日々草創

「清く、楽しく、気持ち良く」、、、アホのままでもいいんです。

恐怖体験

2009-07-15 | 日記
世の中には、科学では解明できないような出来事がある。

たとえばUFOや幽霊、妖怪などの目撃など、色々な事を例に挙げる事が出来るのだが、残念ながらそれらを完全に証明した人はいない。
実際にそれらを目撃した事のない人からすれば、到底信じる事が出来ないだろうから疑われても仕方が無い。
しかし実際に体験した人からすれば、信じてもらえない行為は非常に残念だろう。
だからそれらの話は科学的根拠を用いず、信じるか、信じないかだけの問題なのである。


去年の夏頃の事。
僕はある日の夜、身の毛もよだつ体験をした。
少なくともこの体験は僕がこの世に生まれて物覚えがついてからは初めてで、もう二度と経験などしたくはない事だ。

あの日は確か台風が近付いてきていた日で、異様なまでの湿気に包まれ、とても寝苦しかったのを憶えている。

深夜3時頃だっただろうか、突然バッチリ目が覚めてしまった僕は、どうにもこうにも寝付けないでいた。
何時かは寝付けるだろうとしばらく布団に入っていたのだが、いつまで経っても寝付けない僕は、仕方なく布団から体を起こし、気分転換にシャワーを浴びる事にしたのだった。

深夜の住宅街は物音ひとつなく、風が全く無いのも手伝って恐いぐらいに静まりかえり、僕がお気に入りにしているシャワールームでさえ無気味に感じるほど静かな夜だった。
そんな中で僕は少しぬる目のお湯を出し、頭の先から全身で浴び始めた。

清々しい水の匂いは、不思議な事に先程まであった漠然とした不安も洗い流し、僕の心の中まで綺麗にしてくれる。

しかしそんな時、誰でもこんな経験はないだろうか?
皆が寝ている深夜帯に一人でシャワーを浴びていた時、背後に何かしら気配を感じる事。
そう、僕もその時、やっぱり感じてしまったのだ。

そのとき僕は大きな一軒家で一人暮らし。
そんな時の不安感は、家族で住んでいる時の数倍はある。
聞こえてくるのはシャワーの音だけで、それ以外は何も無い。
しかし背筋に異様なまでの緊張を感じているのが脳の先まで伝わってくる。
振り返るのが恐い。
何も無くあってほしい。
きっと振り返らずに終えれば、何も無かったかの如く、清々しく部屋に帰る事が出来るだろう。
しかし何も無い事を確認すれば、もっと気分が晴れる筈。
でも振り返るのが恐い。
色んな事が頭を巡り、必要以上にシャワーを浴びる時間だけが過ぎて行く。

そしてついに僕は、一度も振り返る事なくシャワーを浴び終えるのだった。

心も体も清められた僕は、あまりの清々しさに全裸でスキップしながら必要以上におちんちんを揺らし、ベッドルームへ戻って行った。
僕の寝室は16畳ほどある広さで、以前名古屋のテレビ局で大道具さんをやっていた頃のノウハウを駆使し、イタリアン風に仕上げた大のお気に入りの部屋である。
シックな色調のフローリングを床一面に敷き詰めて壁や天井を白一色に塗り潰し、ちょっぴりエロティックな間接照明で天井を照らしている。
そんな中にシンプルなマットだけのベッドとふわふわとしたカーペット、そして少し大きめなスピーカー2つと、その間にオーディオ機器や大量のCDが所狭しと並べてある。
そんなベッドルームに戻った僕は、気分を落ち着かせる為に大量のCDの中からスロージャズをチョイスし、オーディオへSET。

その瞬間である。

突然スピーカーから人の声。

僕は大きな鼓動を鳴らしながら慌ててオーディオを覗き込んだ。
なんと、AMラジオにセットしてあったのだ。

「びっくりしたー・・・」

僕は気持ちを落ち着かせ、CDにセットしてスタートボタンを押す。
その直後、気持ちのイイ音楽がスピーカーから流れ始め、僕の心が一気に和む。
しかし次の瞬間、僕は大変な事を思い出した。

「そーいえば朝一番から大切な仕事があった・・・」

しかし焦りは禁物。焦れば余計目が冴えて眠れなくなってしまう。
僕は一段とスローなフレンチポップをオーディオから流して眠気を誘う事に。
シャワーを浴びて全裸のままの僕は、毛並みがとても気持ちいいカーペットの上で大量のCDを前に、ヤンキー座りでしゃがみ込みながらお目当てのCDを探す。

この時だった。
この瞬間、世にも恐ろしい体験をしたのだ。

「ぷすーーーーーー、ぷりっ。あっ!」

その時、明かにオナラとは違う感触が僕の体を包み込み、その衝撃が脳天まで突き抜けた。

“やばい!!実が出たかも!”

慌てて振り向くと、輝くような毛並みのカーペットの上に小さな黒い物体。
僕は気が遠くなった。
そして慌ててティッシュを探す。
しかしこういう時に限って定位置に見当たらない。
ドタドタと部屋中を駆け回り、やっとの思いでティッシュを見つけた僕は慌ててその黒い物体を拭き取った。
しかし悪い事は連鎖して起こるモノで、あろうことか慌てて拭き取ったが為に大事なカーペットへ刷り込むように拭いてしまったのだ。

“うわっ!!毛並みの奥まで入っちゃった!”

焦りは禁物。僕は心を落ち着かせ、冷静に対処法を考えた。
そしてバケツと雑巾、洗剤を用意し、茶色く染まった箇所の前へ。
こんな醜態の名残を翌日に残す事など出来ない。
僕は必死になって、丁寧に奥の奥まで拭き取っていく。
その作業は困難を極め、蒸し暑い空気の中を全身全霊をかけ、汗だくで続けていった。

匂いがほとんど無くなった頃、外は明るくなっていた。
そして最後、僕はとどめとばかりにファブリーズを吹きかける。
こうして僕の世にも恐ろしい出来事は、心の中へ封印されたのだった。

科学では解明出来ない事。
それは証拠を消し、誰かの心の中へ封印する事で科学の手が及ばなくなるのだ。
あとは、信じるか、信じないかの問題だけなのである。

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