに溺れんのかよ」
 結花「私たちの中に戦いに溺れているものがいるってこと……」
 依田「ひとことで言えば、自信過剰、思い上がり!! とでも申せましょうかね」

 そう言いながら、ことさらに唯の顔を見るが、鈍感な唯は自分のことだとは露ほども思わず、

 
 唯「何かと思ったらそんげなこつか、なら心配いらん」
 依田「そうですか」
 唯「わちゃ思慮深いほうじゃから思い上がりはなか、日々反省の良い子じゃ」

 その言い方が既に思い上がっていた。

 依田、それこそ般若のような怖い顔になるが、相変わらず唯は気付かず、結花と由真のほうが雷を落とされるのではないかと身構える。

 
 依田「ご理解頂いていればよろしいんですが……」

 両手を強く握り合わせ、なんとか怒りを飲み込む依田。

 
 依田「では本題に移りましょう。時は春、幸い影もしばし姿を潜めています。こういう時に骨休みをしたらいかがかと思いまして」
 唯「そうじゃそうじゃ」
 依田「私から皆さんにツアーをプレゼントさせていただきます」
 唯「やったーっ!! ……ところでツアーってなんね?」
 由真「わからない癖に喜ぶなよ、ツアーはツアーだよ」
 結花「団体旅行のことよ」
 唯「旅行かぁ、うれしか」
 結花「久しぶりね」
 依田「ただし、旅行の間、思い上がりの件も反省して下さいね」

 旅行と聞いて盛り上がる結花たちの耳には、依田の注意の言葉も素通りであった。

 が、

 
 由真「依田の奴、ふざけやがって」
 結花「ハワイかグァムってことはないって思ってたけどね」
 由真「何が悲しゅうて、東京でおっかさん、な訳?」

 ツアーと言っても、小田急バスで行く、都内の観光名所めぐりの日帰りツアーだったので、たちまちテンションが下がる結花と由真。

 唯が遅れてやってくるが、その際、ひとりの若者とぶつかる。

 大介「何処に目ぇつけちょっとかー」
 唯「当たってきたのはそっちじゃ」
 大介「なんじゃ、このがんたれが」
 唯「なんてやー」
 大介「あんた九州ね」
 唯「宮崎」
 大介「えっ、おいも」
 唯「奇遇じゃねえ」

 最初は喧嘩腰だったが、同郷と聞いて、たちまち意気投合する二人。

 由真「てめえら、なにのたのたしてんだよ」
 唯「すぐ行くがね」
 大介「東京の女の人は怖かー、スケバンごつあるね、ひょっとしてお知り合い?」
 唯「いいえ、赤の他人」

 
 大介「おいは田之上大介、こう見えても、若き牧場主じゃ」
 唯「すごかー」
 大介「でも、良かった、実は、東京にナウい嫁さんば、探しにきたんじゃー、後ろん席のスケバンみたいなおなごばっかりやったら、どげんしゅうちょう思っとったけど……唯さんみたいな可愛い人もおるんやね」
 唯「恥ずかしかー」

 純朴そうな大介に褒められ、顔を赤らめる唯。

 由真と結花は、他の客が中高年ばかりで残念そうであったが、久しぶりのバス旅行をそれなりに楽しんでいた。

 バスは、定番中の定番、東京タワーへ。

 唯が、大展望台の土産物屋で「反省」と書かれた通行手形を見ていると、何処からか苦無が飛んできたので、咄嗟にポシェットで防ぐ。

 唯「この中に影が……」

 唯がそのことを姉たちに話していると、大介が来て、

 
 大介「ばっちゃんから頼まれとったお守りの神社がツアーのコースから外れとるんじゃ、頼む、一生のお願いじゃ、ツアーをやめておいを案内してくりや」

 結花は唯を引っ張っていき、

 結花「断るのよ、唯」
 唯「じゃけん、気の毒じゃもん」
 結花「影を甘く見ちゃいけないわ」
 唯「わちがついちょれば大丈夫」
 結花「もう依田先生の言ったことを忘れたの? そう言うのを思い上がりって言うのよ」
 唯「……」

 結花に厳しく諭された唯であったが、結局、大介の為にこっそりツアーから抜けることにする。

 結花と由真はバスに戻って、二人が来るのを待っていたが、

 
 バスガイド「それでは出発致します」
 結花「待って、まだ乗ってない人がいるわ」
 バスガイド「はぁ? 満席でございますが」

 このバスガイドさん、なかなか色っぽくて綺麗なのだが、出番が少ないのが残念だ。

 演じるのは、草葉優子さん。

 
 由真「何処に目ぇつけてんだよ」

 思わず立ち上がる二人だったが、いつの間にか、前の席が見知らぬ客で埋まっていた。

 由真「てめーら、影か?」

 中腰のまま、リリアンと折鶴を構える二人。

 バスガイド「他のお客様のご迷惑になります。お静かに……」

 言いながら、バスガイドは吹き矢の筒を二人に向け、金粉のような物を吹きつけてくる。

 結花「何を!!」
 バスガイド「春香(しゅんか)の術と申します。お休みくださいませ」

 バスガイドがにっこり微笑むのと同時に、結花と由真はドサッと座席に倒れ込んで眠りに落ちる。

 そう、このバスツアーそのものが罠だったのだ。

 しかし、いくら不意を衝かれたとは言え、こんな腕で、影に勝てるのだろうか?

 CM後、

 
 姉たちがそんな目にあっているとも知らず、唯は大介とすっかりデート気分で、ジェラートを舐めながら、大介が是非行きたいと言う氷川神社にやってきていた。

 しかし、唯だって宮崎から出て日も浅いのに、そんな案内が出来るほど東京の地理を知っているのだろうか?

 大介「唯さんな、ほんにいい人じゃ、まだ学生さんな?」
 唯「わちはごくごく普通の高校生じゃ」
 大介「ご両親は?」
 唯「父はちょっとは名の知れた一流商社の社員じゃ、こう見えてもお嬢様なんじゃ」
 大介「そうじゃろう、そうじゃちょ思った」

 思わず見栄を張ってそんな嘘をつく唯だったが、人の良い大介は疑いもしない。

 
 神社には、「真(まこと)の狛犬」と言う、嘘をついたものが手を入れると手を噛み切れられると言う言い伝えのある狛犬があった。

 東京にびっくりするほど疎い管理人、一瞬、ほんとにそんなものがあるのかと思ってしまったが、無論、これはドラマ内の架空の狛犬である。

 そう、言うまでもなく、「ローマの休日」に出てくる「真実の口」のパロディなのだ。また、二人がジェラートを食べていたのも、「ローマの休日」が元ネタである。

 と言うより、今回のエピソード自体、「ローマの休日」を下敷きにしているのだろう。

 細かいことだが、唯は靴を買っていてバスに遅れたと言うのだが、これも、「ローマの休日」で、ヒロインがサンダルを買うシーンから来ていると思われる。

 閑話休題、

 大介「やってみーや」
 唯「……」

 嘘をついたばかりで気が咎めていた唯は、そんな伝説を真に受けて、目をつぶってこわごわ狛犬の口に手を入れる。

 
 唯「へへ」

 無論、何事も起こる筈がなく、自慢げにその手を大介に見せる唯。

 
 続いて、大介が手を差し入れるが、今度は手が抜けなくなって慌てふためく。

 と言っても、スタッフもさすがに「ローマの休日」そのまんまのシーンにするのは恥ずかしかったのか、大介のいたずらではなく、袖が引っ掛かったと言うことにしている

 唯(風に乗って、何か薬が……)

 その時、唯は異様な香りを感じる。さっきの「春香の術」の金粉が周囲を舞っているのだ。

 唯「大介さん、そこ動かんで」

 唯は、袖が引っ掛かって動けない大介を残し、石段を降りて人気のない雑木林に移動する。

 
 唯(大介さんを、影との戦いに巻き込んじゃいけない)

 唯「出てこんね、わちを倒すのが目的なんじゃろう」

 唯の呼びかけに応じ、数人の忍びが何処からともなく湧いて出て、唯に襲い掛かる。

 唯(いかん、薬が回ってきた)

 唯、「春香の術」にかかりそうになるが、すかさずブローチのピンで自分の手を刺し、その痛みで術を破る。

 この辺は、いかにも百戦錬磨の忍びと言う感じで頼もしい。

 忍びたちはすぐ退散する。

 唯がさっきのところへ戻ると、「春賀の術」にやられたのか、大介が狛犬の前でぶっ倒れていた。

 唯「大介さん、しっかりして」
 大介「み、水……」
 唯「水? 分かった」

 
 唯、公園の手洗い場の水を手で汲んで運ぼうとするが、何度やっても途中でこぼれてしまう。

 ……

 自販機で買えばいいのでは?

 
 仕方なく、水を口に含んで、

 
 さすがに口移しまではせず、仰向けになった大介に顔を近付け、口から水をぽたぽた落とすと言う、中途半端な方法で水を飲ませるのだった。

 目を覚ました大介は、すぐ目の前に唯の顔があるのでドキッとするが、反射的にライター型の隠しカメラでその顔を撮る。

 何もそんなところを撮らなくてもいいと思うが、大介の趣味なのかもしれない。

 唯「気がついたか、大介さん、どっかおかしいとこはないと?」
 大介「ああ、ちょっと頭が痛かけど……大丈夫、すぐ良くなるさ」
 唯「良かった、わち、どんげしようかと思って……」

 大介が無事なのを知って、嬉しさのあまり思わず涙ぐむ唯。

 
 何故か、その顔をカメラで撮る大介。

 後に告白しているように、本気で唯のことが好きになってしまったのかもしれない。

 
 唯「あっ、タバコはまだ無理じゃ」

 こんな至近距離で撮られて、シャッター音までしてるのに、相変わらず唯は全く気付かない。

 それだけ大介のことを信じ切っていると言うことなのだろうが、ここまで鈍いと逆に心配になってくる。

 あえなく術に掛かった結花たちといい、忍びの技量ではどう見ても風魔のほうが三姉妹より上らしいのだが、それなのに、風魔の忍びは(般若を除いて)影に勝てないんだよね。

 でも、三姉妹は過去の戦いで影に連戦連勝してるんだよね。

 なんか、おかしくないか?

 ちなみにこのライターに仕込んだカメラと言うのも、「ローマの休日」に出てくるアイテムだそうです。

 その後、二人は雑木林のベンチに座って話す。

 大介「唯さんな、優しい人やね」
 唯「そんな」
 大介「おいの、おいの嫁さんにならんね?」
 唯「……」
 大介「ごめん、今すぐちゅう話じゃなか、唯さんがずっと大人になってからの話じゃ」
 唯「そんげな先のことはわからんし」
 大介「ほんじゃあ、真面目にじっくり考えてくれんね。おいはいつまでもまっとるけん」
 唯「やっぱり、ダメじゃ」
 大介「今すぐじゃなか、希望をもっとってよかやろ」
 唯「うちなんかダメじゃ、他にもっと良い人がおるじゃろう」
 大介「おいはそんなに嫌われたんか?」
 唯「そんげなんじゃないけど……」
 大介「そんじゃなんで?」

 突然プロポーズされて戸惑う唯だったが、再び忍びたちがあらわれ、大介の足首をロープに引っ掛け逆さに吊り上げる。

 唯「大介さん、わちはお嬢様なんかじゃない、あんたなんかの手に負える女じゃないぞ!!」

 たちまち戦闘モードに入る唯。

 
 唯「同じ技はもう食わん!!」

 忍びのひとりが金粉の入った筒を取り出すのを見るが、指先を舐めて風を読み、風上に移動する唯。

 ヨーヨーで筒を奪うと、逆にそれを振りまいて忍びを追い払う。

 相手が風魔とは言え、その冷静沈着な戦いぶりはなかなか見事であった。

 その後、タクシーで戻ってくる二人。

 
 唯「みんなわちのせいなんじゃ、わちが思いあがっちょったばっかりに、大介さんをこがいな目に遭わせて……」

 しおらしく反省してみせる唯であったが、唯は忍びの襲撃に的確に対応し、ちゃんと大介の身も守ったのだから、そこまで自分を責めると言うのは不自然で、いかにも般若or脚本家の都合の良い展開に思える。

 むしろ反省すべきは、あっさり術に掛かった結花と由真のほうじゃないかと……

 唯「大介さんはこのまま田舎に帰ってください」

 唯はそれだけ言ってタクシーを降りると、大介への思いを断ち切るように走り去る。

 大介も未練たっぷりの様子であったが、諦めてタクシーを出させる。

 唯の前に依田があらわれる。

 
 依田「どうでした、一日の骨休めは」
 唯「お土産じゃ」

 唯は東京タワーで買った通行手形を渡す。

 依田「ほう、反省、良い言葉です」
 唯「わちはいつの間にか思い上がっちょったのかもしれん。今日の一日でようっと分かったわい」
 依田「有意義な一日だったようですね」

 依田、タバコを咥えると、唯に見せ付けるようにライターで火をつける。

 唯「そのライターは……」
 依田「珍しいでしょ」
 唯「間違いなか、大介さんのライターじゃ、なんでこれを依田先生が?」
 井田「高性能のキャメラにもなるんですけどね」

 依田は、今日大介が隠し撮りした数枚の写真を懐から取り出して唯に見せる。

 依田「君は影の存在を知りながら同情から結花や由真と別行動を取り、一旦は敵を追い払いながら、全てを自分ひとりで解決しようとした。思い上がりから、細かい配慮が欠けていたようですね」
 唯「こりゃ一体どういうことなんじゃ? わちにはなにがなんだかさっぱりわからん」

 唯が混乱していると、結花たちも姿を見せる。

 結花「全ては般若の計略ってわけ、唯の思い上がりを自覚させる為のね」
 由真「あのバスガイドにはほんとひどい目に遭ったよ、まだ頭がガンガンする」
 唯「じゃあ、4人の忍者も?」
 依田「全て私の部下です」
 唯「まさか、大介さんも?」
 依田「小癋見の大介、探索専門の部下です」

 そう、最初に般若に報告していた能面の男こそ、朴訥な青年・大介だったのだ。

 唯「……ひどか、ひど過ぎる!! わちはもうなんもかんも信じられん!!」

 唯が怒ったのも当然だったが、

 結花「お黙んなさい!!」
 唯「結花姉ちゃん……」
 結花「私も最初はひどいと思ったわよ、でもつらいのは騙す方もおんなじ、そこまでさせたのは自覚が足りなかった自分の責任でしょう?」

 と、「ボールをぶつけた方が、ぶつけられた方より痛い」式の謎理論で、逆に結花に怒られるのだが、それは違うと思う。

 何故なら、唯の思い上がりを自覚させる方法は他にいくらでもあり、何も今回のようにモニタリングみたいなことをする必要はないからである。

 言い換えると、「一言で良いから謝らんかいワレ」と言うことなのである。

 依田「彼もつらかったんです。大介から預かった写真……確かに渡しましたよ」

 依田は、自分が首謀者のくせに他人事のように大介の気持ちを代弁すると、さっさと立ち去る。

 唯「大介の馬鹿!!」

 まだ腹の癒えない唯は、写真を地面に叩きつけるが、由真がそれを拾い上げ、

 由真「なんだよ、これ」
 結花「全部唯の写真じゃん……メッセージよ」
 唯「いらない」
 結花「読みなさい」
 唯「いやじゃ」
 結花「いいから読むの」

 結花は無理やり唯に渡すが、

 
 それにはこんなことが書いてあった。

 単純な唯は、それだけで機嫌を直す。

 
 その後、いつもの調子でじゃれあう三人。

 依田「ま、いいでしょう、青春なんだから……」

 なお、言い忘れていたが、大介を演じたのは、「超獣戦隊ライブマン」のドクター・オブラーこと尾形豪役の坂井徹さんである。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第16話「リリアン棒危うし!由真の一番長い日」

2024-09-02 19:58:06 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇

 第16話「リリアン棒危うし!由真の一番長い日」(1987年2月26日)

 「影」が一切登場しない上、主役である浅香唯もほとんど出てこないと言う異色作。

 しかも、物語の滑り出しは、映画「ウエストサイドストーリー」をパクった、こっぱずかしいミュージカル調なのである。

 冒頭、

 
 それらしい音楽にあわせて、スケバン風の女子高生たちがフィンガースナップをしている。

 ……

 顔から拡散波動砲が出るくらいの恥ずかしさ!!

 
 リーダー格の太田涼子を演じるのは、太田涼子。

 要するに、芸名と役名が同じなのだ。

 ゲストの中では飛び切り美形の涼子さんは、後に布瀬智子と改名し、「少女コマンドーいづみ」10話にもゲスト出演されている。

 続いて、指を鳴らしながら、Gメン75よろしく、横一列になって歩く涼子たち。

 
 これだけでも大概だが、最後はこんなことまでさせられるのだった。

 やらせるほうはいいけど、やらされるほうの身にもなっていただきたい。

 と、彼らの前に星流学園のスケバンたちが、同じく指パッチンしながら登場するが、

 スケバン「やっべえ、山下学園の涼子だぜ」

 涼子におそれをなして、一戦も交えずに逃げ出すが、高架下の空き地でつかまる。

 
 涼子に睨まれて、声もなく固まるスケバンたち。

 涼子はひとりで彼らをボコボコにする。

 
 涼子「結花と由真に言っときな、山下学園総番・太田涼子が今度は必ずあんたたちの縄張りを貰いに行くってね」

 OP後、そのことを喫茶店でゴロウたちに話しているスケバンたち。

 
 ヒデ「そうか、涼子たちにやられたのか」
 女生徒「由真姐御がいたらなぁ」
 ヒデ「最近忙しい忙しいって、俺たちのこと見てくれねえもんな」
 女生徒「涼子たちがのさばってたんじゃ、安心して突っ張ってらんねえよ!!」

 「突っ張る」と言う言葉の意味を、完全に履き違えている女生徒たち。

 安心して突っ張りたかったら、不良なんてやめてしまえばいいのである。

 ゴロウ「バカヤロウ!! 涼子たちにでけえツラされてたまるかよ!!」

 そんな、スケバンの風上にも置けない台詞にカッとしたのか、ゴロウがテーブルを強く叩いて吠える。

 ヒデ「おい、ゴロウ!!」
 ゴロウ「どうせ姐御たちに言ったって何もしてくれないだろ、だったら俺が行って、カタキとってやる」

 いつになく攻撃的なゴロウ、そう言うとひとりで店を出て行く。

 
 一方、由真は、本屋で堂々とレシピを書き写していた。

 デジタル万引きならぬ、アナログ万引きである。

 こんな奴に、世界を救って欲しくねえ……

 誠「お客さん、困りますねえ」
 由真「なんだよ、文句あんのかよ」

 誰かがその肩を叩いて注意するが、それは店主ではなく、

 
 由真「あれえ」
 誠「やっ」
 由真「誠さん」

 由真の知り合いの、誠と言う好青年であった。

 10話の風花良は、是非こちらのイケメンに演じて欲しかった。

 その後、外を歩きながら話している二人。

 由真「いつ日本に帰ってきたんですか」
 誠「一週間前、俺さぁ、アメリカの大学を卒業した後も、ずっと向こうで暮らそうと思ってね、親に相談する為に帰ってきたんだ。昨日、やっと両親が許してくれて」
 由真「じゃあ、もう日本には?」
 誠「帰ってこないつもりだ。よほどのことがない限りね。……結花さん、元気かな」
 由真「姉貴、元気ですよ」
 誠「そうか」

 由真は誠の前に出て、

 
 由真「姉貴に会って下さい、姉貴、誠さんの顔見たらきっと喜ぶと思うから、ね」
 誠「会わない方がいいんだ」
 由真「どうして」
 誠「結花さんだってそう思ってるさ」
 由真「待って、アメリカいつ行くんですか」
 誠「明日の夜発つつもりだ」
 由真「じゃあ、昼間はあいてるんですね、だったら明日の3時、駅前で待ってて下さい。今度こそ姉貴を見送りに行かせますから」
 誠「……」

 と、そこに、手下の女生徒が、ゴロウたちが涼子たちにやられていると知らせに来る。

 由真「誠さん、明日3時ね!!」

 だが、由真が駆けつけたときにはもう喧嘩は終わっていて、負けたゴロウたちが怪我の手当てを受けているだけだった。

 ヒデ「涼子の奴が、これを……」

 涼子は、活字のような綺麗な字でしたためられた「果し状」を残していた。

 
 由真「星流高校裏番・風間結花、同じく総番・風間由真へ、星流と山下の縄張りを賭け、決闘を申し込む、明日の午後3時、轟台ドルフィンプールにて待つ……」

 誠との約束とまるかぶりの条件に、由真の顔が曇る。

 
 由真「やっべえなぁ」
 ヒデ「姐御、やっつけてくれよ」
 由真「うん……」
 ゴロウ「姐御なんかあてになんねえよ」

 ヒデが縋るように頼むが、ゴロウはそっぽを向いて吐き捨てる。
 
 由真「なにぃ、どういうことだよ、ゴロウ」
 ゴロウ「姐御たち、最近、忙しい忙しいってすぐどっか行っちまって、番長としての睨みが利かないし、涼子たちがのさばり始めたのだってずっと知らなかったでしょう?」
 由真「……」

 ゴロウが由真たちの「不心得」を責めると、他のものたちも同意するように由真を見詰める。
 
 まさか「マッポの手先」をやってるとは言えず、

 由真「やってやるよ、涼子なんて私ひとりで十分さ」
 ヒデ「でも、結花姐御がいなくちゃ」
 由真「うるせえ、星流学園の総番はこの由真だ。由真がきっちりカタをつけてやる。いいか、姉貴には絶対このこと喋るなよ。わかったな」

 結花には知らせず、自分ひとりで処理しようと決意するのだった。

 一方、風間家では、唯が結花に「出張」することになったと言って威張っていた。

 
 唯「凄いじゃろ、高校生で出張やもん、なんかえろーなった気がする」
 結花「何処へ行くの」
 唯「千葉の九十九里っちゅうとこじゃ」

 唯の言葉に結花は笑って、

 結花「それじゃ日帰りじゃない」
 唯「じゃけん、指令で行くとよ、仕事じゃろ、そしたら立派な出張じゃ」

 しかし、日帰りだろうが泊まりだろうが、出張に変わりはないのでは?

 そもそも、九十九里と聞いただけで、日帰りと決め付けるのも変である。

 
 結花「そうね、それでどんな指令なの?」
 唯「それは言えません」
 結花「あんたひとりでだいじょうぶなの?」
 唯「だいじょうぶ、だいじょうぶ、暗闇指令からの手紙をある人に渡すだけじゃもん……言ってしもうた」

 思わず口を滑らせて、口に手を当てる唯が可愛いのである!!

 しかし、その相手が誰か不明だが、暗闇指令は、手紙に切手を貼ってポストに入れると郵便屋さんが届けてくれるって知らないのかなぁ?

 無論、これは、スケジュールがきつくてロケに参加できない浅香唯さんを自然に物語から消すための方便なのである。

 その夜、机に向かって一心不乱に勉強している姉の横顔を見ながら、由真は昔のことを思い出す。

 回想シーンの中では、誠と結花はまるっきり恋人同士のようであった。

 
 由真「遅いなぁ、貸してごらん」
 結花「なにすんのよ」
 由真「この手袋、誠さんに上げるんでしょ」
 結花「そうよ」
 由真「誠さんに自分がスケバンってこと言ったの」
 結花「言ったわよ」
 由真「びっくりしてたでしょ」
 結花「知ってたみたい。でも私がスケバンだってことも含めてそう言う君が好きなんだって」
 由真「つまんねーの」

 由真の態度から、由真もひそかに誠のことを好きだったようにも見えるが、よくわからない。

 結花「なーにぃ、さっきから人のこと見て」

 姉の言葉に現実に引き戻される由真。

 
 由真「姉貴、今日、誠さんと会ったんだ。誠さん、ずっとアメリカで暮らすかもしれないんだって」
 結花「そう」
 由真「そうって、それだけかよ、なんともないのかよ、姉貴は」
 結花「だって、私と誠さんとの件は一年前に終わってるのよ」
 由真「一年前って、誠さんがアメリカに行く日に見送りに行けなかったってことだろ? あれは私のせいで……」

 再び回想シーン。

 その日、由真は渋る結花を無理に引っ張って空港へ行こうとしていたのだが、その途中、不良たちに襲われ、由真が不覚を取って怪我をしたせいで、結局見送りに行けなかったと言う事情があったのだ。

 由真が、二人のことに責任を感じているのはその為らしい。

 結花「もういいのよ」
 由真「誠さん、明日3時に駅前で待ってる筈だよ。ねえ、行きなよ、今度こそ、誠さん見送ってやってよ。もう会えないかも知れないんだから!! 姉貴!!」
 結花「……」

 喫茶店でたむろしている涼子たち。

 女生徒「風間の奴ら、来ますかね、明日」
 涼子「来なきゃあいつらの面子がたたねえだろ」
 女生徒「涼子さん、ほんとに勝つ見込みあるんですか」
 涼子「ふふ、これさえありゃ、由真なんて目じゃねえさ」

 危ぶむ部下に、自信たっぷりにカバンを叩いて見せる涼子。

 その中に「秘密兵器」が隠してあるらしい。

 んで、偶然、そのやりとりを近くの席の依田が聞いているのだが、そんな偶然ありますか?

 
 翌日、急に手袋を編み始めた結花。

 学校の中庭のベンチに越し掛け、わき目も振らずに編み棒を動かしている。

 それを屋上から由真が見ていた。

 
 クマ「ほんとにやるんすか、山下の涼子と」
 由真「あたりまえだろう、こんなもん叩きつけられて黙ってられるか」(棒読み)

 前にも書いたけど、由真さん、ほんっっっとに芝居が下手ですねえ。

 ここまで下手だと、いっそ清々しい。

 クマ「でも、やっぱり、結花姐御にも知らせた方が」
 由真「うるせえ、姉貴は用があるって言ってんだろうが」
 クマ「は、はい」
 由真「いいか、2時にここを出るからな、裏門に集合だ」
 一同「はいっ」
 由真「クマ、絶対に姉貴に気付かれないようにしろよ」
 クマ「はい」

 
 ゴロウ「あいてててて」
 依田「バツですねえ、授業中抜け出すのは……ちょっと話を聞かせて貰いましょうか」

 だが、こっそり学校を出ようとしていたゴロウが依田に捕まり、何もかも喋ってしまう。

 由真たちは、ゴロウを待たずに指定の場所へ向かう。

 彼らの動向に全く気付いていない結花は、ひたすら手袋を編み続けていた。

 その横に依田があらわれ、

 
 依田「授業をサボって編み物ですかぁ、感心しませんねえ」
 結花「3時までにこれを持ってかなきゃいけないの、お願い、見逃して!!」
 依田「姉は編み物、妹は決闘、この姉妹、どうなってるんでしょうねえ」
 結花「決闘?」
 依田「山下学園総番・太田涼子と縄張りを賭けて対決するそうですよ。今度は負けるかもしれませんねえ、結花さんも」
 結花「何処なの、場所を教えて」
 依田「轟台ドルフィンプール、時間は午後3時」
 結花「3時……」

 一瞬ためらう結花だったが、結局、編み物を捨てて走り出す。

 午後3時、轟台ドルフィンプールであいまみえるセーラー服の星流学園とブレザーの山下学園のスケバンたち。

 
 涼子「結花はどうした、逃げたのか?」
 由真「てめえらなんざ、姉貴が来るほどのこともねえだろ。私らだけで十分だ」
 涼子「はん、でけえ口叩くじゃねえか」
 由真「うるせえ、でけえ口叩いてんのはそっちだろうが。早いとこ、はじめようぜ」

 

 
 睨み合う両雄(……と言うのも変だが)

 うーん、はっきり言って、悪玉の涼子の方が綺麗だ。

 
 由真、いきなりリリアンを飛ばすが、涼子は用意したハサミで糸を断ち切る。

 由真「ハサミ?」

 
 涼子「ふふふっ、てめえを倒す為に半年かかって修業したのさ。リリアンの由真、この勝負、貰うよ!!」

 得意気に二丁拳銃ならぬ二丁ハサミを構える涼子。

 太田涼子さん、今はなにされているのか知らないが、彼女にとっては黒歴史だろうなぁ。

 両手に持ったハサミを振り回し、由真の服を切り刻む涼子。

 由真がリリアンを投げて涼子の手首に糸を巻きつけても、すぐにハサミで切られてしまう。

 が、涼子がトドメを刺そうとハサミを振り上げたところで、お約束のように結花の折鶴が飛んできて、それを邪魔する。

 
 由真「姉貴……」
 結花「どうして私に黙ってたの」
 由真「だって……姉貴は誠さんに会いに」
 結花「……」
 由真「頼むよ、誠さん見送りにいってやってよ、もう会えなくなるんだよ、ねえ行きなよ、まだ間に合うから、お願いだから!!」
 結花「由真……」

 由真、涙まで滲ませて、必死で姉に訴える。

 涼子「おいおい、どっちが相手になるんだ、早えとこ決めろよー」
 由真「うるせーっ、私が相手だって言ってんだろうがっ」

 互いに武器を持って突進する由真と涼子。

 が、由真はぶつかる直前にその頭上を飛び越え、飛び越えながら涼子の両手首に糸を巻きつける。

 由真「貰った!!」

 涼子の背後に着地すると、あらかじめ糸に通していたリングを滑らせ、ハサミの刃に嵌め込む。

 映像でも良く分からないのだが、とにかく涼子のハサミを封じたのだ。

 
 その後は、涼子の体をぐるぐる巻きにして一丁上がり。

 由真「どうだ、てめえら、まだやる気か」

 由真に凄まれると、涼子の部下たちは親分を見捨ててさっさと逃げてしまう。

 クマたちはそれを追いかけ、由真は強引に結花を連れて駅へ向かう。

 
 涼子「……」

 こんな状態で放置された涼子さんが不愍であった。

 まあ、歩けないわけじゃないから、この後、ひとりで帰ったのだろうが、この恰好で街中を歩いているところを想像すると、なかなかエロティックである。

 由真と結花はプールの敷地から出るが、

 結花「もう間に合わないって、3時40分よ」
 由真「……」
 結花「……」

 結花の言葉に由真がにっこり笑い、結花もそれを見て笑って頷くのだが、正直、意味がわからないシーンである。

 
 それはともかく、そこへピンクのビートルと言う、頭のおかしい車で颯爽と現れたのが、依田であった。

 結花「先生!!」

 
 依田「僕、編み物、結構得意なんですよね。最後まで諦めないのが、青春」

 依田は、結花の編み掛けの手袋を(多分忍法を使って)猛スピードで編み、わざわざ持って来てくれたのだ。

 由真「姉貴、行こ!!」

 二人は、駅に向かって走り出す。

 
 依田(普通、乗ってかない?)

 それを見送りながら、心の中でツッコミを入れる依田であったが、嘘である。

 嘘だけど、普通はその車で駅まで送るよね?

 ともあれ、二人が駅に着いたときは、すでに誠を乗せた電車は走り出していた。

 しかし、そもそも誠は電車で何処かへ行くためではなく、由真に駅で待ち合わせしようと言われて来たのだから、電車に乗るってなんか変じゃないか?

 空港までその電車で行くのかもしれないが、なぜ由真に、誠がその時刻にその駅から出発することが分かったのだろう?

 誠は「明日の夜」としか言ってなかったし……

 ま、スタッフもほんとは空港で撮りたかったのだが、撮影が大変になるので、多少の矛盾には目をつぶって、強引に駅での別れにしてしまったのかもしれない。

 なお、撮影に使われているのは埼玉県の「熊谷駅」のようである。

 それはともかく、結花は走り出した電車を追いかけ、誠にあの手袋を見せて、自分の気持ちを伝える。

 誠も、口を動かして「アリガト」と感謝の気持ちを伝え、二人の関係は紙一重で繋がりを取り戻したのだった。

 由真「姉貴のこと忘れんじゃねえぞ!!」

 走り去る電車に向かって叫ぶ由真。

 ラスト、唯が「出張」から帰ってくる。

 道中、影に襲われたのだろう、その姿は土で汚れ、制服も一部裂けて鎖帷子が剝き出しになっていた。

 由真「どうしたんだよ、その恰好は」
 結花「何があったの」
 唯「なんでんなか、なんでんなかよ、ちゃんと任務は果たしたがい。心配なか……姉ちゃんたちはどんげやったと? なんかあったと?」
 結花「別に何にもなかったわよ」
 唯「ふーん」
 由真「あーあー、疲れた一日だった」

 その後、顔を見合わせているうちに「ふふふふふっ」と笑い出す仲良し三姉妹。

 以上、主役は不在だが、姉の恋を応援しつつ、ライバルスケバンと戦う由真を描いた、なかなかの力作であった。

 ※追記

 一旦書き上げきたものの、誠ちゃんの電車の問題がどうにも気になるので、改めて考察しておきたい。

 あれから考えたのだが、駅=見送りと言う先入観があったのかもしれない。

 つまり、由真がその駅を指定したのは、単に星流学園の最寄り駅なので、結花がそこに行くのに都合が良いと言うだけの理由だったのではないかと思ったのだ。

 すなわち、誠は家から駅まで徒歩なりタクシーなりで来て、それから電車で何処か(空港?)へ向かったのではなく、自宅から電車であの駅まで来て結花を待っていたが、結花があらわれないので、諦めて同じ電車で帰ったのではないかと言うことだ。

 そう考えるといささかトホホだが、一応辻褄は合う。

 ただ、そうすると、一年前の回想シーンでも、駅まで見送りに行こうとしているのと矛盾するが、そちらだけ空港にしてしまう訳には行かないので、あえて駅にしたのだろう。

 普通考えて、アメリカに行く人を見送るのに、駅から見送る奴はいないからね。

 要するに、脚本家は駅での別れのシーンを描きたかったが、誠の行き先をアメリカにしてしまったために、こういう不自然な形になってしまったと言うことなのだろう。

 ついでに、もうひとつ気になったことがある。

 誠は、一年前の時点ではまだ高校生だったのだから、現在は、アメリカの大学1年生と言うことになる。まだ大学1年生なのに、卒業後のことについて親と話し合うために、わざわざ帰国すると言うのは変ではないか?

 それに、簡単にアメリカに住み続けるって言ってるけど、グリーンカードを入手するのは大変だぞ。

 他にも色々と気になる点があるが、きりがないのでこの辺にしておこう。