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真の動物福祉牧場を目指して

天臣の敗北

医者にとって、救おうとした患者が亡くなる事は敗北以外の何ものでもありません。 天臣はこれまで殆ど負け知らずの名医で、浦上のお年寄り達は彼のお陰で最期まで寝たきりにならずに天寿を全うして来ました。
しかしそんな彼の腕をもってしても、原爆による火傷と被曝には太刀打ちできず、してあげられたのは針麻酔で痛みを取って安らかに逝かせてあげる事くらいでした。
被曝した患者は無傷でもどんどん衰弱して死んで行きます。それは天臣達と同じく救援に駆けつけた医者やナース達をも蝕み、次々と命を奪って行きました。天臣はあまりにも多くの悔しい敗北を味わい、燃え尽きるまで働きした。 彼の髪は五十にして未だ真っ黒な長髪だったのに、一遍に真っ白になっていずれ全て抜け落ちてしまいます。

長崎に原爆が落ちた事を知っても、目の前の必死に救おうとしている患者達を放っておける訳もなく、慎語だけ急いで引き返します。
アメリカ軍が広島に乗り込んで来る直前まで天臣は患者達に痛みを減らす針と気功を施し、アメリカとの対峙はこの時は避けようと考え広島を後にします。

アメリカ軍は占領後すぐに日本中に駐留して来たので、天臣はそれを避けるように北へと向かい北方領土へ渡ります。
彼はアメリカとは必ず対峙しなければならないが、今日本で軍隊を相手に対峙するのではなく、アメリカ本土に乗り込み原爆を落とした真の責任者と対峙すべきだと考えます。

この頃、北方領土はちょうどロシアに占領されつつあり、日本人はみんな追い払われてその資産は奪われました。
天臣は中国人なので問題なく旅ができ、極東のロシア人はしばしば中国語を解します。彼は植民されたばかりの貧しい人々をタダで治療してあげて旅の便宜を得、凍ったベーリング海峡を歩いて渡ります。
途中シロクマに襲われ、それを針で倒すなんて北斗の拳みたいなカットも考えましたが、そんなハードボイルドはこの物語にはもうそぐわないかと思います。

そうしてアメリカの北国アラスカに天臣は修行を積んでやってきます。
北国では概ね人々は大らかであり、それは厳しい環境の中で、弱いヒトは皆と一緒に協力しなければ生きられない。といった謙虚な考えから来るのかと思います。
北米ではネイティブアメリカンの地位は南部よりもずっと高く、彼等は植民者に北国で生きる術を教えてくれた恩人と評価され、厳しい北国では戦うよりも助け合う事を人類は選択して来ました。

そんな平和なカナダを海岸沿いに南下して行き、混沌のアメリカに天臣は足を踏み入れて行きます。



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