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私は猫になりたい

昔の特撮やドラマを紹介します。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第32話「現われた伝説の殺人マシーン魔破羅!」

2025-03-29 19:52:34 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇
 第32話「現われた伝説の殺人マシーン魔破羅!」(1987年8月13日)

 冒頭、真っ暗な洞窟の中を、ガシャガシャと音を立てて、鎧兜をまとった奇怪な人物が歩いている。

 洞窟を抜けた先は広大な空間が広がっており、石を削った階段がかなりの高さまで聳えていた。

 階段のてっぺんには、黒衣の老人が鎮座している。

 
 果心居士「魔破羅か」

 まんま、ダースベーダーなキャラ、魔破羅を演じるのは、説明不要の堀田さん。
 
 果心居士「影が動かぬ、このままでは、翔がヴァジュラを手にすることはかなわぬであろうな」

 玉座に座るものは、地の底から響くような陰に篭もった声で、悲観的な観測を口にする。

 魔破羅「しかし、翔こそヴァジュラを手に出来る選ばれしものと聞きましたが」
 果心居士「選ばれしものは二人おるのじゃ、翔と、そしてあの風魔の娘、決して風魔にヴァジュラを渡してはならん」

 
 果心居士「おぬしの力で、なんとしても翔にヴァジュラを握らせるのじゃ」

 まんま「スターウォーズ」の皇帝っぽいキャラ、果心居士を演じるのは佐川二郎さん。

 ただし、声は飯塚昭三さんの吹き替えである。

 果心居士「影星の光が満ちておる、今こそ、天と地を揺るがし、すべてを滅ぼすときぞ。そのためにも翔にヴァジュラを……」

 
 果心居士は、手に乗せた巨大なスーパーボールのような玉を魔破羅に向かって投げつける。

 
 魔破羅はそれを真っ二つに斬る。

 果心居士「見事ぢゃ……」
 魔破羅「ははーっ……って、いきなりナニさらすんじゃっ!!!!
 果心居士「ヒイイッ!!」

 途中から嘘だが、果心居士の行動が意味不明なのは確かである。

 まぁ、魔破羅の腕を確かめたのだろうが、続いて魔破羅が階段を駆け登っているので、なんか、魔破羅が果心居士のタマを取りに来たようにも見えるのである。

 
 続いて、前回のラストシーンが繰り返されたあと、タイトルとなるが、今回から、タイトルの後に、こういうのが表示されるようになる。

 風間家。

 
 由真「どうしてあのとき女雛のほうに折鶴投げたんだよ」
 結花「……」
 由真「姉貴、姉貴は何か知ってるんじゃねえのか」

 由真は結花のそばに行き、その腕を掴んで追及するが、

 結花「何も知らないわ」
 由真「……」
 結花「翔の男雛を通して唯に呪いが掛けられたでしょう、だからあのときは、もしかしたらと思って女雛を狙っただけ」
 由真「やっぱり……あいつらのあいだには何かあるんだよな」

 しかし、冷静に考えたら、女雛に折鶴が刺さったからって、結花自身は呪殺は使えないのだから、それが翔の体に反映されると言うのは変じゃないか?

 仮に、まだ十佐の術が女雛に掛かった状態だったとしたら、翔には呪いなど通用しないと言ったミヨズの言葉が嘘になる。

 結花「父さんさえ生きていてくれたら……」
 由真「あいつ、ほんとにおやじの子なのかよ?」

 由真が、結花がずっと胸に抱いていた疑問を言語化する。

 唯は、自分の部屋で男雛を見詰めていた。

 唯(かあちゃん、なんでこれを翔が持っちょったと? かあちゃん、なんでじゃ?)

 
 依田「その雛人形は私が預かろう、翔は必ずその雛人形を狙ってくる。ここに置いとくのはあまりに危険すぎる」
 唯「いやじゃ、これは誰にも渡さん!!」

 傍らにいた依田が雛人形に手を伸ばすが、唯は拒絶する。

 依田「唯!!」
 唯「雛人形ちゅうのは男雛と女雛が一対になっちょるもんじゃ、翔に持って行かれた女雛はわちの母ちゃんの形見じゃ、じゃったら、この男雛も母ちゃんの形見の筈じゃ」
 依田「しかし」
 唯「依田先生、いや、般若、あんたなんか隠しちょるんじゃないか」
 依田「……」
 唯「もしかして、この男雛を何で翔が持っちょったか、知っちょるんじゃろう」
 依田「知らん」
 唯「嘘じゃ、知っちょるはずじゃ、なんで翔がこれを持っちょるんじゃ」
 依田「知らんと言ったら知らん!!」

 依田は苛立たしげに唯の手を振り払うが、そこへ結花たちがやってくる。

 
 結花「知ってるんでしょ、般若」
 由真「もったいぶらずに話せよ」
 依田「知らん」
 唯「般若!!」
 依田「たとえ知っていたとしても、話すわけにはいかん。どうしても知りたければお前たち三人力を合わせて影と戦い抜くことだ」
 唯「そげなこつ言うて、こんげ名気持ちでどうやって影と戦えっちゅうとか」
 由真「そうだよ、力を合わせてって言ったってな、唯と翔の関係がはっきりしなきゃ戦いようがねえじゃねえか!! もしかして、こいつと翔は……」
 結花「由真!!」

 由真が激情に駆られて言ってはならない言葉を口にしようとしたので、結花が鋭く遮る。

 由真「だって姉貴」

 唯は傷付けられたような目で二人の姉を見詰める。

 唯「姉ちゃんたち、わちを、わちを疑っちょるんか? 結花姉ちゃん」
 結花「……」

 唯がすがるように結花を見るが、結花は冷たい目をして視線を逸らす。

 唯「由真姉ちゃん!!」
 由真「……」

 由真もプイと顔をそむける。

 
 唯「そんげなこと……ひどか、ひどかーっ!!」

 唯は、親に見捨てられた幼児のように顔を歪ませ、その場に座り込む。

 結花「わからないのよ、私だってどうしたら良いか」

 大人びたようでもまだ子供の結花、率直に気持ちを打ち明ける。

 唯は悔しそうにポロポロと涙をこぼす。

 依田「お前たちがどんなことがあろうと、影と戦う宿命を背負っているのだ。それだけは忘れないでくれ」

 依田はそう言い残して帰っていくが、秘密を知っていながら話そうとしない人間の言葉が、三姉妹の心に届く筈もなかった。

 ところで、確か翔って、11話で、唯の持つ女雛を欲しがって、土グモ一族に狙わせてるんだよね。

 そのときは失敗したが、普段、三姉妹は学校に行って家には誰もいないのだから、盗もうと思えば簡単に盗めたのではあるまいか?

 それとも、以前記したように、風魔が24時間体制で警護しているのか、あるいは、セコムしているのだろうか?

 それはともかく、依田が外に出て夜空を見上げると、影星が赤々と輝いていた。

 影星が輝くというのもアレだが……

 と、背後に帯庵が立っていた。

 帯庵「ひさしぶりじゃの、般若」
 依田「帯庵様……」
 帯庵「唯よ、苦しかろう」

 帯庵は2階の窓を見上げてつぶやく。

 依田「帯庵様、私はどうすれば良いのだ」
 帯庵「少し、歩こうか」

 二人は近くの公園で話す。

 帯庵「今、あのことを知れば唯は影と戦う気力を失のうてしまうじゃろう。かと言うて謎のまま戦うのもつらかろう。これも試練じゃ。ヴァジュラを手にし、天輪聖王と戦うものはあらゆる試練を乗り越えていかねばならん。あのことはいま、お前やワシの口から言わずとも影と戦っていればいずれ分かること……唯が唯自身の手で雛人形の謎を解くのも試練、事実を知ったとき、それを乗り越えることこそ戦う宿命を持つものに課せられたもっとも大きな試練」

 と、もっともらしいことを言う帯庵だったが、ぶっちゃけ、ストーリー上の「ヒキ」としか思えない。

 帯庵が言うように、「いずれ分かる」ことなら、今話しても同じことではあるまいか?

 それに、出生の秘密を知ってショックを受けるのは、むしろ結花たちの方だろう。

 それはそれとして、今日も元気に悪事を企む影のみなさん。

 オトヒ「烈火衆にございます」
 ミヨズ「刺客としてはもっとも恐るべき衆かと」

 
 翔の前に参上したのは、男性アイドルグループのような大所帯であった。

 翔「殺せ、あの風魔の娘どもが憎い、殺してわらわの人形を取り戻せ」

 烈火衆が消えた後、翔はあの雛人形を手に取り、

 
 翔「何故じゃ、何故あの時、わらわの胸に痛みが走ったのじゃ? 唯の持っておったこの人形が何故わらわを脅かすのじゃ? 消さねばならぬ、唯を、風魔の娘どもを」

 雛人形と自分たちの関係は、翔も知らないのだった。

 CM後、星流学園の授業風景。

 依田が英文のテキストを読み上げているが、無論、唯は勉強どころではない。

 唯(影と戦えと? こんげな気持ちでどうやって影と戦えばいいんじゃ……姉ちゃんたちはわちを疑っちょるし、くそぉ、こうなったらわちひとりででも)

 唯はいきなり立ち上がると、荷物を手に教室を出て行こうとする。

 依田「風間君、授業中ですが」
 唯「しゃからしか!!」

 依田が咎めるが、唯は一声吠えると出て行ってしまう。

 ゴロウ「唯ちゃん!!」
 ヒデ「待ってよーっ!!」

 ゴロウたちが追いかけようとするが、

 依田「待てーっ!!」

 突然依田が大声を張り上げる。

 
 ギョッとして、思わず振り向く生徒たち。

 
 依田「授業中だ、勝手は許さん!!」

 普段とは別人のような厳しい口調に、ヒデとゴロウはそそくさと席に戻る。

 さすがの依田も平静でいられず、「素」になってしまったのだろう。

 唯が敷地内を走っていると、由真のユリアンが飛んでくる。

 唯「由真姉ちゃん……」
 由真「何処行くんだよ」
 唯「わからん、わからんけど、わち、雛人形のこと調べて見ようと思って」

 由真は唯の足元にユリアンを投げつける。

 
 唯「なにするんじゃ、由真姉ちゃん」
 由真「てめえひとりに勝手な真似させるわけにいかねえんだよ」
 唯「なんでじゃ、わちはただこの雛人形を……」
 由真「うるせえ」

 由真はまたユリアンを投げて来る。

 唯「やめんね、由真姉ちゃん」
 由真「やっと妹だって思えてきたのに、マジで兄弟だって思えてきたのに、どう考えたって、てめえと翔はワケありじゃねえか」

 由真はしゃくりあげながら、もう一度ユリアンを投げる。

 唯「由真姉ちゃん……」

 
 由真「姉ちゃんなんて呼ぶんじゃねえ!! てめえなんか、もしかしたら翔の奴……」

 由真がなおも言いかけると、結花の折鶴が飛んでくる。

 
 結花「やめなさい」
 由真「姉貴」
 結花「それ以上は口に出してはいけないことよ」
 由真「だって……」
 唯「姉ちゃんたちは……姉ちゃんたちは……姉ちゃんたちのバカーっ!!」

 彼らの、他人を見るような視線に耐えられず、唯は二人に罵声を浴びせて走り去る。

 結花「来なさい」

 結花は由真の手を掴み、有無を言わさず別の場所に連れて行く。

 結花「あの子に八つ当たりしてなんになるって言うのよ!!」
 由真「だって、あいつと翔は……」

 由真は姉の手を振り解くと、

 由真「やっぱりあいつのせいなんだよ、オヤジが殺されたのはあいつのせいなんだよ!!」

 と、論理的に無茶苦茶なことを言い出す。

 この一連のシーンにおける由真の態度はあまりにガキっぽくて、ドラマとは言え、いささかうんざりしてしまう。

 結花「由真!!」

 結花は由真の前に立つと、思いっきり引っ叩く。

 
 結花「なんてこと言うのよ!!」
 由真「言いたかないよ、だけど、だけどなにもわかんないんだぜ、考えれば考えるほど頭の中がめちゃくちゃになって……悔しくて」

 両手をついて、さめざめと泣く由真。

 結花「私だって、悔しいわよ。あんたとおなじこと考えないわけないじゃない」
 由真「……」
 結花「でもね、唯はもっと悔しいんじゃないの? もっと居たたまれない気持ちなんじゃないの?」
 由真「……」
 結花「あの子の気持ち、わかってあげなくちゃ」

 結花に優しく諭されて、由真も反省の色を浮かべるが、そこを烈火衆が襲ってくる。

 
 まとめて鎖で縛られる結花と由真。

 「上下二段式Wおっぱい」挟みならぬ、「前後二列式Wおっぱい」挟みである。

 この時、中村さんが、大西さんの押し潰されたおっぱいの感触を背中に感じていたかと思うと、なんとなくニヤニヤしてしまう管理人であった。

 さっさと殺せば良いのに、その周りをぐるぐる回る烈火衆のみなさん。

 
 と、それぞれ爆弾のような物に火をつけると、二人の忍びが結花たちに密着する。

 由真「こいつら一緒に死ぬ気だよ」
 結花「まさか」

 そのまさかであった。

 彼らは自爆攻撃も辞さない……と言うより、自爆攻撃専門の、キョーフの集団なのだった。

 もっとも、二人の身動きを封じているこの状況で、自爆攻撃を仕掛ける必要は、全くないと思うのだが……

 絶体絶命のピンチだったが、そこに般若が駆けつけ、石礫(?)を投げて忍びを二人から遠ざけると、杖で鎖を切り、

 
 二人を押し倒すようにして地に伏せる。

 その直後、

 

 
 二つの爆弾が連続的に爆発し、忍びは木っ端微塵になる。

 これ、編集じゃなく、ほんとにスタントのすぐ近くで爆発させているのが凄い。

 もっとも、俳優に関しては、本人かどうかはわからない。

 
 休む間もなく烈火衆と戦う般若。

 うーん、実にカッコイイ。

 敵を片付けると、結花たちに駆け寄り、

 依田「唯はどうした」
 結花「ひとりで出てってしまった」
 依田「……」

 唯は風間家の墓の前にいた。

 唯「父ちゃん、わち、どんげしたらいんじゃろ?」

 と、唯の前に烈火衆があらわれ、

 
 唯の足首に鎖を巻きつけ、両側から地面に押し付ける。

 うむ、何処に出しても恥ずかしくない変質者である。

 リーダー格の男が、唯の風呂敷から落ちた雛人形を拾い上げる。

 
 唯「お前ら、何もんじゃ」
 リーダー「烈火衆」
 唯「烈火衆?」
 リーダー「貴様の命ももうすぐ終わりだ。この二人が供をしてやる」

 リーダーの言葉に、二人の忍びが爆弾の導火線に点火する。

 いや、だから、そんなことせずとも、手の空いているあんたが唯を殺せば良いのでは?

 リーダー「自爆を以て敵を巻き込み、倒すのが我ら烈火衆だ。貴様の父・小太郎も我らが倒した」

 と言うのだが、家を爆破するのに、なんで自分まで犠牲にならねばならないのか、さっぱりわからない。

 それに、攻撃のたびにメンバーが死ぬと言うのは、あまりに効率が悪く、非現実的であろう。

 そして、そんな、殉職率100パーセントのアットホームな職場デス!! なのに、こんなにたくさんの若者が参加しているのは、あまりに嘘っぽいではないか。

 なので、せめて、普段は普通に爆弾を投げるが、いざとなったら自爆も辞さない……と言う程度にしておくべきだったろう。

 あと、序盤で小太郎を殺すと言う殊勲を上げているのに、何故今まで彼らに三姉妹抹殺を命じなかったのか、そこが最大の謎である。

 それはともかく、リーダーが余計な自慢をしたせいで、唯の怒りに火をつけてしまう。

 唯「父ちゃんを? お前らが? 許さん、許さん!!」

 唯は手首だけでヨーヨーを空高く飛ばすと、それを分離させて二人の忍びの背中を打つ。

 唯は二人を殴り倒すと、ジャンプして距離を取る。

 
 オナニーのように空しく自爆して果てる二人。

 しかし、仮にも墓地でこんな撮影が許されるとは、良い時代だったよなぁ。

 リーダー、雛人形は手に入れたのだから、ひとまず退却すれば良いのに、

 
 リーダー「あああああっ!!」

 やっぱりバカだったようで、爆弾を手に突っ込んでくる。

 それでもさすがリーダー、唯の投げたヨーヨーをかわすと、一瞬でその背後に回る。

 
 唯「放せーっ!!!」
 リーダー「もうすぐ楽にしてやるわ」

 あとさぁ、自爆攻撃をするなら、あからさまに爆弾を持ってちゃダメだと思うんだよね。

 おまけに、スイッチオンで起爆するならともかく、点火してからかなりの時間を要するのだから、今回のように敵に逃げられる可能性が高く、これほどコスパの悪い戦法もあるまい。

 卑しくも自爆の専門家を名乗るなら、自分の体内に爆弾を仕込んで敵に抱き付くくらいのことはすべきだろう。

 ともあれ、そこに結花と由真が駆けつける。

 結花がリーダーの手から爆弾をもぎ取ろうとするが、由真は、足元に落ちていた男雛を見詰めたまま、動こうとしない。

 結花「由真ーっ!!」

 それでも結花の叫びに、リリアンを取り出して男の手首に巻きつける。

 唯は男から離れると、その胸にヨーヨーを叩き込む。

 
 結花「危ない!!」

 結花が、唯の体に覆い被さるようにして守る。

 再び激しい爆発が起き、今回5人目の犠牲者が出る。

 ちなみに、唯に覆い被さっている結花だが、これはセーラー服を着た男性スタントっぽい。

 唯のほうはよくわからないだが、たぶん、こちらも俳優本人ではあるまい。

 結花「唯、だいじょぶ?」
 唯「うん」

 結花は唯を気遣うが、由真は言葉を掛けさえせず、雛人形を手にその場を立ち去る。

 唯「由真姉ちゃん……」

 一方、影のアジト。

 翔「烈火衆も倒れたとは……わらわの人形が泣いておるわ!!」

 と、ガシャガシャと言う足音が聞こえてくる。

 ミヨズ「あれは……」
 オトヒ「まさか……」
 ミヨズ「ロボコップ?」
 魔破羅「ちゃうわっ!!」

 無論、それは魔破羅おじさんであった。

 翔「魔破羅」
 魔破羅「お方様より命を受け、今日より姫様の片腕となりまする」
 翔「お方様が……」
 魔破羅「まずは手土産に面白い物をご覧に入れましょうぞ」

 魔破羅はあの雛人形を掴むと、宙に投げ、居合いで斬る。

 
 床に落ちた人形を食い入るように見詰める三人。

 
 ミヨズ(わかりにくっ!!!!)

 と言うのは嘘だが、わかりにくいのはほんとである。

 雛人形の体に、梵字が書かれていたと言うことなのだろうが……

 一方、風間家。

 依田が、一通の書状を唯に渡す。

 依田「帯庵様からだ」
 唯「……」

 唯は黙って手紙を読む。

 
 帯庵の声「唯よ、翔とお前の雛人形の謎、己自身の力で解き明かすのだ。身が引き裂かれるかも知れん、心が砕かれるやも知れん、しかし、そうすることがお前の身に与えられた試練なのだ」
 唯「じいちゃん……」

 どうでもいいが、その手紙の文字が、割りと下手なのが興醒めであった。

 こういうところはケチらずに、ちゃんとした書家に書かせて欲しかった。

 由真は居間で男雛を調べていたが、

 由真「姉貴、背中んとこ、見てみなよ」

 結花が人形の背中を見ると、唯の額と同じ梵字が書かれていた。

 つまり、さっき魔破羅おじさんは、女雛の背中の飾り(帯?)を切り離したのだろう。

 由真「翔が持ってた人形にどうして唯の梵字が書いてあるんだよ」
 結花「……」
 由真「間違いねえよ、唯と翔はやっぱり……」

 と、気配を感じて振り向くと、そこに唯が幽鬼のような目付きで立っていた。

 唯は人形を掴むと、その背中の文字を見る。

 
 唯「なんでじゃ、なんでじゃーっ!!」
 
 唯が叫んでいるところで次回へ「つづく」のだった。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第30話「第一部完結 唯vs翔 運命の戦い!」

2025-03-15 19:15:31 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇
 第30話「第一部完結 唯vs翔 運命の戦い!」(1987年7月23日)

 冒頭、修験者のような恰好をした二人の若い忍びが、大胆にも影のアジトの奥、翔のプライベートルームに侵入する。

 
 十佐「兄さん」
 九佐「……」

 二人は九佐(きゅうざ)と十佐(じゅうざ)と言う兄弟であった。

 その名前からして、ヤケクソに大家族であることがわかる。

 朝のトイレは大変であろう。

 
 オトヒ「何者じゃ!!」

 二人は翔の雛人形を盗もうとするが、そこをオトヒがあらわれる。

 オトヒ「呪道衆……九佐、十佐」
 九佐&十佐(顔を隠してるのに、よく分かるなぁ……)

 と言うのは嘘だが、ほんと、よくわかるよね。

 オトヒ「おのれ、何をしておる」

 オトヒは帯を投げつけ、九佐の首に巻きつける。

 九佐「十佐、これを……」
 十佐「兄さん!!」
 九佐「行けえ、お前が一族の恨みを晴らせ!!」

 十佐は雛人形を受け取ると、やむなく兄を見捨てて逃げ出す。

 
 九佐「ぐあああーっ!!」

 走る十佐の背後で、シルエットになって吊り上げられる九佐。

 「必殺仕事人」の見過ぎである。

 十佐「兄さんーっ!!」

 十佐は忍びたちの攻撃を掻い潜り、アジトを脱出する。

 タイトル表示後、物語は前回のラストシーンまで遡る。

 ただし、前回とはだいぶ違う。

 仏壇の前に座り、写真を見詰めている結花。

 そこへ唯が戻ってきたので、結花は急いでポケットにしまう。

 
 唯「なに見よったと?」
 結花「なんでもないわ」

 結花は感情のない声で答えると、立ち上がって部屋を出て行こうとする。

 唯「結花姉ちゃん……」
 結花「唯」
 唯「うん?」

 結花は立ち止まって振り向くと、じっと唯の顔を見ていたが、ふっと笑みを浮かべ、

 結花「おなか空いてる?」
 唯「うん」
 結花「じゃご飯にしましょ!!」

 結花は強いて明るい声を出して促す。

 サブタイトル表示後、再び影のアジト。

 
 翔の前に三人の忍びが控えている。

 ミヨズ「雷山衆……雷神、竜神、火神(ほしん?)にございます」
 翔「よく見分けがつくのう」

 変なところに感心する翔ちゃんだったが、嘘である。

 嘘だけど、こういう見分けのつかないキャラが、レビュアー的には一番困るのは確かである。

 三人目の名前も、なんて言ってるのかよくわからんし。

 なので、以下、彼らの名前は雷山衆で統一させて頂く。

 ミヨズ「姫様の大切な人形を持ち出したものがおる」

 ミヨズは十佐の顔写真を投げつけ、

 ミヨズ「呪道衆・十佐」
 雷山衆「呪道衆と言えば、呪いを掛けて殺すを術とするモノたち、まさか姫様を」
 翔「……」

 雷山衆の迂闊な言葉に、翔がギロリとした目を向ける。

 
 ミヨズ「おろかものがっ!!」

 同時に、ミヨズたんが立ち上がり、烈火のごとき叱声を放つ。

 ミヨズ「呪道衆がどのような呪いを掛けたとて、姫様に通じる筈もあるまい」
 雷山衆「申し訳ございません」
 翔「さびしいのう」

 翔は最上段に何もない雛飾りの前に立ち、手で涙を拭く仕草を見せる。

 オトヒ「お許しくださいませ!! 姫様、どうかお許しを!!」

 今夜の宿直だったと思われるオトヒが平謝りに謝るが、翔はその額に扇を投げつけただけで許す。

 翔「人形が泣いておる、はようわらわのもとに帰りたいと言うておる。人形、取り返してたも」

 その後、学校の屋上で依田がのんびりしていると、結花がやってくる。

 結花「唯は本当の妹なの?」

 単刀直入に尋ねる結花。

 結花「風魔の里でヤエというおばあさんがくれたの」

 結花は例の写真を依田に見せる。

 
 結花「裏を見て……私が二才、由真が一才って書いてあるわ。由真が一才の時なら唯はもう宇生まれている筈でしょ。もし生まれてないとしても母さんのおなかの中にはいた筈だわ。でも、母さんのおなかは大きくない」
 依田「……」
 結花「唯はその時何処にいたの? 唯はほんとに私たちの……」
 依田「唯は風間小太郎の娘だ。お前たちの父・小太郎がそういったはずだ」
 結花「でも」
 依田「父を信じられないのか? こんなことで迷うな」

 依田は上から押さえつけるように言うと、写真をビリビリに引き裂いてしまう。

 いや、結花たちにとって大切な母親の写真を勝手に破いたらあかんやろ。

 もっとも、結花は何の反応も示さない。

 夜、由真の部屋に唯がやってきて、

 唯「由真姉ちゃん」
 由真「なんだよ」
 唯「やっぱおかしかー、結花姉ちゃん、なんか悩んじょる」
 由真「いいじゃねえか、ほっとけよ」

 
 唯「じゃけん、こんげな深刻な顔してごはん作りとるとよ」

 唯、結花の顔真似をして見せる。

 
 由真「お前、その顔、どういう顔?」

 およそスケバンらしくない可愛らしい髪型の首を傾げて問い掛ける由真。

 唯「深刻に悩んじょる顔じゃ」
 由真「ひひひひ……お前がやると猿が困ってるような顔にしか見えないよ」
 唯「なんてやー」
 由真「なにすんだよ!! もぉ」

 床に寝転がった由真に唯がのしかかろうとするが、由真に押し退けられる。

 
 唯「てめえ!!」
 結花「唯、結花、ごはんよ」
 唯&由真「はーい!!」

 座ったまま、くんずほぐれつする二人だったが、階下からの結花の声に一時休戦する。

 二人とも露出度の高い衣装なのがちょっと嬉しい。

 ま、もう夏だからね。

 一方、人里はなれた樹海のようなところに身を潜めていた十佐は、

 十佐「アビラウンケンソワカ……」

 ささやかな護摩壇を焚き、あの男雛に向かってお馴染みの呪文を唱えていた。

 再び風間家。

 食事中、唯は由真の足を踏んで、結花に聞くよう促す。

 由真「いってえなぁ……姉貴、好きな人出来たの?」
 結花「えっ?」
 由真「こいつがさぁ、そうじゃないかって」
 唯「わち、そんげなこつ言うとらんもん」
 由真「だってお前、姉貴が悩んでるっ言ったじゃん」
 唯「結花姉ちゃん、わちは……」
 結花「何も悩んでなんかいないわよ」
 唯「……」

 結花はきっぱりと否定するが、やはり普段の結花とは様子が違うように唯には思えた。

 結花は立ち上がって炊飯器の前に行くと、

 
 結花「そうねえ……悩みといえば」

 
 結花「好きになるようないい男がいないことかな」
 由真「ほら見ろ、考えすぎなんだよ、お前は」

 ここ、結花が、無意識的に茶碗にご飯を山盛りにして、それから急に気付いたようにご飯を減らして平らにするのが、妙にリアルな所作である。

 唯「じゃけん、結花姉ちゃん、元気なかったじゃろ。じゃから……」
 結花「心配してくれたの? ありがとう……おかわりは?」
 唯「うっ」

 結花の言葉に茶碗を差し出す唯だったが、突然呻いて茶碗を落とす。

 ちなみに、それで茶碗が三つに砕けているが、フローリングならともかく、カーペットに落ちたくらいで茶碗は割れんだろう。

 唯は苦しそうに顔を歪め、背中に腕を回す。

 結花「唯?」
 由真「どうしたんだよ」
 唯「なんか急に背中が……」

 その後、十佐が雛人形の肩に針を突き刺すと、人形がガタガタ揺れ動く。

 そして、それに呼応するかのように、唯の部屋に置いてある女雛がひとりでに動き出す。

 冷静に考えたら、めちゃくちゃ怖い状況であったが、

 
 唯はそれどころではなく、体に激しい痛みを感じ、畳にぶっ倒れる。

 その呻き声は、家の外で見張っている雷山衆にも聞こえるほどだった。

 CM後、知らせを聞いて依田が駆けつける。

 
 依田「どうした」
 結花「突然苦しみ出して……」
 由真「人形掴んだら静かになったんだけど」

 依田は唯の様子をつぶさに見ていたが、

 依田「いかん、呪殺の術をかけられている」
 由真「なんだよ、それ」

 三人は一階に下りてくる。

 依田「呪殺と言ってな、相手の身につけているものや大切にしている物を盗み、その物に呪いをかけて殺すと言う恐ろしい術だ。呪道衆が良く使う……唯は何か盗まれたものはないか」
 由真「そんなのわかんねーよ」
 結花「このままだと唯は?」
 依田「わからん、今はあの雛人形が、かけられた呪いを食い止めているようだが……」

 さすがの般若にも、元々唯の雛人形が翔の手元にあり、それを盗み出したものが術を掛けているとはわからなかった。

 その十佐も、翔にかけている筈の呪いが、唯を苦しめているとは夢にも思わず、

 十佐「何故だ、何故呪いが通じないのだ? やはり翔は……そうか、雛人形は男雛と女雛が揃わなければ……」

 一方、雷山衆の三人は、能舞台のようにところに集まっていた。

 
 雷山衆「やはり翔様が言われたとおりか」
 雷山衆「はい、物凄い苦しみようで、あれは間違いなく便秘ですね」
 雷山衆「なるほど、ではピンクの小粒コーラックの出番だな……って、おいっ!!!!

 じゃなくて、

 雷山衆「はい、物凄い苦しみようで、あれは間違いなく呪道衆・呪殺の術がかけられたようです」
 雷山衆「しかし何故風魔の娘に呪いがかかるのだ。呪いが掛かるのは翔様のはず」
 雷山衆「分からん、だが、十佐は必ずあの風魔の娘たちのところへ現れると翔様が仰ったのだ。もう少し待ってみよう」

 翌日、学校の図書室で呪いの解き方を調べている依田と由真。

 由真「もう、まだわかんねえのかよっ」
 依田「せめてなにに呪いを掛けられているのかさえ分かれば手の打ちようがあるのだが……」

 と言うのだが、それが何か分かったところで、相手が持ってるんだから、意味ないのでは?

 依田は、由真にもう一度なくなってるものはないか自宅に調べに行かせるが、その途中、他ならぬ十佐が接触してくる。

 
 十佐「さすが風魔の娘」
 由真「なにもんだ」
 十佐「呪道衆・十佐」
 由真「てめえ、よくも」

 由真はリリアンを飛ばして、十佐の首に糸を巻きつける。

 十佐「待て、お前と戦う気はない」
 由真「ざけんじゃねえ」

 無駄に好戦的な由真は無抵抗の相手の首筋にリリアン棒を打ち下ろそうとする。

 十佐「待ってくれ、俺はお前たちに頼みが……」
 由真「うるせえっ」
 依田「待て!!」

 そこへ依田が飛び込んで来て、由真を止める。

 十佐「お前たちが持っている雛人形、貸してくれ」

 十佐が二人に連れられて風間家にやってくる。

 
 由真「姉貴、こいつが唯に呪いを掛けたんだよ」
 十佐「違う、俺が呪いを掛けたのは翔だ、この娘にではない」
 結花「だったらどうして唯が」
 依田「話は後だ、とにかく呪殺の術を解いてやれ」

 十佐が呪文を唱えると、唯はパッと目を覚ます。

 その後、ダイニングで十佐の話を聞く一同。

 十佐「呪道衆は翔にいいように利用されていた。それに気付いて影から抜けようとしたら、一族、皆殺しにされて……やっと生き残ったのは俺と兄さんだけだった。翔の奴を倒そうと思って、翔の持っていた男雛に呪いを掛けたんだけど」
 唯「翔が男雛を持っちょるっちゅうとか」
 結花「まさか、その男雛が……」
 由真「これと同じ奴かい?」

 由真は、食器棚の抽斗から、以前、風間家が吹っ飛んだ時に焼け残った、男雛と女雛を写した写真を取り出し、十佐に見せる。

 
 十佐「これだ」
 唯「なんで、なんでじゃ、なんで翔がわちが持っちょる女雛とツイの男雛を持っちょるんじゃ?」

 唯は、写真をひったくると、信じられないと言う顔で叫ぶ。

 唯「依田先生、なんでじゃ」
 依田「知らん、何故だかは知らん」
 唯「じゃけん、なんで……」
 結花「もしかしたら、翔と唯は……」
 依田「結花!!」

 結花が背中を向けて何か言いかけるのを、依田が鋭く制す。

 由真「姉貴、何言うんだよ」
 唯「結花姉ちゃん、どういうことじゃ」
 結花「……」

 唯が問い詰めるが、結花は視線を逸らして答えない。

 唯「十佐さん、その男雛、どこにあるんじゃ、わち見たいんじゃ、見せて欲しいんじゃ」
 十佐「山の洞窟に隠してある、もし、あんたが女雛を貸してくれるのなら案内する」
 唯「女雛を?」
 十佐「男雛と女雛を並べて術を掛ける、翔を倒せるかも」
 依田「待て、それは危険すぎる。呪いが翔ではなく、唯に掛かったら、命が……」

 依田のもっともな懸念に、重苦しい沈黙が垂れ込める。

 唯「それでもいい、わちが持っちょる女雛と並べてそれで翔が倒せるのかも知れんのならその可能性に賭けてみる」
 結花「唯……」
 唯「わち、風間小太郎の娘やもん、翔を倒さにゃいかんのじゃ」

 本人がそう言うので、みんなでその洞窟に行くことになる。

 
 翔「動き出したか、唯……ミヨズ、オトヒ、出かけるぞえ」
 ミヨズ&オトヒ(いや、ぞえって……)

 洞窟に戻った十佐は、唯から借りた女雛と男雛を並べ、呪いの儀式を始める。

 だが、すぐに吹き矢が飛んで来て、十佐の肩に刺さる。

 無論、雷山衆の仕業であった。

 依田「結花、由真、唯を守って逃げろ」

 依田、二つの人形を唯に渡すと、自分は雷山衆に向かっていく。

 洞窟の外に出た三姉妹の前に、雷山衆が立ちはだかる。

 唯「姉ちゃん」
 結花「あんたは逃げて」
 由真「こいつらは私に任せな」

 この後、一対一のバトルとなる。

 
 由真、糸で相手の首を捩じ上げ、

 
 カメラ目線でフィニッシュ!!

 毎回言ってるけど、強いのか弱いのか良くわからないお方だ。

 炎を操るひとりは、結花に倒され、最後の一人も、依田に背骨を踏み潰されて昇天。

 物々しい名前の割りに大したことなかった雷山衆であったが、

 
 依田「……」

 依田の様子から見て、かなりの強敵ではあったようである。

 ちなみに、十佐は依田に助け出される様子がチラッと見えるが、それっきり、物語からフェードアウトしてしまう。

 荒野を駆ける唯の前に、いきなり翔たちがあらわれる。

 
 翔「わらわの人形、返してたも」
 唯「なんてやー」

 どちらも標準語には程遠い日本語を操るが、それでもちゃんとコミュニケートできるのが、日本語の奥深さである。

 ミヨズとオトヒがそれぞれの得意武器で唯を攻撃する。

 唯は人形を手放して地面をゴロゴロ転がってよける。

 と、翔が目を赤く光らせ、唯のいる空間を歪めてその動きを封じる。

 そして二つの人形を念力で宙に浮かせるが、駆けつけた依田が九字を切り、人形で空中で静止させる。

 翔の超能力に対抗できるとは、さすが般若、タダモノではない。

 その体にオトヒが帯を巻きつけ、ミヨズが含み針を放つが、そこへ結花と由真が駆けつけ、結花が折鶴で帯を断ち切る。

 人形は再び動き出すが、

 
 結花が折鶴を投げて、女雛の肩に突き刺す。

 
 翔「うっ……」

 と、翔が同じ場所に痛みを感じて顔を歪める。

 結花「やっぱり、翔と唯は……」

 翔、苦痛に耐えながら、女雛をキャッチする。

 と、空間の歪みが消えたので、唯がヨーヨーを投げ、代わりに男雛を手繰り寄せる。

 こうして、二つの雛人形が二つとも、本来の持ち主の手に戻ったわけである。

 
 翔「……」

 初めて生の感情をあらわにして、唯を見詰める翔。

 
 唯「……」

 唯も瞳に闘志をこめて、翔を睨みつける。

 
 唯「待てーっ!!」

 彼らが引き揚げるのを見て、唯たちが追いかけようとするが、目の前で激しいセメント爆発が起き、その足を竦ませる。

 これ、一番ビビッたのは、翔の林さんだろうなぁ。

 
 唯「なんでじゃ、翔、なんでお前がこの雛人形を持っちょるんじゃ、なんでじゃ、なんでなんじゃあ……これは、この雛人形は母ちゃんの形見、なんでじゃ、なんでじゃ、なんでじゃーっ!!」

 唯の叫びが荒野を空しく駆け抜けていく……

 なお、31話は総集編なので、次のレビューは32話となります。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第29話「小さな殺人者 唯暁に死す!?」

2025-03-01 20:16:14 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇
 第29話「小さな殺人者 唯暁に死す!?」(1987年7月16日)

 夜、マンションのような建物の下に若い女性が倒れている。

 上階にいた息子のアキラが慌てて階段を駆け下り、母親にすがりついて何度も呼びかけるが、母親はピクリとも動かない。

 
 と、背後の物陰から、ヨーヨーがしなる音が聞こえてきて、さらに、母親の額に梵字が浮かび上がる。

 それは唯の持つカーンの梵字と同じものであった。

 母親を演じるのは、美人女優の千野弘美さんだが、たったこれだけの出番と言うのは勿体無い話だ。

 アキラ「怖いよ、お母さん、怖いよー」

 延々と聞こえてくるヨーヨーの音に、アキラは両手で耳を覆って叫ぶ。

 そこに、「五方加持の術」と言うテロップが表示される。

 その様子をスクリーン(?)で見ている翔たち。

 翔「五方加持の術、のう」
 モモソ「忍びを抜けんとした草の母を利用し、その子に我が秘術をかけましてございます」

 今回の刺客の、首を寝違えたのか、いつも顔が傾いでいる忍びが説明する。

 今、スクリーンと書いたが、映像的には、窓(マジックミラー?)越しに、直接現場を見ているような感じである。

 タイトル表示後、三姉妹が家から出てくる。

 
 結花「ニ、三日中には帰ってこれると思うけど、二人で喧嘩しないで仲良くやりなさいね、止める人がいないんだから」
 由真「うん」
 唯「でも結花姉ちゃん、わちが代わってやってもいいよ、風魔の里に影を抜け出した草のひとば連れて行くんじゃろ」

 唯の台詞で、結花が任務のためにしばし家を空けることがわかる。

 これは、大西さんのスケジュールの都合か、純然たるストーリーのためか、どっちだろう?

 どうでもいいが、影、草に抜けられまくってるなぁ。

 翔って、そんなに人望がないのだろうか?

 結花「だーめ、唯ばっかり学校休んでたら留年しちゃうでしょう」
 由真「出席日数じゃなくて、頭のほうで留年させられちまうよ、こいつなら」
 唯「なんてやー」

 注意されたそばから一戦おっぱじめる、進歩のない二人。

 結花「やめなさい!! 喧嘩しないようにって言ったばかりでしょう。あんたたち、大人しくしてるのよ。いいわね」

 結花は怖い顔で念を押すと、すたすたと歩き出す。

 振り向いた結花に笑顔で手を振って見せる二人だったが、すぐに小突き合いを始める。

 
 由真「あーあ、これからはお前のまずい料理くわなきゃなんねえのか」
 唯「なんか、由真姉ちゃんなんか卵焼きしか作れん癖してからに……別に食べんでもいいよ」
 由真「うるせえなー」

 由真は新聞を広げて、それを唯との仕切りの壁のようにしながら食べるが、

 
 偶然、こんな記事を見付けたので、顔色が変わる。

 唯「どうしたと? はっはー、漢字が読めんじゃろ、わちが読んじゃろうか」
 由真「……」

 唯が新聞を取ろうとするが、由真は素早く畳んでテーブルに置く。

 口ではああ言いながら、由真は唯の気持ちを慮って、読ませまいとしているのだ。

 サブタイトル表示後、屋上で依田と由真が話している。

 
 依田「唯はあの記事を読んだのか」
 由真「あいつが新聞なんか読むわけねえよ。どういうことだよ、一体」
 依田「わかっているのはその女が影に追われていた草のひとりだったということだ」
 由真「どうして梵字なんか……」
 依田「由真、唯の身に、何か起こるかもしれん、心しろ」

 依田の指示に、由真は無言で頷く。

 
 唯が学校から帰ってくると、家の前に見知らぬ子供が座っていた。

 唯「あんた誰ねー、どんげかしたと?」
 アキラ「……」
 唯「わちになんか用でもあると?」

 その子供こそ、あの女性の息子アキラであった。

 夕方、唯が食事の支度をしている。

 由真「なんだよ、あのガキは」
 唯「わちにもようわからんのじゃ」
 由真「お前ねー、何処の誰ともわかんないもん、家に入れんじゃねえよ、風呂まで入れやがって、ガス代嵩むじゃんか」
 唯「薄情やねえ、由真姉ちゃんは」

 スケバンの癖にガス代の心配をする由真に、唯は憐れむような目を向ける。

 と、バスタオルで頭を拭きながら、アキラが入ってくる。

 アキラ「ガキじゃないぜ、アキラだぜ」

 とりあえず晩飯を食おうということになる。

 由真「てめえなぁ、メシのおかずにおはぎなんか作んじゃねえよ」
 唯「そりゃハンバーグじゃ!!」

 
 由真「ハンバーグ? これが?」

 それは、由真がおはぎと間違えたのも無理はない、分厚いハンバーグであった。

 
 アキラ「美味しいよ、これ、唯姉ちゃん、料理上手だね」
 唯「アキラ君は舌が肥えちょるわい」

 母親を失ったばかりにしては、アキラは妙に明るかった。

 と、アキラが箸を置いたので、

 唯「どうしたと」
 アキラ「ここに来れば、お母さんのおでこと同じ字書いた人がいるからって」
 由真「お母さんのおでこに?」
 唯「それでお母さんは?」
 アキラ「死んじゃった」
 唯「そうか……」
 アキラ「草の仲間だって人が教えてくれたんだ。その人がいればきっと助けてくれるって」

 アキラの言葉に、二人は思わず顔を見合わせる。

 アキラ「いないね」
 唯「あるよ、わちの額に……でも、普通は出らんとよ」
 アキラ「嘘つかなくてもいいよ、姉ちゃん」
 唯「本当じゃよ、アキラ君」
 由真「唯、よしな、子供だからってまだなにもんかもわかんないんだから」

 依田に言われたことが頭にあったのだろう、由真は唯にそれとなく警告するが、

 唯「アキラ君は悪い子じゃなか」

 夜、唯はアキラと布団を並べて寝る。

 
 唯「とっても優しいお母さんやったんじゃね」
 アキラ「うん、日本じゅうね、お母さんと一緒に旅行したんだ。夜中にさ、急に汽車に乗ったりして、いっつも急に決まるんだ」
 唯「そう」
 アキラ「だから友達はいないけどさ、いっつもお母さんと一緒だったんだ。でも、もう何処へも行けないや」
 唯「いつかお姉ちゃんが連れてってあげる」
 アキラ「ほんと」
 唯「いつかお母さんと思い出のあるとこ、一緒に行こう」
 アキラ「ほんとだよ、約束だよ」

 アキラの母親がどんな生活をしていたのか、アキラの言葉からおぼろげに分かるが、それは草の任務としての行動だったのか、影から逃げるための逃亡生活だったのか、どちらとも取れるんだよね。

 アキラは唯の言葉がよほど嬉しかったのか、肌身離さず持っているロボットのオモチャの中から、聖母子像が彫られた金属製のカメオを取り出し、

 アキラ「お母さんがくれた僕のお守り、約束のしるしに、唯姉ちゃんが持ってて」

 唯がそれを受け取った直後、窓ガラスを突き破って発煙筒のような投げ込まれ、ついで数人の忍びが乱入してくる。

 唯は由真と協力して彼らを撃退するが、唯がヨーヨーを投げた瞬間、アキラが異様な目付きになったのを由真は見逃さなかった。

 
 モモソ「我が手のものが果てしなき追い詰め、その果てに風間唯が額に梵字をあらわし、怒りのヨーヨーを使いしとき、我が術は爆発する。そして風間唯は死に、ふっ、全ては終わりましょう」
 翔「最後まで気を抜いてはならぬ、よいな」

 自信たっぷりに宣言する寝違い忍者に、珍しく翔が忠告する。

 しかし、このシーンを見て疑問に思ったのは、何故影は、唯たちの家を直接襲ってこないのだろうと言うことである。

 彼らの住所が分かっているのだから、小太郎を殺したときのように、爆弾でも仕掛ければ簡単に殺せたのではあるまいか?

 三姉妹は昼間は学校に行って不在なのだから、その間にどんなことでも出来ただろう。

 あるいは、常に風魔の忍びが風間家をガードしているのかと思ったが、今回の襲撃シーンを見る限り、そう言う様子もないしね。

 それはともかく、当然、影の狙いがアキラだと考えた唯は、翌日、アキラを連れて登校する。

 
 クマ「なんですか、このガキ」
 唯「弟じゃ」

 不良なのに気のいいクマたちは、学校の中庭でアキラとサッカーをして遊んでやるのだった。

 
 依田「唯、分かっていると思うが、忍びには子供の手だれもいる。母親の額に何故梵字が書かれていたか、その謎が解けぬ今、あの子に心を許すことは危険だ」
 唯「なんでも疑えばいいっちゅうもんじゃないじゃろう」
 依田「では聞こう、影はなぜ母親を殺し、あの子だけを助けたのか」
 唯「草の誰かがあの子を逃がしたんじゃ、わちがきっと助けてくれる、そう言って」
 依田「罠かも知れん」
 唯「あの子はお母さんを影に殺されちょるんじゃ、昨夜だって影はアキラの命ば狙っちょった、わちらが信じて助けてやらんで誰が助けてやるんじゃ」
 依田「草として宿命を背負ったものに感傷は通じん」
 唯「もういい、わちひとりでアキラの命ば守っちゃる」

 唯は「話にならん」とばかりに、その場を立ち去る。

 入れ替わりに由真がやってきて、昨夜敵が残して行った武器を見せる。

 CM後、

 
 公園の池に面した展望台のようなところにいる唯とアキラ。

 
 唯、ふと横を向くと、近くにいたカップルと目が合う。

 よく見れば、彼らの周りには、いかにも怪しげな連中が集まっていた。

 唯がアキラを連れてその場を離れようとすると、果たして、一般人に化けていた忍びたちが一斉に襲ってくる。

 と、由真が加勢にあらわれ、

 由真「依田の奴、渋いよ、アキラを風魔の里へ連れてってやれってよ」
 唯「般若が?」
 由真「そのほうがアキラの安全のためにもいいって……ここは私に任せて早くいきな」
 唯「わかった」
 由真「駅で依田が待ってる」
 唯「ありがとう、由真姉ちゃん」

 唯はその場を由真に任せ、アキラを連れて逃げる。

 だが、その後、駅で待つ依田の前にあらわれたのは、由真ひとりだった。

 由真「あのドッカン、まだ来てねえのかよ」
 依田「一緒じゃなかったのか」
 由真「いったい何処いっちまったんだよぉ」
 依田「いかん、探せ由真、女の梵字の謎が解けた!! あの武器、組み手投げはモモソと呼ばれる影の配下が使う。その忍び、五方加持の術を使う」
 由真「なんだよそれ」
 依田「人に激しいショックを与え、その深層心理の中に形や音のキーワードを記憶させる。キーワードを再び、目にし耳にしたとき、無意識のうちに教え込まれたことをする。影はアキラに母の死と言う恐ろしいショックを与え、梵字を記憶させた。そしておそらく唯にしか出せない音を」
 由真「ヨーヨー?」
 依田「そうだ、その二つが同時に唯にあらわれたとき、恐ろしいことが起きる」

 要するに、催眠暗示と言う奴だろうが、二つの条件が揃わないといけないというのは、いかにも使い勝手の悪い術である。

 つーか、そんな七面倒臭いことをせずとも、アキラの荷物の中に爆弾でも入れておき、アキラが唯のそばにいる時に起爆させれば良いのでは?

 それはともかく、唯はあれから延々モモソの部下に襲われ続けていたようで、夜になってもひたすら逃走していた。

 マンションの廊下で忍びたちを撃退し、資材置き場のようなところに隠れる。

 唯「毒?」
 アキラ「お母さん、お母さん……」

 唯が、足の傷口から毒を吸い出していると、アキラが夢現で母の名を呼ぶ。

 唯「だいじょうぶじゃ、だいじょうぶじゃよ」
 アキラ「何処、お母さん、何処いっちゃったんだよ」
 唯「ここじゃ、ここにおる」
 アキラ「お母さん、お母さん……」
 唯「ここじゃよ、アキラ、ちゃんとアキラの手ば握っちょる」
 アキラ「もうひとりぼっちにしないね」
 唯「一緒じゃ、ずっと一緒じゃ」

 高熱を発しながら無心に母を求めるアキラを、唯はほんとの母親のように抱き締めるのだった。

 だがそこを再び忍びが襲ってくる。

 唯はアキラを背負って逃走する。

 
 その後、港近くの、高層ビルの清掃用(?)のゴンドラの中に隠れている二人。

 唯が地元の子守唄を歌っていると、アキラはいつしか眠りに落ちていた。

 だが、安堵したのも束の間、ゴンドラを吊るすワイヤーが焼き切られ、ゴンドラは轟音を響かせて地面と激突する。

 
 唯は咄嗟にヨーヨーを飛ばして建物の手摺に巻き付け、アキラを抱いて宙ぶらりんの状態となる。

 次のシーンでは、唯がアキラを背負って港の公園を走っている。

 
 アキラ(つーか、ワシら、どうやって降りたの?)

 ……と言うのは嘘だが、ほんと、どうやったんだろう?

 いくら唯でも、人の手を借りずにあの状況を脱するのは不可能であろう。

 あと、さっきワイヤーを焼き切ったと簡単に書いたが、これも、ぶっとい鋼鉄のワイヤーを、忍びの貧弱な爆薬で焼き切れる筈がない。

 それはともかく、さすがの唯も疲れ果て、その場に倒れてしまう。

 
 まぶしい光芒を背に、シルエットとなってこちらに向かってくる忍びたち。

 このビジュアルはなかなかよろしい。

 と、アキラが、座ったままずり下がり、唯から離れる。

 アキラ「ひとりで逃げて、もういいんだ、僕を置いて逃げて」

 唯はアキラの腕を掴むと、

 唯「最後まで諦めたらいかん、アキラ君のお母さんだってきっとそう言った筈じゃ」
 アキラ「でも、唯姉ちゃんまでお母さんみたいに死んじゃヤダ」
 唯「わちゃだいじょうぶじゃ」

 いじらしいことを言うアキラの体をしっかり抱き寄せる唯。

 そこを忍びたちが仮借なく襲ってくる。

 唯はもう一度アキラを背負って立ち上がる。

 
 唯「わちの怒りのヨーヨー、受けてみい!!」

 唯がヨーヨーを構えるが、

 依田「待て、唯!!」

 そこへ依田と由真が突っ込んでくる。

 由真「唯、ヨーヨー投げちゃダメだぜ!!」

 
 依田「影の狙いは唯に梵字を浮き出させ、ヨーヨーを使わせることと見た!!」

 ノーネクタイにダークスーツの依田が、杖を振り回して戦う姿が実にカッコイイ。

 依田「なにが起こるやもしれん、使ってはならん、よいな?」

 依田は強く念を押すと、再び戦いに身を投じる。

 アキラ「唯姉ちゃんの背中、お母さんみたいだ」

 と、いささか唐突だが、アキラがそんなことを言って唯の肩に頭を乗せ、涙を一粒その上に落とす。

 唯「お母さんを殺し、こんないたいけな子供を利用するとは、影め、許さん!!」

 無理やり怒りを爆発させると、額に梵字を浮かび上がらせ、ヨーヨーで次々と敵を倒していく。

 依田「唯、やめろ」

 これもちょっと不自然だが、二人は忍びを追いかけて唯たちから離れる。

 
 唯「終わった……」

 アキラは、ヨーヨーのチェーンがしなる音に、苦しそうに耳を塞いでいたが、戦いが一段落すると唯の背中から降り、唯の正面に立つ。

 アキラ「唯姉ちゃん」
 唯「……」

 唯は笑顔で応じるが、額の梵字を見たアキラは、急に妙な目付きになってロボットの玩具を両手で持つ。

 さらに、どこからか、ヨーヨーの風切り音が聞こえてくる。

 依田「唯、陣鉢だ!!」 

 依田の叫びに、唯はセーラー服の襟の下から陣鉢を取り出し、額に装着する。

 ほぼ同時に銃声が響き、

 
 唯の陣鉢に黒い穴が開く。

 
 アキラ「唯姉ちゃん!!」

 正気に戻ったアキラは、玩具を足元に叩き付ける。

 そう、その玩具には銃が仕込まれていて、梵字とヨーヨーの音が揃った時、それを唯の額に向けて撃つようにアキラの深層心理にインプットされていたのだ。

 しかし、さっきも書いたが、暗殺手段としては実にまどろっこしい上に、確実性の低い方法だよね。

 つーか、本気で唯を殺したいのなら、唯の登校中に、マシンガンでも撃てばいいのでは?

 忍びの術で倒すことにこだわるから、いつまで経っても目的を達せられないのだ。

 まぁ、今回は奇跡的に上手く行ったけどね。

 依田「唯……」
 由真「唯!!」

 唯は呆けたような顔をして立っていたが、その場に膝をつく。

 
 モモソ「終わったな、風魔鬼組・般若、我が術の勝ちだ」

 と、後ろの階段の上に、鎖帷子越しに見える胸毛と乳首がセクシーなモモソがあらわれ、勝利を宣言する。

 さきほどのヨーヨーは、無論、モモソが鳴らしていたのだ。

 だが、その直後、死んだはずの唯が立ち上がる。

 ってまぁ、最初からどう見ても死んでなかったので、視聴者的には特に驚きはない。

 なので、ここは、唯が大の字になってぶっ倒れ、死んだように見える……と言う風にすべきだっただろう。

 
 唯「わちは死なん、まだ死ねん、こんげな怒りを覚えたことはなか……アキラのためにも絶対にお前は許さん!!」

 唯は渾身の怒りを込めてヨーヨーを投げ、何度も何度もモモソの体にめり込ませる。

 放っておけばモモソを殺しかねないので、依田がその腕を掴んで止める。

 唯「はなせ、はなせ!!」
 依田「もういい」

 モモソは、階段を転げ落ちる。

 モモソ(また寝違えちゃった……)

 お大事に。

 忍びは体が資本ですからね。

 アキラ「ごめんよ、唯姉ちゃん」
 唯「いいんじゃ、いいんじゃよ、アキラ、アキラのお母さんが守ってくれたんじゃ」

 唯は陣鉢を外すと、その裏から聖母子像のカメオを取り出し、アキラの手に握らせる。

 そう、ありがち過ぎるオチだが、金属製のカメオが唯の命を救ったのだった。

 唯「これからはわちもアキラ君のお母さんじゃ」
 アキラ「唯姉ちゃん……」

 朝靄の中、唯と由真は自宅に戻ってくる。

 後ろ髪を引かれるように後ろを振り向く唯。

 由真「そんな顔すんなって、アキラの奴、風魔の里ですぐ元気になるよ」
 唯「そうじゃね」

 と、結花はすでに風魔の里から戻っていて、仏壇の前に座っていた。

 
 そして、一枚の写真を穴が開くほどに見詰めていた。

 
 それは、公園で遊んでいる若い母親と二人の娘を写した、一見何の変哲もない家族写真だった。

 結花「父さん、唯は……」

 やがて二人が入ってくる。

 
 唯「結花姉ちゃん、帰っちょったと?」
 結花「……」

 結花はニコリともせず、無言で唯の顔を見詰める。

 由真「どうしたんだよ」

 なんとも言えない不穏な空気が流れる中、次回に「つづく」のだった。

 以上、はっきり言って辛気臭い話で、しかも台詞がやたら多く、書くのがしんどいエピソードであった。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第28話「交換殺人! 狙われた由真!!」

2025-02-17 20:02:45 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇
 第28話「交換殺人! 狙われた由真!!」(1987年7月9日)

 夜の公園で、唯が鎖鎌を使う影の忍びたちと戦っている。

 唯「しゃからしかっ!! 4人でかかってこんかい!!」

 なにが「しゃからし」いのかよくわからないが、敵を挑発する唯。

 そしてその戦いを、物陰から見詰めている男がいた。

 
 唯「四方の陣、やぶれたり!!」
 忍び「敗れてはおらん、覚えておけ!!」

 形勢不利と見て、鎖鎌軍団はさっさと引き揚げる。

 早乙女(俺の探していた人間だ……)

 帰っていく唯を見ながら、謎の男が心の中でつぶやく。

 その手にはスタンガンが握られていた。

 タイトル表示後、唯がおだやかならぬ顔つきで2階から降りてくる。

 手には、子供用かと思われるほど豪快に縮んだセーターが。

 
 唯「こんげな洗濯したの、結花姉ちゃんね」
 結花「ううん、昨日の洗濯当番は……」
 由真「……」

 唯の視線をまぶしそうに避ける由真。

 唯「由真姉ちゃあん、どんげしてくれるとねっ!! 三ヶ月もお小遣い貯めて買ってまだ一度も袖通してらんとに、こんげ小っちゃくなってからにぃ」
 由真「私としては一生懸命やったつもりなんだけど」
 唯「嘘ばっかり、由真姉ちゃんのセーターは綺麗に洗えちょるがね」
 由真「失敗は成功のもとって言うでしょ」

 由真は悪びれる様子もなく、いけしゃあしゃあと言ってのける。

 結花「由真ぁ、唯のセーターで試し洗いやったの?」
 由真「だって洗剤新しかったんだもん」
 唯「ひどかー、この野郎ーっ!!」

 唯が怒り心頭に発し、由真のセーターを床に叩きつけて踏み躙る。

 由真「なにすんだよ、もう、私のセーターなのに、放せよ!!」

 朝っぱらから掴み合いのマジ喧嘩を始める二人。

 
 結花「もう、いい加減にしなさい、学校に遅れるわよ!!」

 結花はテーブルを頭上に持ち上げて朝食を二人の狼藉から守ると、ピシャリと一喝する。

 しかし、これ、いかにも不自然な「絵」で、やらないほうが良かったと思う。

 登校中も、唯の怒りは収まらず、

 唯「ほんっとに由真姉ちゃんなんか、殺したいこつある」
 由真「結構じゃねえかよ、返り討ちにしてやるよ」
 唯「ほんとにやってやろうか?」
 由真「お前にそんな度胸あんのかよ」
 唯「あるわい」
 結花「もういい加減にしなさい」
 由真「いい加減にしろだってよ」

 由真は唯の頭を小突いて先に行く。

 唯「いってー」
 由真「あっかんべーだ」

 
 唯「いつか殺してやる」
 早乙女の声「その殺し、引き受けましょう。ただし、その見返りとしてこちらの殺人を請合って欲しい」

 殺意を滾らせる唯であったが、突然、何者かの声が物騒な提案を仕掛けてくる。

 唯、反射的に振り向こうとするが、

 早乙女の声「振り向かないで、お互い知らない方がいい、何の動機もない殺人なら警察も調べようがないでしょう」
 唯「なんのこっちゃ」
 早乙女の声「まず僕から君の憎んでいるあいつを殺す」
 唯「お前、誰じゃ?」

 唯がたまりかねて後ろを向くが、生徒たちが歩いているだけで、怪しいものはいない。

 唯「いたずらか……」

 ここでサブタイトルが表示される。

 しかし、このシーン、早乙女がテレパシーを使っているようにしか見えず、Wikiにもはっきりテレパシーって書いてあるけど、影でもない早乙女がなんでそんな特殊能力が使えるのか、その辺が謎である。

 続いて、

 

 
 うれしはずかし、由真のプルマ姿が炸裂する!!

 この、ランニングの裾によってブルマの上部が隠され、まるで黒いパンティーを履いているように見えるスタイルこそ、日本が世界に誇る伝統だったと言えよう。

 こういう古きよき時代のドラマを見るにつけ、「ブルマを廃止した奴、出て来いやっ!!」と思わず叫びたくなる管理人であった。

 
 画面左側のプリンとしたお尻なんて、もう国宝級の素晴らしさで、どうせならこのシーンを5分くらい続けて欲しかったが、あっという間に終わってしまう。

 ちくしょう。

 ちなみにこれは、向かいのビルから、早乙女が双眼鏡で由真の様子を観察しているところなのである。

 しかし、早乙女ちゃん、イマドキの女子高生の、それも姉妹同士が殺すの殺さないのと言ってたからって、唯が本気で由真に殺意を抱いていると考えるのは、あまりに物を知らな過ぎるのではあるまいか。

 第一、一方的にそんな提案を持ちかけて、由真を殺した後、ほんとに唯が自分の殺したい相手を殺してくれると考えると言うのも、虫が良過ぎる話である。

 それはともかく、次のシーンでは一気に放課後にワープしている。

 
 由真「こっちかな、こっちかな、どっちがいいかな」

 由真、やはり気が咎めるようで、学校帰りにショップに立ち寄り、唯に新しいセーターを買ってやろうとあれこれ品定めしている。

 
 店員「はいー」
 由真「あいつチビだし、色黒いしなー、やっぱこっちだなー」
 店員「はいー」
 由真「高いなー、これ、もうちょっと負けらんないのー?」
 店員「はいー」

 何を聞かれても「はいー」としか言わない、ちょっと不気味な店員を中真千子さんが演じている。

 店員「はいー、こちらバーゲン品ではございませんので」
 由真「そんなことわかってんだよ」
 店員「はいー」
 由真「恥を忍んで負けろって頼んでんでしょ」
 店員「と申されましても」
 由真「やーめた」
 店員「はいー」
 由真「唯に謝るなんてバカバカしい」

 一旦帰りかけた由真であったが、

 由真「私も甘いなー、なんで唯にこんなの買わなきゃなんないの」

 結局、購入したようで、次のシーンでは、ショップの紙袋を手に歩いている。

 それを、マスクにサングラスの、めちゃくちゃ怪しい恰好で尾行している早乙女。

 仮にも忍びの由真はすぐそれに気付き、人気のない資材置き場に誘い込んで逆に捕まえる。

 
 由真「お前は影か?」

 早乙女、後に柔道の達人だとわかるのだが、それにしてはあまりに弱い気がする。

 それでも足を払い、由真の体を投げ飛ばす。

 早乙女がスタンガンを突き出すが、由真は背後のドラム缶を飛び越えてかわし、代わりにドラム缶の燃料に引火する。

 
 泡を食って反対側に走り出す早乙女。

 
 アクション映画よろしく、カメラに向かってジャンプすると、背後で大爆発が起きる。

 
 この番組にしては、最大級の炎上シーンである。

 それは良いのだが、普通この手のシーンって、悪役じゃなくて主人公がやるもんじゃないの?

 おそらく、中村さんの身体能力があまりに低かったので、やむなく早乙女ちゃんにやらせたのだろう。

 それに、ここで一旦由真が死んだと早乙女に思い込ませなくてはいけないからね。

 夜、由真がなかなか帰ってこないので、二人は夕食に手もつけずに待っていた。

 唯「まっこつ世話の焼けるドッカン姉ちゃんじゃわ」
 結花「なんでもなきゃいいけど」
 唯「わち、ちょっとそこへん見てくるわ」

 折から救急車のサイレンが聞こえてきたので、唯はそう言って出て行く。

 
 結花「……」

 なんだかんだで姉思いの唯の姿ににっこりする結花であった。

 唯が近くの公園にいると、再び早乙女が接触してくる。

 早乙女「振り向くな、交換条件は果たした。次は君の番だ」
 唯「なんのことじゃ」
 早乙女「君には星流学園番格、山田熊之介を殺してもらう」
 唯「お前、何を言うとるとか」

 早乙女の口から出たのは、意外にもクマの名であった。

 早乙女は、闇夜にスタンガンの青い火花を走らせると、

 早乙女「交換殺人による完全犯罪、俺は約束どおり、お前の憎んでいた女を始末した」
 唯「わちが憎んでいる女? まさか、冗談はいい加減にしない」

 早乙女はその証拠とばかりに、由真のリリアンを唯の足元に放り投げる。

 早乙女「君も上手くやってくれ」
 唯「まさか……こらぁ、待たんかい!!」

 そのまま立ち去ろうとする早乙女に唯がヨーヨーを投げつける。

 ヨーヨーの鎖がスタンガンの端子に絡みつくが、

 
 早乙女がスイッチを入れると激しい火花が散り、唯は後方に吹っ飛ばされる。

 唯「お前、許さん……」
 早乙女「完全犯罪のパートナーにふさわしいと思ったんだが、残念だ」

 早乙女は、唯にトドメを刺そうとするが、そこに結花が駆けつけたのでとっとと逃げ出す。

 しかし、相手が交換殺人を承知してもいないのに人を殺すとは、早乙女ちゃんもせっかちな人ではある。

 結花「唯、唯!!」
 唯「結花姉ちゃん、由真姉ちゃんが……」

 唯はそう言って気を失う。

 考えたら、影でも倒せない唯を気絶させちゃったのだから、早乙女って強いよね。

 4人がかりで勝てなかった黒鍬たちよりよっぽど有能ではないか。

 また、影が常に唯たちの動きをマークしていれば、この千載一隅のチャンスをモノに出来たであろうに、労を惜しむからいつまで経っても勝てないのである。

 CM後、唯は自分の部屋で目を覚ます。

 枕元には結花がいて、

 
 背後には、しれっと由真が座っていたのだが、唯は気付かず、ガバッと起き上がると、

 唯「由真姉ちゃんを殺した犯人が、わちが由真姉ちゃんを殺したかちゅったばっかりに……わちが殺したようなもんじゃ」
 結花「唯?」
 唯「わちが殺したんじゃ……」
 由真「うん、うん」

 早乙女の言葉を真に受け、姉の死を嘆き悲しむ唯だったが、そこで由真がわざとらしく咳払いをして自分の生存をアピールする。

 
 唯「はっ、なんまんだぶ、なんまんだぶ……」

 唯は由真を見るが、幽霊だと思って念仏を唱える。

 由真「ったく、縁起でもねえな、リリアンの由真様は不死身なんだよ」
 結花「そうそう、殺したって死なないのよね」

 唯は由真の頬に触れ、

 唯「ほんとじゃ、じゃけんあの男は確かに由真姉ちゃんを殺したって」
 由真「うん、マンホールん中飛び込まなきゃ今頃はバーベキューだったよ、影もえぐいことやるぜぇ」

 当然、早乙女が影の手先だと思ってぼやく由真。

 しかし、具体的な状況は不明だが、あの短い時間でマンホールの蓋を開けて飛び込むというのは、人間には不可能な芸当だろう。

 唯「それがどうも違うんじゃ、姉ちゃん、影じゃないかも知れん」
 結花「どういうこと」
 唯「あいつ、わちに交換殺人を持ちかけてきたんじゃ」
 結花「交換殺人?」
 唯「動機が分からなければ完全犯罪じゃっちゅうて……」

 翌日、唯たちはクマを締め上げる。

 
 由真「クマ、全て正直に答えろよ」
 唯「あんたの命にかかわっちょるんじゃからね」
 クマ「大袈裟なもんですね」
 結花「クマ、最近誰かに恨みを買うような真似したんじゃないの?」
 クマ「えっ」
 由真「カツアゲ、万引き」
 唯「校内暴力」

 だが、クマは恨みを買うような心当たりはないと言う。

 
 唯「こういう顔しちょったんじゃけど」

 唯が、自分で描いた似顔絵を見せるが、

 クマ「これ、人間の顔っすか」
 唯「……」
 由真「そう言えば奴、柔道の技使ってたっけ」
 クマ「柔道?」
 由真「なんか心当たりあんのかよ」
 クマ「いや、別に……」

 クマはあくまで否定するが、その顔はいかにも覚えがある様子だった。

 一方、早乙女は、自宅の一室に篭もって、自分の試合のビデオを見ていた。

 
 アナ「青雲学園キャプテンの早乙女淳君、見事な一本背負いでした。さすがオリンピック間違いなしと言われる逸材です……」

 そこでテープは終わり、砂嵐となる。

 早乙女「俺の未来は栄光に輝いていた……あいつだ、あいつさえ邪魔しなければ……山田熊之介、奴を殺すのにもう完全犯罪なんて言ってられない」

 クマに対する憎しみと殺意を滾らせる早乙女であったが、あいにく、そのビデオが「呪いのビデオ」だったらしく、この後、テレビから貞子が出てきて絞め殺されたそうです。

 合掌。

 嘘はさておき、星流学園にて、クマの後ろをぞろぞろとついてまわる唯たち。

 
 クマ「勘弁してくださいよ、姐御たち、しょっちゅうついてこられちゃ、気が落ち着かなくてしょうがねえ」
 唯「じゃけん部下の命を守るのもうちらの大事な使命じゃからね」
 結花「遠慮しなくて良いのよ」
 クマ「はぁ、でも……ここまでついてくるんですか」

 だが、さすがに男子トイレの仲間で同行するわけに行かず、三人は外で待つ。

 ただ、ゴロウとヒデもいるんだから、代わりに彼らがついていくべきでは?

 そもそも、人目の多い校内で狙われる可能性は低いのだから、ガードするのは放課後以降にすべきではあるまいか。

 それはともかく、クマは、刑事ドラマのお約束、トイレを使っての篭脱けをする。

 クマ「せっかくの姐御たちの心遣い、まことに申し訳ねえが、自分の蒔いた種は自分で始末つけます」

 クマはそう言って学校から出て行こうとするが、早乙女がボウガンで矢を撃ってくる。

 もっとも、それは殺傷目的ではなく、矢文であった。

 クマ「矢文か、しゃれたことするじゃねえか」

 どこがだよっ!!!!

 普通は、

 クマ「時代劇かっ!!」

 だよね。

 クマ「降りかかった火の粉は払わねえとな」

 クマは手紙を丸めて捨てると、指定された廃工場へ向かう。

 
 その後、ゴロウたちが手紙を見付け、唯に見せるのだが、その矢文の文字が、妙に可愛らしいのがツボなのだった。

 クマが建物の中に入ると、何処からか矢が飛んでくる。

 クマ「おい、待て、命を狙うほどの恨みってのは一体なんなんだ?」

 えっ、あんた、誰に狙われてるのか、わかってたんじゃないの?

 うーん、これはちょっと解せないなぁ。

 狙われる心当たりがないのに、トイレから抜け出したりするかしら?

 それはともかく、例によって早乙女がスタンガンで襲ってくる。

 いや、あんた、仮にも柔道でオリンピック目指してたんだから、ちったぁそれを使ったら?

 クマ「てめえ、なんとか言え、誰なんだよ」
 早乙女「……」

 クマが繰り返し問い質すが、早乙女は無言でその場から走り出す。

 クマも追いかけて屋上に出るが、

 
 クマ「いてててて……貴様ぁ」

 そこで、文字通りクマ用の罠に足を噛まれてしまう。

 
 ここでやっと、早乙女が素顔を見せる。

 クマ「やっぱりおめえ、あんときの柔道野郎!!」

 その顔を見て、クマは納得したように叫ぶ。

 うーん、薄々相手の正体に気付いていたのなら、さっきの台詞は微妙に変だよなぁ。

 ここで回想シーンとなる。

 街中で、早乙女がJKたちにサインをねだられている。

 これも、アイドルじゃあるまいし、柔道がうまいくらいでそんなにきゃあきゃあ騒がれるだろうかと言う疑問が湧くが、そこに通り掛かったのがクマたちであった。

 
 クマ「なんだあいつ」
 ゴロウ「青雲の早乙女っす、高校柔道界期待の星、未来の金メダリスト様」
 ヒデ「別名ナンパの星とも呼ばれてるけどなー」
 JK「あなたたち、失礼でしょお、謝んなさい」

 ゴロウたちが聞こえよがしに早乙女の悪口を言ったので、まるで洋子先輩みたいに気の強いJKが反発し、ゴロウと小突き合いを始める。

 早乙女が割って入り、ゴロウとヒデを華麗な技で投げ飛ばす。

 ついでクマと戦うが、さすが金メダリスト候補だけあって、ウェイトで上回るクマも寄せ付けない。

 だが、途中でヒデとゴロウがその両足にしがみついて動きを封じたところを、クマにボコボコにされる。

 去り際、クマが早乙女の左腕を蹴ったので、てっきりそれで怪我をして、柔道がやれなくなったのかと思ったが、

 
 早乙女「あの時の喧嘩が連盟に知られ、俺はオリンピック強化選手から外されたんだ」

 と言うことなのだった。

 しかし、だったら、ヒデやゴロウたちにも同様の恨みを抱くと思うのだが……

 また、クマたちの様子では、この後、別に警察に事情を聞かされたわけでもなさそうで、仮に早乙女がクマを殺したとしても、二人の関係に警察が気付いたとは思えず、早乙女が確実性の低い交換殺人を持ちかけたことがますます嘘っぽく思えてくる。

 それに、利害による殺人ならともかく、個人的怨恨に基づく殺人なんだから、自分自身の手で殺そうとするのが自然ではあるまいか。

 さらに言えば、交換殺人の最大の利点は(動機の線からバレにくいということもあるが)アリバイを作りやすいという点であろう。よって、ほんとに交換殺人を成功させたいのなら、いつ、どこで相手を殺すのか、パートナーとの綿密な打ち合わせが不可欠だと思うのだが、早乙女がその辺のことを考慮した形跡は全くない。

 これから導き出される答えは、早乙女が存外にバカだったと言うことだが、それはともかく話を進めよう。

 早乙女「貴様らのために俺の夢は砕け散った」
 クマ「分かった、お前の怒りももっともだ。煮るなり焼くなり好きなようにしやがれ!!」

 クマ、腐っても、そして留年しても番格なので、潔く自分の非を認めると、目をつぶって腕を組み、甘んじて罰を受ける姿勢を示す。

 早乙女「よし」

 早乙女、容赦なくスタンガンをクマの首筋に近付けるが、

 
 唯「待てい!!」

 そこに颯爽と唯があらわれる。

 唯「話は聞いた、あんたの気持ちも分かる、じゃけん、恨みからは何も生まれはせん」
 早乙女「貴様らなんかになにが分かる」
 クマ「ばかやろう、おめえの標的は俺じゃねえか」

 早乙女が唯に向かおうとしたのでクマが必死に止めようとするが、スタンガンを食らって気絶する。

 唯はヨーヨーを投げて、鎖で早乙女の体を縛るが、そのタイミングで黒鍬4人衆があらわれる。

 早乙女「な、なんだ、こいつら」
 唯「ようし、みときぃ、こんひとらはあんたの未来の姿じゃ」
 早乙女「なにぃ」

 しかし、早乙女は、すでに唯と彼らの戦いを見てるはずなのに、その驚き方は変じゃないか?

 
 唯「人は誰でも心んなかに邪悪な思いを持つことがあるじゃろ、じゃけん、みんなその邪悪と戦っちょるんじゃ、人は邪悪に身を委ねてしもうたらいかんのじゃ!!」

 唯、敵と戦いながら、早乙女に説教すると言う余裕を見せる。

 唯「人が邪悪に身を委ねた時、人の皮を被った悪魔になる。それが影じゃ!!」

 
 高所から飛び降り、最後の一人と空中で交差しながらヨーヨーを叩き込む唯。

 この「絵」は普通にカッコイイ。

 
 唯「お前、今ならまだ人に戻れるとよ、それともまだ邪悪に身を委ねるつもりか」
 早乙女「……」
 唯「そんときは、この桜の大紋が許さんわい!!」
 早乙女(どういうこと?)

 正直、意味がわからない早乙女ちゃんだったが、口答えするとシバかれそうな気がしたので、スタンガンを手落として、その場に座り込むのだった。

 ただ、早乙女は、由真を殺したと思ってるのだから、その辺の誤解を解いておくべきではなかったか?

 それはともかく、結花たちが駆けつけたのは、すべてが終わったあとだった。

 これも、いくらなんでも来るのが遅過ぎるのだが、きりがないのでやめておこう。

 
 由真「殺し屋はどうなったんだよ」
 唯「ふふーん、あいつならわちの顔を見て逃げていったわい」
 由真「てめーのおっそろしい顔見ればたいていの奴は逃げるよなぁ」
 唯「ふーっ、やっぱり殺しちょけば良かった」

 凝りもせずに憎まれ口を叩き合う二人の姿を映しつつ、「つづく」のだった。

 ……

 ……

 ……

 いや、唯のセーターの件は?

 まぁ、あの爆発の時に燃えちゃったんだろうが、事件の発端はあのセーターなんだから、最後に由真が新品をプレゼントしないと首尾が揃わない気がする。

 今回の話、セーターの件もそうだが、早乙女が一方的に交換殺人を押し付けるところや、クマの曖昧な言動など、武上さんのシナリオにしては完成度が低かった。

 にしても、世界征服を企む影の忍び4人より、スタンガン持った高校生の方がよっぽど唯たちを追い込んでいるのは、さすがにどうかと思う。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第27話「裏切者依田! その人は女教師」

2025-02-03 20:43:35 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇
 第27話「裏切者依田! その人は女教師」(1987年6月25日)

 般若おじさんの過去にスポットが当てられた唯一のエピソードである。

 冒頭、漆黒の海をわたって、般若、矢作、美代の三人が港に上陸する。

 三人はウェットスーツを脱ぎ捨て、物陰から倉庫の様子をうかがう。

 
 般若「ここが影のアジトだと言うのか」
 矢作「美代のつかんだ情報だ、間違いない」

 矢作と美代が武器を手に前に出るが、

 般若「その必要はない」
 美代「般若?」
 矢作「貴様、何のつもりだ、裏切る気か?」

 般若が杖を構えて、二人に襲い掛かる姿勢を見せる。

 矢作「お前まさか、影の忍び側についたのでは?」
 美代「般若ぁ」
 般若「無駄だ」

 般若はたちまち二人を倒す。

 
 美代「さよなら、私の愛した人……」

 美代はそうつぶやいて、海の中にドボン。

 
 美代「さっぶっ!!」
 般若(だろうなぁ……)

 まだ6月デスカラネ。

 般若は、仰向けに浮かぶ美代の遺体に、赤いバラを一輪投げる。

 般若が仲間を裏切り、恋人を殺すと言うショッキングな幕開けであったが、これはリアルタイムの出来事ではなく、過去の出来事なのである。

 でも、だったら、それを視聴者に示すために、タイトルに行く前に般若が目を覚まし、「夢か……」みたいなことを言わせるべきだったと思う。

 それはともかく、タイトル表示後、現在時間の登校風景。

 
 JK「朝ごはん、ちゃんと食べてきた?」
 依田「ああ」

 ヤラセくさいが、その般若こと依田ちんに、女子高生たちがキャアキャア言いながらまとわりつく。

 しかし、第一声が「朝ごはん食べた?」って、お母さんじゃないんだから……

 何気に女子に人気のある依田の後ろから三姉妹が続く。

 
 由真「あーあ、鼻の下のばしちゃって、ざまぁねえよ」
 結花「あら、ジェラシー?」
 由真「誰がぁ、あんなニヤケ教師、冗談じゃねえよ」
 唯「とかなんとか言うて由真姉ちゃん、依田のセンコーって良い男だよねっちゅうて、お風呂でうっとりしちょったやないねー」
 由真「誰が、いつだよ、いい加減なこと言うなよな」
 唯「ゆっちょったもんね、わち聞いたもん、この、色気盛り!!」
 由真「なんだとぉ」

 朝っぱらから仲の良い二人であった。

 
 と、結花の背後から、見たことのない眼鏡っ子がすたすた歩いてくる。

 今回のヒロイン、妻風ともみである。

 演じるのはアイドルの山本博美さん。

 うむ、全然知らん。

 依田は、門の前でやっと三人から解放されるが、その女性を見て顔色を変える。

 
 ともみ「山田ともみです、代用教員として赴任して参りました、よろしくお願いします」
 依田「依田です……」

 形式ばった挨拶を交わし、無言で見詰め合う二人。

 その異様な雰囲気に、三姉妹も気付く。

 しかし、せっかくの女教師役なのに、サブタイトル表示後、一気に放課後になってしまうのはいささか拍子抜け。

 
 結花「新任の女教師と依田先生」
 由真「絶対あの二人の過去にはなんかあるね。初対面じゃないよな」

 と、生徒たちにまじって、依田が帰っていくのが見えた。

 いや、教師が生徒と同時刻に帰るって、さすがに変なのでは?

 依田が公園を突っ切っていると、周囲にスタッフが焚いたスモークのような霧が立ち込め、その奥から棒手裏剣が飛んでくる。

 依田は空中回転してかわし、東屋の柱の陰に隠れる。

 
 と、目の前に、何体もの女忍者の姿が浮かび上がる。

 依田「霧隠れ分身の術……やはり、ともみ、何故だ?」

 ともみはさらに手裏剣を飛ばしてくる。

 依田「やめろ、姿をあらわせ、ワケを言え」
 ともみ「そんなとこに隠れてないで出て来て戦ったらどうなの? 姉さんのカタキ」
 依田「……」

 ちょうどその時、公園のそばを三姉妹が通りがかり、ともみの本体を目にする。

 ともみは三人に気付くと、慌てて姿を消す。

 依田「お待ちなさい」

 追いかけようとするが、依田に呼び止められる。

 
 唯「依田先生、今、新任の山田先生が……」
 依田「こんなところで道草せず、さっさとおうちに帰りなさい」
 唯「そんでもいま襲われちょったじゃろう?」
 依田「あなたたちには関係ありません」
 由真「そう言って済まされねえ問題じゃねえのか」

 由真の追及に、依田が刹那、般若の顔になる。

 依田「なんですって」
 結花「今の霧は明らかに忍び技、だとすれば山田先生の正体は影の忍び」
 依田「見当違いですねー、いいからお帰んなさい」
 由真「依田のセンコー」
 依田「お黙んなさい!!」

 由真がなおも言いかけると、今まで出したことのないような大声を上げ、

 依田「子供が口を出していいこととバツなことがあります、これはそのバツのことのほうです。早く帰って勉強なさい!!」

 依田と般若が混じったような口調で命じると、すたすたと立ち去るのであった。

 結花「完全に子供扱いね」
 由真「ったく、何処見てんだよ、花の17才は少女卒業で大人街道まっしぐらなのに」

 その後、ともみが自宅アパートに帰ってくると、路上で三姉妹に取り囲まれる。

 ともみ「どうして私のアパートが?」
 唯「先生に宿題教えてもらうっちゅうて用務員さんに聞いたんじゃ」
 ともみ「嘘でしょう」
 由真「ちょっとお聞きしたいことがありましてね」

 三人はそれぞれの武器を構え、早くも戦闘モード。

 
 ともみ「あなたたちは……」

 三人は構わず攻撃を仕掛けるが、ともみは華麗な動きでかわすと、

 ともみ「あんたたち、忍び?」
 結花「風魔小太郎が娘、風間結花」
 由真「同じく風間由真」
 唯「同じく風間唯」
 由真「影の忍びと戦うことを宿命付けられたスケバン三姉妹とは私らのことさ」
 ともみ「待って」
 唯「どうやって依田先生を風魔の忍びと嗅ぎつけてきたんか、それを吐かしちゃる、覚悟せい!!」

 三人は武器を投げるが、ともみは仕込み杖で防ぐと、宙を舞って唯の背後を取り、

 
 ともみ「あんたたちが小太郎様の?」
 唯「父ちゃんの名前を気安く呼ぶな」
 ともみ「勘違いしないで、私は影の忍びじゃない!!」

 唯の体を突き飛ばすと、

 ともみ「女教師・山田とは仮の姿、本名・妻風ともみ、風魔一族・妻風十郎太の娘」
 唯「なんでじゃ、同じ風魔のものがなんで依田先生を狙うんじゃ」
 ともみ「依田は影の忍びに内通している裏切り者なのよ」
 唯「嘘じゃ」
 由真「いい加減なこと言うんじゃねえよ」
 結花「待って、どういうこと」

 ヤンキーのようにいきり立つ二人をなだめると、結花が事情を聞く。

 ともみ「それを知りたければ調べてみることね、暗闇指令配下、風魔鬼組・妻風美代が死んだ経緯を……姉は依田に殺されたのよ。二人は愛し合った許婚同士だったのに」

 ここで回想シーンとなり、美代とともみを、般若がしごいている図となる。

 
 般若「美代、これはなんだ、見切りが悪い、何度言ったら分かるんだ」

 
 美代に手取り足取り、手裏剣の投げ方を指導する般若。

 なんか、ゴルフを教えてあげるといって若い女の子にセクハラするオヤジを連想してしまうのは、管理人だけだろうか?

 ともみはそれだけ言うと、アパートに入って行く。

 三姉妹は、憮然とした顔で帰路につく。

 結花「依田先生が……般若が風魔の仲間を殺した。それも許婚の女性を」
 唯「バカバカしい、そんげなこつがあるわけなかよ」
 由真「依田が影の忍びに内通してる……」
 唯「姉ちゃんたち、般若を疑うんか? そりゃああいつはキザで生意気やけど……」
 由真「だって、あの女の目は大マジだったじゃねえかよ」
 唯「そんげなこつ!! そんげなこつ……」

 口では依田の潔白を信じると言う唯だったが、やはり気になるのか、ひとりで暗闇指令のもとを訪れ、その実否を問い質す。

 
 暗闇指令「妻風美代の死んだ経緯? 何故そんなことを聞く」
 唯「妻風美代の妹・ともみさんちゅう人から聞いたんじゃ、美代さんは般若に殺された、二人は許婚やったと……」
 暗闇指令「妻風ともみが今になって依田の前に姿をあらわしたと言うのかね」
 唯「般若はほんとに恋人を殺したんか」
 暗闇指令「唯、その話を真に受けるな、妻風ともみはなんかの理由でデマを飛ばしてるのか、さもなければ誤解してるんだ」

 暗闇指令は、この件には関わるなと厳命するが、

 唯「そうはいかんわい、わちらは命懸けで影の忍びと戦わにゃならん、般若は大事なパートナーじゃ、信頼関係が崩れたら、もう一緒には戦えん」

 唯は真相を教えてくれと嘆願するが、

 暗闇指令「妻風美代は、任務遂行中に敵の手にかかって倒された。言えることはそれだけだ」
 唯「それだけじゃ何も分からん!!」
 暗闇指令「くどい!! 任務の詳細は極秘事項だ、たとえ相手が誰であれ、理由はなんであれ、鉄則は枉げるわけにはいかん」
 唯「……」
 暗闇指令「唯、自分の目だ、自分の目で真実を見極めるんだ」
 唯「自分の目で真実を?」

 CM後、公園の石橋の上に立ち、赤いバラを手に、美代をその手に掛けたときのことを思い返す般若。

 あの時と同じように、そのバラを池に投じる。

 そして、美代の眠る広大な霊園に行くと、妻風家の墓の前にともみが立っていた。

 
 ともみ「姉が死んで以来、一度でもここへ来てくれましたか」
 般若「いや、はじめてだ」
 ともみ「私たち姉妹はあれほどあなたを信じていたのに」
 般若「大人になったな、すっかり綺麗になって……ともみ」

 般若が親しみをこめてその名を呼ぶが、

 
 ともみ「兄貴ヅラはよして!!」

 ともみは、眼鏡を外して般若を睨みつける。

 般若「私は今でもお前の兄貴のつもりだ」
 ともみ「裏切りもの、私はあなたを殺す」
 般若「どういう意味だ」
 ともみ「あなたは影の忍びに内通して姉とエージェントの矢作を殺したんだわ!! 答えて、何故許婚だった姉を殺したのか、あなた自身の口から聞きたいのよ、答えてよ!!」
 般若「……」
 ともみ「答えなさい!!」

 この言い方が、なんか、教師が生徒に言ってるみたいで、ちょっと笑える。

 般若「お前がそう信じるのなら、それでもいい。だが、ともみ、私は姉さんを裏切ってはいない」
 ともみ「嘘つき!!」
 般若「姉さんは任務遂行中に敵に倒された。それがたった一つの真実だ」
 ともみ「騙されないわ、姉を殺したのはあなたです、私と戦いなさい」
 般若「なんと言われようと、私はお前と戦う気はない」

 ともみは仕込み杖を抜くと、般若に殺到し、正面から剣を振り下ろそうとするが、

 
 般若「……」

 切っ先は般若の目の前で止まり、ぷるぷると震える。

 ちなみにこの画像、般若の眉間に刀が思いっきり突き刺さっているのを、CGで表現してるようにも見える。

 
 ともみ「……」

 やはり兄と慕った般若は殺せないのか、その目には悲しみのようなものが宿っていた。

 ついで、空中に飛び上がって手裏剣を投げつけるが、般若はノーリアクション。

 ともみ「戦ってよ、どうして戦わないの? 姉さんのときのように私を殺したらどうなのよ。戦って!!」
 般若「……」
 ともみ「姉さんを殺したのに、どうして私は殺さないの」
 般若「私は姉さんを殺してはいない」
 ともみ「騙されるもんですか、いいわ、あなたがその気なら、私は……」

 ともみも覚悟を決めて手裏剣を投げ、般若の左足と胸元に命中させる。

 ともみ「般若、覚悟!!」

 
 ともみはもう一度般若に向かって突進し、その首に刀を振り下ろすが、やはり寸止めしてしまう。

 ともみ「ダメだわーっ!! 姉さん、殺せないわ」

 ともみは墓石に向かって叫ぶと、そのまま走り去る。

 ばったりその場に倒れる般若。

 
 般若(はあー、死ぬかと思った……)

 じゃなくて、

 般若「美代、どうすればいい?」

 ともみがアパートに帰ってくると、唯がひとりで待っていた。

 
 ともみ「なにをしているの」
 唯「確かめにきたんじゃ、自分の目で……あんたの言ったことが本当ならわちがこの手で般若を倒す、一緒に会いに行こう、般若に」
 ともみ「断るわ」
 唯「そうはいかんわい、これはわちら風魔全体の問題じゃ」
 ともみ「帰らないと、あなたも……」

 ともみが怖い顔で一歩踏み出したので、唯は身構えるが、物陰からあらわれた男に当身を食らい、あえなく気絶。

 唯、強いんだか弱いんだか……

 その男こそ矢作だった。

 矢作は、唯の割りとおっきなお尻を抱えてともみの部屋に運び込み、ロープで縛る。

 矢作「墓地の依田との戦い、見ていたぞ」
 ともみ「……」
 矢作「何故姉のカタキを討たない?」

 
 ともみ「わからない、心のどこかであの人が姉さんを殺したことを信じきれないのかもしれない」
 矢作「しっかりしろ、ともみさん、2年前、依田の裏切りにあって美代さんは殺され、俺は重傷を負った、しかも奴が暗闇指令に嘘の報告をして平然と組織に残っているのを知った。だから俺はじっと身を伏せて生きてきたんだ」
 ともみ「……」
 矢作「般若が美代を殺した、だのに、そんなに意気地がないことでどうする? ともみさん、今度こそ姉さんのカタキを討つんだ」

 どうやらともみをけしかけているのは、この男のようであった。

 もっとも、般若が美代を殺したのは紛れもない事実なのだが……

 しかし、今更言っても詮のないことだが、影がその首をもっとも欲しがっている唯の命をここで奪っておけば、矢作、影の大殊勲者になれたであろうに。

 唯に手を出さなかったことから見て、矢作、すでに影とは縁を切っているようである。

 おそらく、ひたすら般若個人に対する恨みでだけで行動しているのだろう。

 ともみは、唯を人質にして、霊園に般若を呼び出す。

 無論、矢作の入れ知恵だろう。

 般若は、金属製の杖を突いてあらわれる。 

 
 般若「この卑劣な手段を考え出したのは、お前か」
 ともみ「あなたが戦わないのならこの子を殺すわ」
 般若「ともみ!! わかった、そんなに俺が信じられないのなら俺を倒し、お前の気の済むようにするがいい。だがその前に唯は放せ、もう関係ない筈だ」
 ともみ「いいえ、その手には乗らない、勝負が済んでから、自分の手で取りなさい!!」

 ともみの言葉に、憤怒の形相になる般若。

 般若「ともみ!! そこまで腐っていたのか」
 ともみ「うるさい、姉を殺したのはあなたよ」

 ともみは仕込み杖を抜いて斬りかかる。

 般若は不自由な体で応戦し、杖で刀を受け止める。

 ともみは例の分身の術を使い、般若を撹乱する。

 と、唯が自力で手首を縛るロープを切り、猿轡を外し、

 
 唯「ともみさん、騙されたらいかん!! あんたを騙しちょるのは、依田先生じゃない、あんたをそそのかし、依田先生を倒そうとしちょるのは矢作じゃ!! あんたは利用されるとだけなんじゃ」
 ともみ「……」
 唯「わちには見えたわい、あんた、ほんとは依田先生のことを信じちょるんじゃ、あんたは依田先生のことが好きなんじゃろう? ともみさん、目を醒まさんかい、自分の心の目で見るんじゃ、確かめるんじゃ!!」
 ともみ「……」

 唯に言われるまま、ともみは隠れ場所から立ち上がり、真っ直ぐ般若の目を見る。

 ともみ「お兄ちゃん……」

 ゆっくり般若に近付くともみ。

 しかし、あれだけ激しいことを言っていたのに、一足飛びに「お兄ちゃん」にまでデレてしまうのは、ちょっと違和感があるなぁ。

 と、物陰から様子を見ていた矢作が、般若に向かって銃を撃つ。

 
 ともみは咄嗟に般若の前に身を投げ出し、その背中で銃弾を受ける。

 唯「卑怯者ーっ!!」

 
 唯はいましめを解くと、ジャンプしてヨーヨーを投げつけ、矢作を倒す。

 矢作さん、強いんだか弱いんだか……

 
 般若「ともみ、ともみ!!」
 ともみ「聞かせて、お兄ちゃんは姉さんを?」
 般若「殺してはいないよ……姉さんは敵の手で」
 ともみ「おにい……ちゃん」

 般若の言葉にともみは嬉しそうに笑うと、息を引き取る。

 般若は、いとおしそうにその頭を抱き寄せると、

 
 般若「そうだ、それがたったひとつの真実だ」

 自分に言い聞かせるようにつぶやくのだった。

 ラスト、改めて妻風家の墓を訪れている般若たち。

 墓域には、真新しいともみの墓標も立っている。

 三姉妹は赤いバラの花束を供え、手を合わせて神妙な顔で拝む。

 
 般若「ともみには話せなかったが、お前たちに聞いてもらう。2年前、暗闇指令配下のエージェントの正体が敵側に次々に知れ、闇討ちに遭い、倒された。内部にスパイがいることは確かだった、指令は私にその犯人を突き止め倒すように命じた。私はその犯人を探し出した」
 由真「それが……」
 般若「矢作だった。その矢作に寝返って手先を務めていたのが美代だったとは……」

 ここで再び冒頭のシーンとなる。

 般若「影に寝返ったのはお前たちだ」

 般若の言葉に、その部下たちがあらわれ、逃げた矢作を追いかける。

 般若「これが私に対する罠だと言うことも、とうに見破っていたのだ」

 美代の後方で、部下たちにナマス斬りにされる矢作の姿が見える。

 だが、結局、矢作は死ななかったようである。

 たぶん、海に飛び込んで、般若たちも死んだと思っていたのだろう。

 ここで今回、一番納得の行かない台詞。

 般若の声「美代は奴に拷問を受け、苦痛に耐えかねて裏切ったのだ」

 うーん、拷問を受けて秘密を漏らすとかならわかるけど、裏切りますかね?

 ここは、妹のともみを殺すと脅され、やむなく従った……くらいが妥当かと。

 結花「だからともみさんにほんとのことを話せなかったのね。ともみさんを傷つけないために」
 般若「任務だった、忍びの掟だった。それは美代も予期していたことだったのだ」
 唯「風魔鬼組・妻風美代は任務遂行中、敵の手に倒された。その妹ともみも……そうじゃよね、般若?」
 般若「……」

 三姉妹は般若を残して帰って行く。

 
 般若「美代、ともみ、それでも私は戦わなければならない、風魔鬼組の頭・般若、忍びなのだから……」

 般若は二人の霊に語りかけると、バラを投げて足早に歩き去るのだった。