空井戸

小石を投げ込んでみても水音は聞こえない

好奇心は猫を殺さない

2006-10-21 07:59:20 | Weblog
「コーキシン」って初耳だったので調べてみると、宮崎雅雄という人が2003年度に岩手大大学院連合農学研究科の博士論文としてまとめた「ネコの新規尿主要タンパク質“コーキシン”の発見と生理機能に関する研究 (Studies on the finding and physiological function of cauxin that is a novel major urinary protein of domestic cats.)」の中で、著者自らが命名したものらしい。

で、日本獣医学会が2004年9月に北大で開いた学術集会で、大学院を出て理研に入った宮崎氏を中心とする研究チームが「ネコの尿に高濃度排泄される新規タンパク質Cauxin(好奇心)の発見」という演題で講演をしている。

つまり、コーキシンは「好奇心」に由来して付けられた名前みたい。
どーりでどこかで聞いたような言葉の響きだと思った。
新聞記事を最初に読んだときは、ロシア語みたいだな、と思っちゃったけど。
それにしてもコーキシン命名の個人的背景がちょっと気になるな。

ついでにコーキシン(Cauxin)について、2005年12月に東大で開かれた第298回Zoological Conferenceで宮崎氏が行った講演の講演要旨にはこんなことが書いてあります。


テリトリーをもつ動物は、種特異的な匂いやフェロモンを種内間コミュニケーションの重要な媒体として使用している。これらの媒体は、尿や皮脂腺、生殖腺からの分泌物に含まれておりその生合成・分泌機構は、各動物が進化の過程で独自に獲得し厳密に制御されているものと考えられる。

ネコは、我々にもっとも身近な動物の一種である。オスネコは性成熟すると特有の匂いを発する尿をマーキングしてテリトリーを確保する。この現象は広く一般に知られているがマーキング物質の分子種やその産生系についてはほとんど知られていない。本セミナーでは、ネコ特異的な尿中タンパク質を発見した経緯とそれが種特異的な匂い物質の生成過程に重要な役割を果たしていることが明らかになったので報告する。
タンパク尿は腎臓病の指標として位置づけられている。しかし我々は、オスネコが生理的に高濃度のタンパク尿を排泄していることに着目して尿中タンパク質の分析を行い腎臓由来の新規タンパク質(Cauxin)を発見した。Cauxinはカルボキシルエステラーゼ様の性質を有しており尿中酵素として機能していることが示唆された。そこでCauxinの尿中基質および分解産物の検索を行った結果Cauxinがネコ特異的な硫黄含有アミノ酸フェリニンの生成過程に関与していることが明らかになった。フェリニンの生物活性は現在検討中であるがその水溶液の匂い成分の分析から3メルカプト-3メチルブタノールが検出され一連のメカニズムがネコの種特異的な尿臭産生に重要であることが示唆された。



ネコの尿が臭い原因、理研・岩手大チームが解明 : 科学 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 ネコのおしっこが臭いのはなぜ?――。理化学研究所と岩手大の研究チームが、ネコの尿がにおう生理的な仕組みを解明し、米専門誌のオンライン版に21日発表する。将来、家の中で暮らすペットのネコの尿臭を減らすことができるかもしれない。

 人間を含む哺乳(ほにゅう)動物は、腎臓の病気になるとたんぱく質が大量に尿中に出るが、ネコは健康でも大量のたんぱく質を含む尿を排せつする。研究チームは、ネコの腎臓から分泌される「コーキシン」というたんぱく質が、尿中で「フェリニン」というアミノ酸を作ることを確認。さらにフェリニンが分解されてできる硫黄を含む揮発性の物質が、独特のにおいの元となっていることを突き止めた。
(2006年10月21日3時1分 読売新聞)


朝日は「好奇心」を調べたんだね。でも宮崎氏の名前はないね。

asahi.com:猫の臭い尿、特別なたんぱく質が原因 岩手大など解明 - 社会

2006年10月21日08時00分

 猫の尿のにおいが強いのは、尿に含まれる特別なたんぱく質のせいであることがわかった。岩手大の平秀晴教授らと理化学研究所のグループが、米科学誌ケミストリー&バイオロジーの10月号に発表する。

 健康な動物では、尿の中にはたんぱく質はほとんど出ない。ところが猫は、大量のたんぱく質が含まれている。

 グループは03年に、このたんぱく質が腎臓でつくられていることを突き止め、コーキシンと名づけた。猫は好奇心が強いからだ。今回は、これがフェリニンというアミノ酸を作り出すのを助けていることを発見した。

 フェリニンは縄張りを示すにおい物質や、異性を引きつけるフェロモンの元になるといわれる。

 コーキシンとフェリニンは、生後3カ月から尿内に現れ、次第に増える。雄は多く、雌や去勢した雄では少ないこともわかった。雌猫に比べ雄猫のにおいが強い理由の一つとみられる。

 グループの山下哲郎岩手大学助教授は「コーキシンの合成をじゃまする方法を見つければ、におい対策に役立つ」と話している。

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