第20話「唯、絶叫!礼亜・壮烈な死」(1987年3月26日)
タイトルから分かるように礼亜の死を描いたエピソードである。
冒頭、珍しく唯と礼亜が二人きりで話している。
礼亜「もう何年も夕暮れを眺めることなんか忘れてたわ……毎日、日は昇り、落ちてるのにね」
唯「礼亜さんがそんげなこち言うの初めち聞いた。今日の礼亜さん、おかしか。こんだけ一緒におっても、わち礼亜さんのこと何も知らんとよね。風魔に生まれて、いつ自分の運命を知ったと?」
礼亜「8才になった時、突然父に告げられたんです」
唯「普通の人たちみたいにもっと自由に生きたいとは思わんね」
礼亜「思ったわ、でも、それは運命。私に今の運命がなかったら、唯にも結花や由真にも出会えなかったわ。今あなたたちが私の人生を輝かせてくれる。そう信じられるだけで私は幸せよ。たくさんの人たちが笑ったり泣いたりして、懸命に街に生きてる。そんな人たちの幸せをそっと見詰めるの。私、とても好きだわ……誰にもこの世界を壊させたくない。すべては翔とあなたをめぐって動き出したわ。結花と由真は安夫君の残してくれた手掛かり、東野成美と言う影の草として生きる少女を追ってる。東野成美は必ず翔と言う謎の人物と接触する筈……唯、あなたは成美と言う少女の心の扉を開いて翔の謎を解くことになるわ。その時、私の運命も、結花や由真の運命も決まる……新しい未来へ向かって」
礼亜、予知能力でもあるのか、それとも、台本を読んだのか、未来のことを見通すようにつぶやくのだった。
タイトル表示後、とある警察署から放免された制服姿の少女の前に、結花と由真があらわれる。

結花「あなたが東野成美さんね、私たち、安夫君の友達よ。心配しなくて良いわ」
成美「……」
結花がにこやかに話し掛け、その腕を掴むが、成美はその手を掴むと、思いっきり噛み付く。
由真が引き離すが、成美は頭突きを食らわしてさっさと駆け出す。
途中、立ち止まってこらちを振り向くが、その野獣のような眼差しに、さすがの二人も威圧される。
その後、いつもの忍者ルーム。

礼亜「東野成美、幼くして父が死亡した後、母は蒸発、養護院にて育てられる。そこで成美の草としての血を知った影が接触した模様……」
般若「成美の心の中には凄まじいほどの人への憎しみが渦巻いている。自分を受け入れてくれなかった世の中への憎悪、それが成美を草とさせたのだ」
由真「確かにゾッとさせられたよ、あの目には……」
唯「じゃけど、憎むことができるっちゅうことは、感情があるってことじゃろう、じゃったら愛することも出来る筈じゃ」
結花「唯の言う通りよ、自分たちを逃がしてくれたのは成美だって、安夫君が言ってたわ、もしそれが本当だったら……」
般若「うん、時間がない、お前たちの手で成美の心を早急に開かせるのだ。翔なるものが草の根を広げぬうちに」
三人が立ち上がると、カメラは礼亜の顔を映し、

礼亜「唯、もし失敗したら、東野成美は影に殺されるわ。それを忘れないで」
どうでもいいが、カメラの位置、おかしくないか?
タイトル表示後、翔たちの秘密基地。

翔「逃げた草どもが風魔の手にな?」
ミヨズ「もうしばらくお待ちくださりませ、翔様、その草どもらは必ず」
翔「言い訳は聞かぬ、この翔はな、子供であって子供ではない、わかりおるか」
ミヨズ「はい」
翔「わかっておらぬ、オトヒもようお聞き」

翔「この翔はな、人間以上、そう、みしるしを与えられたのじゃ、あるお方にな」

ミヨズ「どなたにでございましょうか?」

翔(え~っ、それ、聞いちゃう?)
まさかの問い掛けに頭がパニックになる翔であったが、嘘である。
嘘だけど、普通、そう言うことは聞かないよね。
翔「神なる者じゃ、ふふふふ、わからぬか、ふふふふふ、わからぬであろう、ふっふっふっ、あっはっはっはっ」
老婆の声で謎めいたことを言い、愉快そうに笑う翔を見て、


ミヨズ&オトヒ(さては知らねーな、こいつ……)
心の中でそっとツッコミを入れる二人だったが、嘘である。
嘘だけど、笑って誤魔化しているようにしか聞こえないのは確かである。
翔は少女の声に戻ると、
翔「ミヨズ、オトヒ、人の心の半面に必ずや悪魔がおるのじゃ。互いに憎しみ殺しあう弱肉強食の血が人の中に脈々と流れておる。人間を血で血を洗う本来の姿に戻すため天がわらわを遣わしたのだ……わらわが草どもの代表らと会う日も近い、風魔ごときのことでいつまでもわらわを煩わすでない」
ちなみに、この台詞と言うか世界観、今更ながら気付いたけど、「スターウォーズ」の暗黒面が元ネタなんだね。
しかし、「互いに憎しみ殺しあう」と、「弱肉強食」は、ちょっと意味が違うような気がする。

ここから、「シャドウハンター」の流れるなか、唯が成美につきまとい、その心を開かせようとするイメージシーンとなる。

深夜、自殺でもするつもりなのか、成美がレールをベッド代わりにして横たわっていると、唯がやってきて、自分も同じように体を横たえる。
やがて、踏み切りの警報が鳴り響き、一台の列車が唯の寝ている方から接近してくる。
だが、唯は本当に眠ったように身動きひとつしない。

成美(どうせこいつは逃げるに決まってる。カッコだけに決まってる……)
その様子を、結花と由真が物陰から見詰めていた。

由真「姉貴、とめよーよ、あいつドッカンだから電車に轢かれたらどうなるか分かってないんだよ」
結花「まさか、それじゃドッカン通り越してズッコンじゃない!!」
由真「……こんな時に冗談言ってる場合かよ」
真顔で叫ぶ結花に、由真が冷たくツッコミを入れる。
何気に、二人のやりとりとしては、最高に笑えるシーンかもしれない。

二人が話しているうちにも、列車はすぐ近くまで迫ってくる。
これ、実際に女優が寝ているレールの上を走らせてるんだよね。
今ではありえない撮影である。
結花「轢かれる!!」
さすがにシャレにならないと、二人が隠れ場所から飛び出す。
成美「ちくしょう!!」
ほぼ同時に、成美が叫んで唯の体を抱えてレールの外へ出る。
電車はその横を何事もなかったように通り過ぎる。

唯「やっぱり助けてくれたんじゃね」
成美は唯の顔を思いっきり引っ叩く。
成美「誰だ、お前は?」
唯「成美さん、あんたほんとは優しい人じゃ。だから安夫さんたちを助けたんじゃろう、わちを助けて……」
成美「ううーっ!!」
唯の言葉も終わらぬうちに、いきなりその首を締める成美。
唯「……いくらでも絞めればええ、じゃけん、あんたは影にはなれん。優しいもん。人を愛したくてたまらん人じゃ。安夫さんも令子さんも元気じゃ……もうひとりぼっちはいいじゃろ」
無抵抗のまま必死で語りかける唯の言葉に、成美は腕にこめた力をゆるめ、その場に座り込む。

そして、心の奥底から込み上げてくる悲しみを爆発させ、母を求める幼子のように唯の体に抱き付き、号泣するのだった。
お恥ずかしい話ですが、管理人、このシーンでちょっと泣いちゃいました。
加齢で、涙腺がバカになっちゃってるらしいです。こないだも「西遊記2」見てて号泣したもんなぁ。
それにしても、前回の隆夫といい、成美といい、草のみなさん、あまりに簡単に「改心」し過ぎじゃないですか?
この分だと、他にも影を裏切る草が続出して、その始末に追われてミヨズさんが泣きそうになっているのではないかと心配になる。
CM後、成美が放った伝書鳩が唯たちの教室に飛び込む。
手紙には「翔様と草の人々が会う日時をお知らせします。もう一度唯たちと人間らしく生きてみたい」と記してあった。
電話しろよ……
つーか、肝心の日時と場所が書いてないんですが……

般若「自分の命と引き換えに成美はこれを書いた。唯、そこへ潜入し、成美の命を守り、翔の正体を突き止めることがお前に出来るか」
唯「やる、やっちゃるわい!!」
般若「うむ、結花と由真は唯の影となり、潜んで唯を助けるのだ」
由真「唯、てめえひとり死なせはしないよ、安心しな」
唯(全然安心できん……)
前回、草にあっさり捕まった人に言われてもねえ……
と、珍しく礼亜が般若に異を唱える。
礼亜「私は反対です。敵の中に潜入するほどまだ唯にも、結花や由真にも力がないわ。危険過ぎます!!」
般若「甘いことを言うな、礼亜」
いや、甘いことって……礼亜はただ事実を指摘してるだけだと思うんだけどね。
唯「大丈夫じゃ、礼亜さん、心配は要らん」
礼亜「唯……」
唯「わちは三代目麻宮サキじゃ。一代目も二代目もそうやって生きてきたんじゃろう……それにわちにはごっつう強か姉ちゃんらもついとる。弱音は吐かん!! 翔の正体、このわちが必ずつかんじゃる」
全く根拠のない唯の自信だったが、結花と由真はなんとなくその気になり、
礼亜(唯、由真、結花……)
礼亜の懸念も、雰囲気で押し流されるのだった。
三人を送り出したあと、職員室で話す般若と礼亜。

般若「礼亜、君は唯たちと別行動で、影の動きを探ってくれ」
礼亜「それは般若にお願いします。私に唯たちを見守らせて下さい」
般若「なにぃ」
礼亜「唯たちはどうあっても死なせてはいけない人たちです。唯は私たちの運命さえ切り開いていつか明るいところへみんなを連れて行ってくれる人です。誰がなんと言っても、私は唯たちを見守りたいんです」
般若「命令が聞けんと言うのか?」
礼亜「そうです」
般若「……勝手にするが良い」
突き放す般若だったが、礼亜が一礼して出て行こうとすると「待て!!」と呼び止め、愛用の杖を礼亜に投げ渡す。

般若「持って行け、何かの役に立つかも知れん」
礼亜「般若……ありがとう」
礼亜、もう一度深々とお辞儀すると、部屋を出て行く。
そしてこれが、二人の最後の会話となった。
深夜……と言うより、夜明け前、手に手に松明を持った若者たちが、「アービラウンケンソワカー」と唱えながら、道なき道を踏み越え、広場に集まってくる。
広場の奥には簡単な祭壇が設けてあり、その上にミヨズとオトヒが向かい合って座っていた。
その前に敷かれた布の上に、草たちが整然と座っていく。

その中には、当然、東野成美と、おばさんパーマのかつらと黒ぶちのメガネを付けた唯の姿も混じっていた。
やがて、草たちの唱和の高まりが最高潮に達したとき、祭壇に激しい閃光が走る。

次の瞬間、小柄な少女が祭壇の中央に忽然とあらわれる。
が、なにしろ暗いので、その顔形まではわからない。
草たち「翔様ーっ!! 翔様ーっ!!」
右手を掲げ、憑かれたようにその名を叫ぶ若者たち。
ちょうどその時、昇り始めた朝日が山の向こうから眩しいほどの光を投げかけてきて、

息を詰めて見守る唯たちの前で、謎に包まれてきた翔の素顔が、遂に白日の下に晒される。
これだけ見ると可愛いが、獲物を狙う蛇のように、眼球を左右に動かす仕草が、かなり不気味である。

唯「あれが、翔……」
翔は、額につけた銅鏡のような冠に光を反射させ、草たちひとりひとりの顔を照らしていく。
やがて成美の番となるが、何事もなく光が次のものに移った直後、思わず安堵の表情を浮かべてしまい、翔に裏切りを見抜かれる。

翔、冠から電撃ビームを放ち、成美を吹っ飛ばす。
うーん、まんま、「スターウォーズ」の皇帝である。
唯「成美さん!!」
ミヨズ「風間」
オトヒ「唯!!」
成美に駆け寄る唯を見て、ミヨズたちがその正体に気付く。
翔たちはさっさと退散しようとするが、唯は変装を解くと、

唯「待てぇ、あんたのもんじゃ、返しちょく」
10話でミヨズに殺された風花良に託された翔のネーム入りの短刀を投げ付ける。
いや、別に返さなくてもいいと思うのだが……
翔は目を赤く光らせ、念力でそれを空中で停止させて鞘から抜き、

翔「滅びよ、風魔のものどもよ!!」
老婆の声で叫ぶと、短刀を媒介にして、唯たちの周辺をドーム状のバリアのようなもので覆ってしまう。
唯と成美に激しい風が吹きつけてきて、成美は岩に頭をぶつけて動かなくなる。
近くの岩場に隠れていた結花と由真が、折鶴とリリアンを投げつけるが、そんなチンケな武器ではバリアはびくともしない。
はっきり言って、礼亜の指摘したとおり、彼らだけでは全くの力不足で、その意見を退けた般若までが無能に見えてしまう。
ミヨズたちが得意の布攻撃を仕掛けるが、草の中に紛れ込んでいた礼亜が飛び出してきて、般若に貰った杖で布を切り裂く。
そして、唯を庇うように、その前に移動する。

唯「礼亜さん!!」

特に意味はないが、ミヨズの顔でも貼っておこう。

礼亜「唯、この空間を抜け出すのよ!!」
唯「いやじゃ」
礼亜「あなたはこんなところで死んじゃいけない」
唯「礼亜さんを残してなんかいけん」
礼亜、駄々をこねる唯を突き飛ばすと、
礼亜「生きるのよ、唯!!」

礼亜「この空間は私が破って見せる、般若……」
般若から貰った杖を握り締め、祈るように般若の名を呼ぶ礼亜。
礼亜(つーか、なんであいつは来ないの?)
ふと、根本的な疑問が浮かぶのだったが、嘘である。
嘘だけど、肝心な時になんで般若が現場に来ないのか、極めて不可解なのは事実である。
オトヒの布や、ミヨズの含み針をかわしつつ、敵に突っ込む礼亜。

と、杖が、ライトセーバーあるいはレーザーブレードのような青白い光を放つ。
布を首に巻かれた状態で、礼亜が杖を振り回し、結界を切り裂く。
だが、次の瞬間、翔が念力で飛ばした短刀が礼亜の背中に突き刺さる。
唯が短刀を持ってこなければ、こんなことにはならなかったような気がする……
礼亜、スローモーションで倒れる。
それと同時に、結界が消滅する。

唯「礼亜さん、礼亜さん!!」
礼亜「結花、由真、唯を頼んだわ。唯、あなたはこの世にいなくてはならない人なのよ……」
礼亜、そう言い残すと、あえなくあの世へ旅立つ。
唯はその目を閉じさせると、満身に怒りのマグマをみなぎらせて立ち上がる。

額にいつもの梵字を浮かび上がらせ、壇上の翔を睨み付ける唯。

それを、無表情で受け止める翔。
唯、ヨーヨーを投げようとするが、翔が冠からビームを放って唯の周りに炎の輪を作る。
一瞬たじろいた唯が、祭壇を見ると、翔たちはいつの間にか消えていた。
翔の姿を目視できたものの、風魔の完敗であった。
だが、翔は逆に警戒心を強めていた。

翔「風間唯、あの娘、恐ろしい心の力を持っておる。草どもがあの娘の心に打たれ、わらわを裏切っていく。あの娘がおる限り、我らの目的は達せられまいぞ」
一方、唯は、自分の部屋に閉じ篭もり、ひたすら自分の無力さを噛み締めていた。

唯「わちは、わちは礼亜さんも成美さんも助けようと思えば助けられたんじゃ……じゃけん、わちの体は怖くて怖くて動かんかった!! わちの為に礼亜さんは死んだんじゃ!!」
そう叫ぶと、ヨーヨーを叩き付ける唯。
ま、前記したように、礼亜の命を奪った短刀を持って来たのは唯なので、見てる方も100パーセント否定できないのがつらいところ。
唯「わちはもうダメじゃ、わちはもうダメじゃ、 わちはもうダメじゃーっ!! 礼亜さん、もう何もかもいやじゃーっ!!」
畳に身を投げ出し、子供のように泣き叫ぶ唯の姿を映しつつ、「つづく」のだった。
ちなみに唯の台詞だと、成美もついでに死んでしまったように聞こえるが、実際は重傷を負っただけで生きており、のちに風魔の一員として再登場することになる。
タイトルから分かるように礼亜の死を描いたエピソードである。
冒頭、珍しく唯と礼亜が二人きりで話している。

礼亜「もう何年も夕暮れを眺めることなんか忘れてたわ……毎日、日は昇り、落ちてるのにね」
唯「礼亜さんがそんげなこち言うの初めち聞いた。今日の礼亜さん、おかしか。こんだけ一緒におっても、わち礼亜さんのこと何も知らんとよね。風魔に生まれて、いつ自分の運命を知ったと?」
礼亜「8才になった時、突然父に告げられたんです」
唯「普通の人たちみたいにもっと自由に生きたいとは思わんね」
礼亜「思ったわ、でも、それは運命。私に今の運命がなかったら、唯にも結花や由真にも出会えなかったわ。今あなたたちが私の人生を輝かせてくれる。そう信じられるだけで私は幸せよ。たくさんの人たちが笑ったり泣いたりして、懸命に街に生きてる。そんな人たちの幸せをそっと見詰めるの。私、とても好きだわ……誰にもこの世界を壊させたくない。すべては翔とあなたをめぐって動き出したわ。結花と由真は安夫君の残してくれた手掛かり、東野成美と言う影の草として生きる少女を追ってる。東野成美は必ず翔と言う謎の人物と接触する筈……唯、あなたは成美と言う少女の心の扉を開いて翔の謎を解くことになるわ。その時、私の運命も、結花や由真の運命も決まる……新しい未来へ向かって」
礼亜、予知能力でもあるのか、それとも、台本を読んだのか、未来のことを見通すようにつぶやくのだった。
タイトル表示後、とある警察署から放免された制服姿の少女の前に、結花と由真があらわれる。

結花「あなたが東野成美さんね、私たち、安夫君の友達よ。心配しなくて良いわ」
成美「……」
結花がにこやかに話し掛け、その腕を掴むが、成美はその手を掴むと、思いっきり噛み付く。
由真が引き離すが、成美は頭突きを食らわしてさっさと駆け出す。
途中、立ち止まってこらちを振り向くが、その野獣のような眼差しに、さすがの二人も威圧される。
その後、いつもの忍者ルーム。

礼亜「東野成美、幼くして父が死亡した後、母は蒸発、養護院にて育てられる。そこで成美の草としての血を知った影が接触した模様……」
般若「成美の心の中には凄まじいほどの人への憎しみが渦巻いている。自分を受け入れてくれなかった世の中への憎悪、それが成美を草とさせたのだ」
由真「確かにゾッとさせられたよ、あの目には……」
唯「じゃけど、憎むことができるっちゅうことは、感情があるってことじゃろう、じゃったら愛することも出来る筈じゃ」
結花「唯の言う通りよ、自分たちを逃がしてくれたのは成美だって、安夫君が言ってたわ、もしそれが本当だったら……」
般若「うん、時間がない、お前たちの手で成美の心を早急に開かせるのだ。翔なるものが草の根を広げぬうちに」
三人が立ち上がると、カメラは礼亜の顔を映し、

礼亜「唯、もし失敗したら、東野成美は影に殺されるわ。それを忘れないで」
どうでもいいが、カメラの位置、おかしくないか?
タイトル表示後、翔たちの秘密基地。

翔「逃げた草どもが風魔の手にな?」
ミヨズ「もうしばらくお待ちくださりませ、翔様、その草どもらは必ず」
翔「言い訳は聞かぬ、この翔はな、子供であって子供ではない、わかりおるか」
ミヨズ「はい」
翔「わかっておらぬ、オトヒもようお聞き」

翔「この翔はな、人間以上、そう、みしるしを与えられたのじゃ、あるお方にな」

ミヨズ「どなたにでございましょうか?」

翔(え~っ、それ、聞いちゃう?)
まさかの問い掛けに頭がパニックになる翔であったが、嘘である。
嘘だけど、普通、そう言うことは聞かないよね。
翔「神なる者じゃ、ふふふふ、わからぬか、ふふふふふ、わからぬであろう、ふっふっふっ、あっはっはっはっ」
老婆の声で謎めいたことを言い、愉快そうに笑う翔を見て、


ミヨズ&オトヒ(さては知らねーな、こいつ……)
心の中でそっとツッコミを入れる二人だったが、嘘である。
嘘だけど、笑って誤魔化しているようにしか聞こえないのは確かである。
翔は少女の声に戻ると、
翔「ミヨズ、オトヒ、人の心の半面に必ずや悪魔がおるのじゃ。互いに憎しみ殺しあう弱肉強食の血が人の中に脈々と流れておる。人間を血で血を洗う本来の姿に戻すため天がわらわを遣わしたのだ……わらわが草どもの代表らと会う日も近い、風魔ごときのことでいつまでもわらわを煩わすでない」
ちなみに、この台詞と言うか世界観、今更ながら気付いたけど、「スターウォーズ」の暗黒面が元ネタなんだね。
しかし、「互いに憎しみ殺しあう」と、「弱肉強食」は、ちょっと意味が違うような気がする。

ここから、「シャドウハンター」の流れるなか、唯が成美につきまとい、その心を開かせようとするイメージシーンとなる。

深夜、自殺でもするつもりなのか、成美がレールをベッド代わりにして横たわっていると、唯がやってきて、自分も同じように体を横たえる。
やがて、踏み切りの警報が鳴り響き、一台の列車が唯の寝ている方から接近してくる。
だが、唯は本当に眠ったように身動きひとつしない。

成美(どうせこいつは逃げるに決まってる。カッコだけに決まってる……)
その様子を、結花と由真が物陰から見詰めていた。

由真「姉貴、とめよーよ、あいつドッカンだから電車に轢かれたらどうなるか分かってないんだよ」
結花「まさか、それじゃドッカン通り越してズッコンじゃない!!」
由真「……こんな時に冗談言ってる場合かよ」
真顔で叫ぶ結花に、由真が冷たくツッコミを入れる。
何気に、二人のやりとりとしては、最高に笑えるシーンかもしれない。

二人が話しているうちにも、列車はすぐ近くまで迫ってくる。
これ、実際に女優が寝ているレールの上を走らせてるんだよね。
今ではありえない撮影である。
結花「轢かれる!!」
さすがにシャレにならないと、二人が隠れ場所から飛び出す。
成美「ちくしょう!!」
ほぼ同時に、成美が叫んで唯の体を抱えてレールの外へ出る。
電車はその横を何事もなかったように通り過ぎる。

唯「やっぱり助けてくれたんじゃね」
成美は唯の顔を思いっきり引っ叩く。
成美「誰だ、お前は?」
唯「成美さん、あんたほんとは優しい人じゃ。だから安夫さんたちを助けたんじゃろう、わちを助けて……」
成美「ううーっ!!」
唯の言葉も終わらぬうちに、いきなりその首を締める成美。
唯「……いくらでも絞めればええ、じゃけん、あんたは影にはなれん。優しいもん。人を愛したくてたまらん人じゃ。安夫さんも令子さんも元気じゃ……もうひとりぼっちはいいじゃろ」
無抵抗のまま必死で語りかける唯の言葉に、成美は腕にこめた力をゆるめ、その場に座り込む。

そして、心の奥底から込み上げてくる悲しみを爆発させ、母を求める幼子のように唯の体に抱き付き、号泣するのだった。
お恥ずかしい話ですが、管理人、このシーンでちょっと泣いちゃいました。
加齢で、涙腺がバカになっちゃってるらしいです。こないだも「西遊記2」見てて号泣したもんなぁ。
それにしても、前回の隆夫といい、成美といい、草のみなさん、あまりに簡単に「改心」し過ぎじゃないですか?
この分だと、他にも影を裏切る草が続出して、その始末に追われてミヨズさんが泣きそうになっているのではないかと心配になる。
CM後、成美が放った伝書鳩が唯たちの教室に飛び込む。
手紙には「翔様と草の人々が会う日時をお知らせします。もう一度唯たちと人間らしく生きてみたい」と記してあった。
電話しろよ……
つーか、肝心の日時と場所が書いてないんですが……

般若「自分の命と引き換えに成美はこれを書いた。唯、そこへ潜入し、成美の命を守り、翔の正体を突き止めることがお前に出来るか」
唯「やる、やっちゃるわい!!」
般若「うむ、結花と由真は唯の影となり、潜んで唯を助けるのだ」
由真「唯、てめえひとり死なせはしないよ、安心しな」
唯(全然安心できん……)
前回、草にあっさり捕まった人に言われてもねえ……
と、珍しく礼亜が般若に異を唱える。
礼亜「私は反対です。敵の中に潜入するほどまだ唯にも、結花や由真にも力がないわ。危険過ぎます!!」
般若「甘いことを言うな、礼亜」
いや、甘いことって……礼亜はただ事実を指摘してるだけだと思うんだけどね。
唯「大丈夫じゃ、礼亜さん、心配は要らん」
礼亜「唯……」
唯「わちは三代目麻宮サキじゃ。一代目も二代目もそうやって生きてきたんじゃろう……それにわちにはごっつう強か姉ちゃんらもついとる。弱音は吐かん!! 翔の正体、このわちが必ずつかんじゃる」
全く根拠のない唯の自信だったが、結花と由真はなんとなくその気になり、
礼亜(唯、由真、結花……)
礼亜の懸念も、雰囲気で押し流されるのだった。
三人を送り出したあと、職員室で話す般若と礼亜。

般若「礼亜、君は唯たちと別行動で、影の動きを探ってくれ」
礼亜「それは般若にお願いします。私に唯たちを見守らせて下さい」
般若「なにぃ」
礼亜「唯たちはどうあっても死なせてはいけない人たちです。唯は私たちの運命さえ切り開いていつか明るいところへみんなを連れて行ってくれる人です。誰がなんと言っても、私は唯たちを見守りたいんです」
般若「命令が聞けんと言うのか?」
礼亜「そうです」
般若「……勝手にするが良い」
突き放す般若だったが、礼亜が一礼して出て行こうとすると「待て!!」と呼び止め、愛用の杖を礼亜に投げ渡す。

般若「持って行け、何かの役に立つかも知れん」
礼亜「般若……ありがとう」
礼亜、もう一度深々とお辞儀すると、部屋を出て行く。
そしてこれが、二人の最後の会話となった。
深夜……と言うより、夜明け前、手に手に松明を持った若者たちが、「アービラウンケンソワカー」と唱えながら、道なき道を踏み越え、広場に集まってくる。
広場の奥には簡単な祭壇が設けてあり、その上にミヨズとオトヒが向かい合って座っていた。
その前に敷かれた布の上に、草たちが整然と座っていく。

その中には、当然、東野成美と、おばさんパーマのかつらと黒ぶちのメガネを付けた唯の姿も混じっていた。
やがて、草たちの唱和の高まりが最高潮に達したとき、祭壇に激しい閃光が走る。

次の瞬間、小柄な少女が祭壇の中央に忽然とあらわれる。
が、なにしろ暗いので、その顔形まではわからない。
草たち「翔様ーっ!! 翔様ーっ!!」
右手を掲げ、憑かれたようにその名を叫ぶ若者たち。
ちょうどその時、昇り始めた朝日が山の向こうから眩しいほどの光を投げかけてきて、

息を詰めて見守る唯たちの前で、謎に包まれてきた翔の素顔が、遂に白日の下に晒される。
これだけ見ると可愛いが、獲物を狙う蛇のように、眼球を左右に動かす仕草が、かなり不気味である。

唯「あれが、翔……」
翔は、額につけた銅鏡のような冠に光を反射させ、草たちひとりひとりの顔を照らしていく。
やがて成美の番となるが、何事もなく光が次のものに移った直後、思わず安堵の表情を浮かべてしまい、翔に裏切りを見抜かれる。

翔、冠から電撃ビームを放ち、成美を吹っ飛ばす。
うーん、まんま、「スターウォーズ」の皇帝である。
唯「成美さん!!」
ミヨズ「風間」
オトヒ「唯!!」
成美に駆け寄る唯を見て、ミヨズたちがその正体に気付く。
翔たちはさっさと退散しようとするが、唯は変装を解くと、

唯「待てぇ、あんたのもんじゃ、返しちょく」
10話でミヨズに殺された風花良に託された翔のネーム入りの短刀を投げ付ける。
いや、別に返さなくてもいいと思うのだが……
翔は目を赤く光らせ、念力でそれを空中で停止させて鞘から抜き、

翔「滅びよ、風魔のものどもよ!!」
老婆の声で叫ぶと、短刀を媒介にして、唯たちの周辺をドーム状のバリアのようなもので覆ってしまう。
唯と成美に激しい風が吹きつけてきて、成美は岩に頭をぶつけて動かなくなる。
近くの岩場に隠れていた結花と由真が、折鶴とリリアンを投げつけるが、そんなチンケな武器ではバリアはびくともしない。
はっきり言って、礼亜の指摘したとおり、彼らだけでは全くの力不足で、その意見を退けた般若までが無能に見えてしまう。
ミヨズたちが得意の布攻撃を仕掛けるが、草の中に紛れ込んでいた礼亜が飛び出してきて、般若に貰った杖で布を切り裂く。
そして、唯を庇うように、その前に移動する。

唯「礼亜さん!!」

特に意味はないが、ミヨズの顔でも貼っておこう。

礼亜「唯、この空間を抜け出すのよ!!」
唯「いやじゃ」
礼亜「あなたはこんなところで死んじゃいけない」
唯「礼亜さんを残してなんかいけん」
礼亜、駄々をこねる唯を突き飛ばすと、
礼亜「生きるのよ、唯!!」

礼亜「この空間は私が破って見せる、般若……」
般若から貰った杖を握り締め、祈るように般若の名を呼ぶ礼亜。
礼亜(つーか、なんであいつは来ないの?)
ふと、根本的な疑問が浮かぶのだったが、嘘である。
嘘だけど、肝心な時になんで般若が現場に来ないのか、極めて不可解なのは事実である。
オトヒの布や、ミヨズの含み針をかわしつつ、敵に突っ込む礼亜。

と、杖が、ライトセーバーあるいはレーザーブレードのような青白い光を放つ。
布を首に巻かれた状態で、礼亜が杖を振り回し、結界を切り裂く。
だが、次の瞬間、翔が念力で飛ばした短刀が礼亜の背中に突き刺さる。
唯が短刀を持ってこなければ、こんなことにはならなかったような気がする……
礼亜、スローモーションで倒れる。
それと同時に、結界が消滅する。

唯「礼亜さん、礼亜さん!!」
礼亜「結花、由真、唯を頼んだわ。唯、あなたはこの世にいなくてはならない人なのよ……」
礼亜、そう言い残すと、あえなくあの世へ旅立つ。
唯はその目を閉じさせると、満身に怒りのマグマをみなぎらせて立ち上がる。

額にいつもの梵字を浮かび上がらせ、壇上の翔を睨み付ける唯。

それを、無表情で受け止める翔。
唯、ヨーヨーを投げようとするが、翔が冠からビームを放って唯の周りに炎の輪を作る。
一瞬たじろいた唯が、祭壇を見ると、翔たちはいつの間にか消えていた。
翔の姿を目視できたものの、風魔の完敗であった。
だが、翔は逆に警戒心を強めていた。

翔「風間唯、あの娘、恐ろしい心の力を持っておる。草どもがあの娘の心に打たれ、わらわを裏切っていく。あの娘がおる限り、我らの目的は達せられまいぞ」
一方、唯は、自分の部屋に閉じ篭もり、ひたすら自分の無力さを噛み締めていた。

唯「わちは、わちは礼亜さんも成美さんも助けようと思えば助けられたんじゃ……じゃけん、わちの体は怖くて怖くて動かんかった!! わちの為に礼亜さんは死んだんじゃ!!」
そう叫ぶと、ヨーヨーを叩き付ける唯。
ま、前記したように、礼亜の命を奪った短刀を持って来たのは唯なので、見てる方も100パーセント否定できないのがつらいところ。
唯「わちはもうダメじゃ、わちはもうダメじゃ、 わちはもうダメじゃーっ!! 礼亜さん、もう何もかもいやじゃーっ!!」
畳に身を投げ出し、子供のように泣き叫ぶ唯の姿を映しつつ、「つづく」のだった。
ちなみに唯の台詞だと、成美もついでに死んでしまったように聞こえるが、実際は重傷を負っただけで生きており、のちに風魔の一員として再登場することになる。