瀬戸の住職

瀬戸内のちいさな島。そこに暮らす住職の日常。

賞桜

2019-04-12 | Weblog
当地伯方島の開き山は桜の名所です。
入場料も駐車料金もインターチェンジ付近からの送迎バスも、全て無料という、神対応で愛媛第2位の人気花見スポットとなったとか。
道路の渋滞がすごいとか日中はとても花見に行けないとか、島民の恨み節が漏れ聞こえてまいります。
ということで、今年も夜桜鑑賞に開き山へ参りました。

中国秦の時代、徐福という人物がいました。
秦の皇帝は始皇帝。
広大な土地を手中に収め、最後に必要としたのが“永遠の命”“不老不死”でした。
始皇帝の命を受け“仙薬”を探しの旅に出た徐福は東へ向かい、海を越え、日本に辿り着きました。
そこで徐福が詠んだ詩

西土牡丹徒自誇(西土の牡丹はいたずらに自らを誇る)
不知東海有名葩(東海に名葩あるを知らざればなり)
徐生当日求仙處(徐生当日 仙を求めしところ)
看做祥雲是此花(看て祥雲となせるは これこの花)

西の国(中国)の牡丹は誇らしげに咲いているが、それは東の国(日本)に名葩(素晴らしい景色)があるのを知らないからだ。
わたくし徐福はこの日、皇帝の命により仙薬を求めて辿り着いたこの地で、まるで祥雲のように咲き乱れるこの花に心惹かれている。

凡そこのような意味でしょうか。
徐福の使命は“永遠の命”を持ち帰ることだったはずなのに、“儚くも美しい”桜に心惹かれたとは皮肉な話です。

この詩が好きで暗唱するほどで、インスパイアされた私も桜の詩を詠みました。

【賞桜】
望汐丘陵万朶桜(汐を望む丘陵 万朶の桜)
恰如仙島瑞雲縈(あたかも仙島に瑞雲めぐるが如し)
酣歌管舞誰知刻(酣歌 管舞 誰か刻を知らん)
花影飛過頭上軽(花影は頭上を飛んで過ぎて軽し)

満開の桜花は島の丘をぐるっとめぐる祥雲瑞雲のごとき美しさです。
しかし惜しくもすぐに散ってしまいます。
また来年。