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私は猫になりたい

昔の特撮やドラマを紹介します。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第37話「いそげ唯! 悪魔の住む森の激闘」

2025-06-07 19:17:35 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇
 第37話「いそげ唯! 悪魔の住む森の激闘」(1987年9月17日)

 冒頭、唯と般若がお堀の池の前で話している。

 
 唯「わち、つらか、あんげな姉ちゃんたち見ちょるのつらくてたまらん。耐えられんのじゃ」
 般若「帯庵どのが言われた通り、小源太どのは生きているかも知れん」
 唯「それならなんで姉ちゃんらのまえにあらわれんのじゃ」
 般若「その生死を確かめる術さえない。帯庵どのが言われたことはそう言うことだ」
 唯「なんでじゃ、なんで確かめられんのじゃ」
 般若「17年前、小源太殿は翔を連れ去った果心居士を追った。そしてある奥深い森に入った。恐るべき魔が棲むと言う森に……」
 唯「魔が棲む森?」
 般若「その森に入って生きて帰ったものはひとりとしていない。風魔鬼組において右に出るもののない戦士、そう謳われた小源太殿にして例外ではなかった」
 唯「生きてるかも知れん、その森で……今も……今でも!!」
 般若「小源太殿は死んだ!! そう思うより他にない」

 般若は斬り捨てるように断じると、その場から歩き出す。

 唯は並んで歩きながら、

 唯「じゃけん、姉ちゃんらがその話を聞いたらきっとその森へいきとうなる。そんとき、どうするんじゃ、般若」
 般若「……」
 唯「般若、じいちゃんが話したこと、どうしてもわちらが知らんといかんかったことやろか」
 般若「……」

 ちなみに般若、一度魔破羅と顔を合わせているのだが、それが小源太の変わり果てた姿だと、この時点で気付いていたのだろうか?

 タイトル表示後、結花が自宅の鍵の掛かった一室に踏み込む。

 
 由真「何しようってんだよ、姉貴ぃ」
 結花「帯庵さんの言われたことが真実なら、私ほんとの父さんを探す、この父さんの遺品の中にきっと何か手掛かりがあると思うの」

 部屋には、いくつもの段ボール箱や行李が積んであった。

 由真「この部屋、ここへ越してきておやじのもん入れてから、まだ一度も開けたことないね」
 結花「うん」

 しかし、彼らの言い方では、まるで普通に引っ越してきたみたいだが、彼らの元々住んでいた家は、第1話で派手に爆破されているのだから、私物だってほとんど灰燼と化した筈で、父親の遺品がこんなにたくさんあるわけがない!!

 ともあれ、由真は父親が死んだとき履いていた革靴を手に取り、

 
 由真「おやじぃ……」

 遺品に触れているうちに、由真の胸に養父・小太郎へのいとしさが込み上げてきて、

 由真「姉貴ぃ、いらないよ、ほんとのおやじなんか要らないよ!! 私、知りたくない、ほんとのおやじのことなんか」
 結花「由真……」

 由真が子供のように泣きじゃくっていると、部屋の前に唯があらわれる。

 唯「姉ちゃん、なんしょると?」
 由真「……見るなよ」
 唯「……」
 由真「行けよ、見るんじゃねえよ!!」
 唯「……」

 唯が茫然としていると、結花が立ち上がり、

 結花「本当の父さんの手掛かり探してんのよ」 
 唯「わち……わちにも手伝わしちくり」

 唯が部屋に入ろうとすると、由真に押し出され、

 
 由真「お前には関係ないよ。私たちのおやじのことなんだから……」
 唯「由真姉ちゃん……」
 結花「唯、今は二人だけでやらせて……お願い」
 唯「……」

 結花が囁くような声で頼むと、唯は頷き、寂しそうに立ち去る。

 由真「ごめんな、唯……」

 その後、結花はノートの間に挟まっていた写真を発見する。

 
 由真「姉貴、この人」

 結花が裏を見ると、「小源太と共に」と記してあった。

 結花「小源太」
 由真「ほんとのおやじ」

 ちなみにこれ、どう見ても合成である。

 さて、ミヨズとオトヒがいなくなり、めっきり寂しくなった影のアジト。

 
 果心居士「魔破羅よ」
 魔破羅「お方様」
 果心居士「心を捨て、魔と化したお前ともあろうものが、何をしておる。見てはおれんぞ」
 魔破羅「申し訳ございません」
 果心居士「飲み込むのじゃ、風間結花と由真を……あの娘らを影に飲み込み、風間唯を孤立させるのじゃ」
 魔破羅「それは……」
 果心居士「どうだ、魔破羅」
 魔破羅「私にそれをしろと仰いますか?」
 果心居士「聞いておるだけじゃ、お前に出来るかとな」
 魔破羅「お約束が、それではお約束が違います」

 
 魔破羅「お方様、あの時のお約束はどうなるのです?」
 果心居士「カーッ!!」

 魔破羅が抗議するが、果心居士は片目を光らせて突風を起こし、魔破羅を黙らせる。

 果心居士「すぐにでも飲み込むのじゃ、よいな」

 一方、結花と由真は学校に行き、あの写真を般若に見せていた。

 
 結花「どうなの」
 般若「確かにお前たちの父だ」
 結花「生きてるんでしょう?」
 由真「言えよ、般若」
 般若「お前たちが私や小太郎殿を超えるほどの力があるなら教えもしようが……」
 結花「言って、般若、もし、父さんが生きていて何かの事情で帰れないのなら私たちが助けに行くべきだと思うの。そうでしょ」
 般若「ダメだ!! お前たちまでが小源太殿の二の舞になる」

 と、廊下で立ち聞きしていた唯が入って来て、

 唯「森じゃ姉ちゃん、小源太さんがおるところは、魔が棲むっちゅう森じゃ」
 般若「唯!!」
 唯「いっちくり、般若、姉ちゃんらの父ちゃんなら、わちの父ちゃんでもあるんじゃ!!」
 般若&結花&由真(それは違うと思う……)

 唯の勢いだけの台詞に、心の中でそっとツッコミを入れる三人だったが、嘘である。

 嘘だけど、小源太さんが唯のお父さんでないことは確かである。

 
 唯「何処じゃ、その森は何処にあるんじゃ?」
 依田「知らん……結花、由真、小源太殿は死んだ、お前たちの父はもう死んだのだ」
 由真「うるせえ!!」

 
 怒鳴りつけて前に出ようとした由真を押さえると、結花がいきなり般若の顔をビンタする。

 由真「姉貴ぃ」

 結花らしくない行為に、あっけにとられる由真。

 般若「結花……」
 結花「私たちを捨てた父さんなら会いたいとは思わなかった、でも、私たちの為に戦って今も苦しんでるかも知れないなら、たとえどんなところでも私は行くわ」
 由真「私もさ」
 般若「お前たちの気持ちは良く分かった、しかし、お前たちの父はもう死んだのだ!!」

 般若は同じ言葉を繰り返すと、職員室を出て行く。

 
 般若(あれ、なんで今殴られたんだろう?)

 廊下に出てから、ハタとそのことに気付く般若であったが、嘘である。

 般若(小源太殿ですらかなわぬところへお前たちを行かせ、死なせるわけにはいかんのだ)

 夜、結花と由真が枕を並べていると、ガチャガチャと言う足音がして、

 魔破羅の声「結花、由真、私はお前たちの父、小源太……会いたい、お前たちに会いたい。ずっと待っているのだ。深い森の奥で悶え、苦しみ、今も……救ってくれ父を……待っている、待っているぞ」

 夢の中で、二人は忍び装束で助けを求める小源太の姿をありありと見る。

 二人は同時に跳ね起きる。

 
 結花&由真「夢……」

 由真がふと自分の左手を見ると、血がついていた。

 結花が由真の掛け布団をはぐと、敷布団の上に血で「魔幻の森」と書かれていた。

 その後、唯が夜道を全力疾走していると、般若の車と擦れ違う。

 般若はクラクションを鳴らし、

 般若「唯、どうした」

 
 唯「姉ちゃんたちが、姉ちゃんたちが、魔が棲む森ば行くっちゅうて手紙ば残して……あの場所、般若が言うたんじゃなかか?」
 般若「罠だ。影に結花と由真が飲み込まれんとしている」
 唯「飲み込む?」
 般若「あの森に分け入ったものは必ずや影に飲み込まれると言う……」
 唯「そんな……姉ちゃん」
 依田「行ってはならん、唯、お前はあの魔幻の森の恐ろしさを知らんのだ。行くなら私が行く」
 唯「構わん!!」

 唯は般若の腕を振り解くと、数歩走ってヨーヨーを投げ付け、般若の胸に当てる。

 
 唯「般若の気持ちはうれしか、じゃけん、今のわちは誰にも止められん。親は違ってもわちらは姉妹じゃ!!」
 般若(て言うか、なんで今ヨーヨーぶつけられたの?)

 最近、身に覚えのない暴行を受けることが多い般若おじさんでした。

 CM後、早くも二人は「魔幻の森」……鬱蒼とした原生林の中を歩いている。

 由真「ゆうべあらわれた幻が、本物かどうかわかんないぜ」
 結花「でも今の私たちにはそれしか手掛かりがないのよ。たとえそれが罠だとしても」

 不意に結花が足を止め、

 
 結花「誰かが私たちを見ている……」

 と、いきなり目の前に魔破羅があらわれる。

 
 由真「てめえは」
 結花「魔破羅!!」
 魔破羅「ゆうべお前たちが見たものは、私が見せた幻だ。お前たちを倒さんと私が呼んだのだが、お前たちを倒したところで何ほどのこともない、この先には何もない、このまま来た道を戻れ!!」
 由真「騙したな」
 魔破羅「騙してはおらん」
 結花「この森に私たちの父さんが」
 魔破羅「お前たちの父は何処にもおらん!! 戻れ!!」

 言ってることムチャクチャの魔破羅おじさんだったが、その言葉通り、魔破羅があの夢を見せたのか、果心居士が代わりに見せたのか、どちらとも取れるんだよね。

 結花は木の上にジャンプし、そこから折鶴を投げる。

 魔破羅は刀で叩き落すと、結花のいるところまで飛び上がる。

 
 魔破羅「大きくなったな、結花」
 結花「……」

 下から由真がリリアン棒を投げて、魔破羅の篭手に突き立てる。

 魔破羅「頼もしいぞ、由真」

 ほとんどネタばらしに近い台詞を口にする魔破羅だったが、結花と由真は全く気付かず、なおも険しい目付きで攻撃を続ける。

 魔破羅「小太郎、娘たちを良くここまで育ててくれた。礼を言うぞ……」

 仕方ないので、さらに分かりやすい表現にするが、引き続き結花と由真は全く気付かず、魔破羅の顔に折鶴とリリアン棒を投げつける。

 ここ、魔破羅おじさんが「お前ら、いい加減にせえよ」とキレるのではないかと、別の意味でハラハラしてしまう。

 魔破羅「もう良い、お前たちに会えた、それだけで良い、ゆけ、はやくこの場を立ち去れ、去れーっ!!」

 魔破羅、そう叫ぶと、マントを翻して背中を向けて座り込んでしまう。

 
 魔破羅「お方様、私には出来ません」

 
 結花「あなたは誰、誰なのー?」
 由真「私たちはおやじに会うために来たんだ、会うまでは死んでも帰らねえからな!!」
 魔破羅(小太郎、お前、こいつらにどういう教育してきたの?)

 二人の想像を絶する鈍感さに、思わず小太郎をなじる魔破羅おじさんであったが、嘘である。

 嘘だけど、気持ち的には似たようなもので、

 
 魔破羅「まだ分からんのか、結花、由真!!」

 とうとう、痺れを切らしたように叫ぶ魔破羅おじさんでした。

 魔破羅「ここにおれば、お前たちも影に飲まれる。手遅れにならぬうち去れというのだ」
 結花「あなたが何者かは知らないけど、あなたに言われる筋合いはないわ」
 魔破羅「どうしても帰らんと言うのか」
 結花「どかないなら、あなたと戦うだけ」

 これだけ言っても、まだ気付いてくれない結花と由真。

 ここ、あまりに二人の察しが悪いので、見てる方もイライラしてしまう。

 魔破羅おじさんも、想定していた段取りが狂って、内心困ってたんじゃないかなぁ。

 やむなく、兜と面頬(めんぽう)を外し、素顔を晒す。

 
 魔破羅「見るのだ、結花、由真!!」

 ま、それは言いのだが、カメラがすぐに魔破羅の額の十字の傷にグローズアップするのは、ちょっと変じゃないか?

 結花たちが驚くべきは、顔そのものなんだから。

 魔破羅は鎧も脱ぎ、上半身裸になるが、

 
 その全身には、耳なし芳一よろしく、梵字のようなものがびっしりと書き込まれていた。

 結花「私たちと同じ、梵字?」
 由真「……」

 いや、だから、驚くところが違うでしょおおおおっ!!

 これでは、事前に小源太の写真を見せた意味がなくなるではないか。

 
 魔破羅「そうだ、これはお前たちの梵字だ。これがかつてお前たちの父だった男の本当の姿だ。かつて、風間小源太と呼ばれた男は死んだ。今は恐ろしい影に落ち、魔破羅と言う鬼がここにおるだけだ」

 彼らのやりとりを、いつの間にか森にやってきた唯が物陰から聞いている。

 魔破羅「17年前、私は赤子の翔を連れ去った果心居士をこの森に追った。だがそこで見たものは想像を絶する光景だった」

 ここから回想シーンとなる。

 果心居士が赤ん坊の翔を抱き上げて、それに空から降り注ぐ光が当たっている。

 
 果心居士「翔よ、お前はえらばれし者、今より10年の後、お前の成長は止まり、影の王として君臨するであろう。やがてヴァジュラをその手にし、天下を支配するのだ」

 例の影星から赤い光が飛んできて、翔の額に吸い込まれる。

 さすがの小源太も、あまりの恐ろしさに物陰から見ていることしかできなかった。

 しかし、そもそもなんで10才で成長を止めねばならないのか、その辺が良く分からないのである。

 ロリコンなのかな?

 果心居士「影となれ、風間翔、これよりお前は影の王として生まれ変わるのだ」
 小源太「翔様!!」
 果心居士「風間小源太、おのれには娘が二人おったな。どうじゃ、おのれが影に落ちるなら、おのれの娘らの命は助けてやろうではないか。聞けぬというのなら翔と同じようにおのれの娘らも影に飲み込もうぞ」
 小源太「私の娘らに手出しはさせん」
 果心居士「ならばおのれが落ちよ」

 
 果心居士が剣をふるうと、小源太の額に十字の傷が刻まれ、さらに、着物を剥ぎ、その裸身にも同様の傷をつけるが、それは結花と由真の持つ梵字に変わる。

 魔破羅「その時、私の心はお前たちのもとへと走った」

 それは字義通りの意味で、

 
 小源太「結花、由真、私はもうお前たちの元へは戻れん、おそろしい影に脅されたのだ。しかしお前たちだけは決してあのような恐ろしい世界には近づけはさせん。翔様のような目には遭わせん。決して」

 小源太の霊が眠っている幼い結花と由真の枕元にあらわれ、優しく語りかけている。

 ただ、その後、小源太が仏壇に向かう姿が見えるが、あまりに人間臭いので、やらないほうが良かったとおもう。

 ちなみに、仏壇には結花と由真の母親の遺影があり、その時にはすでに結花と由真の生母は亡くなっていたことが分かる。

 その写真の人は、以前結花がヤエばあさんから貰った、親子三人で映っている写真の人と同じようである。

 小源太「あのときより私は風魔を捨て父と言う名を捨てた……」

 
 由真「いやだ、いやだ、やだーっ!! てめえなんか、てめえなんかおやじじゃねえっ!!」

 ポロポロ涙を流しながら悲痛な叫び声を上げる由真。

 魔破羅「そうだ、由真、もはや父はおらん、ここは恐ろしいところだ。お前たちなどの来るところではない。去れ、去れーっ!!」

 
 結花「父さん……」

 苦悩する父の姿に、結花は折鶴を手落とし、両目に涙を浮かべてつぶやく。

 と、突然世界が暗黒に包まれ、果心居士があらわれる。

 果心居士「何をしておる、魔破羅、飲み込め、おのが娘らを!! そうすることにより他にお前の生きる道はないと知れ」
 魔破羅「お方様!!」

 と、唯が果心居士の前に飛び出し、

 
 唯「ダメじゃーっ!! いかん、ほんとの父ちゃんがそんげなこつしたらいかん!! お前、お前が果心居士か? 人の心ば弄ぶ、お前がにくか、憎くて憎くてたまらんわい!!」

 唯、怒りを爆発させてヨーヨーを投げようとするが、果心居士の巻き起こす突風に押されて立っているのがやっとだった。

 魔破羅「本当のお別れだ、結花、由真ーっ!!」

 魔破羅、刀を手に絶叫すると、果心居士ともども姿を消す。

 結花と由真は、ためらうことなく走り出す。

 由真「おやじーっ!!」
 結花「父さんーっ!!」
 唯「姉ちゃん!! 姉ちゃん!!」

 二人は、唯の必死の呼び声に立ち止まるが、

 
 結花「お願い、止めないで唯!!」
 唯「……」 
 結花「私たちにあの人を救うことが出来るかどうか、それはわからない。でもやってみたっていいでしょう。どんな姿だって父さんは父さんだから……」

 そう言うと、二人は森の奥へ走っていく。

 唯「いかん、行ったらいかんーっ、姉ちゃーん!!」

 唯がなおも追いかけようとするが、横から現われた忍び装束の般若に肩を掴まれる。

 唯「放せーっ!!」
 般若「行ってはならん」
 唯「放せーっ!!」

 と、頭上から果心居士の勝ち誇った笑い声が響く。

 果心居士「ぶぁっはっはっはっ……結花と由真は影が飲んだぞ、いずれはお前たちも同じ運命を辿ることになろう」
 般若「最早、結花と由真は、二度と戻ること叶うまい……」
 唯「そんなぁっ、姉ちゃーんっ!!」

 唯の叫びが虚しく樹海に響く……

 以上、遂に結花たちの実父・小源太の消息が明らかになったわけだが、この設定が、「スターウォーズ」の、ダース・ベーダーとルーク&レイアの関係のパク、いや、オマージュであることは言うまでもない。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第36話「伊豆の秘湯に隠された秘密」

2025-06-01 19:33:58 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇
 第36話「伊豆の秘湯に隠された秘密」(1987年9月10日)

 前回、唯たちに詰め寄られて観念したかに見えた依田であったが……

 冒頭、冷たい霧雨が吹く中、忍びたちが野山を疾駆し、次々と狼煙を打ち上げる。

 夜、それとは違う数人の忍びが、海辺の洞窟の前に集まる。

 
 小次郎「小次郎にございます」
 忍び「○○(聞き取れない)にございます」
 忍び「小助にございます」
 忍び「小勇太にございます」
 小次郎「お呼びにより、我ら一同参上仕りました」

 つまり、さっきの狼煙は、彼らを集めるための合図だったのだろう。

 電話しろよ……

 敵に丸分かりじゃねえか。
 
 OP後、視聴者は当然、依田が何もかも打ち明けてくれることを期待するが、

 
 唯「わちと翔が双子の姉妹じゃなんて、般若、なんかしっちょるんじゃろ?」

 何故か、前回のラストは「なかったこと」にされ、唯がひとり職員室で依田に談判しているシーンとなる。

 それでも、とにかく依田が秘密を話してくれることを視聴者は熱望していたと思うが、

 
 依田「いかばかり、波風あらきうなばらも法(のり)の舟にてこゆるうれしさ……」

 引き出しから短冊を取り出し、それに書いてある短歌を読み上げる。

 唯「なんじゃそれ」
 依田「この歌を持って修善寺に行け、行けばすべてが分かる。お前と翔が巻き込まれた運命の謎、そのすべてが分かる筈だ」

 お前、いい加減にせいよと言いたくなるが、結局依田は今回も自分の口から秘密を明かそうとはせず、唯に新たなクエストを授けるのだった。

 管理人なら、依田を窓から放り投げているところだが、唯は素直にその言葉に従い、スタッフの慰安旅行を兼ねた伊豆への旅に身を委ねるのだった。

 次のシーンでは、早くも三人が伊豆の温泉街を散策している図となるが、

 
 セーラー服で旅行するのやめい言うとるだろうがっ!!!!

 ったく……リアリティーがねえんだよっ!!

 由真「姉貴、ホテルついたら露天風呂入ろうよ」
 結花「そんな暇ないんじゃない」
 由真「どうしてだよ、せっかく温泉に来たのに風呂にも入んないのかよ」
 結花「そう言うんじゃないけど……」

 結花は言葉を濁しながら、しょんぼり後ろを歩いている唯を見る。

 由真はいたずらっぽい笑みを浮かべて唯に駆け寄り、その額をつつく。

 唯「なにするんじゃ、由真姉ちゃん」
 由真「あ、間違えて秘孔押しちゃった」
 唯「びでぶっ!!」

 じゃなくて、

 由真「あんまり思い詰めると、川に落ちるゾ!!」
 唯「……」

 由真なりの励ましであった。

 
 三人は朱塗りの橋を渡るが、その下の川では、お揃いのタンクトップで決めた三人の男が釣り糸を垂らしていた。

 彼らは知る由もなかったが、それは、冒頭に出てきた忍びたちであった。

 三人はとりあえずホテルにチェックインする。

 
 結花「由真の言うとおりかもしれないわね、唯」
 唯「え」
 結花「あんまり思い詰めてもいけないってこと」
 唯「じゃけん……」

 と、由真が飛び込んで来て、

 由真「あったあった、露天風呂があったよ、姉貴、ちゃんと屋根がついてるから外からは見えないようになってるの、ね、だから入りに行こうよー」
 結花「だって……」

 完全に観光気分の由真の誘いに、結花は気兼ねするように唯を見る。

 由真「唯、一緒に入ろ」
 唯「わちはいいわい、姉ちゃんたちで入って……ちょっとそこらへん歩いてくる。この歌のことをしっちょるひとがおるかもしれんから」

 由真は唯にも声を掛けるが、唯はあの短冊を手に部屋を出て行く。

 結局、視聴者が一番見たかった入浴シーンはなく、

 
 由真「なんだよ、ひとふろ浴びてからだっていいでしょー、歌のこと聞いて歩くのは」
 結花「あんたちょっとはしゃぎすぎじゃない、なんのためにここにきたのかわかってんの」
 由真「わかってるよー」

 結花と由真も、セーラー服姿のまま、街に探索に出掛けるのだった。

 ちくしょう。

 結花に意見された由真、真顔になると、

 由真「私だってつらいよ、あんなに落ち込んだ唯を見るのは」
 結花「それじゃあ、あんたわざと?」
 由真「唯と翔が双子かもしれないからってそんなことで三人一緒に落ち込んでたら、運命の謎なんて絶対解けやしないもん……せめて私ひとりでも元気にして唯を励ましてやろうかなと思ってさ」
 結花「由真……」
 由真「なーんてね、かっこつけてみただけ」

 照れ隠しに茶化してみせる由真だったが、その割りに、宿の浴衣をしっかり抱いて、露天風呂に入る気マンマンなのが若干引っかかると言えば引っかかる。

 その後、あちこち探し歩く三人だったが、とある境内で由真が、あの忍びのひとりに不意討ちを食らい、あえなくダウン。

 結花も同様に捕まる。

 何度も言うようだが、風間三姉妹、未熟過ぎんか?

 何故この程度の腕の忍びを、影がいつまで経っても倒せないのか、そのほうがよっぽど謎かもしれない。

 
 そうとも知らず、唯は、大きな松の木に登り、股の部分に腰掛けて思案していた。

 唯(わち、どんげにしたらいいんじゃ、翔とわちが双子じゃなんて、それが本当やったら、わちは影とどうやって戦えばいいんじゃ)

 
 老人「美しい眺めでしょう、私の兄も心からの眺めが好きでねえ。よく二人できたもんです」

 と、木の下に俳人っぽい恰好をした老人があらわれ、親しげに唯に話し掛けてくる。

 老人「お嬢さんは兄弟いますか」
 唯「うん」
 老人「何人」
 唯「姉ちゃんたちがふたり、いや、もしかしたら三……二人じゃ」
 老人「そうですか……二人」

 唯はそこから飛び降りると、

 
 唯「おじいちゃん、修善寺の人やと」
 老人「はい、少しずつ八十八箇所めぐりをするのが楽しみでね、毎日歩き回ってます」
 唯「じゃあこの歌のこと、なんか知らん」
 老人「ほう、何処かで聞いた、いや、見た歌だが」
 唯「どこじゃ、どこで見たんじゃ」
 老人「確か八十八箇所の何番目かに」
 唯「ありがとう、おじいちゃん」

 唯は早速探しに行く.

 老人の言う八十八箇所めぐりというのは、修善寺で昭和初期から実際に行われている桂谷八十八箇所めぐりのことである。

 
 こういう看板も出てくるが、これが実際のものか、番組が用意したものなのかはわからない。

 12番目が、虚空菩薩うんぬんというのはあってるけどね。

 色々あって、唯は、自分の額の梵字とおなじ文字が刻まれた石碑を見つけるが、その傍らの看板に、あの歌が記してあった。

 ちなみに36番目の波切不動明王である。

 唯「あった、じゃけん、ここに何が……」

 結局、あの歌には何の意味もなかったようである。

 要するに、唯を修善寺まで引っ張り出すための口実だったのだろう。

 唯、由真のユリアンと結花の折鶴がこれみよがしにぶら下げてあるのに気付く。

 それを取ろうとするが、どこからか、白い八角形のつぶてが飛んでくる。

 唯「忍字石つぶて……影の草か」
 声「ふっふっふっ、少しは出来るようだな」

 と、何者かの声が語りかけてくる。

 唯「しゃからしか、出てこんかい」
 声「焦るな、翔のこと知りたくないのか、知りたければ朝日岳そばの神社に来い。そして結花と由真を助けたければな」

 
 唯がそこに行くと、あの宗匠風の老人がいたが、すぐに本来の姿になる。

 そう、冒頭に出てきた、小次郎と言う忍びだった。

 演じるのは、毎度お馴染み、三重街恒二さん。

 びっくりしたことに、まだご存命だそうな……

 一体何回つかまりゃ気が済むんだという感じだが、結花と由真も引っ立てられてくる。

 
 小次郎「おぬしはさきほど姉は二人と言ったが、翔のことを忘れたのか」
 唯「……」
 小次郎「おぬしと翔は血を分けた姉妹、しかも双子の姉妹」
 唯「お前ら、なにもんじゃ」
 小次郎「おぬしを迎えに来たのじゃ、さあ、そのヨーヨーを捨てて翔の元へ来い。翔が首をなごうして待っておるぞ。妹に会いたいと泣いておるぞ」

 小次郎の声には催眠術のように効果があるらしく、唯の視界がぼやけてくる。

 
 唯「翔がわちを? わちも翔に……あいたか」

 戦意をなくしたように、ヨーヨーを持つ手をだらりと下ろす唯。

 
 結花「傀儡の術」
 由真「しっかりしろ、唯!!」

 お前がしっかりせいよ!!

 この状況で人を叱咤するって、並大抵の神経じゃできないよね。

 唯は唯で、

 唯「傀儡の術などわちには通じんわい!!」

 今思いっきり掛かってただろ!!

 由真の一喝で目を覚ましといて、図々しいにもほどがあると思うんだ。

 小次郎「今のは傀儡の術ではない、心眼の術でお前の心の中の本心を引き出したまでのことだ」
 唯「ちがう、わちは……わちは……しゃからしかーっ!!」

 困ったときの「しゃからしか」で、小次郎に向かってヨーヨーを投げるが、ヨーヨーは小次郎の顔の前で宙を切る。

 小次郎「何故外す」
 唯「なんでかわからんけど、お前にヨーヨーが投げられんのじゃ」
 小次郎「はっはっはっはっはっ」

 小次郎、呵呵大笑すると、部下に命じて結花と由真を解放させる。

 小次郎「どうだ、人質は返したぞ、どうだ、戦う気になったか」
 由真「くそぉ、なめた真似しやがって」

 命を助けてもらった恩も忘れて武器を構える二人だったが、

 唯「いかん、姉ちゃんたちは戦ったらいかん」
 由真「なに言ってんだよ、翔のこと知りたくないって言うのかよ」
 結花「どうしたって言うの」
 唯「わからん、じゃけん、姉ちゃんたちは手を出したらいかん」

 唯、小次郎の面に、さきほどの老人の温顔を重ね合わせていたが、不意にヨーヨーを投げ捨て、

 唯「わちは、やめた!!」
 小次郎「どうした」
 唯「お前らを倒さんと翔とわちの話が聞けんのなら、わちは聞かんでもいい。わかったんじゃ、こいつらと戦いとうないわけが……こんひとら、風魔の人間じゃ。もしかしたら影に飲まれた奴らかも知れん。じゃけん、風魔は風魔じゃ」

 唯の言葉に、小次郎たちが驚きに打たれたように固まる。

 その顔は、ほとんど感動しているように見えた。

 唯「翔とわちの運命に何があったかは死ぬほど知りたい。じゃけん、その為に風魔とたたかわにゃならんのなら、わちは知らんでもいい!!」

 唯はそう言って走り去ろうとするが、

 依田「良くぞ言った唯!!」

 
 依田「このものたちは、お前のその言葉を待っていたのだ、このものたちはお前の父、小太郎の配下のものだ」

 いつの間にか依田がいて、彼らの素性を明かす。

 小次郎たちはその場に跪き、

 小次郎「よくぞここまで、立派な忍びに成長されました」
 忍び「同じ風魔同士、戦ってならぬと申されたそのお心は父上の血を立派に引き継いでおられます」
 小次郎「我ら一同うれしゅうございます」

 感激の面持ちで、こうべを垂れる小次郎たち。

 小次郎「帯庵どのも、お喜びでございましょう」
 唯「じいちゃんが? じいちゃんがおると」
 依田「この山を下って海にいでよ、そこでお前と翔の運命の謎、帯庵どのが話してくれるはずだ」

 ……

 じゃあ、最初から帯庵のところに行かせとけば、こんな面倒臭いことせずに済んだんとちゃうんか?

 ぶっちゃけ、この小次郎たちのくだり、ただの時間稼ぎだったのでは?

 しかし、「立派な忍びに成長されました」と言う台詞、唯はともかく、情けなくも捕まった結花と由真に関しては、皮肉にしか聞こえないね。

 唯たちが言われたとおり山を下って海へ出ると、洞窟の中から帯庵が出てくる。

 冒頭、小次郎たちが駆けつけたあの場所である。

 
 唯「じいちゃん!!」
 帯庵「唯、久しぶりじゃの、よくここまで成長してくれた」

 懐かしい帯庵の胸に飛び込む唯。

 帯庵も、ワンパクでも良いから逞しく育ってくれた孫の体を力いっぱい抱き締める。

 尺もないので、すぐに帯庵のお話が始まる.

 
 帯庵「これからお前たちに話すことはお前たちにとってはとてもつらいことだ。覚悟は出来ているな?」

 帯庵の問い掛けに頷く三人。

 帯庵「17年前、わしの娘・奈津と風魔鬼組の頭・小太郎とが結ばれた。そして奈津は双子を生んだのじゃが、小太郎には5人の部下がおっての、さきほどお前たちがおうた小次郎たちの他に、もうひとり、小源太という男がおった」

 ……

 どうでもいいが、帯庵、出生の秘密は唯たち自身の手で突き止めさせろとかなんとか言ってなかったっけ?

 お前の口から説明してもいいのなら、最初からそうすりゃいいだろうがっ!!

 ま、何度も言うように、謎の暴露を引き伸ばしてきたのには何か合理的な理由があった訳ではなく、ドラマを盛り上げるための手段に過ぎなかったんだけどね。

 帯庵「その小源太が、双子の祝いを持ってきた晩じゃ」

 ここから回想シーンとなる。

 
 奈津「本当に良いんですか、小源太さん、この人形はあなたの家に伝わる家宝でしょ」
 小源太「家宝だからこそ、このお二人に差し上げたいのです」
 奈津「でも、あなたにも女の子が二人もいるのに」
 小源太「あの子たちには新しいのを買ってやりますから」

 
 帯庵「小源太の持って来たのは風魔の里に古くから伝わる一対の雛人形だった」

 そう、その贈り物こそ、あの梵字入りの雛人形だったのである。

 ちなみに、小源太は魔破羅の堀田さん自身が演じているのだが、はっきり顔を見せず、また、喋り方も優しいものに変えている。

 と、突然雛人形の持っている扇と刀が、風もないのに揺れ出して落ちる。

 同時に双子の赤ん坊が火がついたように泣き出す。

 さらに、赤ん坊の額に、それぞれ異なる梵字が浮かび上がる。

 
 それを見て、ハッとする奈津。

 唯と翔の母親にふさわしい、凛とした気品をまとった、目元も涼やかな美熟女である。

 演じるのは、藤井佳代子さん。

 
 結花「カーン(大日如来)とバイ(薬師如来)の梵字」
 唯「うそじゃ、翔とわちが兄弟じゃなんて……そんげな話信じとうないっ!!」

 思わず立ち上がって叫ぶ唯。

 いや、あんた、もうそのことは承知してたんじゃないの?

 いまさらそのことで取り乱すと言うのは、いささか妙である。

 帯庵「カーッ!! こげんことで動揺してどうすっとか。これから話すことはもっとおそろしかことぞ」

 再び回想シーン。

 
 奈津「どうしてこの子たちにこんな文字が」
 小源太「では今初めて?」
 奈津「ええ」

 と、いきなり障子を突き破って、二人の忍びが飛び込んでくる。

 忍びは雛人形を奪おうとするが小源太に邪魔され、逃げ出す。

 小源太も二人を追って部屋を飛び出す。

 

 
 奈津「はっ」

 突然雷光が走り、部屋の中に黒衣の老人があらわれる。

 老人は畳の上に転がっていた男雛を拾い上げる。

 と、何故か、唯の梵字が消える。

 果心居士「額に梵字を抱くものがいつの日かヴァジュラを手にすると言う。この子はワシが貰っていくぞ」
 奈津「やめてーっ!!」

 果心居士、奈津の体を払い除け、翔を抱き上げる。

 果心居士「ヴァジュラは影のもの」
 奈津「いやーっ!!」

 果心居士はパッと姿を消す。

 しかし、なんでついでに唯を殺して行かなかったのか、その辺が謎である。

 と、小源太が、女雛を奪い返して戻ってくる。

 唯の梵字が書いてある男雛が翔のところに、翔の梵字が書いてある女雛が唯の手元にあったのは、そのためだったのである。

 唯「なんでじゃ、なんでわちだけ梵字が消えたんじゃ」
 帯庵「男雛はお前の運命の象徴だったからじゃ、影星を操る男がお前の運命の象徴である男雛に手を出した瞬間、お前の額から梵字が消えたのじゃ」
 唯「じいちゃん、その男は誰じゃ? 翔を連れて行ったその男は」
 帯庵「果心居士」
 唯「果心居士?」
 帯庵「何百年も闇にひそみ生きながらえ影星を操るおそろしか男ぞ。小太郎と小源太は翔と男雛を取り返すために果心居士とたたこうた、しかし、居士の敵ではなかった。小源太はゆくえしれずとなり、傷だらけの小太郎だけが帰ってきたのじゃ。奈津はお前と女雛を抱いて、わしのもとへ逃げてきた」
 唯「かあちゃんは?」
 帯庵「影に殺された」
 唯「かあちゃん……」

 しかし、何も唯の母親まで殺す必要はないのでは?

 それに、何故母親だけ?

 最初から殺すつもりだったのなら、翔を攫った時にさっさと殺せばよかったのである。

 なので、単に病死で良かったんじゃないかと思う。

 結花「ひとつ聞いてもいいですか」
 帯庵「なんじゃ」
 結花「小源太という人には娘が二人いたといいましたね、もしかしてそれは……」
 由真「姉貴」
 結花「その二人の娘とは」
 由真「やめろよ、姉貴」
 結花「答えてください、帯庵さん」

 帯庵は目をつぶって沈黙していたが、その沈黙が、由真をある恐ろしい事実に想到させる。

 由真「やだっ、聞きたくない、やだっ、やだよーっ!!」
 結花「帯庵さん」
 帯庵「小源太は自分の身代わりになって行方不明になったと言って、小太郎はお前と由真を育て始めたのじゃ。自分の娘である唯をワシに預けての……」

 帯庵、今までの停滞が嘘のように、スラスラと事情を話してくれる。

 しかし、小太郎が二人を引き取るのは分かるが、なんで実の娘を帯庵に預けにゃならんのだ?

 帯庵「いかばかり波風荒き海原も法の舟にて越ゆるうれしさ……この意味が分かるか? 唯、結花?」
 結花&唯「わかりません」
 帯庵「だろうなぁ……」

 と言うのは嘘だが、この歌って、どんな苦難も「法」すなわち「仏の教え」で乗り切れるんだぜぃと言うことを言ってるのであって、唯たちの置かれた状況とはあまり関係ないと思うんだけどね。

 帯庵「耐えるのじゃ、忍ぶのじゃ、どのような試練が訪れようと耐えて忍んで戦うのじゃ。人と人とは血の繋がりではない、心じゃぞ

 帯庵のありがたい教えに、結花は立ち上がって一礼すると、由真のところへ行き、

 
 結花「由真……」
 由真「おやじは生きてる。死んでないよ、私たちの本当のおやじは絶対生きてる」

 泣きじゃくる由真の体を優しく抱き締める結花であった。

 ラスト、ゴルフ場みたいな高原で依田が改めて唯たちに訓示している。

 
 依田「お前や結花たちにはこれからもっともっと厳しい試練が訪れる筈だ。戦えるか、唯」
 唯「般若、どんげなこつがあってもわちは影と戦う。戦って戦ってきっと果心居士ちゅう男を倒して見せる」
 依田「良くぞ言ってくれた、小次郎」
 小次郎「はい」
 依田「小太郎殿のあとを継いで、風魔に新しい頭目が生まれた。狼煙を上げて風魔のものどもに知らせよ」

 小次郎たちが上げる狼煙を見ながら、

 唯(かあちゃんを殺し、翔に呪いを掛けて操る果心居士、お前だけは絶対に許さん!!)

 果心居士に対する怒りを燃やす唯の姿を映しつつ、「つづく」のであった。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第35話「鏡の国の唯」

2025-05-11 19:35:49 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇
 第35話「鏡の国の唯」(1987年9月3日)

 悲しいことに、今回でオトヒとミヨズが退場となる。

 冒頭、そのミヨズとオトヒが、魔破羅のこもる洞窟に下りてくる。

 ミヨズ「魔破羅、うぬが我らを?」
 魔破羅「うむ」
 オトヒ「我らは翔様の命でしか動かぬぞ、のうミヨズ」
 ミヨズ「翔様の片腕とは言え、出過ぎた真似をするでない」

 二人は自分たちを呼んだのが魔破羅だと知ると、ピシャリと言って立ち去ろうとする。

 だが、年季の入った魔破羅おじさんの威厳の前では、ミヨズとオトヒがどれだけ権高に振る舞おうと、小娘の背伸びでしかない。

 魔破羅「我はお方様の勅命を受けておる、我の言葉はお方様のお言葉と思え」

 
 オトヒ「あっ」
 ミヨズ「うっ」

 魔破羅の念力(?)で首を締められ、色っぽく喘ぐ二人。

 今まで、翔の威光を笠に男の忍びたちを顎で扱き使っていた二人がこんな目に遭うのを見ると、コーフンしますなぁ。

 魔破羅「お方様のご命令じゃ、風間唯を影の陣営に飲み込むのじゃ」
 ミヨズ「ばかな、血迷うたか、風間唯は憎き風魔の血脈ぞ」
 オトヒ「翔様がそのようなこと、お許しなさると思うてか」
 魔破羅「翔と唯、宿命の糸につながれし二人、いくら互いを憎もうともその血の流れにはあらがえん」
 ミヨズ&オトヒ「!!」

 魔破羅の意味深な言葉に、二人は美しい目を見開く。

 魔破羅「そうよ、翔と唯、そは同じ血を分かつ双子の姉妹」

 遂に魔破羅の口から、番組最大の秘密が暴露される。

 ミヨズ「おそろしい」
 オトヒ「我は信じぬ」
 魔破羅「お方様はほんにおそろしいおかたよ、運命の流れを予見し風魔の双子の姉妹の片割れを影に引き入れておられた。そして成長を止める呪いを」

 と、洞窟の奥から、妖怪三羽烏(管理人命名)の最後のひとり、天妖が現れる。

 
 魔破羅「ミヨズ、オトヒ、そして天妖、命をとして風間唯を影の世界へ」
 天妖「我が夢あやかしの秘術で風間唯の心も水の低きに流れるがごとくにうつろいましょうぞ」
 魔破羅「ふっはっはっはっ」

 変なおじさん二人に挟まれて、怯えの色を浮かべる二人。

 そして、ちょっと前までは女子会みたいな気楽な雰囲気だったのに、短期間で体育会系っぽい組織になってしまったことを骨身に知らされ、ブルーな気持ちになるのだった。

 OP後、三姉妹と般若がテレビニュースを見ている。

 アナ「青山通り地下道で起こった同時多発ゲリラにより……」
 般若「陽動作戦の裏で影は次なる計画を進めているのであろう。みなも心してかかれ、影の攻勢さらに厳しくなろう」

 いや、日本って、いつの間にゲリラがいる国になっちゃったんですか?

 しかし、陽動と言っても、唯たちがそんな事件に関わることは一切ないのだから、あまり意味がないような……

 ま、多聞菊子のようなフツーのエージェントがそちらに掛かりきりになると言うことはあるだろうが、そうだとしても、普段から他のエージェントなんて一切出て来ないのだから、結局おなじことである。

 
 唯「影はわちの想像しちょった以上の力をもっちょる、ちょっと不安じゃわい」
 結花「だいじょうぶ、私たち三人が力をあわせている限り」
 由真「姉貴ぃ、オヤジが教えてくれた毛利なんとかの話みたいだね」
 結花「三本の矢ね」
 唯「矢? 矢って何ね」
 由真「そっかー、唯はまだいなかったんだっけ」
 唯「……」
 由真「しょげるなって、教えてやるから」
 唯「うん」
 由真「いいか、一本の鉛筆は簡単に折れるけど三本あわせて折ってみな」

 由真、鉛筆を矢に見立てて、唯に教えてやろうとする。

 しかし、高校生にもなって、「三本の矢」を知らないというのはなぁ……

 
 が、唯は三本の鉛筆をまとめて折り、由真の話の腰も折ってしまう(上手いこと言ったよ!!)

 唯「テコの原理じゃ」

 自慢げに言う唯に、結花は白けた顔になり、

 
 般若「……」

 般若もこんな顔になる。

 由真「なんだよ、もう、てめーなー、オヤジとの大切な思い出がぼろぼろだよ」

 学校からの帰り、なおも父親の思い出話に花を咲かせる結花たち。

 
 結花「父さんは色んな話をしてくれたわ、母さんのいない私たちを励ましてくれてたのね」
 唯「いいのう、思い出があって」
 結花「……」
 唯「わちゃ血の繋がりとかは気にしちょらん、じゃけん、姉ちゃんたちとおんなじ思い出がないとがちょびっとさびしか」
 結花「そんなことないんじゃない、唯、この一年間だけで色々な思い出が出来たんじゃないの? 私たちだけの素敵な思い出が」
 唯「ほんとんごつそんげに思っちくれる?」
 由真「うん、つらいことも多いけどさ、でもいつかきっと来るよ、いい思い出ばっかりだったね、なんてどっかの縁側で猫でもいじりながら三人で話す日がさ」
 唯「いいね、そうなったらいいね」

 姉たちの思い遣りに、晴れ晴れとした笑顔を見せる唯であった。

 しかし、いまさらだが、「ほんとんごつそんげにおもっちくれる」って、とても同じ言語を喋ってるとは思えん。

 ついでに、そう言えばちょっと前まで夏休みだったんだよね。

 せっかくの夏休みなのに、山でむさくるしいおっさんたちと戦うばかりで、いわゆる水着回が一度もなかったのは残念だ。

 さて、三人は仲良く肩を並べて帰っていくが、

 
 その後ろ姿を、普通の恰好をしたミヨズとオトヒが見詰めていた。

 くぅ、やっぱりお二人とも綺麗じゃ。

 こういう私服(?)を、もっとたくさん見せてほしかったなぁ。

 昼間あんな話をしたせいか、唯は寝る間際、亡き母親のことに思いを馳せて涙ぐむ。

 深夜、ミヨズとオトヒが、紙垂(シデ)のついた苦無を風間家の家の外壁に突き立てる。

 ……

 いや、そんなことが可能なら、どうして今まで風間家に放火するとか、ダイナマイトで吹っ飛ばすとかしなかったのだろう?

 以前、影があれだけムキになって三姉妹を殺そうとしているのに、何故か彼女たちの家には手を出さないのは、風魔が陰ながらガードしているからではないかと言う説を唱えたが、どうやらそうでもないらしい。

 
 それはともかく、遠く離れたお寺の境内では、天妖が護摩壇を焚いて何やら呪文を唱えていた。

 天妖を演じるのは、毎度お馴染み、信実一徳さん。

 唯の部屋でオルゴールの鳴り出し、女性の歌う子守唄が聞こえてくる。

 
 唯はいつしか、夢とも現実ともつかない世界に迷い込んでいた。

 要するに、あの苦無は、天妖の呪力を受信・増幅する役目を果たしているのだろう。

 唯(なつかしかー、この歌、おぼえちょるわ……)

 唯は、制服姿でダイニングに立っていたが、

 
 ふと姿見を見ると、その中に、真っ直ぐにのびる小道を乳母車を押しながら歩いている女性の後ろ姿があった。

 子守唄は、その女性が歌っているものらしい。

 唯「かあちゃん……」

 唯の胸に、にわかに懐かしさが込み上げてくる。

 
 唯が鏡に向かって手を伸ばすと、唯の体がその中に吸い込まれる。

 
 唯「かあちゃんやね」
 女性「……」
 唯「ないちょると? なんでないちょると」
 女性「血を分けた双子の娘がいがみあうのがかなしゅうて」
 唯「双子の娘?」

 唯が乳母車の中を見ると、双子らしい赤ん坊がいた。

 唯「名前は」
 女性「ひとりは唯、もうひとりを翔と申します」
 唯「!!」

 次の瞬間、鏡の世界が砕け、唯の部屋の化粧鏡も割れて、その破片が床に突き刺さる。

 
 唯「夢か……」

 だが、その破片には、まだあの女性の姿が映っていた。

 翌日、唯は依田にそのことを相談する。

 唯「依田先生、正夢とか夢のお告げっちゅうのはほんとにあるんじゃろうか」
 依田「ああ、フロイトと言う人が夢とは性的に抑圧された……ああ、いやいや、こういうことは唯君にはまだバツですねえ」
 唯「はぁ?」
 依田「いや、確かにユングと言う人が夢の予言について言及していますが、概ね夢とは昼間望んで果たしえぬことの代償作用、つまり、自分が作り出すもの、ま、あまり気にしなくてもいいと思いますがね」

 依田は、まさかそれが影の術によるものとは知らず、ごく常識的な解釈を示す。

 唯「わちが思い出が欲しい欲しいおもっちょったから、あんなげな夢ば見てしもうたんじゃろか」
 依田「ちょっと待ってください。いいおまじないを教えてあげましょう」

 依田は、紙に何かサラサラと書くと、

 
 依田「バクと読みます。大和田伸也の弟です」
 唯「じゃから?」
 依田「珍しい名前ですよね!!」

 じゃなくて、

 依田「バクと読みます。悪夢を食べてくれると言う想像上の動物です。夜、寝る前、これを枕元に貼って、バク食え、バク食えと唱えて下さい」
 唯「こんげなおまじい利くとかねえ」

 依田の「おばあちゃんの知恵袋」みたいなライフハックに、唯ははなはだ懐疑的であったが、

 
 唯「バク食え、バク食え……」

 溺れるものはなんとやらで、言われた通りのことをする。

 しかし、そもそもああいう夢を一度見ただけで、そんな対策をしようとするだろうか?

 そう言うのは普通、同じ夢を何度も見たあとにすると思うのだが……

 昨日と同じく、ミヨズたちが苦無を外壁に打ち込む。

 なお、苦無が刺さったままではさすがにバレてしまうので、夜明け前にミヨズたちが抜いておいたのだろう。

 あ、今、自分もミヨズたちに抜かれたいと思ったあなた、男子として大変正常な反応です。

 昨夜同様、天妖が離れたところで呪文を唱えると、「獏」の紙はあえなく燃えてしまう。

 火事になるぞ。

 今度の夢は昨日とは違い、暗闇の中に翔が背中を向けて立っている。

 
 唯「翔!!」
 翔「唯、良くぞ来た、わらわの妹よ」
 唯「いい加減なことを言うんじゃなか」
 翔「二人仲良く添い寝したあの思い出を忘れてしもうたか」
 唯「嘘じゃ、わちの姉ちゃんは結花姉ちゃんと由真姉ちゃんだけじゃ」

 翔はこちらに向き直ると、

 翔「妹よ、我ら姉妹、手を取り合い、影に君臨しようぞ」
 唯「聞く耳持たん!!」
 翔「うっ」

 唯がヨーヨーを相手の胸に投げつけると、翔は一声呻いて倒れる。

 唯がその体を抱き起こすと、

 
 翔の幼い顔が、

 
 振り向きながら、唯そっくりの女性の顔に変わる。

 翔「悲しいのう……」

 ただし、声は翔のものである。

 唯「きゃーっ!!」

 奈落の底に落ちていく唯のイメージ。

 CM後、毎晩ミヨズとオトヒに敷地内に侵入されているのに全く気付かない鈍感姉妹が、朝食を取っている。

 由真「昨夜随分うなされてたみたいだよ、唯の奴」
 結花「色んなことが起こり過ぎたわ、唯ひとりの心では整理しきれない色んなことが」

 二人もそれが影の仕業とは思わず、常識的な解釈を示す。
 
 と、唯が二階から降りてくるが、

 
 唯「おはよう……」

 
 結花&由真(わかりやすっ!!!!)

 あまりに露骨なやつれメイクに心の中で息の合ったツッコミを入れる二人であったが、嘘である。

 もっとも、本人は気付いておらず、

 唯「どうしたと」
 由真「ひどい顔」
 結花「鏡見てみなさい」

 
 唯が姿見の前に立つと、なんと、そこに翔が立っているではないか。

 なお、キャプでは伝わらないが、林さんが「ヒョイッ」と言う感じで鏡の前に移動するのが、割りとツボである。

 
 唯「わちじゃ、わちじゃよね、ほんとひどか顔じゃあ」

 無論それは、唯の気のせいであった。

 一方、天妖たちは、例のお寺の二階部分で作戦会議。

 
 ミヨズのシックな黒いスーツと、

 
 オトヒの白いサテンのブラウスとの対比が実に美しい。

 繰り返すが、ミヨズたちには、もっと屋外で活躍させるべきだった。

 天妖「夜ごとの夢あやかしの秘術で唯の心は大きく揺らいでいる。今こそきゃつを影に飲み込むときぞ」

 天妖おじさんは大張り切りであったが、ギャルたちはそれを鼻先で笑い飛ばし、

 ミヨズ「夢は夢、うつつはうつつよ」
 オトヒ「夢のお告げごときであの風間唯、堕ちはせぬぞ」
 天妖「ふっふっふっ、心配めさるな、これからが夢あやかしの秘術の秘術たるところ……夢をうつつとなし、うつつを夢となす、ミヨズ、オトヒ、うぬら唯の心の中に入り込むのじゃ」

 だが、天妖は自信たっぷりに二人に新たな命令を下す。

 

 
 ま、そんなことはどうでも良くて、今回が見納めなので、心残りのないよう、二人の画像をキャプしまくる管理人であった。

 その日の放課後、唯と依田が一緒に歩いている。

 依田「風間唯君、どうですか、獏の効き目は」
 唯「あれは夢じゃなかったとかも知れん」
 依田「唯……」
 唯「わちの心の奥でねむっちょった、本当の思いでやったかもしれん」
 依田「思い出?」

 だが、唯はそれ以上説明せず、ペコリと一礼して立ち去る。

 唯がひとりで帰宅中、ときならぬ霧が出てきたかと思うと、

 
 唯の前に、そのままディスコに繰り出せそうな恰好をしたミヨズとオトヒが畏まってあらわれる。

 唯「お前ら……」

 
 身構える唯だったが、たちまち「夢の世界」に転送され、ミヨズたちもいつもの装束になる。

 唯「ここは……」
 ミヨズ「お迎えに上がりました」
 唯「わちを?」
 オトヒ「翔様の妹ぎみ、影の世界で翔様が首をなごうしてお待ちです」
 ミヨズ「お戻り下さい、影の世界へ」

 仕事なので、二人は天妖に言われた通り、唯をヘッドハンティングしようとする。

 唯「翔……昨日まで憎しみを覚えていたその名の響きが今日はなんでなつかしく聞こえるんじゃ」
 ミヨズ「ひとつ魂よりわかれしふたつの生命はいつかまたひとつに戻る宿命を背負っているのです」
 唯「……」
 ミヨズ「迷うことは何もありません、姉ぎみのもとへ」
 唯「じゃけん、翔は幼子、なんで、わちと双子なのに」

 唯が当然の疑問を口にする。

 オトヒ「おいたわしや、呪いが掛かっておいでなのです」
 唯「呪い?」
 オトヒ「姉妹が再びひとつになり、影が世界を覆うならその呪いも解けます」
 唯「翔……」

 唯、思わず二人のところに掛けようとするが、地面に落ちたヨーヨーが眩しい光を放ち、唯の足を止める。

 唯「だめじゃ、だめじゃだめじゃ、わちは影には入れん」

 唯はその場に両手を突くと、

 唯「かわいそうな翔、心も体も幼いまま何の思い出も持たんで、たった一人で生きてきたんじゃね」

 唯はヨーヨーを掴み、

 唯「わちがいけば、呪いが解けるかも知れん、じゃけん、わちは影の世界へは入れん。わちは翔、もうあんただけのためには生きられん」

 翔のために涙を流しながら、寸前で踏み止まった唯であった。

 天妖の声「いまじゃ、風間唯を撃て!!」

 さっきとは真逆の指示を出す天妖。

 唯を影に引き入れることをあっさり諦め、方針転換したのだろうが、いかにも唐突であった。

 ミヨズとオトヒは何もせずに「夢の世界」から抜ける。

 同時に唯の世界も正常に戻る。

 唯「ゆるしちくり、ゆるしちくり……」

 だが、唯は気付かず、ひたすら翔に向かって詫びるのだった。

 次のシーンでは、もう夜になっている。

 
 天妖「影に飲み込むことかなわずば討て、それが魔破羅様の、しいてはお方様の命じゃ、何故、なぜ風間唯をうたなんだ」

 天妖は二人の命令無視をなじるが、

 ミヨズ「翔様の妹ぎみの命、我らが一存では討てませぬ」
 天妖「何を寝惚けたことを言っておる、きゃつが敵にまわったとき、我ら影の最大の脅威になろうぞ」
 オトヒ「影にとっては敵でも、翔様にとっては妹ぎみ」
 天妖「なにぃ」
 ミヨズ「唯様は翔様のために涙をお流しになりました」
 オトヒ「いままで影の人間で翔様のために涙したものを我らは知りませぬ」

 どうやら二人は、カーンの梵字が象徴する大日如来の深遠無類の慈悲心に打たれ、唯に対する敵意をなくしてしまったようである。

 しかし、今まで散々戦い続けておきながら、「敵にまわった」もクソもないよね。

 と、天妖おじさんが引っ込むと、お堂の二階部分に魔破羅おじさんがあらわれ、

 魔破羅「うぬら、余計な物を見てしまった、所詮道具に過ぎぬうぬらに人の心など要らぬ物を」
 ミヨズ「無礼な、我らを愚弄するのは翔様への反逆ぞ!!」
 オトヒ「翔様に全てを!!」

 二人は、美しい眉宇に怒りを込めて叫ぶが、年季の入った魔破羅おじさんからしてみれば、子犬がキャンキャン吠えているようなものであった。

 魔破羅「はっはっはっはっ、困ったな……天妖」
 天妖「もし唯が双子の片割れと知り、その呪いがお方様によってなされているとなると、翔の心に迷いが、いや、ことによると(お方様に)刃を向けるかもしれませぬぞ!!」
 魔破羅「道具とは何も知らんのが使いやすいもの、うぬら、まことのことを知り過ぎた、ふっふっふっ」

 自分でバラしといて、ご無体なことを言う魔破羅おじさん。

 魔破羅が刀を抜くのを見て、ミヨズは咄嗟にオトヒの体に抱き付き、自分の体で刃を受ける。

 ミヨズ「うっ!!」

 二人の関係については詳述されてこなかったが、このミヨズの行動が、何よりも雄弁に二人が姉妹のように硬い絆で結ばれていることを語っていた。

 
 オトヒ「ミヨズ!!」
 ミヨズ「オトヒ、翔様を!!」
 オトヒ「ミヨズ!!」

 ミヨズ、魔破羅おじさんに掴みかかり、オトヒだけでも逃がそうとする。

 ピョンピョンと、獣のように俊敏に背後の山を駆け上がるオトヒ。

 
 魔破羅は容赦なくミヨズにトドメを刺すと、その刀を投げつけ、オトヒの体を貫く。

 あ、自分もオトヒの体を貫きたいと思ったそこのあなた、男子として正常な反応です。

 一方、天妖は自ら風間家の屋根にのぼり、護符と紙垂のついた短剣を突き立てる。

 いや、おっさんが屋根の上にいるのに、なんでお家の人は気付かないの?

 仮にも忍びなんだから、この鈍感さはいくらなんでも不自然だ。

 それはともかく、唯の悲鳴が聞こえたので結花と由真が駆けつけると、唯の体に鋭い刃物傷が出来ていた。

 結花「ひどい、唯、しっかり!!」
 由真「なんだよ、これ」

 結花がとにかく手当てをしようとするが、傷は次々と出来るのできりがない。

 結花「由真、唯を見てて」
 由真「どこ行くんだよ」
 結花「依田先生に!!」

 由真が唯の顔をピシャピシャ叩くが、唯は一向に目覚めない。

 唯は、夢の中で天妖と戦っていたが、夢の中で切られたところが、現実の傷となっているようだった。

 依田は結花から知らせを受けて車を走らせていたが、道の前方に突然若い女が倒れ込む。

 これがオバハンやスーブーだったら依田は華麗に素通りしていただろうが(註・そんなことありませんっ!!)、可愛い女の子だったので車を停めて抱き起こす。

 
 依田「お前は!!」

 無論、それはオトヒだった。

 オトヒから聞いたのか、依田は風間家に到着するやいなや、苦無を飛ばして外壁に刺さっていた苦無を外す。

 この苦無は昨夜ミヨズたちが打ったものではなく、天妖が改めて打ったものだろう。

 もっとも、結花たちの鈍感さを見ると、最初の夜からずーっと刺さっていた可能性もなくはない。

 依田「結界破れたり!!」

 唯はパッと目を覚ますと、天井目掛けてヨーヨーを投げる。

 ヨーヨーは屋根を突き破ると、天妖の突き立てた短剣に当たり、そのショックで護符が燃える。

 
 天妖「!!」

 寺で呪文を唱えていた天妖おじさん、

 
 豪快に爆死!!

 いわゆる呪い返しと言う奴であろう。

 
 天妖「おそるべし風魔、おそるべし風間唯……」

 死に顔まで含めて、悪役としては100点満点の死にっぷりであった。

 依田はともかくオトヒを風間家に運び込む。

 
 唯「あんたは……」

 オトヒの伸ばした手を唯が握ると、

 オトヒ「温かい……春のひだまりのよう……こんな安らかな気持ちになれたのは初めて」
 唯「あんたが夢の中で言っていたことはほんとうのこつね」
 オトヒ「翔様はあなたの姉上、呪いを掛けられ、おいたわしや、幼子の姿のままに……唯、あなたの心が乱れるのが手に取るように伝わってきます」

 
 オトヒ「翔様は憎い敵でしょう、でもそれは翔様が自分でお決めになった道ではない。我ら影の忍びはみな、光なき地獄で迷っているんです」
 唯「かわいそうじゃ、かわいそうすぎる」

 唯の目から涙がこぼれ、オトヒの手に落ちる。

 
 オトヒ「涙……ありがとう、唯、これでやっと安らかに休むことができる……唯、翔様を」

 オトヒ、敵に看取られながら静かに息を引き取る。

 依田「無残よの」
 唯「誰じゃ、誰なんじゃ、運命を勝手に操り、また悲しい思い出を増やしたのは!!」

 唯が怒りと悲しみに声を震わせると、

 由真「嘘だよな、私たちを惑わすために奴らが仕組んだんだ……翔が私らの妹だなんて嘘だ、嘘だよ!!」
 一同(いや、そういうコトぢゃなくて……)

 由真の便乗嘆きに他のみんなが心の中でそっとツッコミを入れたと言うが、嘘である。

 嘘だけど、彼らはすでに唯が自分たちの血を分けた妹ではないと薄々知っているのだから、唯と翔が双子だったからって、翔まで自分たちの妹だと考えるのは、どう考えても変である。

 結花「由真……」
 依田「取り乱すな!!」

 
 唯「般若、あんたなんかしっちょるんじゃろ、しらばっくれんでほんとうのこつ言わんかい!!」
 依田「お前たちには知らせねばならぬときがくるやもしれんと思ってはいたが……」

 無意味且つ度の過ぎた秘密主義を続けてきた依田、もう辛抱たまらんパジャマ娘たちに詰められて、やっと年貢の納め時……かと思いきや、この期に及んでまだ歯切れの悪い物言いをして、視聴者を最高にイライラさせてくれるのだった。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第34話「死闘の果て! 今運命の橋を渡る」

2025-04-26 20:06:10 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇
 第34話「死闘の果て! 今運命の橋を渡る」(1987年8月27日)

 前回の続きから、何処とも知れぬ荒野で翔と対峙している三姉妹。

 翔はいつもの姿になると、

 翔「風間、唯、わらわとお前、どこかが似ておる」
 唯「……」
 翔「だがな、この世に何かをなさんとするものはひとりでいい、わらわはお前を倒す、それがこの翔の宿命」
 唯「お前こそ、このわちがぶったおしちゃる」

 翔、目を光らせて念力を使おうとするが、三人の背後に忍び装束の般若があらわれる。

 
 結花「般若!!」
 般若「唯、翔から目を離すな!!」

 般若、意味もなく分身しながら九字の印を結ぶ。

 と、翔の背後に魔破羅おじさんがあらわれる。

 魔破羅「怯むな、翔」
 翔「魔破羅」
 般若「魔破羅?」

 魔破羅も、意味もなく分身しながら九字の印を結ぶ。

 般若「風魔のみがもちうる術を何故?」

 そう言えば、堀田さんは10年前の「忍者キャプター」では、風魔の首領を演じてるんだよね。

 ま、あっちでは風魔が悪役だったのだが。

 般若「唯、結花、由真、気を一にするのだ、あの歪む空間を作らせてはならん」

 
 魔破羅と般若がそれぞれ呪文を唱えると、互いの空間から稲光が走り、相手の「領土」で爆発する。

 
 結花と由真は爆発でふっとばされるが、オーラをまとった翔と唯は立ったまま睨み合う。

 忍びの戦いと言うより、ほとんど「幻魔大戦」の世界だよなぁ。

 
 と、翔の額にも、唯と同じような梵字が浮かび上がる。

 ただし、こちらはバイ(薬師如来)の梵字である。

 唯「なんでじゃ……」
 魔破羅「帰って来い、風間唯、我らが元へ」
 唯「……」
 魔破羅「待っているぞ、唯」

 魔破羅は意外な言葉を口にすると、翔ともども姿を消す。

 唯「そんな、そんな……わちは……わちは一体?」

 姉たちのお陰で立ち直ったかに見えた唯だが、またしても動揺をきたす。

 タイトル表示後、自宅に戻っている結花たち。

 
 由真「あの魔破羅とか言う奴が言ったこと、私たちを陥れようとしている罠に決まってるよ」

 そこへ般若があらわれ、

 般若「唯はどうしている」
 結花「部屋に閉じ篭もったまま」
 由真「帰ってきてから何も食べてないんだよ」

 
 唯(わちは、わちは影かも知れん……誰か教えちくり、わちがなにもんなのか……)

 そろそろ最終回だと言うのに、いまだにうじうじと思い悩んでいる唯。

 さすがにこのメンタルの弱さは、見ていてイライラしてしまう。

 ま、ヒロインが自分の出生の秘密に翻弄されると言うのは、シリーズのお約束だけどね。

 部屋の外に般若たちが来て、

 般若「唯、ひとりで考えるな、悪いほうへと考えを進めるだけだ」

 唯は自分から戸を開けると、

 唯「わちは、もしかしたらわちは……」
 般若「言うな」

 
 結花「話して般若、私たち、もう何を聞いても驚きはしないわ」
 由真「唯と翔の間に何があろうと、私たちは風間三姉妹さ」

 結花たちは、般若に正面切って尋ねるが、

 般若「ならば、唯、結花、由真、お前たちの父・小太郎どのの故郷へ行って見ないか」
 結花「風魔の里へ?」
 般若「そうだ」
 結花「何をしろって言うの」
 般若「お前たち自身の手で梵字の謎を解き明かすのだ。翔の額に出た梵字の謎も解けるやも知れん」

 般若、この期に及んでも、自分で説明しようとはせず、三人にまわりくどい方法を勧めるのだった。

 三人も、ほんとは「いいからはよ話せ」と言う気持ちで一杯だったと思われるが、

 唯「いっちゃる、わちひとりでも風魔の里、いっちゃる」

 宿命(シナリオ)には逆らえず、結局風魔の里へ行くことになるのだった。

 般若「結花、お前がかつて訪ねたヤエというもの」
 結花「ヤエおばあさん?」
 般若「そのヤエと言うものが、あるお方にお前たちを導いてくれるだろう」
 唯「あるお方?」
 般若「私たち風魔のものに道をとき、育てて下さったお方だ、帯庵殿もお前たちの父・小太郎殿も……だが、世に絶望され、風魔の里の奥深くひとりお隠れになってしまった。ヤエさんならそのお方の居場所を知ってるかも知れん」

 とにかくまわりくどいことが好きな般若は、そう言って三人を送り出す。

 この辺、あっちへ行ったりこっちへ行ったり、謎を解くためにどえらい苦労をさせられるRPGのクエストに近いものがあるな。

 しかし、小太郎はともかく、帯庵は年齢的にはその「お方」と同年輩なので、帯庵まで「育て」られたと言うのは変じゃないか?

 一方、影のアジトでは、

 
 魔破羅「地妖、風間三姉妹が風魔の里へ向かった、おそらく、梵字の秘密を知るものを探しだそうとしているに違いない。三姉妹、結束をより強固なものとする前に梵字の秘密を知るものを殺せ」

 と言うのだが、ぶっちゃけ、梵字のことは般若も帯庵も知ってる訳で、なんとなく間の抜けた命令に聞こえてしまう。

 仮に「知るもの」を殺したところで、般若からじかに教えられたら同じことじゃないかと。

 あと、「おそらく~違いない」って、日本語としておかしいよね。

 魔破羅「風間唯を倒すも、動揺を利用すればたやすいであろう」

 地妖が台座に乗せられて下がると、翔たちがおりてくる。

 
 翔「魔破羅、はっきりと教えてたも、風間唯、我の元へ帰って来いとはどういう意味じゃ?」
 魔破羅「そのままとればよいのです」
 翔「あれは真実と申すか」
 魔破羅「かもしれませんな、もしあの荒れ野での時、姫様と風間唯が戦い続けておれば互いに倒れたでありましょう」
 翔「ありえぬ、魔破羅が引かねばわらわは必ずや風間唯を……倒しておったであろう」

 自信たっぷりに言う翔であったが、魔破羅は首を横に振ると、

 魔破羅「そう簡単にはゆきますまい、姫様、世にヴァジュラを手にすることの出来るえらばれしものは二人おります」
 翔「わらわと、風間唯……」

 
 魔破羅「いえ、車だん吉です」

 
 翔「なんでだよっ!!」

 と言うようなギャグを、以前レビューしたときにも書いた記憶が……

 さて、三人は、軽トラの荷台に揺られて風魔の里に向かっていた。

 朧のような濃い霧の中、前方で工事をしている作業員の姿が見える。

 
 と、ひとりの坊さんが向こうから歩いてくるが、トラックと擦れ違いざま、網代笠を運転席に投げつけ、運転手を気絶させる。

 無論、それが地妖であった。

 どうでもいいが、いくら夏場とは言え、こんなところにセーラー服で来るなよ……

 トラックが停まると、工事をしていた人たちが忍び姿になって襲ってくる。

 三人は荷台から降り、武器を手に身構えるが、

 地妖「唯様には手を出すな!! 唯様は我らが仲間だ」

 唯の心を掻き乱し三姉妹を分断するために、地妖がわざとそんなことを言う。

 唯「嘘じゃ、嘘じゃ、嘘じゃ」

 唯、叫びながらヨーヨーを投げつけるが、地妖の体は恐ろしく頑丈で、ヨーヨーをまともに食らっても涼しい顔をしている。

 地妖「そうです、唯様、人を憎悪なされ、その力が影としてのあなたを育てるのです」
 唯「しゃからしかっ」
 地妖「さあ、もっと打ちなされ」
 唯「……」

 歓喜の笑みを浮かべて促す地妖の姿に、ヨーヨーを握り締め、動かなくなる唯。

 結花と由真が唯の脇に立ち、

 結花「唯、こいつは私たちが倒すわ」
 由真「任しときな」

 
 地妖、煙玉を投げつけるが、

 
 地妖(きゃっ!!)

 その爆発に、自分が驚いてしまい、思わずオネエっぽい仕草になる。

 言い忘れていたが、地妖を演じるのは「マシンマン」のトンチンカンこと、大島宇三郎さん。

 煙が晴れると、すでに地妖の姿は消えていた。

 地妖の声「唯様、またお迎えに参ります」

 
 唯「聞きとうない!!」

 ジャスピオンの変身ポーズのような恰好で、その場に座り込む唯。

 
 結花&由真(メンタル弱過ぎだろ……)

 さすがの結花と由真も、いささか呆れ顔。

 ともあれ、三人は、風魔の里へ辿り着く。

 結花「ここから風間町よ」
 由真「ここがおやじの生まれた風魔の里か」

 由真は、里帰りに来たような顔をするが、唯は相変わらず沈んでいた。

 その肩に手を置き、

 結花「唯……」
 唯「……」

 唯も無言で頷く。

 
 村の中を歩く三人。

 さっきも書いたが、こんな山奥にそんなカッコで来るなよ……

 手ブラ、いや、手ぶらと言うのも、旅と言うものを舐めているとしか思えない。

 唯(もしわちが影じゃったら、わちのために死んでいったひとたちはどうなるんじゃ)

 礼亜たちのことを思い浮かべる唯だったが、「どうにもならない」としか言いようがない。

 何故なら、「影」と言うのは人種や民族のことではなく、世界征服と言うしょうもない野望を旗印に結託した徒党なので、その人物が影であるかどうかは、本人の考えや行動によって決まるからである。

 それはともかく、三人はすぐにヤエに会うことができた。

 
 唯「あんたがヤエばあさんじゃね」
 ヤエ「唯さんだね、由真さんかね」
 唯「わちら梵字の秘密をしっちょるちゅう人に会いたいんじゃけど」
 ヤエ「へっ、長老に」
 唯「会ってわちがなにものなのか知りたいんじゃ……こっから遠いんか、教えちくり、な、長老はどこにいるんじゃ、教えちくりよ」

 唯が興奮気味に捲くし立てるが、ヤエばあさんはあっけに取られたように唯の顔を見るばかり。

 多分、何言ってるのか分からなかったんじゃないかと……

 ワシらは唯の方言に慣れてるけど、初対面の人に「おしえちくり」とか言ってもねえ……

 つーか、少しは標準語を喋ろうと言う努力をせいっ!!

 
 老人「やかましいのう!!」

 と、家の中から白髪の老人が出てくる。

 老人「全く、いい心持ちで寝ていたのに……長老に会いに来たのか」
 唯「おじいさん、しっちょると」
 老人「ああ、時々話し相手に行ってやっとる」
 唯「連れてっちくり、案内しちくり」
 老人「案内してやってもいいが、その前にまずメシ、ばあさんメシ」
 ヤエ「はい」

 ヤエの連れ合いらしき老人を演じるのは、名優・奥村公延さん。

 唯「メシなんかどうでもいいじゃろー、すぐ会いたいんじゃ」
 老人「いやぁ、すぐに会えるようなところには住んでおらんのだ」

 居ても立ってもいられないというように老人の腕を引っ張る唯だったが、老人はあくまでメシを優先させる。

 
 結花と由真もお相伴にあずかるが、唯は食事どころではないとばかりに離れたところに座っている。

 老人「どうして食わんのじゃ」
 唯「はよう出発しようや、おじいさん」
 老人「慌てんでも長老は逃げやせん」
 唯「わちはいそいどるんじゃ!!」

 
 その後、4人は長老のところに向かって出発するが、「すぐに会えるようなところには住んでおらん」と言うのはほんとだったらしく、その日のうちには着かず、野宿をすることになる。

 しかし、くどいようだが、いくら8月とは言え、山の中で一夜明かすのに、セーラー服姿はないよなぁ。

 風邪引くで。

 結花と由真はすぐ眠りに就くが、唯はなかなか寝ようとしない。

 老人「何をひとりで悩んでおる」
 唯「わちらの体に梵字があるんじゃけど、それがどういう意味なのかを聞きたいんじゃ」
 老人「それを知ったらどうなるんじゃ」
 唯「世の中を乱すものをやっつけられる」
 老人「誰が」
 唯「わちが」
 老人「お前ひとりでか? どうしてそんな秘密を知らなきゃならんのじゃ」
 唯「自分はその仲間かも知れん」
 老人「仲間だったら戦えんのか」
 唯「そんげつなこつじゃなか!! つらいんじゃ、こんげな気持ちのまま、姉ちゃんたちと一緒にいるのは……」

 人徳と言うものか、初対面の相手に自分の気持ちを素直に吐露する唯であった。

 翌朝、4人は、渓谷に架けられた長い吊り橋の前までやってくる。

 老人「この吊り橋の先にある三段の滝のそばに長老が住んでおる」

 
 唯「……」

 
 由真「……」

 
 結花「……」

 三人の顔がアップになるのだが、結花だけ明らかに眠そうであった。

 と、橋の前に地妖とその部下たちがあらわれる。

 
 地妖「唯様、この橋を渡ってはいけません、帰りましょう、影の世界へ」
 唯「……」

 結花と由真は忍びたちと戦うが、唯は何もせずに突っ立っている。

 しかし、仮にも風魔の本拠地なのに、影の忍びが好き勝手に入り込めるというのは、いささか問題ではあるまいか。

 老人「何をためらっておるのじゃ、早く橋を渡り、長老に会って来い」

 木の幹に隠れながら、唯をけしかけるようにせかす老人。

 老人「今のままのお前では足手まといだ。早くひとりで橋を渡って来い」

 
 結花「唯、早く行きなさい」
 由真「ここは任せな!!」

 姉たちの言葉に背中を押されるように、唯は思い切って駆け出し、橋を渡り始める。

 
 しかし、こんな吊り橋の上を全力疾走すると言うのは、かなり怖いよね。

 浅香さんだから可能な撮影だろう。

 結花と由真は奮戦するが、劣勢は明らかであった。

 
 唯「……」

 唯、突然、橋の上で立ち止まり、後ろを振り向く。

 自分のために必死で戦っている二人の姿に、前回、自分のピンチに駆けつけてくれた二人の姿が重なる。

 唯(わちのこれまでの戦いは、一体なんだったんじゃ……)

 唯、グローブを嵌めて戦闘スタイルになると、

 唯「わちは、わちは……わちは行けん、この橋は渡れん、ひとりではこの橋は渡れんのじゃ」

 ヨーヨーを握り締め、元来た方に向かって走り出す。

 
 唯「橋は三人で渡るんじゃ、お前は、お前はわちがぶったおしちゃる」
 地妖「ならば殺すだけよ」

 地妖、でかい手裏剣を投げようとするが、由真がリリアンを投げ、地妖の手首に巻きつける。

 結花が地妖の腹を殴るが、地妖はビクともしない。

 と、老人が網代笠を投げつけて地妖の顔面にヒットさせ、ひるんだところに結花が前蹴りをお見舞いする。

 この連続攻撃には地妖もたまらず、谷底に落ちていく。

 結花「唯、どうして?」
 唯「この橋はひとりで渡ったらいかんのじゃ、三人で行かんと」
 由真「さすが妹だぜ」
 老人「ようそこに気が付いたな」

 と、不意に老人が口調を変えて喋り出す。

 老人「そのことに気が付かない限り、梵字の謎を知ることはかなわなかったろう」
 結花「まさか……」
 由真「長老?」

 そう、その好々爺然とした老人こそ、他ならぬ長老なのだった。

 
 長老「お前はなんでも自分中心に考えておる、それが迷いを生み、疑惑を生む、わかるかな」
 唯「……」

 長老にずばり弱点を指摘され、無言で頷く唯。

 長老「自分は父の子供であろうとすること、姉たちの妹であろうとすること、そして自分だけが世を救うことのできる人間だと思い込むこと……この橋を渡りきってしまっておればその奢りは消えることはなかったであろう……よう戻って来たな、唯」

 長老は温顔に笑みを浮かべ、唯の行動を讃える。

 しかし、三人は、般若たちからそう言う宿命であるぞよと、ことあるごとに言われてきたのだから、それを「奢り」と表現するのは違和感がある。

 その後、あらためて橋を渡っている4人。

 
 長老「この風魔の里には、180年前から伝わる伝説があるのじゃ。影星あらわれしとき、影星射る三人の戦士あらわれたり、再びつどいしとき、戦士の頬つたう金色の涙に世は救われる。いきとしいけるものが悲しみ苦しんでいたとき、神の声を聞いたひとりの少女が人々を絶望から救ったのじゃ、戦うたびに少女は涙を流し、その涙が流されるたびに人々は美しい光を浴び、かぐわしい匂いに包まれたと言う。そして奇跡が天と地を結びつけたのじゃ、そのとき、少女を助け痛みを分かち合えた二人の少女がいたのじゃ」

 道々、とりとめのない、聞いてるほうが恥ずかしくなるようなファンタジー小説のあらすじっぽい説話を語る長老。

 長老「世に平和が戻りしとき、三人はいずことなく去って行ったが、人々は三人を忘れることがないようにそれぞれの血をもって土を練り、三尊一体像を作ったのじゃ。その伝説の像がこの先の滝の下に……」

 だが、まだしぶとく生きていた地妖が手裏剣を投げてくる。

 長老は、唯たちを庇って胸に手裏剣を受ける。

 うーん、長老にしては弱っちすぎん?

 ま、仮に長老を生かしておくと、これからも奥村さんに出て貰わねばならないので、殺したほうがよかんべということなのだろう。

 三人は地妖と戦い、なーんとなく倒す。

 唯たちは長老の手当てをしようとするが、

 長老「やめなさい」
 唯「じゃけん……」
 長老「ワシの時は終わったのじゃ、人間にはさだめられた命があり、その命が終わる時、仏に帰る。そう言うときに涙を見せてはいけない。滝の下の岩に三人の梵字が……それに触れなされ。梵字は風魔特有のもの、思い迷うことはない」

 
 長老「お前の涙に見送られてワシは……」

 
 長老「がくっ」

 と言う台詞を言わせたくなるほど、ベタな死に方をする長老。

 唯「長老、長老!!」

 つーか、この手裏剣の刺さり具合、どー見ても死にそうにないんですが……

 あるいは、毒でも塗ってあったのだろうか?

 三人が滝に行くと、簡単に岩は見付かる。

 
 三人が自分の梵字に手を触れると、梵字が不思議な光を放つ。

 と、どういう仕組みか、滝の水が引いて行き、

 
 その奥から、左右に脇侍を持つ、不動明王っぽい仏像があらわれる。

 中心の仏像の額には、唯と同じ梵字が刻まれ、向かって右側の仏像の右足には、由真と同じ梵字が、向かって左側の仏像の左腕には結花と同じ梵字がそれぞれ刻まれていた。

 結花「私たちは唯を守るもの」

 
 唯「わちは……」

 要するに、三人は180年前に影を倒した少女たちの生まれ変わりと言うことなのだろう。

 ただ、唯がほんとに知りたかったのは自分の出生の秘密や、翔との関係なのだから、野を越え山越え散々苦労させられた挙句、今更そんなことを教えられてもねえ……と言う感じがしなくはない。

 物語の核心部分となる事実を秘密にして、その暴露を引っ張れるだけ引っ張って視聴者を焦らすのは、作劇上、有効な手段であるが、あまり引っ張りすぎるとかえって視聴者の興味をそいでしまう危険性があることを忘れてはなるまい。

「スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇」 第33話「引き裂かれた三姉妹 唯は妹じゃない!」

2025-04-13 19:45:40 | スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇
 第33話「引き裂かれた三姉妹 唯は妹じゃない!」(1987年8月20日)

 冒頭、暗闇指令のオフィス。

 
 暗闇指令「昨日、あるホテルで政府高官たちが極秘会議を行った。だが何者かの手によって爆薬が仕掛けられた。そればかりでない、都内のいくつかの高校で暴動が起き、永田町界隈でも政治的混乱を狙って暴動が起きた」
 般若「すべては影の仕業?」
 暗闇指令「そうだ」

 何の証拠があるのか、そう言い切っちゃう暗闇指令。

 しかしまぁ、色々と香ばしい台詞である。

 まず「爆破された」ならわかるけど、「爆薬が仕掛けられた」だけでは、結局何がどうなったのかさっぱり分からんではないか。

 あと、「永田町界隈」って、具体的にドコよ?

 また、「高校で暴動」なら、生徒たちが教師相手に騒いだと推測できるが、「政治的混乱を狙って暴動」では、一体誰が、何をしたのか、これまたさっぱり見当がつかない。

 この独特のもどかしさ、多分、脚本は我妻さんだろうなぁ……と思ったら、やっぱりそうだった(神戸一彦氏との共作)

 暗闇指令「水面下から影が遂にその姿をあらわしたのだ……帯庵どのは唯の出生の秘密を娘たち自らの手で解かせろ、そうおっしゃったって言うんだな」
 般若「唯たちが受けるべき試練だと」
 暗闇指令「唯は、三姉妹は必ずこの試練を乗り越える」
 般若「はぁ」
 暗闇指令「なにはどうあれ、信じるしかないじゃないか……つらいなぁ、般若、なんにもしてやれず、ただ待つしかないと言うのは」

 いや、つらいなぁ……じゃなくて。

 いい大人が、女子高生に全てお任せで世界を救ってもらおうって、あまりに情けなくないか?

 まぁ、そもそも、この世界観においては、暗闇指令やスケバン刑事と言う設定自体が不要なので、彼らをせめても仕方ないのだが。

 木の上に登って、帯庵の手紙を思い返している唯。

 帯庵の声「唯よ、翔とお前の雛人形の謎、己自身の力で解き明かすのだ。身を引き裂かれるかも知れん、心が砕かれるやも知れん、しかしそうすることがお前の身に与えられた試練なのだ」

 唯「わちが父ちゃんの子じゃなくて……そう思うと、わち胸がいとうなる。いとうていとうてたまらん。こらえきれんとよ、じいちゃん」

 涙ながらに、心の苦しさを祖父に訴える唯。

 ……

 しかし、そもそも唯は一年前まで、父親がいると言うこと自体知らず、おまけに、一度も顔を合わせることなく父親は死んでるんだから、そこまで深刻に悩むだろうかと言う疑問が湧く。

 これが、父親とずっと暮らしてきた結花や由真なら分かるんだけどね。

 あ、まぁ、唯にとっては、父親のことより、結花たちと血の繋がった姉妹でないと言うことを知るのがつらいのだろう。

 OP後、自宅でもそもそと食事を取っている三姉妹。

 
 唯「由真姉ちゃん、おかわりは?」
 由真「……」

 唯が笑顔で聞くが、由真は無言で立ち上がり、2階に上がろうとする。

 
 唯はつかつかと追いかけ、その顔をいきなりビンタする。

 普段なら大喧嘩になるところだが、由真は驚きの表情を浮かべるだけで無反応。

 唯「殴り返さんとか、もう喧嘩も出来んとやね」
 由真「……」
 唯「わかった、わかったわい」

 唯はヤケクソになったように叫ぶと、家を飛び出す。

 その後、般若が夜道を歩いていると、前方から何かが飛んで来て胸に当たる。

 般若は咄嗟に植え込みの陰に隠れるが、暗闇の中からあらわれたのはヨーヨーを手にした唯だった。

 般若「唯」
 唯「わちのヨーヨー、よけられんのか」
 般若「……」
 唯「あんたに教えられたヨーヨーじゃ」

 唯がもう一度投げるが、般若は首をひねってかわす。

 
 唯「こんげなもの、わちは欲しくなかったわい」
 般若「うっ」

 今度は般若はよけず、自らの胸で受ける。

 
 唯「なんでよけんのじゃっ!!」
 般若(どうせえっちゅうねん、正味の話ぃ……)

 唯が一体何をしたいのか、さっぱり分からない般若さんでした。

 勿論、管理人にも分かりません。

 唯、チェーンを般若の首に巻きつけ、

 唯「わちと翔のあいだには、一体何があるんじゃ、翔はナニモンなんじゃ、どこにおるんじゃ、言え、言え!!」

 駄々っ子のように喚きながら、ギリギリと締め上げるが、

 般若「何も言うことはない」
 唯「あんたが教えてくれんのなら、暗闇に捻じ込んでやる」
 般若「同じコトだ、何があろうと自分の心を見失うな」

 唯はチェーンを外し、反対方向に走り出す。

 しかし、二言目には「試練ぢゃ」で押し通してるけど、何故、般若たちがそこまで頑なに唯と翔の関係を話そうとしないのか、まったく理解できない。

 どう考えても、ネタばらしを温存して、視聴者の興味をつなぎとめようとしているとしか思えないのである。

 おまけに、唯たちは結局自分たちでは突き止められず、36話で帯庵から教えられることになるのだから、もう何をかいわんやである。

 ともあれ、唯は自分で出生の秘密を探るため、ひとり家を出る。

 一方、影の新しいアジト……と言っても、ただの洞窟の中だが、

 
 魔破羅おじさんが、天妖、地妖、人妖と言う三人の刺客を呼び寄せていた。

 魔破羅「これよりこのものたちが姫様に仕えましょう」

 三人が呪文を唱えると、突風が吹く。

 ミヨズ「翔様!!」

 
 魔破羅「てぬるいぞ、ミヨズ、オトヒ、失敗は自らの死となって返って来ることを知れ!!」
 ミヨズ&オトヒ(どういうコト?)

 と言うのは嘘だが、なにが「てぬるい」のか、さっぱりわからないのは確かである。

 ま、前回の烈火衆の失敗か、今までの全ての失敗をひっくるめて二人に「めっ」してるのだろうが。

 魔破羅「今こそ教えましょう、姫様、あなたがなにものか、なにをすべきかを」

 魔破羅が九字の印を結ぶと、翔の額にも唯と同じく梵字が浮かび上がる。

 
 魔破羅「あなたは選ばれしもの、あなたがヴァジュラをその手にしたとき、あなたにかけられし呪いは解け、成長し、世を支配する力が備わろう、男雛、女雛が揃いしときその道は開かれる。風間唯にヴァジュラを取らせてはなりません。天を、地を、人を憎悪し、世を支配なされ、それが宿命」
 翔「それが真実ならば、わらわはわらわの行く道を行こう、魔破羅、わらわらは王の道を行く」
 魔破羅「けぇいっ、すべての時は満ちた、行け、人妖、風間唯の手から男雛を取り戻すのだ」
 ミヨズ&オトヒ(やっぱりバラ売りか……)

 これ、一話でひとりずつ死んで行く奴やん……と、心の中でツッコミを入れる二人であったが、嘘である。

 嘘だけど、えらそうなことを言ってる魔破羅が、自分も「戦力の逐次投入」と言う、「悪の組織」に通有の初歩的な戦術ミスを犯そうとしているのは事実である。

 さて、結花と由真がぼんやりと公園の池を眺めていると、

 
 般若「迷いを捨てろ、結花、由真……唯一人を行かせ、お前たちはそれでいいのか」
 由真「私たちはてめーらの操り人形じゃねえんだよ」

 二人は冷たい視線を投げて、さっさと立ち去ろうとするが、

 般若「自らの運命から逃げるな!!」

 人を自分の思い通りに動かすための、ほとんど禁じ手に近いマジックワードを叫ぶ。

 しかし、真面目な話、なんでもかんでも「運命」やら「宿命」で片付けようとするストーリーは、管理人、嫌いである。

 般若「お前たちが風間小太郎の娘なら父が何を望んでいたか分かる筈だ。お前たちと唯の絆はそんなものだったのか。唯の命はなんとしても守らねばならん。私もまたお前たちの命を守る。今はそれしか言えん、恨む相手が欲しければこの私を恨め、たった一人で耐えている唯を恨むな」

 正直、お前らが秘密を話してくれないから三人が苦しんでんじゃねえのかと思うが、ここは、萩原さんの熱演もあって、それなりに感動的なシーンになっている。

 さて、唯は生まれ育った宮崎に帰り、色んな思い出のある帯庵のお寺にやってくる。

 唯が裏手の池に行くと、見知らぬ坊さんが立っていた。

 
 唯「もしかして、お坊さんはじいちゃんの」
 慈恵「わしは帯庵どのの同門、慈恵じゃ。帯庵どのにあることを託されておんしを待っておった」
 唯「じいちゃんが」

 慈恵、実は人妖の変装である僧を演じるのは、ゴリゴリの悪役俳優・内田勝正さん。

 慈恵は、帯庵の書状に目を通すと、

 
 慈恵「帯庵どのの心中、いかばかりか……唯よ、出生の秘密など、知らなければそれで良かったのだ。しかし、その疑いを持ってしまった以上、おんしはこれから厳しい試練を受けなければならん、試練とは第一に姉たちと袂を分かつことだ。結花と由真はおんしの本当の姉妹ではない」
 唯「……!!」

 薄々察していたこととは言え、はっきり言われてさすがにショックを隠せない唯。

 慈恵「とおからず、おんしの出生の秘密が明らかになったとき姉たちはおんしを憎むことになる。そのときおんしは、たったひとりで翔と立ち向かわなければならなくなる。だがおんしの心は姉たちのことで張り裂け、戦うことすらかなわんじゃろ、だからいまよりその心の中で姉たちへの思いを殺さなければならん」

 だが、唯は、地面にばったり両手を突くと、

 唯「できん、わちにはそんげなことはできん!!」
 慈恵「できる、できんではない、しなければならん、よいか、唯、影はおぬしのように甘くはない。非情にならなければ勝てん」

 CM後、久しぶりに寺に泊まる唯。

 唯(明日、目が醒めたら、慈恵ちゅうお坊さんの言うとおり、姉ちゃんたちのこと、忘れます)

 一年も影と戦いながら、いまだ人を疑うことを知らない唯は、慈恵の言葉を真に受けて、そんなことを思っていた。

 翌朝、早速修行開始。

 
 慈恵「わしを姉たちと思い、かかってこい、真にわしを姉たちとして倒せたとき、おんしは姉たちを忘れることができる。遠慮は要らん、来い」

 唯は慈恵の顔に結花と由真の面影を重ね合わせるが、無論、そう簡単にヨーヨーなど叩き込めようがない。

 慈恵は手にした鉄棒で唯を打ち、

 慈恵「手加減はせん、おんしがこんなら、こっちから行くぞ、命の保証はせん」

 唯、なんとかヨーヨーを飛ばすが、やはり本気で戦えないのか、一方的にボコられ、滝壺に落ちる。

 
 滝壺から這い上がろうとする唯を、鉄棒でぐりぐりする慈恵。

 ……

 いつも思うんですが、影が本気で唯を殺したいのなら、この状況でピストルでも撃てば簡単に殺せたんじゃないかと……

 と、早くも結花と由真がお寺にやってくる。

 二人は突然体に痛みを覚える。

 
 結花「なんだか痛いような」
 由真「ずきんときたぜ」

 二人は知らなかったが、それは唯が慈恵に痛めつけられている場所だった。

 結花「もしかしたら唯が……唯が呼んでる」

 血は繋がってなくても、やはり彼らは感応するものがあるのか、結花は何かに突き動かされるように走り出す。

 由真「姉貴、何処向かって走ってんだよ」
 結花「わからない、でも唯が呼んでる、この方向だって」

 唯は、「もういやじゃ」と言いながらヨーヨーを投げ捨てる。

 それこそ、唯を倒す絶好の機会だと思うのだが、慈恵はそれをわざわざ唯に投げ返す。

 人妖、慈恵になりきってるのか、それとも、ただのバカなのか。

 慈恵「取れ、おんしのたったひとつの身を守る道具ではないか」

 唯は森を抜けて、土砂採掘のためにゴリゴリに削られたような荒地に迷い込む。

 精根尽き果てたように倒れると、

 
 唯「憎まれてもいい、恨まれてもいい、そんでもわちは姉ちゃんらが好きじゃ……会いたか」

 と、背後に慈恵があらわれ、唯が背中に結んでいる雛人形の入った風呂敷包みを奪い取る。

 人妖「風間唯、お前の生の最後に教えてやろう、ワシの名は翔様配下、人妖!!」

 そして正体を明かすと、墨衣を脱ぎ捨て、本来の衣装に変わる。

 人妖「この男雛、貰い受けた」
 唯「お前……」

 漸く自分が騙されていたことを知り、怒りの形相で立ち上がる唯。

 だが、そんな状態でまともに戦えるはずがなく、人妖に投げ飛ばされる。

 唯「うっ……」

 地面を這うようにして逃げようとするが、

 
 その視線の先に、結花と由真がこちらに向かって駆けて来るのが見えた。

 唯「幻?」

 一瞬、姉恋しさのあまりに自分が作り出した幻影かと思ったが、それは紛れもない本物であった。

 ほとんど無抵抗の唯を、鉄棒でボコボコにする人妖。

 結花と由真がそれぞれの武器を投げるが、鉄棒で弾き飛ばされる。

 今更だけど、チンケな武器だよなぁ。

 
 もっとも、人妖の鉄棒にしたところで、甚だ決定力に欠ける武器と言わざるを得ない。

 唯、なんとか人妖から逃れると、姉たちと合流するが、結花も由真もなすすべなく殴り倒される。

 
 この番組……と言うか、この時代のドラマって、女子高生のスカート丈が絶望的なまでに長く、こういうシーンになっても、ぜんっぜん楽しくないんだよね。

 たとえそれが「チェンジマン」のさやかや「ジバン」の洋子先輩のごとき見せパンであったとしても、スカートの下に白いものが見えるか見えないかでは、管理人のやる気も俄然違ってくるのである。

 唯は人妖の体に抱き付き、

 唯「結花姉ちゃん、由真姉ちゃん、こいつは勝てる相手じゃなか、わちは姉ちゃんに会えただけでもういい、逃げてーっ!!」

 自分が犠牲になって姉たちを助けようとするが、あえなく人妖に叩き伏せられる。

 しかし、さっきは決定力不足だと書いたが、もしほんとの鉄棒で殴られたら、少なくとも骨折くらいはしてる筈なんだけどね。

 
 結花「あきらめちゃだめよ!!」

 結花が唯に駆け寄る際、スカートがまくれあがるが、「白いもの」は見えない。

 由真「お前らしくないよ」

 二人は唯を支えて立ち上がると、なおも人妖に戦いを挑む。

 だが、なんだかんだで人妖は強く、三人がかりでも歯が立たない。

 
 由真「これまでかよ、こんな気持ちのままやられるとは思わなかったよ。唯、お前は、お前は妹だよな、最後かもしれないから、そう言えよ、唯!!」
 唯「由真姉ちゃん……」

 観念したようなことを言う由真だったが、結花と一緒に人妖の足にしがみつく。

 
 ここでも結花のスカートが花開くが、やはり「白いもの」は見えない。

 そう、ここまで来れば疑いの余地はない。

 あらかじめ、黒いブルマのような物を履いていやがったのである!!

 ちくしょう。

 管理人は、いま、彼女たちに、いや、全世界の女性たちに、そもそも、下着と言うものは、見えてはいけないところを隠すために履いているのだから、その下着が見えたって、ちっとも恥ずかしいことではないんだよと言うことを教えてあげたい気持ちで一杯です。

 人妖、二人を払い除けると、空高く飛んで、唯に鉄棒を打ち下ろそうとするが、

 
 結花「うっ」

 結花が唯の上に覆い被さり、その体で鉄棒を受け止める。

 ま、これも、ほんとなら、背骨が折れて大変なことになると思うのだが……

 二人は唯を庇うようにして、人妖の前に立ちはだかる。

 唯「結花姉ちゃん、由真姉ちゃん、わちら風間三姉妹じゃ、それでいいんじゃよね」
 結花「唯……」
 唯「今ならやれる、三位一体じゃ」

 唯の言葉に頷くと、

 
 二人はジェットストリームアタックを仕掛けるときのように、唯の前に一列に並ぶ。

 
 人妖の顔がアップになるが、このマスクの部分に、「夜露死苦」とか書いてあったら笑えたと思うのだが、難しいお経の文句が書いてあるだけだった。

 何を仕掛けてくるのかと身構える人妖であったが、

 

 
 ただのでんぐり返しでした。

 さすがにこれは脱力してしまった。

 せめて、まん……いえ、なんでもありません。

 とにかく、人妖の意表をついたのは確かで、結花が折鶴で鉄棒を落とさせると、由真がユリアンで人妖の手首を縛る。

 身動きできない人妖の体に唯のヨーヨーが叩き込まれ、なんとかこの強敵を倒す。

 風呂敷包みを抱いて倒れそうになる唯を見て、慌てて駆け寄る二人。

 
 唯「いつも迷惑ばっかりでごめん」
 結花「良いのよ、唯、もしも兄弟じゃなくても、あなたが傷付いた時、同じ痛みが私たちの体にも走ったわ」
 唯「……」
 結花「それだけでいいのよ、もう……唯、私はあなたと過ごしてきた時間を、あなたと作ってきた記憶を信じるわ」
 由真「そういうことだよ」

 三人は引き揚げようとするが、

 
 白いワンピースに白い帽子を被った女の子が、大きな花を持ってどこからともなくあらわれる。

 女の子が倒れている人妖に花を向けると、花弁から金粉のようなものが噴射される。

 人妖「うあーっ!!」

 人妖は、一声うめくと息絶える。

 いつものことだが、「悪の組織」は人材を大事にしない。

 負けたとは言え、あそこまで三人を追い詰めた人妖である。助けてやれば、今後も大きな戦力になったであろうに……

 女の子は、花を投げて捨ててこちらを向くが、

 
 無論、それは、翔の変装であった。

 唯「翔……」

 いつもあの変なメイクで損しているが、やっぱり林美穂さんって綺麗だよね。

 もっと頻繁にこういう姿を見せていれば、真性ロリコン戦士たちへのアピールともなり、視聴率向上に貢献したであろうに……

 翔と唯たちが睨み合っているところで「つづく」のであった。