瀬戸の住職

瀬戸内のちいさな島。そこに暮らす住職の日常。

永代供養と墓じまい

2018-04-10 | Weblog
永代供養や墓じまいのご相談が増え、我が国が抱える最大級の問題と言える少子化を実感するこの頃です。
相談を持ち込まれる方々に共通してあるのが「次の世代に迷惑を掛けられない」という思いのようです。まるで負の遺産のように聞こえますが、果たしてそうでしょうか。

若い時期は先祖供養に関心が無くとも、加齢とともに自らの終焉とその後が気になる時期は誰にでも訪れます。
自分のルーツを辿りたいと思う人も多く、毎年数件はご先祖のことや墓所の場所に関するお問い合わせがあります。
そして散骨をしない限り、誰もが収まる場所が必要になります。
血縁の方があるのに、独断で永代供養や墓じまいをするのは、先祖祀りをする子孫の権利と将来の住まい(お墓)を奪う行為とも思います。

「○○家は自分の代で終わり」という声も多く聞こえますが、家の括りを取り払って考えれば、杞憂が晴れる方も多いのではないでしょうか。
そもそも、この少子社会において、男子が家を継ぐ、または養子縁組をして継がせて家名を守っていく、ということはかなり困難です。
「二軒以上の先祖を祀ると先祖どうしがケンカする」などと言う方もありますが、私はそんな場面に出会ったことがありません。

ただ、次世代の方へ渡すために、お祀りをし易くする工夫は必要です。
仏壇店にはマンション住まいでも設置出来るコンパクトなお仏壇やモダンなデザイン、現代のライフスタイルに合った物が置かれています。
お位牌が沢山ある場合は、古い方から纏めていっても構いません。
お勧めは過去帳が入るタイプのお位牌で、ご戒名やご命日とともに経歴なども記入しておけば、後の人が親近感を抱いてくれると思います。
ご依頼があれば住職がご記入いたします。

墓石については、姓が違う方も納骨出来るよう、拝み石に家名を入れないケースもあります。
お題目「南無釋迦牟尼佛」や好みの一文字を刻んで、傍らに石板を据えて俗名ご戒名ご命日を刻んだお墓を見かけるようになりました。

ただ、最も大切なのは、《ご先祖参りをする心》を子孫へと繋いでいくことでしょう。

やむを得ず永代供養や墓じまいをして、他所の親族の近所のお寺や霊園に申し込まれる場合もありますが、ここにも注意が必要です。
時代のニーズに適うべく鉄筋造りの位牌堂納骨堂が増え広告されていますが、これに私は懐疑的です。
新築完成時には綺麗な建物も、四~五十年後には大規模な補修や建て替え工事が待っています。
その時点に費用が残っているでしょうか。
いつまでも新規の申し込みが続き運営費が捻出出来るでしょうか。
お寺が寄付を集めようにも、お檀家さんにとっては寄付する筋合いの無い建物、ということにならないでしょうか。
立派な造りでなくとも、お寺の建物の中で、仏像や歴代の住職さんに近い所に永代供養スペースを設けてお祀りされているようなお寺ならば、お寺が続く限りは一緒にお祀りしていけると思います。

禅興寺の永代供養は、本堂の奥手と地蔵堂に、複数のお位牌はひとつに作り直して頂いてからお預かりしています。
ご遺骨預かりは年限を設けてあり、やがて合同墓《ふるさと》へお移り頂きます。
私の没後遺骨は歴代住職の墓に収まると思いますが、分骨して《ふるさと》にも納めて貰います。
将来は遊歩道と樹木埋葬地を併設するような埋葬方法が出来ればと考えています。