自民党本部が正体不明の“野党デマ攻撃本”を所属議員に配布! 元ネタは運営者情報のない怪しい右派ニュースサイト
先日、自民党が参院選を前にして“失言防止マニュアル”を作成して党内に配布、その内容のトンデモっぷりが大ひんしゅくを買ったが、連中はまったく懲りていないらしい。その記憶も新しい今月中旬、今度は正体不明の発行元による“野党&メディア攻撃”まとめ本を、自民党本部が所属国会議員にバラまいていたことが判明した。
問題の本の名は『フェイク情報が蝕むニッポン トンデモ野党とメディアの非常識』。表題からして胡散臭さが漂っているが、自民党の小野田紀美参院議員が11日、自身のツイッターでこの謎めいた本の写真をアップ。〈頂きました。後で読もう〉とツイートし、一部で物議をかもしていた。さる自民党関係者がこう漏らす。
「10日頃、本部から突然、たくさん送られてきたんだ。党所属の国会議員には全員配っているんじゃないかな。選挙での演説の参考にしろということでしょう」(自民党関係者)
この本の存在自体はすでに一部で報道されているが、今回、本サイトは問題のシロモノを自民関係者から独自に入手。あらためて内容を確認してみた。
まず、手に取って分かるのは、思っていたよりも作りがしっかりしている、ということだ。全部で150ページ近くあり、紙の質も良いのだが、しかし、実はこれ、一般向けには販売されていない。奥付には「terras PRESS」なる聞きなじみのないウェブサイトの名称が記されており、そのサイトからピックアップされた記事を〈見出しを含め、加筆、修正したものを掲載〉しているという。
そこで中身を読んでみると、こちらは想像通りの典型的な“野党攻撃”だ。たとえば「トンデモ野党のご乱心」なる第一章では、「立憲民主・枝野代表の無責任を嗤う」と題して〈辺野古移設への反対活動には過激派も入り込んでいます。枝野氏は、革マル派活動家が浸透しているとされるJR総連などから献金を受けており、革マル派に近いといわれています〉などと記載、ネトウヨ界隈で定番となっている“枝野幸男=革マル”のデマ攻撃そのものである。
さらに枝野代表を風刺したイラストまでついているのだが、その絵はうつろな目で涎をダラダラと垂らしているというもの。頭の横にはクルクルパーマークまで書かれている。別のページには、共産党の志位和夫委員長や国民民主党の玉木雄一郎代表の風刺イラストも挿入されているのだが、誰がどう見ても露骨なほど醜悪に描かれている。一方、安倍晋三首相らしき人物のイラストも登場し、こちらは逆に、誰だかわからないほど精悍な顔立ちにされている。あまりにもあからさますぎて苦笑いするしかない。
他にも、「野党『アベノミクス効果なし』はフェイクニュース」と題して厚労省の毎月勤労統計不正調査問題を打ち消し、〈不適切処理があったことは事実であっても、この間のアベノミクスの効果は疑う余地はありません。もし、野党がアベノミクスの効果に疑念を抱かせるような指摘をするのなら、それはフェイクニュースでしかないのです〉と強弁。また、まるで安倍首相が憑依したかのようなねちっこい朝日新聞バッシングを展開したかと思えば、「国際社会でプレゼンス増す安倍首相」というように“自画自賛”の記述も目立つ。
ようは、文章こそ有象無象のネトウヨまとめサイトと比べれば整ってこそいるが、結局のところ、内容は安倍首相を持ち上げて野党をこき下ろす右派系サイトのソレ。しかし前述したとおり、自民党の小野田紀美議員が嬉々としてツイートしているように、どうも、安倍チルドレンを中心に自民党の議員たちはこの本を大マジで受け止めているらしい。
まったく、こんなものを所属議員に配布している自民党本部の教育レベルの低さがありありと分かるというものだが、さらにこの本には怪しげな秘密が隠されていた。
■本の元ネタは運営者情報も書いていない謎のサイト、検索に引っかからないタグが
というのも、先に触れたように、同書の最後には〈テラスプレス 報道では見えない事実に光を〉というサイト名とともに、インターネットで「テラス PRESS」と検索するように記されている。ところが、実際に検索エンジンにかけても、そのサイトがまったくヒットしないのだ。
いったいどういうことなのか。しようがないので本に記載のあったURLを直接入力すると、実際に「terracePRESS」なるサイトが現れた。サイト自体は2018年の7月から記事の公開を始めた形跡があり、当初は一週間に2、3本、最近ではほぼ毎日更新されている。一見、どこにでもありそうなニュースサイトだった。
が、奇妙なのは、ニュースサイトなら常識的にサイト内に掲載されているはずのものが、どこを探しても見当たらないこと。そう、このサイトには、あるべき運営者情報や問い合わせ用のフォームが存在しないのである。いや、それだけではない。サイトのソースを調べてみると、なんと、意図的にgoogleの検索に引っかからないようにするタグが埋め込まれていたのだ。これはどう考えても不可解だろう。
念のため説明しておくと、本サイトも含め、ニュースや報道を扱うメディアは普通、検索エンジンへ最適化(SEO対策)し、SNSで拡散されることを前提に設計される。ところが、この「terracePRESS」なる“右派政治ニュースサイト”は、そういう当たり前のノウハウとは真逆のことをやっているのである。
実際、公式ツイッターらしきアカウントを調べてみると、経済評論家の上念司氏やYouTuberのKAZUYA、あるいは有名ネトウヨアカウントの「DAPPI」など、その手のネトウヨ界隈をフォローしている一方、本来は読者となるはずのフォロワー数はわずか30名余り。ツイート内容も、公開した記事を機械的に投稿しているだけに見える。
これでは、あえてネット上で見つからないように運営しているとしか思えないだろう。
しかも、「terracePRESS」のサイト内をくまなく探しても、収入源となるはずのウェブ広告の類いが一切ない。つまり、潤沢な資金を持つ何者かが、配信記事が一般には拡散されないことを承知で運営費をつぎ込んでいるとしか思えない。だとすれば、考えられる可能性は、やはり、同サイトの本を所属議員に配布した自民党の関係者がこのサイトの運営に関与し、身内だけで、密かに“野党叩きの作戦指南サイト”として利用している。そういうことではないのか。
■謎のサイトは自民党関係者が運営の説も…自民党に直撃するも「担当者不在」
いずれにしても、サイト運営会社も明示されていない「ニュースサイト」は、それだけでフェイクニュースと見なされる昨今の風潮のなか、よりによって政権与党である自民党が、これをわざわざ紙媒体の形で議員や関係者らに配布しているという事実は看過できるものではない。
そこで、本サイトは当事者に事実を確認するとともに、問題の本『フェイク情報が蝕むニッポン トンデモ野党とメディアの非常識』を議員にバラまいた経緯と目的、そして、その元となったとされるサイト「terrace PRESS」との関係を質すため、自民党本部へ3日間にわたって何度も電話で取材を申し込んだ。ところが、自民党広報は「担当者不在」を理由として事実上、一切の回答をしなかった。
どうも自民党はリテラを無視したいようだが、しかし、本サイトは調査を進めるなかで「terracePRESS」の前身とおぼしきサイトの形跡も発見。さらには、自民党関係者の関与を疑わせる別の情報も得ている。これらについては検証や取材が深まり次第、続報を出す予定だ。
先日、本サイトでも報じたように、自民党と右派系ニュースサイトをめぐっては、“共産党の吉良よし子参議院議員の不倫疑惑”なるデマを発信した「政治知新」というサイトに、菅義偉官房長官に近い自民党県議の弟が関与していることが判明している。
いずれにせよ今後、“自民党とネットニュース”の隠された一面がいっそう浮かび上がってくることは間違いないだろう。
(編集部)
【 所 感 】
長い記事、読んでいただき有難う御座います。
さて、当該記事のいう自民党本部がやっていることとは、これまで〔いわゆる〕左派(戦後、GHQによる日本弱体化計画に則り)の連中が行ってきたことを真似ているにすぎず、まさに莫迦と阿呆の絡み合いであります。
しかも、自民党(ネトウヨ連中)から大バッシングを受けている立憲民主や共産党を含む他の野党の連中なんかにつきましては、国会での質疑や各種政治活動を見ましたとき、与野党が互いにその立場を維持するための工作行為としか思えず、国民の民意というものが全く反映されない、というよりも無視されている現状を考えた時、どうしても既存政党を支持する気にはならないのであります。
おそらく大手マスコミや週刊誌なんかも、こうした与野党の動きを知ってか知らないでか、いわゆる保守系といわゆる左派系に分かれてしまっていると考えます。
そしてこのことは、真の中道、真の保守、真の左派を語る者たちに対する妨害工作ともいえ、われわれ一般国民(有権者)には極めて難しい状況判断というものが求められてくるのです。
ネットや各種情報誌には、様々な情報が流布されており、こうした情報を安易に鵜呑みにするのではなく、個々の感性というものを研ぎ澄ませ、何が真実であるのかを見極める努力をしなければならないと思います。
さらにいえば、耳障りのよい偏った情報や考え方だけでなく、広く多様なものを見聞することも大切なことともいえるのではないでしょうか。
なにはともわれ、国民的議論というものが活発化されることを期待したいものであります。