線香一本…。

おいのわらし、きのうメールよごした…
（うちの子がきのうメールをくれた…）

「もういらないよ、という物ある？」

って、メール出したはんで…
　　　　　　　（出したから）

むったどむったど、ふとじ物持っていぐはんで、確かめでみだ
（いつもいつも、同じ物を持っていくから、確かめてみた）

「お米、余ってたりする？」

面白くておもしろくて、すぐに持って行った
（嬉しくてうれしくて）

すたばって、おいのとっちゃもわらしも、困った時だけ連絡よごす
（だけれども）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（くれる）

そいで思い出した
（それで）

わ、いつでもせがれ、嫁っこ貰ったら、すぐに家、出でいぐはんで
（私はいつでも息子がお嫁さんを貰ったら、すぐに家を出て行くから）

って、みんなさ、しゃべった…
　　　（みんなに）

したっきゃ、おいのとっちゃも、んだ、んだってうなづいだ
（そうしたら、私の夫も、そうだ、そうだってうなづいた）

なしにていえば、わ、なんもしゃべてぐねもの、しゃべって
嫁っこさ、いぐねぐ思われてぐねはんで
（どうしてかというと、私が、なにも言わなくてもいいものを言って
お嫁さんに悪く思われたくないから）

せがれの嫁っこさまで、嫌われてぐね…
　　　　　　（お嫁さんにまで、嫌われたくない…）

おめのばさまにかて、わ、なんぼいぐね思いしたがわがね
（あなたの母親（姑）の為に、私がどれほど辛い思いをしたかわからない）

したはんで、嫁っこさだば、わのような思いさせてぐねの…
（だから、お嫁さんには、私のような思いはさせたくないの…）

わもいづ死ぬがわがねはんで、葬式もなんもいらねはんで
（私もいつ死ぬかわからないから、葬式もなにもいらないからね）

毎日、線香一本あげで拝んでければ、それでいいはんで
　　　　　　　　　　（あげて拝んでくれれば、それでいいから）

なっ…
（ねっ…）


とっちゃはあと１５、６年さねば戻ってこらいね
（夫はあと１５、６年しないと戻ってこられない）

そだだば、せがれの嫁っこ、貰う方がはえ
（それならば、息子のお嫁さんを貰う方が早い）

なしに気がつがねへただべ
（どうしてもっと早く気がつかなかったのかしら）