瀬戸の住職

瀬戸内のちいさな島。そこに暮らす住職の日常。

終戦の日に

2014-08-18 | Weblog
第二次世界大戦終戦の日8/15、ある老翁が一生の最期を迎えた。
享年95。

老翁は伯方島木浦地区の旧家に生まれ、後に近所の、これも旧家に婿に入り家名を守ってこられた。
一代を農業を生業として黙々と働いてこられたその生き様は立派だった。
因みに老翁が継がれた家は、過去に禅興寺の7代目の住職ほか歴代住職の弟子も輩出しており、寺との縁も深い。

大戦時には徴兵され、南方の戦地にも赴いたという。
そこは想像を絶する激戦地で、隊を離れて用事を済ませ還ってみると、隊が全滅していたという体験をお聞きした。
終戦後1年間は捕虜として拘束されていたそうだ。

法事などでお会いした際、幾度か戦時中のことをお訊ねしたことがあるが、
「いまはそういうのは流行らんから」
と、話したがらない様子だった。
若い私では聴き手として不足だったか、その目で見てきた光景は言葉では伝えきれないと考えたか。
生前ご家族にも戦時の辛いことは余り話されなかったそうだ。

老翁が九死に一生を得て長らえた命を、終戦日にお返しして旅だっていかれたのは何やら不思議だ。
往時を知る方々は年々歳を重ね、次第に戦争を知らない世代ばかりとなってゆく。

老翁の心中をおもんばかるに、「戦争はしてはいけない」という想いに尽きるのではなかろうか。