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私は猫になりたい

昔の特撮やドラマを紹介します。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第22話「三姉妹の未来は死!? 謎の女占い師登場」

2024-12-02 19:52:18 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇
 第22話「三姉妹の未来は死!? 謎の女占い師登場」(1987年5月7日)

 冒頭、ダイニングの姿見に自分の制服姿を映して、得意げに眺めている唯。

 
 唯「今日から2年生、これからはアダルトしちゃろう」

 もう5月なんですが……

 ま、4月はだいぶ放送が飛んでるからねえ。

 と、2階から由真がドタドタ降りてきて、「どけよー」と唯の体を突き飛ばす。

 
 由真「今日から3年、決まってるね」

 唯が激怒したのは言うまでもない。

 唯「この野郎、可愛い妹ば突き飛ばしやがって!! 姉ちゃんの馬鹿力!!」

 おかえしに由真の体を突き飛ばす。

 由真「今日と言う今日はゆるさねえ、ケリつけてやる」
 唯「そりゃこっちの台詞じゃ!!」

 朝っぱらからヒートアップして、それぞれの武器を構えて睨み合う二人。

 由真「一本勝負、行くよ」
 唯「望むところじゃ」

 緊張が高まるが、無論、その程度のことで本気で喧嘩をするほど子供ではなく、

 
 唯「わち、ここ」
 由真「勝負」

 由真の投げた糸を「あみだくじ」に見立てて遊ぶ、お茶目な二人であった。

 しかし、これで勝ち負けが決まったとして、それが何になるのだろう?

 トイレの順番とか、何か競ってるのなら分かるのだが。

 結花はそんな妹たちを尻目に姿見の前に立ち、

 結花「今年もまた三年、決まってるのは私だけ、なんか虚しい台詞ねえ……」

 留年してもう一年女子高生をやることになった結花、思わず溜息をつくのだった。

 一方、テストも赤点もない影のアジトでは、

 
 顔をベールで隠した宝珠翠(ほうじゅみどり)と言う女性が、翔の前に参上していた。

 演じるのは、美人女優の山本みどりさん。

 それなのに、ほとんど常に顔をベールで隠している時点で、この話、終わってる。

 
 翔「占いのう」
 翠「我が占術は人の未来を読みます、人は知ってはならぬものを知りたがるもの……そして自ら絶望に陥り、人の心に破滅の種を埋め、広め、しかも見事、あの風間三姉妹をも倒してご覧に入れましょう」

 
 ミヨズ「三姉妹!!」

 
 オトヒ「して、その未来は?」

 改めて見ると、眉毛太いよなぁ。

 翠ちゃんは、天使のような図柄が並んでいる半紙ほどのサイズの紙を取り出すと、それを宙に舞わせて火をつける。

 
 翠「死」
 翔「そりゃまあ、人間誰でも死ぬけどねえ」
 翠「おだまり!!」

 翠お姉様は、揚げ足を取る奴が大嫌いなのである!!

 OP後、唯が張り切って新しい2年の教室に行くが、みんなは典子と言う女生徒の占いの話に夢中で、誰も気付いてくれない。

 それでもヒデとゴロウが声を掛けてくる。

 
 ゴロウ「唯ちゃん」
 ヒデ「また一緒だね」
 唯「なんじゃまた一緒か」

 ヒデは占いの本を取り出し、

 ヒデ「唯ちゃん、2月の戌年生まれだったよね」
 唯「うん、そうだけど」
 ヒデ「ゴロウ、読んでやれよ」
 ゴロウ「はい、冬がやってきました、一切のものが衰え始めます。大殺界です。人に騙され自分が自分でなくなるでしょう、苦しみ抜きます」

 不吉な予言をするゴロウたちであったが、偶然にも、今回の唯のことをピタリと言い当てていた。

 そこへ1年から引き続き担任となった依田先生があらわれるのだが、小学校ならともかく、高校で担任が持ち上がりなんて、聞いたことがない。

 タイトル表示後、唯が帰宅すると、三人それぞれに招待状が届いていた。

 
 結花「あなたの未来を占って差し上げます、あなたにこの占いの正しさを信じていただくために」
 由真「こんなの単なる新装開店案内じゃん、パチンコとかわんねえよ」

 由真はつまらなそうに招待状を放り投げる。

 しかし、唯が帰ったときは真昼だったのに、次のシーンでいきなり夕焼けっておかしいだろ。

 結花「この頃妙に流行ってるけど、ま、占いなんてね」
 唯「……」

 姉たちは興味なさそうであったが、唯は地図の書かれた案内状を食い入るように見詰めていた。

 翌日……かどうか知らんが、唯がその占い師がいるマンションの一室に行くと、こちらが何も言わないのに「風間唯さん、どうぞお入り下さい」とインターホンから声がする。

 この時点で明らかに怪しいのだが、唯は全く怪しまない。

 カーテンを閉め切って真っ暗にして、奇妙な彫像やらロウソクやらいかにもオカルティックなアイテムをごたごたと無秩序に置いた部屋で待っていたのは、無論、翠お姉様であった。

 翠「よくいらっしゃまいしたね、風間唯さん、いいえ、サキさんとお呼びした方が良いかしら」
 唯「なんでわちのことを?」

 唯のコードネームまで知ってるのは、自分が影だと白状しているようなものだったが、引き続き、唯は全く怪しまない。

 さすがにおかしくないか?

 
 翠は例の紙を三枚取り出して宙に固定し、それを手も触れずに燃やしてみせる。

 唯「ぶったまげた」

 
 翠「私には人の過去が見える、勿論未来も……あなたは自分の未来を知りたがっている。そうね?」
 唯「やっばりそうなんじゃろうか」

 すでに術に掛かっているのか、唯は呆けたような顔でつぶやく。

 
 翠の声「あなたは今日これから、何か事件か事故のようなものに巻き込まれるでしょう。そして夜には誰か身近なものにいわれのない非難を受けることになります……」

 マンションを後にする唯の頭に、翠から告げられた占いがリフレインする。

 唯「やっぱあほらしか」

 考え込んでいた唯、お告げを振り切るようにつぶやいて横断歩道を歩き出すが、そこに車が突っ込んできて危うく轢かれそうになる。

 
 続いてバイクが突っ込んでくるが、唯はジャンプしてかわしながら、ヨーヨーを飛ばしてバイクのマフラーに巻きつける。

 着地して鎖を引っ張ると、マフラーが外れてバイクはそのまま走り去る。

 まあ、その行動から見て、影の一味だったのだろうが、唯が、咄嗟にヨーヨーを投げつけたのは、いささかやりすぎだったように思う。

 それが影であろうがなかろうが、走行中のバイクにチェーンを巻きつけるなど、ライダーにとっても唯にとっても極めて危険な行為だからである。

 ここは普通に飛んでかわすだけで良かったように思う。

 それはともかく、唯、さすがに影の関与に勘付いても良さそうであったが、相変わらず露ほども疑わない。

 夜、由真は遅くなって帰ってくるが、妙に機嫌が悪い。

 
 由真「メシ」
 唯「……」
 由真「わかんねえのかよ、メシって言ってんだろ」
 結花「由真!!」
 由真「姉貴には関係ねえよ」
 唯「由真姉ちゃん、わち、なんか悪いことしたかいね」
 由真「なんでもねえよ」

 唯が直接聞くが、由真はそう言って2階に引っ込む。

 結花「ほっときなさい、虫の居所でも悪いんでしょ」

 これで、翠の占いは二つとも当たったことになるが、これは、同じく占ってもらいにきた由真に、唯の悪口を吹き込んだ結果だと思われる。

 しかし、由真が同じ日に来なかったら、どうするもりだったのだろう?

 
 翌日、屋上にさっきの典子と言う女子生徒がぼんやりした顔で立っていた。

 投身自殺するつもりだったが、フェンスがヤケクソに高いので諦めたのかもしれない。

 彼女が持っていた新聞が唯の目の前に落ちてくる。

 
 それを拾い上げる時の唯の顔が妙に綺麗だと思いました。

 新聞には、この頃、女子高生の飛び降り自殺が多発していると書いてあった。

 放課後、唯は再びあのマンションに行く。

 
 翠「お姉さんがあなたにつらく当たるのを、あなたはとても気にしている。そのお姉さんの名は由真」
 唯「そうじゃ」
 翠「そのことについて占う必要はないわ、あなたにつらく当たるのは彼女が昨日ここへ来たせい」
 唯「由真姉ちゃんが来たと? 何を由真姉ちゃんは占ってもらったんじゃ」
 翠「心に秘めた未来の夢、それが叶うかどうか」
 唯「どんな夢ね」
 翠「自分が果たすべき仕事が終わったら三人姉妹で小さな店を持ち、仲良く平和に暮らすこと」
 唯「由真姉ちゃんがそんげな夢をもっちょったと?」
 翠「けれどそれはあるもののために実現されないと出たわ」
 唯「わちの、こと?」
 翠「そう、あるものとはあなたのこと」
 唯「なんでわちが由真姉ちゃんの夢ば打ち砕くと?」
 翠「そのお姉さんばかりじゃない、もうひとりの姉にもあなたは災いとなるでしょう。それも遠い未来のことではないわ。近い将来、もっとも悪い災いを……」
 唯「なんでじゃ」
 翠「これからそれを占って差し上げます」
 唯「いやじゃ、聞きとうない!!」

 翠が例の紙を取り出して火の中に投じるが、唯はそう叫んで飛び出す。

 唯、帰宅するが、奥から二人の笑い声が聞こえてきて、なんとなく入りづらい。

 家を出てあてもなく歩き出すと、すぐ結花が追いかけてくる。

 
 結花「どうしたの、唯、寂しそうな顔しちゃって」
 唯「わちな、今日、あの占い行ってきたんじゃ」
 結花「……」
 唯「姉ちゃんらの未来、わちの……」
 結花「実はね、私もあの占い行って来たの、昨日、こっそりね」
 唯「結花姉ちゃんも?」
 結花「そう、ズバッと言われたわ、多分唯と同じことをね、でも私、気にしてないわ、未来ってはっきりそこにあるわけじゃないでしょ。自分で切り開くものよ」

 じゃあ、最初から行くなよ……

 あと、なんで唯と同じことを言われたって言えるのだろう?

 結花「たとえそれがどんな運命でもね。由真もきっとわかってくれるわ」
 由真「結花姉ちゃん……」

 結花の言葉に、やっと唯の顔に笑みが戻る。

 ……

 いや、「未来は自分で切り開くもの」と言いつつ、それを「運命」と表現することに、何の矛盾も感じなかったのだろうか?

 それに、三姉妹が揃って同じ日に占いに行ったと言うのも、不自然だよなぁ。

 CM後、由真がひとりでマンションにやってくる。

 由真「だいたい言うだけ言いやがってどうすりゃいいか教えないなんてひでーよな、それを聞くまで帰ってなんかやんねーから」

 どうやら由真、解決策を聞き出すまで、タダで占い続けてもらうつもりらしい。

 商売あがったりである。

 一方、学校の図書館では、

 
 結花「あの占い師、私たちのこと知り過ぎてる。ただの占いでそこまで分かるなんて何かおかしいわ」
 般若「中国古占術・七星四余……紀元前三千年のバビロニアに生まれ、エジプト、インド、中国を渡り完成した、占術の究極、おそろしいほど当たるがゆえに絶望のあまりに自殺するものも……その一切の研究を禁じた時代もあった」
 結花「物凄く腕のいいただの占い師、そう言うこと?」
 般若「いや、お前たちの話からすればその占い師の使うものはある特徴を持っている。ゴケイ(五形?)、符、それらを一体何のために使うか分かるか?」
 結花「……」
 般若「芳山秘術」
 結花「芳山秘術?」
 般若「呪詛の法、すなわち、人を呪い、死に導く恐ろしい邪法だ」
 結花「忍び?」
 般若「うむ、それも、邪悪にとらえられしもの……影だ!!」

 夜、唯がひとりで歩いている。

 唯(わちの未来とわちはむきあっちゃる、わちの未来が本当に姉ちゃんらに災いをもたらすっちゅうなら、いんじゃる。どっか遠くひとりで二度と姉ちゃんらと会わんで)

 なんで、そうなるのっ!!(欽ちゃん風)

 何故、唯がそこまであの占いを絶対視するのか、それがわからない。

 そして、「向き合う」と言う前向きな台詞のあとに、「いんじゃる」と言う真逆の台詞が飛び出したので、思わずコケそうになる管理人であった。

 それはそれとして、ふと唯が視線を上げると、マンションの屋上に人がいるのが見えた。

 もしやと思って行ってみると、果たして、それはクラスメイトの典子で、フェンスを乗り越えて飛び降り自殺をしようとしていた。

 
 唯「典子さん」
 典子「来ないで、お願い、死なせて」
 唯「なんでじゃ」
 典子「未来を知ってしまったから」
 唯「……」

 
 典子「恐ろしい未来を」

 うむ、威風堂々たる大根である。

 唯「あの占いのせいね」
 典子「あの人の占いでもう何人もの人が死んだって私、聞いてた。おとついも絶望して死んだ人がいたわ」

 典子の言葉に、唯はあの新聞記事のことを思い出す。

 典子「だけど私、そんな話を聞いても自分は平気だって思ってた。でも、そうじゃなかった」
 唯「わちも典子さんとおんなじじゃ、わちは最後まで聞く勇気もてんかった、じゃけん、今は違う、最後まで聞いちゃろう、そう思っちょる、今典子さんにわちはえらそうなことは言えん、未来を聞いたら典子さんと同じように思うかも知れん、でも……」

 全く中身のない台詞を言いながら、唯はハンカチを半分に裂いて典子に飛びつき、その両腕を柵に結びつける。

 唯「もしわちが絶望せんで戻れたら、典子さんに諦めるなって言える。死ぬのはそれからでも遅くないじゃろ」

 いや、そもそもなんで占いで不吉なことを言われたくらいで自殺しようと思うのか、その辺がよくわからないのである。

 唯の「死ぬのはそれからでも遅くない」と言う台詞も、なんかピントがずれてるし……

 普通は「占いなんか信じたらいけん」とか、「今からあの占い師の化けの皮を剥がしてきちゃる」だよね。

 再びあの部屋で翠と向き合っている唯。

 今回の話、せっかく山本さんがゲストなのに、彼女がほぼこの暗い部屋の中にしか出て来ないと言うのが、シナリオの退屈さに拍車をかけていると思う。

 ま、山本さんのスケジュールの都合もあったのだろうが……

 
 翠「見えた、あなたたち姉妹を待ち受ける未来が……死!! あなたの戦いがもたらす姉妹のはじめの死は、そこに見えるもの……」

 翠が視線を向けると、ベランダに面したカーテンが開き、そこに由真が立っていた。

 しかし、占いの結果があまりに抽象的過ぎるよなぁ。日本語も変だし……

 ますます、若い女の子たちが自殺したのが信じられなくなる。

 唯「由真姉ちゃん!!」
 翠「慌てることはない、あれは幻覚、だが、あなたが戦いを続ければあの娘に訪れるのは死、夢は破れ、心を打ち砕かれ、あなたを恨んで泣きながら悶え、死んで行くことになる」
 唯「どうすればいいんじゃ、どうすれば」
 翠「ひとり、あなたが死ねば、他の二人は助かる、それ以外に道はない」
 唯「わちが死ねば……」
 翠「あなたがその窓を開け、ベランダを飛び越えれば二人の姉に平和は蘇る。けれどあなたがそうする必要はない、あなたのために姉たちが死んだとしてもあなた自身は助かるかも知れないのだから」

 翠さん、自分でナニ言ってるのかわかってます?

 「それ以外に道はない」と言ったそばから、「必要はない」って、もう日本語めちゃくちゃである。

 唯が、ふらふらとベランダの方に行こうとすると、そこに結花が飛び込んでくる。

 結花「騙されちゃだめよ、由真は本物よ、この女は影!!」

 ……

 今気付いたけど、由真を完全に操ってるのなら、さっさと由真を飛び降りさせれば良かったのでは?

 ともあれ、翠が呪文を唱えると、結花の体がすっ飛んで由真と一緒に落ちていく。

 これって、忍びと言うより、エスパーだよね。

 しかも、ほとんど翔レベルの使い手である。

 咄嗟に唯がヨーヨーを投げ、二人の体をチェーンで縛って何とか支える。

 
 翠「よく踏み止まったわね、ほめてあげるわ。でも残念ながら私の占いは外れたことがない、その状態で戦えるかしら」

 
 由真「もういいよ、唯、このままじゃ、お前がやられちまうよ」

 ベランダの柵のようなところを掴んでいる二人。

 うーん、それくらい自力で這い上がれそうなものだが……

 
 唯「由真姉ちゃん……」

 二人の体重を支える唯の右手にギリギリと鎖が食い込み、血が流れる。

 結花「由真の言うとおりよ、唯、手を離して戦わなきゃ三人無駄死にするだけだわ」
 由真「そうだよ、手を離せよ」
 唯「……」
 翠「手を離せ、運命には逆らえない」
 唯「このヨーヨーは離すわけにはいかん、これはわちの心じゃ、わちには戦うために心は捨てられん、死んでも捨てん!!」

 と、唯の額にカーンの梵字が浮かび上がる。

 翠「風間三姉妹、すでにこの世での時は過ぎた、死と共に消えよ」

 翠はあの紙を投げつけ、唯の体に何枚も張り付かせる。

 
 唯「結花姉ちゃん、由真姉ちゃん、めぐりあえて、わちはほんとに幸せじゃった、わちは絶望せん、今が一番幸せじゃ」

 姉と一緒なら自分が死ぬことも厭わない唯。

 その姉妹愛は大変うるわしいが、般若や暗闇指令たちのメーワクも、少しは考えて頂きたい。

 それに、自分たちが影と戦う宿命を背負っているのはずっと前から知ってるんだから、ここは、涙を飲んで姉たちを見捨て、戦うのが忍びとしてのつとめであろう。

 つーか、そのチェーンを何処かに縛り付ければ済む話なのでは?

 ともあれ、翠が唯を焼き殺そうとした瞬間、

 
 唯の背後から、神々しい後光のような光が差す。

 ……

 笑っちゃいけないシーンなんだろうけど、なんとなく笑ってしまうのは管理人だけかしら?

 なんか、パチンコの予告演出みたいで。

 あるいは、「ねるねるねるね」のCMを連想してしまうからだろうか。

 ま、これは一応、大日如来のイメージなんだろうけどね。

 翠「……」

 その姿をあっけにとられたように見詰める翠。

 と、何故か炎を消すと、ベールを外し、素顔を見せる。

 
 やっばり山本さんは綺麗じゃ。

 それなのに、素顔が見えるのが、この1カットだけなのは実に勿体無い。

 部屋が明るくなると同時に、翠の姿は消えていた。

 
 翠の声「あなたはもしかしたら、人々はおろか、影にとらわれたものたちをも救う救世主になるかもしれない。厳しく険しい道の彼方に素晴らしい未来をもたらすかもしれない。そんな日が来るかどうか、それはあなたたちの未来の選び方次第、私はそんなあなたたちを何処かで見守ることにする、もしもあの恐ろしい翔の手から逃れることが出来たなら……」

 唯の持つ無限大の愛の力に打たれたのか、それとも、その類稀な予知能力で唯がこの世界を救うことを知ったのか、翠は途中で戦いを放棄したうえ、影からもトンズラしてしまうのだった。

 まぁ、山本さんをただの悪役で終わらせたくなかった気持ちはわからないでもないが、かなり唐突だし、翠は実際に10人もの少女を死に追いやっているのだから、どうにも釈然としない結末である。

 由真「早く引き揚げろよぉ」
 結花「こら、救世主!!」
 唯「ちぇっ、手ぇ離しときゃよかった」

 結局、最後まで自分で何とかしようとはしない結花たちなのだった。

 ラスト、唯たちは典子のところへ行き、その身を自由にする。

 唯「典子さんとわちの未来、変えてきてもらったんじゃ、明日のことは誰にも分からん、そうじゃろ?」
 典子「……」
 唯「わからんじゃろ、あとで救世主のわちがよーく説明してやるかいね」
 由真「お前、救世主って意味わかってんの」
 唯「なんね、結花姉ちゃん?」

 
 結花「人々を救う人」
 唯「はー、するとわちは看護婦っちゅうわけじゃね」
 由真「私ならともかく、お前になれるわけないだろ」

 ピントの外れたボケをかます唯の頭を、これまたピントの外れたツッコミを入れながら殴る由真。

 唯「いてー、なんか由真姉ちゃんなんか暴力看護婦の癖してからに」
 由真「なんだよー」

 
 結花「白衣の天使にふさわしいのは私だけね」
 典子(前が見えん……)

 二人がどつきあうのを見ながら、ご丁寧にピントの外れた台詞で締め括る結花。

 とにかく、今回のシナリオ、最初から最後までピントが外れまくりであった。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」スペシャル 「三姉妹 最も危険な旅 八つの死の罠」 その3

2024-11-23 20:56:08 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇
 つづきです。

 
 一方、唯たちは、土龍町に続く一本道を見下ろす小高い森に隠れていた。

 
 唯「由真姉ちゃん、結花姉ちゃん頼むね」
 由真「お前一人をあんな奴らとやれるかよ。これはどう考えても私らを倒す為の罠に違いないんだ。あいつか、あいつか、どっちかが敵と通じてんのは間違いないんだ。これ以上進めば今度こそやられるぜ」

 と、離れたところで彼らのヒソヒソ話を聞いていた菊子が不意に嘲るような笑い声を立てる。

 
 由真「なに笑ってんだよ」
 菊子「怖気づいたようね」
 由真「なんだとぉ」
 菊子「帰んなさい、お嬢ちゃんたち、突っ張ったり威勢の良いこと言ったって、所詮あんたたちなんてそんなもんよ」
 唯「そうはいかんわい!! わちは帰らんよ、菊子さん、これが罠でんなんでん、あんたと行く。絶対に後ろへは引かん」
 菊子「……」
 唯「父ちゃんが奴らに殺された、何人もの学生仲間がやつらの犠牲になった。それだけじゃなか、草ちゅうてわちらとかわらん若いモンが唆されて邪悪の手先にされちょるんじゃ、どんげなことがあってもこの戦いに後ろは見せられん、行く手に翔の姿がある限り、わちは行く」

 雄々しく宣言する唯を、菊子は少し見直したような目で見る。

 唯はもう一度由真に結花のことを頼むと、下の道へ降りてヒッチハイクしようとするが、なかなか停まってくれない。

 
 ならばと、しなを作って色っぽく笑いかけると、さっそく幌付きのトラックのおやじ(団巌)が引っ掛かり、快く唯を助手席に乗せてくれる。

 
 その隙に、菊子と黒丸がこっそり荷台に入り込む。

 ……

 菊子がミニスカだったらなぁ。

 ところが土龍町に入ると、消防団員たちによって、私的な検問が行われていた。

 運転手は車を降りて事情を聞きに行く。

 唯「町の人たちが通行止めして検問しちょる、なんじゃろ」
 黒丸「多分土龍寺の依頼で僕らを探させられてるんでしょう」
 菊子「土龍寺までは」
 黒丸「そこを曲がったところです」

 そこへ運転手が戻ってきて、

 
 運転手「土龍寺を爆破するって脅迫電話が入ったらしくてね、町の人みんなで怪しいやつ探してんだってさ。なんでも、若い女の子たちと男の子がひとりらしいんだけどね……あんたひとりだもんなぁ、関係ねえよな」
 消防団員「後ろには」
 運転手「荷物だけですよ」
 消防団員「ちょっと調べさせてもらうよ」
 運転手「どーぞどーぞ」

 荷物の陰に息を潜めて隠れている菊子たちが発見されそうになったその時、突然、一台の車がクラクションを鳴らしながらトラックの横を駆け抜けていく。

 車はトラックの前で停まると、ドアを開けて由真が顔を出す。

 
 由真「土龍寺はぶっ潰してやるぜ!!」
 消防団員「あれが脅迫電話の犯人だ!!」

 由真が助手席に戻ると、車は再び走り出す。

 消防団員はトラックを打ち捨てて、その車を追いかける。

 唯「由真姉ちゃん……」

 唯たちはその隙に素早くトラックを離れ、土龍寺へ向かう。

 あの車、一体誰が運転していたのかと思えば、

 
 由真「さぁ、東京までぶっ飛ばしてくれよ。姉貴を病院に連れて行かなきゃいけないんだから」
 若者「それじゃ、ほんとに、ほんとに俺とデートしてくれるか?」
 由真「うん、あんたみたいなのが通りがかってくれてほんと良かったよ。私のタイプだよ!!」
 若者「わーおっ!!」

 由真も、色仕掛けでたまたま通りがかったナンパな若者を引っ掛けて自分たちに協力させていたのだった。

 演じるのは「少女コマンドーいづみ」第1話で、いづみにちょっかいを出してきた若者を演じていた山田良隆さんである。

 唯たちは黒丸の案内で土龍寺の敷地内に潜入する。

 黒丸「あれが本堂です」
 菊子「唯、ラストバトルよ、ヘマすんじゃないわよ」
 唯「菊子さんこそ」

 二人は意気込んで本堂へ突入するが、内部はがらんとしていて人の気配が全くない。

 
 唯(なんでじゃ、これが八門遁甲の陣の最後の場所ならなんで敵が待ち伏せちょらん)

 唯、ひとりで本堂の中に残っていたが、建物の外から「ああーっ!!」と言う、黒丸の叫び声が聞こえてくる。

 唯が慌てて外へ飛び出すと、本堂のすぐそばに、胸から血を流した黒丸が倒れていた。

 
 唯「良也、どんげしたんじゃ、良也?」
 良也「菊子さんに……やられたんだ。気をつけろ、唯ちゃん、やっぱりあの人だ……」
 唯「良也!! 良也!! ……死んだ。せっかく、せっかく立ち直ろうとした良也が!!」

 唯が悲しみに暮れていると、銃を手にした菊子が背後に現れる。

 
 唯「やっぱり、敵に通じちょったのはあんたじゃね、多聞菊子」
 菊子「……」
 唯「何が理由で暗闇指令を裏切り、わちらを罠にかけたか知らんが、姉ちゃんらを傷付け、罪を償おうとした良也を殺したあんたが許せん!! 勝負せい」
 菊子「何か言っても、今のあんたは聞く耳を持たないでしょうね」
 唯「当たり前じゃ!!」
 菊子「腕の違いは十分分かっている筈よ」
 唯「勝ち負けなんかどんげでんいい、わちはあんたにこのヨーヨーを叩きつけたいんじゃ」
 菊子「唯、やる以上はあんたを殺すわよ。私はプロのコマンドだからね」
 唯「当たり前じゃ」

 唯はヨーヨーを構えたまま、石段を上がって濡れ縁で菊子と向かい合う。

 菊子「私の抜き撃ちは0.25秒、あんたはヨーヨーを投げるのに0.5秒を要し、そのヨーヨーが私の体に届くまでになお0.8秒かかるでしょう。勝ち目はないわ。唯、もう一度だけ言う、やる以上は殺すわよ!!」
 唯「勝負は理屈だけじゃないわい」
 菊子「あんたって人は……負けたわ」

 二人は本堂に移動して戦うが、なんだか良く分からないが唯が勝ち、菊子の体は障子を突き破って部屋の外へ吹っ飛ぶ。

 
 唯「勝った、わちが勝った……」
 風角「かかったな、風間唯!!」

 勝利を噛み締める唯であったが、そのとき、男の声がして、数本の苦無が飛んでくる。

 唯は体を回転させてそれをかわす。

 立ち上がり、ヨーヨーを構える唯の前に、「アービラウンケンソワカー」と真言を唱えながら、風角と部下の修験者たちが陽炎のように揺らめきながら現れる。

 
 唯「お前は?」
 風角「影の忍び、魔道衆・棟梁、海頭入道風角!! ふっふっふっふっ、我らが仕掛けし罠、八門遁甲の陣に見事嵌まりおったわ」
 唯「やっぱりそうか」
 風角「風間三姉妹、お前たちを倒すことがこたびの我らの窮極の目的であった。ことに、額にカーンの梵字が浮き出す風間唯、お前をな」
 唯「そんために、こんげな回りくどいことを考えたんか?」
 風角「これがもっとも確実な手段よ、ひとりまたひとりと仲間を倒していく。ふっふっふっ、現に今お前は、傷付いてたったひとりだ。疲れ果ててな。厄介な多聞菊子にいたっては、お前自身が倒してくれたわ」
 唯「そんな、多聞菊子はお前らの仲間と違うんか?」
 風角「違うとも、長年我らを追及し続けた、憎い政府機関のエージェントであったのさ。あやつを始末できたのも収穫であったわ」
 唯「それなら誰が黒丸良也を殺したんじゃ」
 風角「多聞菊子でないことだけは確かよの」
 唯「わちは、わちはなんちゅうはやまったことをしてしもうたんじゃ!! 菊子さん……」

 自分が大変な勘違いをしていたことに気付いた唯は激しく動揺し、敵に背中を向けて崩れるように座り込む。

 影たちとの戦いになるが、平常心をなくした唯は、彼らの術にかかって絶体絶命のピンチに陥る。

 
 菊子「唯、目を覚ましな!!」

 その時、破れた障子から入ってきて銃をぶっ放したのが、倒された筈の菊子であった。

 
 唯「菊子さん!!」
 菊子「忍者に気を取られちゃダメ、影の動きに目をつけるのよ」
 唯「無事じゃったんじゃな? だいじょぶじゃったんじゃな?」
 菊子「へなちょこヨーヨーにやられる私じゃないわ」
 唯「可愛くない!!」

 唯は、菊子のアドバイスに従って、隠顕自在の修験者たちを次々とヨーヨーで倒していく。

 風角「おのれ、唯、菊子、奥の院、餓鬼堂にて待ちおるぞ。そこにお前らの望むお方もおわす。心してまいるがよい」

 残った風角はそう言い残して姿を消す。

 唯「菊子さん……」
 菊子「さっきのあんたの形相、とても私の言葉を信じそうになかったからね」
 唯「それじゃなんもかんも承知で、わざと? お芝居じゃったんか? 良かったぁ」
 菊子「気を抜くのはまだ早いわ。奥の院、餓鬼堂、そこが本当のラストバトルの地よ。勿論、それも奴らの罠でしょう。でも、私たちは行くしかない。そうでしょう、スケバン刑事・麻宮サキ」

 二人は建物の中を通って、餓鬼堂とやらに向かう。

 唯「ひとつだけ聞かしちくれんかの、あんたが敵を憎むその激しさ、普通じゃないと思うんじゃけど」
 菊子「親友のエージェントと組んで仕事してたわ、鬼のコンビと恐れられたものよ。その私たちが八門遁甲の陣に引っ掛かったの」
 唯「……」

 
 菊子「唯、さっきのあんたと同じよ。あんたヨーヨーで私を撃った。私はこの手で親友を撃った。彼女は、死んだわ。このマスコット人形ひとつ残してね……」
 唯「……」

 最初から胸にぶら下げていた天使のマスコットを握り締めて壮絶な過去を語る菊子に、唯はかける言葉が見付からなかった。

 ただ、菊子の台詞だけで、実際の映像がないのは物足りない。

 しかし、ラストバトルとか、コマンドとか言う単語を聞くと、反射的に、続編の「少女コマンドーいづみ」のことを連想してしまうが、本編とは少し毛色の違うこのスペシャル版のハードな世界観は、「いづみ」に通じるものがあるよね。

 そして、この菊子と言うキャラそのものが、「いづみ」のヒロイン、五条いづみの原型のようにも思えるのである。少なくとも、なんでも頭ごなしに命令するところなどは、序盤のいづみにそっくりである。

 戦闘訓練を受けたヒロインが、スケバンたちと協力して戦うと言うシチュエーションもね。

 それはともかく、二人が餓鬼堂へ踏み込むと、風角と、あの尼さんが静かに彼らを待ち受けていた。

 PDVD_066.jpg
 風角「我らが八門遁甲の陣、破ったのはそなたらが初めてじゃ」
 尼「かくなる上は……」

 二人は立ち上がり、振り向いて戦う構えを見せる。

 
 尼「尋常の勝負を」
 菊子「ふっ、とても信じる気にはなれないわね、町民の待ち伏せが第六門、さっきのが第七門、だったらこれが最後の第八門の筈、今度は一体どんな手を隠してるの?」

 菊子が舌鋒鋭く問い質すが、無論、自ら手の内を明かすようなことはしない。

 
 唯「お前、翔か?」
 朱麗院「……」

 唯は、御簾の向こうにいる小柄な人影に問い掛けるが、端座したまま何の反応もない。

 ここから、風角と菊子、唯と尼さんとの一騎打ちとなる。

 風角が天井から菊子の上半身を、尼さんが下から菊子の足を押さえて、上下に引っ張るという、いまひとつ意味のわからないツープラトン技を掛けるが、唯はほっといて、御簾の中に飛び込み、朱麗院の御高祖頭巾を剥ぎ取るが、

 
 声「さようか、それはなにより……さようか、それはなにより」

 その下から出て来たのは機械仕掛けのマネキンで、エンドレスで翔の声が流れるようになっていた。

 しかし、最初に出てきた朱麗院はどう見ても人形ではなく、人形に報告する必要もないから、あのときは確かに翔だったのだろう。

 さらに、人形の体内からは、カチカチと言う秒針の音が聞こえていた。

 唯「菊子さん、爆弾じゃ!!」

 唯は菊子を助けようとして、尼さんの体を引き剥がし、鳩尾に薙刀の柄を打ち込んで倒す。

 菊子は風角の手から自力で逃れるが、右足首を蹴り折られてしまう。

 風角は菊子の背後に回り、その首を絞める。

 
 菊子「親友の形見の隠しナイフ、喰らえ!!」

 菊子はあのマスコットからナイフを出して、風角の右手に突き立てる。

 風角が菊子から離れたところに、すかさず唯のヨーヨーが投んできて、

 

 
 風角「うっ」

 その額を直撃する。

 なんとなく笑ってしまう、風角のやられ顔。

 唯「菊子さん!!」
 菊子「逃げなさい、足が折れてる、行けないわ」
 唯「そうはいかんわい」
 菊子「命令よ」
 唯「……」

 無論、そんな命令を聞くような唯ではなく、菊子に肩を貸して歩き出す。

 餓鬼堂(本堂も?)は爆弾で吹っ飛び、二人は長い石段を下まで転がり落ちるが、なんとか無事だった。

 
 菊子「唯、また命令を無視したわね?」

 このカットなんかも、「いづみ」の4話で、いづみと恵子が危機を脱した後に見詰め合うシーンを連想してしまう。

 
 唯「えへっ……なぁ、菊子さん」
 菊子「うん?」
 唯「世の中には敵と味方しかおらんちゅうたね、今でもその気持ちは変わらん?」
 菊子「いや……どうやらそれ以外にもいたみたいだね、友達って言うのがさ……思い出したわ」
 唯「……」
 菊子「唯、ありがとう……あんたって、素敵な子だね」

 菊子が初めて感謝の言葉を口にするが、

 
 黒丸「おりゃあーっ!!」

 その瞬間、菊子の背後に死んだ筈の黒丸があらわれ、苦無で菊子の右腕を切る。

 
 唯「お前、死んだ筈じゃ」
 黒丸「魔道衆六角、仮死の法だ!!」

 案の定と言うべきか、やはりスパイは黒丸だったのである。

 ただ、これだけ苦労して唯たちを欺いた上での千載一隅のチャンスだったのに、そんな中途半端な攻撃しかしなかったのは、「九仞の功を一簣に虧く」と言う奴だろう。

 何故、苦無に毒を塗るくらいの工夫が出来ない?

 あるいは、爆弾を投げるとか、銃を撃つとか、もっと効果的なやり方があった筈だ。

 唯「わちはお前を友達と思うちょったとに……」
 黒丸「笑わせんな!!」

 唯と黒丸の戦いとなるが、

 
 唯「人が人の心を忘れた時、それこそがまさに影の邪悪そのものなんじゃ!! あほたれーっ!!」

 裏切られた悲しみと怒りをヨーヨーに込めて、唯が渾身の一撃を黒丸の胸に叩き込む。

 
 黒丸「うぇーっ!! うう……」

 黒丸は胸を押さえて座り込み、山門の柱にヨーヨーの鎖で縛り付けられる。

 よっわっ!!!!

 これのどこが「魔道衆いちの手練」やねん。

 まぁ、戦闘力ではなく、潜入工作能力のことを指していたのだろうが。

 一方、本物の翔は、蒸気の吹き上げる岩山で、「アービラウンケンソワカー」と真言を唱えていた。

 
 翔(魔道衆が八門遁甲の陣をも退けおったか、風間唯……呪い呪わば影の世や、それ妄執の吹き溜まり、かくなるうえはおのれが命、などて地獄の業火にくべずにおこうか)

 翔が唯への殺意を燃やしていると、地の底から響くような不気味が息吹が聞こえてくる。

 と、翔の前方に、黒い影があらわれる。

 翔は恭しく一礼する。

 
 翔「おかた様、破愚烈翔、参上いたしましてござりまする」
 果心居士「相変わらず、ヤンキー烈風隊みたいな名前じゃのう」
 翔「ほっといてください」

 じゃなくて、

 果心居士「何故討たぬのじゃ、翔、はようカーンの梵字の娘を討て、ときが迫っておる……」

 
 翔に「おかた様」と呼ばれるその人物こそ、影の真の支配者、果心居士なのだが、このビジュアルは「スターウォーズ」の皇帝そのまんまで、さすがにこれはどうかと思う。

 ラスト、多聞菊子を三姉妹が見送っている。

 
 唯「菊子さん、またいつかね」
 菊子「もしこの次組む時は、命令違反は許さないわよ。もっと腕を磨いときなさい」

 にこやかな顔で鬼軍曹的な言葉を吐く菊子に、結花と由真は憮然とした顔を見合わせるが、すぐに笑顔になる。

 どうやら結花の怪我も大したことはなかったようである。

 菊子はヘルメットを被ると、何も言わずにバイクで走り去る。

 唯「じゃけん、菊子さんはすごか人じゃ、ほんまもんのプロフェショナルじゃ」
 結花「プロフェッショナル」
 唯「わちら、まだまだじゃね」
 由真「わち、わちらじゃなくて、わち!!」

 いちいち唯の言葉を訂正する結花と由真であったが、仲間を庇うためとは言え、今回は二人とも負傷退場しているのだから、あまり大きな顔も出来まい。

 唯「あん人は親友を自分の手で撃ったショックと戦い続けてきたんじゃ、そこから立ち直るために自分の手で八門遁甲の術を破ろうとした。遂にそれをやり遂げたんじゃあの人は……えらかー」

 唯がひたすら菊子のことを褒め称えていると、いつの間にか来ていた依田が結花と由真の肩に手を置き、

 
 依田「でも、それはもしかしたら、あの人ひとりじゃやり通すことができなかったかもしれませんよ。君たちがいたから、出来たんじゃないのかな」

 依田の遠回しにねぎらいの言葉をかけるが、

 唯「そうじゃろうか、そうじゃったら嬉しいんじゃけどなぁ」

 最後の戦いを見れば分かるように、菊子ひとりでは到底風角たちには勝てなかったのは明らかなのに、いたって謙虚な唯であった。

 依田「いつかまた一緒に戦うことがあるかもしれませんね」

 と、菊子の再登場を匂わせるような台詞で締め括られるのだが、実際は、菊子はそれっきり登場することはないのだった。

 まぁ、売れっ子の伊藤さんのスケジュールを押さえるのは大変だろうし、ぶっちゃけ、伊藤さんが出てくると唯たちの存在が霞んじゃうから、それで良かったのだろう。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」スペシャル 「三姉妹 最も危険な旅 八つの死の罠」 その2

2024-11-23 20:47:54 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇
 続きです。

 
 結花「県境を過ぎたら乃木山峠越えよ、その先が土龍町、行程片道4時間ね」
 菊子「土龍町、人口12000、土龍寺の門前町として発展、現在でも土龍寺様と呼ばれて町民は絶対の信頼と尊敬を置いている、町の名士・実力者にはすべて土龍寺の息が掛かっていると見ていい。つまり私たちは土龍町民12000人を敵にまわすかもしれないってこと……覚悟しておくのね」

 しばらく山沿いの道を走っていると、後方から数台のバイクがあらわれ、ぴったり菊子スペシャルのケツについてくる。

 
 ついで、炸裂弾のようなものを撃ってくるが、

 菊子「心配ない、ボディは特殊軽合金の装甲ボディなんだ、簡単にはやられないよ」
 由真「ちくしょう、なんとかなんねえのかよ、スピードあげてぶっちぎれよぉ」
 菊子「ロード上じゃスピードで勝ち目はないわ、でも……」

 菊子、座席の間の操作パネルを開いてスイッチを入れると、

 
 車の後部から、マキビシのようなものがばら撒かれ、ライダーたちを転倒させる。

 さらに、

 菊子「4WDへのワンタッチ切り替えレバー、オン!! みんな舌噛まないで」

 トンネルに入る直前、ハンドルを左に切って未舗装の山道へ進入する。

 もっとも、それは敵の読みどおりであった。

 ライダー「第一門通過、奴らはオフロードへ出ました、後は頼みます」

 
 砂利道を走っていると、車の周りで連続的に爆発が起きる。

 菊子は車を停め、

 
 菊子「地雷原だわ、こっちがオフロードへ逃れることまで読まれてた。シャーシのどっかがやられたわ、もう一撃食らったらアウトよ」

 菊子は車体の下に潜り込んで修理を始めるが、

 唯「くそう、こんげなところで足止めくろうてたまろうか、姉ちゃん」
 結花「よし」
 由真「忍び技で鍛えた止観だ」

 
 唯の呼びかけに二人も応じ、それぞれ窓から身を乗り出し、「止観」と言う忍びの技を使って周囲の地雷の位置を把握し、武器を投げ付けて次々と排除して行く。

 
 黒丸「すげえ」
 唯「菊子さん、進行方向の地雷は全部わちらが先に爆発させる。安心して運転しちくり」
 菊子「余計なことよ、早く車ン中入りなさい」

 菊子はそう命じて車を発進させる。

 結花と由真は大人しく座席に戻るが、唯だけは車の後ろに立ったまま、従おうとしない。

 菊子「唯、車の中に戻るのよ、命令よ」
 唯「そうはいかんわ!!」

 彼らを見下ろす崖の上に、修験者の格好をした男たちが現れる。

 
 風角「第二門通過か、なかなかやりよるわい。しかし我らが仕組んだ奇門遁甲の罠のうち、八門遁甲の陣、既に包囲は完成されつつある……進め、死の袋小路へ」

 今回の敵、魔道衆のリーダー海頭入道風角を演じるのは、説明不要の石橋雅史さん。

 5話でも、天狗師範と言う悪役を演じているが、それとは別人のようである。

 その後、頭上の崖からたくさんの岩が落ちてくる。

 由真は、車の外にいた唯を車内に引っ張り込もうとするが、その際、背中に岩が直撃する。

 ま、普通は死ぬか、背骨が折れると思うのだが、実際はそれほどでもない。

 由真「うう……」
 唯「由真姉ちゃん、わちの、わちのせいじゃ、わちのせいじゃーっ!!」

 唯は半狂乱になって叫ぶが、あくまで冷静な菊子は、落石を華麗なドライビングテクニックでかわして危地を切り抜ける。

 風角「第三門通過、ふふ、窮地を脱したと安心しているのであろう、だがそれこそが我らの付け目、これからが八門遁甲の陣の幕開けなのだ」

 菊子は林の中で車を停め、唯たちはともかく由真を地面に寝かせる。

 
 由真「うう……」
 結花「骨が折れてるわ」

 結花が由真の胸元に手を突っ込んで診断する。

 なんとなくいやらしい……

 菊子は車から降りると、唯を立たせ、その顔を思いっきりひっぱたく。

 
 菊子「命令に従わないからこうなるのよ!!」
 唯「……」

 唯、一瞬反抗的な目をするが、自分の向こう見ずな行動が招いたことは明らかなので、言い返す言葉がない。

 
 菊子「今夜はここへキャンプしましょう。唯、手伝って頂戴」
 唯「由真姉ちゃんの手当てがまだじゃ」

 菊子はもう一度唯を立たせ、

 
 菊子「彼女の手当てにかまけて、敵の襲撃を受けたらどうするの? 言った筈よ、リーダーの命令に逆らうようなら……」
 結花「いいわ、唯、由真のことは私に任せて菊子さんと行きなさい」
 唯「由真姉ちゃん、ごめん……」
 由真「ばかやろう、ベソ掻くなよ、私は全然平気なんだから……」

 強がって見せる由真だったが、その顔が苦痛に歪む。

 唯は由真の身を案じながら、菊子を手伝う。

 その夜、菊子が木の上で見張りをし、ほかのものたちは菊子スペシャルの前に座っている。

 
 結花「妙に静かね」
 唯「かえって不気味んごつある……取り囲まれて見張られちょるような気が」
 結花「何故敵に私たちのことが?」
 由真「妙だよな、バイクの奴らや地雷原、崖から落ちてきた岩、まるで罠だよ」

 三人の目は自然と、車に手錠でつながれている黒丸に向けられる。

 
 黒丸「疑ってるんですか、違います、僕は何も知りません。僕は本当に償いのためにあなたたちに手を貸したいだけなんです」

 当然、黒丸は潔白を主張する。

 最初から黒丸に好意的な唯は、黒丸に飲み物をすすめ、

 唯「わちは信じるよ」
 黒丸「ありがとう、唯ちゃん」
 由真「このやろう、馴れ馴れしいんだよ!! シチュエーションが切羽詰ってるって割りには図々しい野郎だねえ」

 由真は外野の声は無視して、なおも親しげに話し掛ける。

 唯「あんたは本気じゃなかった。そうじゃろ? じゃから色々白状してわちらに協力してくれた。あんたには本当はして良いことと悪いことの区別がついちょった、そうじゃろ?」
 黒丸「……」
 菊子「どっちでもいいじゃないの」

 と、いつの間に下りてきたのか、菊子が突き放すように言う。

 ポリタンクの水を飲むと、

 菊子「所詮みんな自分が可愛いのよ、影が世の中を滅ぼそうとするのがエゴなら、それからこの世の中を守ろうとするこっちだってエゴ、はっきりしてるのは、敵と味方があるってことよ。敵は倒さなきゃならない、でなけりゃこっちがやられる。それだけのことよ」

 菊子の、ある意味影よりもシビアな人生観の表白に、唯は納得いかない顔になる。

 菊子「結花、見張りに立って頂戴、唯、由真、少しでも寝とくんだね」

 菊子はそう言い捨てて、仮眠を取るために車の中に入る。

 由真「ほんっっっとにやな女だね、あいつ」
 唯「愛想が良いとは言えんね」
 由真「お前もとろいねー、あの女にこんだけ勝手なことされて言われて頭に来ないのかよー」
 唯「今度は良いとこなしじゃし、菊子さんは実力もあるし、威張られてもしょうがないわい」

 唯はさして気を悪くした風もなく、さばさばと受け入れる。

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 それからどのくらい経ったか、突然、車の周辺が真昼のような明るさに照らされる。

 唯「照明弾じゃ!!」
 由真「ちくしょう、敵に居所がばれちまうよ」

 車から出て来た菊子は、いきなり黒丸の頬をビンタする。

 唯「なにすると」
 菊子「こいつが今の照明弾を上げたのよ、やっぱり影側についてるんだわ」
 影丸「僕じゃない!!」
 唯「こん人がやったっちゅう証拠はないじゃろう?」

 と、由真が近くで発射筒のようなものを見付ける。

 
 菊子「それご覧」
 由真「さあ、それはどうかね、黒丸良也は手錠に繋がれてて動けないんだよ。あんたがやったのかもしれない」
 菊子「寝ぼけるんじゃないわ、この黒丸は忍者の端くれよ、手錠抜けの術を知ってるに決まってるわ」

 うーん、ここは「寝とぼけるんじゃない」って言って欲しかったなぁ。

 菊子「こいつに白状させてやる」
 唯「乱暴はやめない」
 菊子「私たちは影の罠に嵌められてる。出発早々の襲撃、数々の仕掛け、簡単な推理じゃないの、私たちをこの旅に誘いこんだのはこの黒丸良也なんだよ。八門遁甲の陣、そうだろ」
 唯「八門遁甲の陣?」

 
 菊子「相手を誘い込んで背後を封じ、七たび八たび襲撃して相手の力を奪う。しかして、究極の内懐へ誘い込み、疲れ切ったところへとどめを刺す、これ、すなわち八門遁甲の陣、諸葛孔明がこの秘法を駆使して多くの戦いに勝利を収めたと言う究極の戦術よ!!」

 フィクションの世界ではそう言う風に描かれることもあるが、無論、史実で孔明がそんな魔法のような戦法を使ったという事実はなく、ここに出てくるイメージも、単なる軍隊の陣形のように見える。

 黒丸「知らない、僕は知らない」
 菊子「嘘をお言い」
 唯「菊子さん、拷問しよっちゅうとか、そんげなことはこのわちが許さん」
 菊子「本当に足手まといね、いい加減、頭に来るわ」

 クールなようで頭に血が昇りやすい菊子は、銃を抜いて唯に向ける。

 由真「おいおい、何の真似だよ、お姉さん」
 菊子「もうこれ以上私の邪魔をしてもらいたくないのよ」
 由真「それで」
 菊子「今後二度と私のすることに逆らわないと誓うか、それともここでけりをつけるか、どっち?」
 唯「本気やね」

 由真も唯もそれぞれの武器を構え、一触即発の空気となるが、ちょうどその時、周囲に張り巡らされていた鳴子が鳴り出す。

 菊子「掛かったわ、奴らが来る」
 結花「敵襲!!」

 菊子たちは内輪揉めを中止し、一箇所に集まって木の根本に身を潜める。

 ちなみに、のちのストーリーから考えて、照明弾を撃ったのは、菊子の睨んだとおり、黒丸だったのだろう。

 散発的な攻撃の後、手榴弾のようなものが投げ込まれる。

 結花「危ない!!」

 結花は、咄嗟に仲間を押し倒すが、代わりに自分が爆発に巻き込まれ、豪快に吹っ飛ばされて緩い斜面を転がり落ちて、動かなくなる。

 残りの敵を片付けた後、みんなで結花のところに駆け寄る。

 唯「結花姉ちゃん!!」
 菊子「しっかりして……だいじょうぶ、唯、由真、周囲を見張って」

 さすが百戦錬磨の菊子、素早く結花の傷を調べて命に別状はないと知ると、応急手当を行う。

 ま、手当てと言っても、傷をハンカチで拭くだけなのだが……

 唯「くそぉ、影ども、許せん、許せんわい!!」

 唯は目に涙を溜めて、ヨーヨーを握り締める。

 由真も、涙の筋を頬に垂らしているのだが、さすがに泣くの早過ぎね?

 その後は何事もなく、夜が明ける。

 眠っている結花の手を、黒丸が心配そうに握り締めている。

 
 唯(この心優しい黒丸良也が敵のスパイじゃなんて……そんな訳はなか、じゃあ……)

 疑いたくはないのだが、唯はどうしても菊子に疑惑の目を向けてしまう。

 向けてしまうのだが、

 菊子(南へ向かえば、土龍町へ入る裏間道があるはず……)

 ここで菊子のモノローグを入れるのは、脚本家が、自分で自分の話をぶち壊しているように見えるので、これはないほうが良かった。

 由真「リーダーさんよ、いつまでこうしてるんだよ」
 菊子「夜間にこんなところを突っ走ればたちまちスタックして立ち往生してたわ。待ってのたよ、朝を、乗って、行くわよ」

 菊子は浅い川の中を菊子スペシャルで進むが、周囲で何度も爆発が起き、立ち往生したところに影たちがゾンビのように群がってくる。

 唯は外へ出て応戦しようとするが、菊子は車体から黄色いガスを噴射して影たちを撃退する。

 しばらく走って工事現場のようなところに来ると、菊子はドラム缶にわざと車をぶつけて停める。

 菊子「みんな、離れて、菊子スペシャルの自爆装置を働かせたわ、敵の目を晦ますのよ」

 菊子はみんなをせかして車から離れ、思い切り良く愛車を爆破する。

 その後、風角たちがやってきて、まだ燃えている車の残骸を検分する。

 
 風角「みんな吹っ飛んで死んだか……いや、ふっふっふっ、さすが我ら魔道衆いちの手練れじゃ、ちゃんと通信紐を残していきおった」

 風角は、スパイが残した紐から唯たちが健在であることを知ると、その紐を伝書鳩の足に結び付けて、土龍寺へ飛ばす。

 風角「やつら、四門、五門を通過しよった、いよいよ内懐じゃ、我らも土龍寺へ帰ろう」

 鳩は、無事に土龍寺に辿り着く。

 
 尼「ほほほほ、敵と行動を共にしよる、魔道衆のひとり、六角坊より、中間報告のようでございますな、朱麗院さま」

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 尼「……結び目が二つ、敵のうち二人が、深手を負うたようでございます。となれば残るは……八門遁甲の陣、いよいよ仕上げの時かと」

 その伝書鳩を受け取って、朱麗院に報告する尼さんを演じているのは、「宇宙刑事シャイダー」の陽子役、原美穂さんである。

 
 朱麗院「さようか、それはなにより」

 御簾の向こうに座っている小柄な人物の顔ははっきりとは見えないが、目の部分だけアップになって、それが紛れもなく翔であることを視聴者に示す。

 その3へ続く。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」スペシャル 「三姉妹 最も危険な旅 八つの死の罠」 その1

2024-11-23 20:42:04 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇
 「三姉妹 最も危険な旅 八つの死の罠」(1987年4月23日)

 通常の3倍(90分)の枠で放送されたスペシャル版である。

 
 冒頭、洞窟の奥で護摩壇を焚き、アービラウンケンソワカーなどと真言密教を唱えていた影の一団の背後に、毎度お馴染み、結花、由真、唯の風間三姉妹があらわれる。

 影「何者だ」
 結花「折鶴の結花、関東の学園を焼き討ちにしようと言う影の忍びの陰謀、私たちが知った以上、許しはしないわ」
 由真「リリアンの由真」
 影「プーッ!!」
 由真「笑うなっ!!」

 じゃなくて、

 由真「リリアンの由真、てめえら覚悟しな」
 影「おのれえええ」

 向かってくる敵にヨーヨーをぶつけると、「桜の大紋」をご開帳し、

 唯「星流学園2年B組風間唯、またの名を三代目・スケバン刑事、麻宮サキ!! 人の世に邪悪を成す影の住人ども、ゆるさんわい」

 スペシャル版と言うことで、いつになく丁寧に自己紹介する三人。

 しかし、前回でも感じたことだが、唯が「麻宮サキ」と言う別名を持っている設定、要らないよね。

 もっと言うと、唯たちがスケバン刑事である必然性もあまりないのだ。

 それはともかく、早速バトル開始。

 

 
 ここで、早くも由真がパン チラキックを披露!!

 無論、これは黒いブルマみたいなもので、ガチパンではないのだが、黒いパンティーだと思っていた方が幸せである。

 戦いは三姉妹有利に進むが、切羽詰った影が爆弾のようなものを投げてきたので、三人は一旦逃げ出す。

 
 と、それを追いかける(逃げているようにも見える)影たちの前に、謎のシルエットが立ち塞がる。

 その人物は、銃身の短いライフルで次々と影を撃ち倒していく。

 と言っても、さすがに殺している訳ではなく、急所は外しているようである。

 唯、逃げようとしたひとりを取り押さえると、謎の人物に向かい、

 唯「なにもんじゃっ?」

 
 唯の問い掛けに応じて、謎の人物がこちらに近づいて来る。

 由真「なんだてめえは」
 菊子「元第一空挺団コマンド、現在は暗闇司令配下のエージェント、多聞菊子!! この影どもは私が追跡してきた私の獲物、ひっこんでてもらいたいわね」

 演じるのは、大映ドラマの地縛霊と呼ばれる(註・呼ばれてへん、呼ばれてへん)伊藤かずえさんである。

 しかし、菊子に銃を使われると、ヨーヨーだのリリアンだの使ってる唯たちがアホに見えてしまうので、菊子も何か変な武器(ドラムスティックとか)を使って欲しかった気もする。

 つーか、影たちも、独楽や剣玉やメジャーなどの意味不明の武器を使わずに、銃を使えばいいんである!!

 タイトル表示後、

 
 休み時間、学校の屋上で男子生徒たちが遊んでいる。

 ただ、雨の後なのか、その大部分が水に濡れているのに、ゴロウとヒデが腹這いになって腕相撲をしているのは、相当不自然である。

 そこへ依田がやってきて、

 依田「授業開始のベルが聞こえないんですかーっ!! そう言う態度はバツですよ、バツ!!」

 依田の怒鳴り声に、生徒たちはそそくさと駆け出すが、依田は最後尾のクマの襟首を掴む。

 クマ「なんでえ」
 依田「風間三姉妹の姿が見えませんね」
 クマ「さあね」
 依田「ほう、一の子分としては姐御たちに義理立てですが」

 依田は素早く指を動かし、クマの首筋の「秘孔」を突く。

 
 依田「あの子たちに大事な用があるんですがね」
 クマ「姐御たちは学校の向かいの食堂……」
 依田「はい、結構」

 依田は情報を聞きだすと、クマの背中のツボを押す。

 クマは正気に戻って尻餅を突くが、すでに依田の姿は忽然と消えていた。

 「北斗の拳」の読み過ぎと言うか、ただのパクリなのだが、依田にそんな術が使えるなら、影からいくらでも情報を聞きだせるのではあるまいか?

 三姉妹は、クマの言ったとおり、学校のすぐ前の中華料理屋で昼食をしたためながら、菊子のことを話していた。

 
 唯「生意気じゃ、多聞菊子のやつ」
 由真「ほんとだよ、だいたいあの顔付き、気にいらねんだよなぁ、ったく生意気な」
 唯「おーっ、由真姉ちゃんとめずらしゅう意見がおうた!!」

 
 由真「ほんとだー、これ食う?」
 唯「わー、ありがとう、これあげる」

 意気投合した二人は、互いのチャーシューとカツを箸でつまみあげて交換するという、うるわしい姉妹愛を発揮する。

 結花「それにしても彼女ははじめから相手を捕まえようと言う気がまるでなかった。ただ相手をやっつけようとしていた。エージェントの癖に気になるわ」
 唯「そう、それそれ、いくら相手が影じゃからっちゅうてあんげ徹底的にやっつけるのはひどかよ」
 由真「影なんていいんだよ、問題は、下手すりゃ私らまでやられてたってこと」
 唯「ちょっと由真姉ちゃん、影なんかっちゅうそういう考え方はいかんよ。影でも考えを改めれば人は人、命は大事にせんとね」
 由真「お前、私に説教する気」
 唯「由真姉ちゃんなんでん、間違いは間違いじゃ」
 由真「それじゃ返してよね」

 由真、ムッとして、一旦譲渡したチャーシューを回収する。

 唯「カツかえしちくり」
 由真「……」

 唯もカツを取り戻そうとするが、その前に由真が口に入れてしまう。

 唯「あーっ、自分はとりあげちょったくせしてからにー、卑怯もの」
 由真「なんだよ、意地きたねえなぁ」
 結花「いい加減に……」
 依田「したほうがいいですねえ」

 例によって喧嘩を始めた二人を止めようとした結花の言葉を引き取る形で、依田が右腕を突き出して、腕時計を見せる。

 依田「午後の授業、もうとっくに始まってます」
 結花「大変、もうこんな時間」

 依田は、慌てて出て行こうとする三人を呼び止め、指令があるので、あとで暗闇指令のもとへ出頭するよう伝える。

 次のシーンでは、三人が暗闇指令の部屋にいる。

 暗闇指令は、お寺で修行している修験者たちの映像を見せながら説明する。

 
 暗闇指令「先日、お前たちが捕まえた忍びは影に操られた草だった。本名、黒丸良也、高校三年生……その黒丸の自白によって我々は重大な手掛かりを得た。修験者たちの荒行で知られる土龍町の土龍寺、この土龍寺が影の忍びの者の忍法修行地だというんだ。もしかするとこの土龍寺が、影の忍びどもの本拠地かも知れん……唯、結花、由真、この土龍寺に乗り込み、敵の秘密を暴け」
 依田「ここでひとつ気になる情報が……土龍寺の若きシンボル、尼僧・朱麗院は年がたった9歳の美少女だと言うのです」
 唯「9歳ちゅうたら影を支配する翔と同じくらいの」
 結花「もしかしたらその朱麗院と言う少女が……」
 依田「そのとおり、影を操る謎の美少女・翔、その居所に関しては初めての手掛かりと言う訳です。突き止めることが出来れば局面は大きく展開するかもしれません」

 三人は意気込んで出立しようとするが、

 依田「慌てないで下さい。指令の話はまだ終わっていませんよ」
 暗闇指令「今回の任務でお前たちに同行するものがいる」

 暗闇指令の言葉にあわせて、ある人物が入ってくる。

 案の定、それはあの謎めいたエージェント、菊子であった。

 菊子は暗闇指令のそばに行き、一礼する。

 
 暗闇指令「もう会ってるな、多聞菊子だ」
 由真「どうしてこんな奴と一緒にいかなきゃなんねんだよ」
 菊子「指令、こんな半素人の小娘たちと一緒ではかえって任務遂行の邪魔になります」
 由真「なんだとぉ」
 結花「由真!!」

 第一印象の悪さを引き摺っている両者は早々に激しい火花を散らす。

 暗闇指令「良く聞け、土龍寺の女管長の正体が翔だとすればお前たち4人が力を合わせても倒せる相手かどうかだ……だのに、そのざまは何だ。命令だ!! 力を合わせろ!!」

 暗闇指令が、いつになく声を荒げて叱咤すると、唯がトコトコと進み出て、

 唯「暗闇指令の言うとおりじゃ、菊子さん、よろしく」

 右手を差し出して握手を求めるが、菊子はそれを無視して、

 菊子「指令、それならひとつ条件があります」
 暗闇指令「条件?」
 菊子「私をチームのリーダーに任命して下さい。でなければこの任務お受けできません」
 暗闇指令「理由は?」
 菊子「こんな連中に勝手に行動されては、敵に遭遇した時ひとたまりもありません。巻き添えを食らってやられるのは願い下げです」

 ずけずけと言い難いことを言う菊子に、たちまち由真がキレる。

 
 由真「この女、頭に来るぜ!! 勝負しろよ、菊子、リリアンの由真様がてめえとタイマン張ってやろうじゃねえか!!」
 菊子「身の程を思い知らせてやるわ」

 睨み合う二人だったが、唯が割って入り、

 唯「この勝負、わちが受けて立つわい」
 由真「唯は引っ込んでろよ」
 唯「いやじゃ、由真姉ちゃんは感情的になり過ぎちょる、わちが風間三姉妹の実力を思い知らせてやるわい」
 依田「いい加減にしないか、お前たち!!」

 依田チンも、語気を強めて彼らをたしなめるが、

 
 結局、どちらも引き下がらなかったようで、次のシーンでは、空き地に特設コースが設けられ、依田の審判で唯対菊子の一対一の勝負が行われている。

 依田「ひとりずつスタートし、ターゲットボードを倒しながら、ゴールを目指します。争うのは正確な判断力とスピードです。中には無防備な相手もいます。その人間に対して危害を加えれぱ減点です」

 先攻は菊子。

 
 具体的には、楕円形のコースの要所要所に、こういう的が出てくるので、随時判断して攻撃したり、スルーしたりしなければならないという、予算5000円の「風雲たけし城」みたいなゲームであった。

 ただ、これ↑はわかるんだけど、

 
 最後のこれ↑は、ただの葉巻好きのおっちゃんにしか見えず、それを菊子が迷わず撃つのは、ちょっとどうかと思う。

 つーか、単に見た目がマファイアのボスみたいだからと……言う、めちゃくちゃアバウトな理由で撃ってるとしか思えないのだった。

 あと、最初の敵を倒すとき、意味もなく地面を一回転しているが、時間の無駄である。

 また、ほんとにただ走って的を撃つだけで、障害物や罠もないので、見ていてちっとも面白くないのだ。

 それはともかく、菊子は1分32秒と言う、他に比較するレコードがないので、早いんだか遅いんだかさっぱり分からない記録を出し、勝ち誇った表情で唯を見遣る。

 対する唯も、ヨーヨーを握り締めて闘志を燃やすのだった。

 ……って、唯はヨーヨーなの? 違う武器を使ってやるんだったら、公正な勝負とは言えない気がするのだが。

 
 唯(想像以上の腕じゃ、このヨーヨーであの連射式鉄砲に勝てるじゃろうか?)

 唯自身、一抹の不安を抱えて走り出すが、

 
 いつもの癖で、ヨーヨーを投げるたびにいちいちこんなポーズを取っちゃうものだから、菊子に勝てる筈がなく、ミスこそしなかったが、1分49秒と言う結果に終わる。

 ちなみに、唯も、最初の敵を倒す時に意味もなく一回転していたが、そう言うルールなの?

 正直、こんな勝負で勝ってもあまり威張れないと思うのだが、菊子は会心の笑みを浮かべると、早速隊長風を吹かせ始める。

 
 菊子「整列!!」
 三人「……」
 菊子「悔しい? 仕方ないわねえ、勝負を言い出したのはそっちなんだから……番号!!」
 由真「お前以外には私ら三人だけだ、いちいち番号なんて言わせんなよ」
 菊子「番号」
 由真「そんなに威張りてえのかよ」

 由真は激しく反発するが、菊子は銃まで構えて彼らに服従を要求する。

 菊子「任務遂行時にリーダーの命令に従わぬものがあれば隊全員の安全をおびやかすのよ、選ぶのね、絶対服従か、死か」
 結花「いち」
 由真「に」
 唯「さん」

 結花たちもしぶしぶ点呼に応じる。

 菊子「OK、嬢ちゃんたち、その態度を忘れないことね」

 菊子は悠然と歩き去る。

 一部始終を間近で見ていた依田は、

 
 依田(女は怖い……)

 とでも言いたげな顔をして見せるのだった。

 出発の日、港のガレージから、菊子が自慢の4WDに乗って出てくる。

 
 唯「うわー、すごか車じゃー」
 菊子「電子制御式、燃料噴射装置つき、V8エンジン搭載、私がこの手で作り上げた究極の4WD、菊子スペシャルよ!! お前ら、車のことは?」
 三人「ぜーんぜん」

 
 菊子「……」

 菊子、背中を向けて「ダメだこりゃ」みたいな顔で天を仰ぐ。

 しかし、どうせ運転するのは菊子なんだから、そんなに落胆するようなことではあるまい。

 それとも、菊子スペシャルの凄さが理解できないと知って、ショックを受けたのだろうか?

 由真「あいつ、案外根は単純なのかもね」

 もっとも、そのリアクションに、三人は初めて菊子に親しみを覚える。

 菊子は威厳を取り繕うように、また点呼を取る。

 菊子「お前……唯、何がおかしい?」
 唯「わち、車で旅行するの初めてなんじゃ、ワクワク」
 菊子「……乗れ、暗くなる前に土龍町に潜入する」

 だが、そこへ、依田が男子高校生を連れてあらわれる。

 依田「待ちたまえ、この人にも案内役として諸君に同行してもらいます」

 
 由真「なんだよ、そいつ」
 依田「君たちが捕まえた草、黒丸良也くんです」
 由真「冗談じゃねえよ、敵と一緒に行動できっかよ」
 黒丸「お願いします、連れてってください、罪の償いがしたいんです。学園放火作戦を手伝ったのだって、脅かされて仕方なしにやったんです。僕は違うんです、ほんとはただの高校生なんです、信じてください」

 懸命に訴える黒丸くん、どこかで見た顔だなぁと思ったら「幕末純情伝」に出ていた角田英介さんですね。

 由真は真っ向から反対するが、

 唯「姉ちゃん、こん人、土龍寺に詳しいじゃろ、一緒やと色々と教えてもらえるじゃろうね」
 結花「そうね」

 人のよい唯が遠回しに賛意を示すと、結花も同調する。

 菊子「大甘だね、半素人は……逃げたい一心の嘘かも知れないわ」

 菊子は黒丸の手に手錠を掛け、

 菊子「命令とあらば連れて行きますが、私は絶対信じない、唯、由真、後部座席へ、黒丸良也から目を離さないで……結花、地図は見れるわね? では出発」

 菊子はテキパキと役割を決めると、イグニッションキーをまわす。

 のちのち、菊子の言葉が正しかったことが分かるのだが、依田ともあろうものが、黒丸の本性を見抜けなかったのは解せない。

 その2へ続く。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第21話「三代目失格!?唯がヨーヨーを返す日」

2024-11-16 20:08:03 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇
 第21話「三代目失格!?唯がヨーヨーを返す日」(1987年4月9日)

 いまだに礼亜の死が忘れられず、自分を責め続けている唯。

 唯(わちは礼亜さんを守れんかった……わちはスケバン刑事失格じゃ!!)

 
 そんな唯を励まそうと、結花の心尽くしの手料理がテーブルに並べられる。

 
 由真「わー、やるじゃん、姉貴」
 結花「朝からちょっと凝ってみたんだけど……」

 ……って、朝メシかいっ!!!!

 料理にもTPOが必要であり、朝っぱらからこんな脂っこい料理を出すのは、はげましと言うより、ただのイヤガラセであろう。

 由真「なかなか究極の食卓!!」

 それでも由真は目を輝かせて食べ始めるが、唯は箸を手にしようともしない。

 唯「ごめん、おなかすいとらんのじゃ」

 そう言って、そそくさと二階へ上がる。

 由真「どっかん唯、この御馳走でもダメか……でもすぐ復活するよね。唯の分まで貰っちゃお」
 結花「あんたもたまには落ち込んだら?」

 その後、珍しく依田先生がやってくる。

 
 依田「ほう、美味しそうですね……それではちょっと」

 
 依田先生、大きなエビフライをつまんで口に入れる。

 依田「うん!! うまい、結花さんは主婦の能力、大ですね。はははっ」

 
 と、唯が降りてきたのに気付くと、エビフライを元に戻す。

 食べかけを戻すなよ……

 
 依田「それでは早速ですが、指令です。影の指令を草に伝える男が分かりました」
 唯「あの……」
 依田「ん、なんでしょ?」
 唯「わちじゃ、わちじゃダメじゃ、礼亜さん見殺しにしたわちに、スケバン刑事を名乗る資格はなかっ!!」
 依田「……」
 唯「このヨーヨーが重過ぎるんじゃ」
 依田「そのヨーヨーを一度受け取ったら二度と止まれません」
 唯「でも」
 依田「影は待ってくれません」
 唯「でも、できんもんはできんのじゃ!!」
 依田「待ちなさい、唯!!」

 唯は依田の言葉を振り切って、家を飛び出す。

 依田「困りましたねえ……」

 タイトル表示後、唯が公園の滑り台の上で考え込んでいると、結花たちがやってくる。

 
 由真「依田先生には謝っといたからさ」
 唯「うち、みんなに迷惑ばっかりかけちょる」
 由真「良いってことよー、世界でたった三人の肉親じゃん、ねえ、姉貴」
 結花「まぁ、悩めるだけ悩めばいいわ。悩むことは青春の特権だって誰かが言ってたしね」
 唯「結花姉ちゃん、由真姉ちゃん……」
 結花「指令は私たちで片付けとくわ」
 由真「影たちのちゃちな情報を分捕るだけ、お前のヨーヨーの出る幕なんかないんだよ」

 姉たちの温かい思いやりに、唯はぽろぽろ涙をこぼす。

 
 由真「おいおい、らしくないぞ」
 結花「はい」
 唯「うう……」

 結花の差し出したハンカチを顔に押し当て、子供のように泣きじゃくる唯であった。

 唯が学校でぼんやりしていると、クマたちがやってきて、礼亜のことを噂する。

 PDVD_007.jpg
 ゴロウ「兄貴、兄貴も可愛いと思いますよね」
 クマ「確かに可愛いことはある」

 お前はソムリエか?

 ヒデ「兄貴、いくら兄貴とは言っても、この関係に関しては抜け駆けはなしですよ」
 ゴロウ「そうですよ、兄貴、女に関しては平等ですからね」
 唯「やめて!! お願い……」

 唯、それ以上耐えられなくなって、その場から走り去る。

 クマ「何か悪いことでも言ったかな?」

 クマたちはまだ礼亜が死んだことを知らないのだ。

 ……と言うより、彼らがそれを知らされることは永遠にないだろう。

 唯は、礼亜のいた図書室へ行く。

 と、本棚の前に立って蔵書の整理をしている女性の後ろ姿を見て、一瞬礼亜かと錯覚する。

 
 唯「れ……あの」
 女性「はい……」
 唯「あ、いえ……」

 無論、それは全くの別人であった。

 おそらく礼亜の後任の司書であろうが、なかなか綺麗である。

 ちょっと将棋の安食総子さんに似てる。

 つーか、ヒデたちの言っていた司書と言うのは、彼女のことだったのだろうか?

 礼亜はずっと前から司書をしていたのだから、いまさらゴロウたちが騒ぐというのも変だしね。

 唯が図書室の一隅で、また礼亜のことを思い出して悲しみに浸っていると、依田先生が来て、

 
 依田「風間唯君、ひとりでセンチメンタルですか」
 唯「依田先生、いや、般若なら分かる筈じゃ、わちには影と戦う力はなか」
 依田「甘えるな、唯!! くだらぬ考えをめぐらすときがあるのなら、戦え!! 姉たちに礼亜の二の舞を踏ませたいのか」
 唯「姉ちゃんたちが……」

 その頃、結花たちは指令に従い、草との連絡員と思われる男を尾行していた。

 だが、敵も彼らの存在に気付いているのか、途中で三人に増え、さらに、三方に分かれて違う道を進む。

 
 由真「一体どれを追えば良いんだよぉ」
 結花「私、右」
 由真「えっ?」

 やむなく、結花は右に、由真は左の道を選ぶ。

 
 男を追って、公園の中を突っ切る結花。

 めちゃくちゃどうでもいいことだが、画面中央奥、公園の出口に、お揃いの白いシャツに黒いスカートを履き、白いキャリーケースみたいな物を持った女性の集団が見えるのだが、なんなんだろう?

 撮影は3月だろうから、卒業旅行とかかしら?

 それはともかく、しばらく行くと、待ち構えていた影たちが逆に結花を取り囲む。

 
 そしてめいめい、メジャーを取り出して引っ張る。

 仮にも世界の破滅を企む悪の人たちが、そんなもんで戦っちゃいかんと思うが、相手も折鶴やリリアンを武器に戦う人だから、お似合いかもしれない。

 
 実際、その殺傷力は侮れず、結花は手に怪我をしてしまう。

 同じ頃、由真も、人気のない場所でメジャー軍団と戦っていた。

 
 由真「やめてよぉ!!」

 痴 漢を追い払うように、男に蹴りを入れる由真。

 その際、スカートの中に、ほんの僅かに白いものが見える気がするのだが……

 その後、唯がひとりで歩いている結花を見付けると、由真も戻ってくる。

 
 由真「姉貴ぃ、情報分捕った?」
 結花「……」
 由真「こっちもスカ、結局もうひとりの奴が本命だったってワケか」
 唯「なにがあったと?」
 由真「奴ら三方に分かれちゃってさぁ、三人いれば分捕れたんだけどなぁ……」

 例によってデリカシーのない由真の発言に、結花が「バカ」と、声を出さずにたしなめる。

 結花「唯のせいじゃないよ」
 由真「気にすんなよ」
 唯「わちはやっぱり……」
 結花「唯?」
 唯「ふふふっ、うわぁ~ははぁ~ん……」

 完全に心が折れてしまった唯、その程度のことで手放しで泣き出すのだった。

 唯は久しぶりに暗闇指令を訪ね、辞表とヨーヨーを机の上に置く。

 
 唯「黙ってうけとっちくり」
 暗闇「この行動の結果がどうなるか、そこまで考えた上でのことだろうな」

 唯は頷くと、

 唯「わちには、わちには今、これしかできん」

 唯はそれだけ言うと、部屋を出て行く。

 
 暗闇指令「困った三代目だ」

 暗闇指令がつぶやくと、部屋の隅に依田が出現する。

 忍法で気配を消していたのだろう。

 依田「一人前に見えても、心は少女……今しばらくの時を」
 暗闇指令「風間唯が本当に立ち直れるかどうか、それによっては考えなきゃならないこともある」
 依田「必ずや、自らの宿命に気付く日が……」
 暗闇指令「それでは遅い!! 我々には時間がない」
 依田「しかし」
 暗闇指令「……あの人に、会わせたら?」
 依田「それは……」
 暗闇指令「やるんだ!! 唯を立ち直らせる、最後のチャンスだと思え!!」

 暗闇指令の曖昧な命令に、

 PDVD_019.jpg
 依田(やっべぇ……誰のこと言ってるのかさっぱり分からんぞ……)

 内心、焦りまくる依田チンであったが、嘘である。

 無論、「あの人」とは、子供はワンパクでもいいから逞しく育って欲しいハムおやじのことであった。

 帯庵和尚が鷲尾山にいると知らされた唯は、路線バスで麓の村までやってくる。

 唯(じいちゃん、わちはとうとう会いに来たかいね、なんでわちをおいてけぼりにしていったんじゃ、じいちゃん……)

 唯は、地元民らしい少女に鷲尾山への道を尋ねるが、

 
 少女「御山には入っちゃいけない、帰れ、さっさと帰れ」
 唯「変な奴」

 変なのは、そんな恰好で山登りに来たお前のほうだっ!!

 しかし、実際、セーラー服は脱げないにしても、上に何も羽織らずに来ると言うのは滅茶苦茶不自然だよね。

 唯が適当に山道を登っていると、まだ凍っている滝の前で、何者かが石礫を投げて来る。

 
 唯「あんた、さっきの……」
 少女「この山へは入っちゃいけないって言ったろう!!」
 唯「なんでじゃ、わちゃこの山に入らにゃいかんとよ、この山であわにゃいかん人がおるとよ」
 少女「この山はお坊様たちが修行なさる神聖な場所よ。千日山篭りの間は里のものだって無闇に山へは入らないわ。関係ない人が邪魔しちゃいけないのよ」

 ……

 坊主が修行してると、なんで神聖な場所になるの?

 坊主ってそんなにえらいの?

 唯「修行しちょる人の中に、帯庵和尚っちゅう名前は聞いたことなかね?」
 少女「あの和尚様を?」
 唯「知っちょっとじゃな、じっちゃんじゃ、わしのじっちゃんじゃ!!」
 少女「あんたが……」

 唯が帯庵の名前を出すと、少女も態度を軟化させ、唯のところまで降りてくる。

 ちょっと可愛らしい顔の少女を演じるのは石井ひとみさん。

 
 少女「あの和尚様は、ほこらで千日山篭りの行に入っておられる」
 唯「案内しちくれんね? 頼む」
 少女「ダメ、和尚様は千日のあいだ、下界の人にあわず何も喋らずに過ごさなくちゃなんないの」
 唯「でも、会いたい、いや、会わにゃいかんと、わち、じっちゃんと会わんとこれからさきどんげして生きていけばいいかわからんとよ、頼む、わちをじっちゃんに会わしちくり」

 唯が土下座までして頼むと、少女も遂に折れる。

 少女「遠くから見るだけだよ、声をかけちゃいけないよ」

 唯に、アフリカの観光ガイドみたいな注意をする少女。

 二人は、地元民しか知らないという道なき道を伝い歩いて、遂に帯庵和尚がいる谷底の小さなお堂の見えるところまで辿り着く。

 後ろ姿しか見えなかったが、その大きな背中は、紛れもなく「じっちゃん」であった。

 帯庵和尚は、座禅を組んでなにやら一心にお経を唱えていた。

 
 少女「静かに、お願い、静かに!! お願い……」

 唯は思わずその大きな背中に向かって飛びつこうとするが、少女が、唯の体に縋りつくようにして必死で止める。

 唯も一旦は自制するが、つい目と鼻の先に懐かしい帯庵和尚がいると思うと、矢も盾もたまらなくなり、

 唯「じいちゃん」
 少女「邪魔しちゃならん」
 唯「頼む、一言でよか、声かけてほしか、あったかい手で抱きしめてほしか……」

 
 少女「和尚さんが行に入る前に言うておられた。自分の命と引き換えにしても、孫娘の命を守られねばならんて……」
 唯「わちの命を?」
 少女「じゃから行を破っちゃいかん、行の邪魔をしちゃいかん!!」
 唯「わかった。わちはここから見守るだけにする」
 少女「ほんとうか」
 唯「だいじょうぶ」

 少女は唯の言葉を信じ、帰っていく。

 
 唯は少女との約束を守り、その場にとどまって、ひたすら帯庵和尚の背中を見詰め続ける。

 
 その後、冷雨が降り、雪が舞い、夜の帳が降りるが、帯庵は一心不乱に念仏を唱え続ける。

 しかし、不粋なツッコミだが、帯庵の唱えている般若心経とは、簡単に言えば、この世の中が一切「空」だと言うことを説いているものなので、それで孫娘の無事を祈ると言うのは、根本的に間違ってると思うのだ。

 影たちの好きな加持祈祷ならまだ分かるけど。

 もっとも、少女の言う「孫娘の命を守る」と言うことが、具体的に何を指しているのかよくわからないのだが、普通に受け止めれば、そのための「行」と言うことなのだろう。

 それはともかく、そこで具体的にどれくらいの時間が経過したのか不明だが、和尚の巌(いわ)のような背中は、百万言の励ましや説教にまさる力を失意の唯に与えてくれた。

 
 唯(じいちゃん、ごめん、わちは自分が情けなか、じいちゃんが命を賭けてわちのことを想うてくれとるのに……じいちゃん、わちはやる、影を倒したら会いに行くき、そんときは正面から堂々とじいちゃんの腕の中に飛び込んでいく!!)

 唯は心の中で和尚に語りかけると。吹雪の中を帰っていく。

 まぁ、本人が納得してるならそれでいいんだけど、それで礼亜の死に対する罪悪感が消えるというのも、考えてみればおかしな話である。

 無論、帯庵和尚は、唯の存在にとっくの昔に気付いていた。

 唯の気配が消えたのを知り、

 
 帯庵(はーっ、やっと帰ってくれた、これでやっとトイレに行ける……)

 心の底から安堵する帯庵和尚であったが、嘘である。

 帯庵「唯……」

 ……

 うっかりしていたが、お前は自分の寺を空にして、こんなところで何をしてるんだって話だよね。

 
 ラスト、どういう経緯か知らないが、公園の枯れ芝の上で、結花と由真がメジャー軍団と再び戦っている。

 メジャー軍団はなかなかの強敵で、二人は彼らに包囲される。

 そこへ唯が、元気良く駆けて来る。

 すかさず依田先生が、ヨーヨーを投げ渡す。

 お前、いたんなら、二人に手ぇ貸してやれよ……

 
 依田「唯、確かに返したぞ」
 唯「まかしちょけ!! その勝負、九州一の大スケバン・風間唯がもろたーっ!!」

 唯、得意の鼻コスコスをすると、名乗りながら敵の中に突っ込み、結花たちのそばに行く。

 結花「唯、良く帰ってきたわ」
 唯「ごめん、結花姉ちゃん、由真姉ちゃん、あとはわちに任せちくり……どっからでもかかってこい!!」

 唯が男たちにヨーヨーを叩き込んだあと、再び集結する三姉妹。

 
 唯「三代目スケバン刑事、風間唯、またの名を麻宮サキ!! ただいま見参!!」

 久しぶりにヨーヨーをかざして「桜の大紋」を見せ付け、さらなる戦いに挑む唯の姿を映しつつ、終わりです。