今回はチベットに侵攻した人民解放軍にスポットを当てて、絶滅収容所の所長に登場人物としての名前を授けたいと思います。
チベット侵攻の歴史は「チベット女戦士アデ」という本に詳しく書かれていますが、それは無学な農村女性の目を通しての詳しさで、中共に反対するグループの中核と見なされた夫が毒殺されたコトで彼女は女戦士となります。
中共は始め、友好的な解放者としてチベット高原にやって来ました。
いきなり僧院を破壊するようなコトはせず、電気や抗生物質などの文明の利器を未開の地にもたらし感謝されました。
僧院はチベット文化の中心で、解放軍兵士の中にはそこに住み込んで文明の伝授に努めた者もおり、彼等はチベット語と仏教を習おうという姿勢すら見せました。
しかし中国全土で既存の権威を「全部ひっくり返す革命」が過熱して常軌を逸して行く中、チベットでも権威を片っ端から弾圧する様になり、僧院は悪の封建勢力の中心として破壊されて、解放軍とチベット人の関係は友好から憎しみに逆転してしまいました。
人民解放軍の用いた弾圧方法として、毒殺はとても便利な手段でした。
それは証拠が上がりずらく、医療解剖は解放軍が行い別の死因をでっち上げられ、善人の仮面を被ったまま支配を強められたからです。
毒殺はかなり頻繁に行われ、それはチベット人を怒らせて戦いに追い込み、人民解放軍に制圧する口実を与えます...
ネットでは本ほど詳細な記述はありませんが、広い視野から多面的にチベット侵略を論じています。
このコラムではチベット人弾圧の第一人者として陳全国(チン-チェングオ)が紹介されており、彼は今ではウイグル人弾圧の指揮を取ってる様です。
物語ではこの人物に因んで、絶滅収容所の所長を王全国と命名しようかと思います。
王(ワン)は侵攻の初期からチベットで人心掌握の活動を行い、僧院に住み込んでチベット語と仏教の勉強もしました。
全国は熱心な共産主義者で、人民解放軍の正義を信じて活動し部隊の志気を高めます。
そうした活躍が評価されて収容所所長にまで出世しますが、中央からの「絶滅」方針には大きな戸惑いを覚えます。
全国では反革命罪で「人民の敵」とされた人達がみんな釈放されているのに、東チベットの優樹では人民そのものの半分(男性)が収容所にぶち込まれたまま絶滅させられつつあり、その方針が変更される兆しは観られませんでした。
この状況下で、収容所所長の苦悩は如何ばかりだったか、これは言葉で言い尽くせるようなモノではなかったと想像します。
そんな「時」に、山の頂きから収容所全体に太鼓と祈りの声が響き渡ります。
王は勿論すぐに、その反動的宗教による挑発行為を行う犯人を捕まえよと命令しますが、その近くの山はかなり迂回しなければ頂上に上がれず、行善の唱題行はたっぷり2時間も続きます。
その太鼓と声に合わせて、打ちひしがれていた囚人達も真言を唱え出し、それはいくら脅しても痛めつけても止みませんでした。
全国は、囚人達の顔に希望の光が現れるのを初めて観て、その光は次第に彼の心にも希望の形を作り始めます。