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美談の本質 ムチュア・マドリッド・オープン 決勝【N・ジョコビッチ vs A・マレー】

2016年05月11日 14時44分42秒 | テニス
マレーの美談についての所感、決勝は簡単回顧で。

6-2 3-6 6-3

1セット目はマレーがミスが多く手ごたえが無かった。
これなら錦織でも余裕で勝てるような印象でジョコが取った。
しかし2セット目はジョコにミスが増えた。
これまたこの調子のジョコなら錦織は勝てるなって感じた。
逆にマレーのミスは減ってきていた。
3セット目は互いにミスは大分減ったが
どっちが押し込むのかという強いラリーが増えた。
それまでは緩いラリーが多くミス待ちの展開だった。

そのように3セットとも様相が違う展開で、
1セット目は1・5ゲームのブレークを活かしてジョコ。
2セット目は4ゲームの虎の子のブレークを活かしマレー。
3セット目は力でジョコがねじ伏せて1つのブレーク合戦あったが
6ゲームのブレークを活かして貫禄の勝利。

最終戦だけにストレートで勝ち進んでも疲労蓄積もあり
両者いまいちではあったが、圧巻のラリーや
ネット際の攻防など、互いに引かない見事な駆け引きが
随所に見られて、ポイントで並ばれて3位に交代したが
ランク1位と2位の激突なんだと感じさせる試合でもあった。
そのひとつの象徴として、セットを落としてないジョコが
この試合で初めて1セット落としたのだから。
錦織は追い詰めたけどタイブレークを物にできなかった。
そこがマレーとの差なのかもしれない。

ジョコが失った2セット目はらしからぬ振る舞いだった。
このゲームは2つのダブルフォールトで落としたのだ。
1ゲーム中に2つとは近年見たことがない。
どうも打つ瞬間にマレーが前に出てくる仕草が
目に入って気になったか精細を欠いたように見えた。
それだけナーバスになっていたということだが、
マレーの調子が上がってきたこととブレークを奪いに行って
奪えずに、粘って好プレーを見せられキープされたこと、
その辺があるのだと思う。
とにかくジョコらしからぬ印象のセットでマレーが取り返した。

3セット目はブレーク合戦は互いの意地だった。
ブレークバックはマレーだからそこは見事。
自分は1ポイントしか取れずブレークされた直後のゲーム。
凄い打ち合いを制して物にした。
しかし以降ジョコにベクトルは傾く。
6ゲーム目はバックのオンライン見事に決めブレーク。
その後ブレークバックさせずキープキープ。
で、迎えた第9ゲームはジョコのサーヴィングフォーザマッチ。
マレーにはブレークしか許されない。
実際ギア全開のマレーは5回もブレークポイントを握るが
決めきることが出来なかった。(錦織を見ているかのよう)
対してジョコはデュース以降2回のマッチを握ったが
その2回目で慌てずマレーのミスを待ってしとめた。
特に難しいボールでもなんでもなかったが、
マレーのストレートのバックはネットに掛かる
アンフォーストエラーのあっけない幕切れ。
マレーが意地でブレークバックしていたら、
4ゲームマレーが連取で7-5の大逆転勝利とはさすがに思えんが、
タイブレークになったか?結果はどっちでもおかしくない。
そんな展開も見てみたかったので残念だった。

そしてニュースにもなったマレーの美談。
3セット目の第6ゲームでマレーがブレークを決められた後の
第7ゲームでのこと。
ジョコのサーブで30-15としていた時に主審が言った。
「ジョコビッチ タイムヴァイオレーション」
どこかで警告を受けていたか、遅延行為は一発で
1ポイント失うのか細かく判らないのだが、
とにかく30-30になった。
そういうわけでこれはジョコに大きなマイナスで、
ただの1ポイントではないと。
ブレークバックを許す致命的な1ポイントだと。
そういう風に直感的に思った。
でもジョコはフォニーニではなかった。
フォニーニは錦織戦でコード・バイオレーション。
キープしてタイブレークにしないとならない
大事なサービスゲームなのに自分が潰した。
それでやる気無くしてラブゲームでブレークされ敗退。
そんなのとは雲泥の差でジョコは以降あっさりキープした。

しかしこれ、マレーの美談のように言われるが、
マレーのしたたかさが実を結んだというようにも見えた。
主審がそれを告げたときに、マレーが反論した。
「彼は5秒前に整っていた。遅らせたのは僕だ」
これが全てだと思う。

レシーバーがセットしなければサーブは打てない。
サーバーの間合いだけではない。
しかも1ゲーム前にブレークされたばかり。
この後直ぐにブレークバックしなければ
相手はジョコだしそのまま持っていかれる危険が高い。
そう感じれば是が非でも8ゲームでブレークバックだ。
それでジョコのペースを乱すのに、靴紐結びなおすとか、
いきなりラケット変えるとか、リズムを狂わせるのは
戦いなんだから当然の仕掛けと思う。

ボウリングでもさっきストライクが出たからと
早く次のボールが投げたいと、ミスした後とは違って思う。
それと同じことで、ブレーク後だからジョコはアゲアゲで
キープするのに小気味いいリズムで決めたいはずなのだ。
だからマレーはそれを崩すことは大命題でもあった。

しかしマレーは腐った男ではない。
目論んだ通りにヤツはバイオレーション取られたぜ!
そういうことは全く思っていない。
だからこそ自分が得したのに、主審それはないだろうと、
志村がいかりやに言う、お前それはないだろうのように言った。
マレーの目的はリズムを崩すことであって、
ペナの1ポイントを奪い取ることではなかったからだ。

逆にこの瞬間にポイントはともかく、マレーの作戦は成功した。
主審のコールによって、ジョコのリズムは完全に崩壊したからだ。
でもそれも又違う。
戦っているのはマレーとジョコであり、
その両者の間には、観客もマーシャルも主審ですら
邪魔することは許されない。
互いに攻め合って崩しあうのが唯一無二。
プレーヤー同士だけのパワーや技術だけじゃない
精神的な戦いの部分。
それに第三者に水を差されたら面白くはない。
こすっからい小者はしめしめなんだろうけど、
一定水準を超えた逸材はこういうものだよ。

なので相手のマイナスを擁護したマレーと称えられるが
そんなことは私はまるで思ってなく、
アスリートとしての志というか資質の高さを
とてつもなく気持ちいいと感じていたと言うことを、
事の本質が届いていなかったり、理解できていない人に
是非伝えたいと思ってキーを叩いたよ。
いわゆる非体育会系等の人には理解できないかもしれないけど、
多くの体育会系はうなづく解釈の話なんだよね。

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