真の動物福祉牧場を目指して

64.「グレイプ オブ ワース 」(怒りの葡萄)

これはガチな文学作品のタイトルなので、まずはその解題から入らせて貰います。
「ワース」というのは「サイテー」と云った意味で、直訳すると「最低な葡萄」になりますが、これでは映画のタイトルとしてイマイチなので「怒り」が当てられました。

どう「怒り」に結び付くかと言うと、「最低賃金以下」で葡萄摘みの仕事をやらされたからで、飢えた子供たちを抱えているのにその葡萄を食べさせるコトもできず、ワインやブランデーに加工され浪費されるのを眺めてるしか無かったからです。

これは世界大戦の引き金になったアメリカ発の世界大恐慌の、そのまた引き金になった(要因の1つ)とされる、アメリカ中西部農業の機械集約化に伴う大量の農民離散を描いた作品です。

アメリカはこの農業機械化を世界で初めて成し遂げ、その生産性で他国を圧倒するコトで世界一の強国となりました。
しかしこの歴史には「光と影」があり、農地の集約化により大量の農民が仕事を奪われ、街は失業者で溢れて大恐慌の引き金となりました。

当時はまだ労働組合などと言うモノは無く、職を求める人間が多く殺到すると「最低賃金」はどんどん下げられます。
「怒りの葡萄」はそんな農業難民が最も多く殺到したカリフォルニアのプランテーション(大規模農園)での争議を描いており、人間の尊厳を描いた傑作です。

今回「妙なる命」としてフィーチャーするのは役者ではなく監督で、ジョン-フォードはアイルランド棄民の13番目の子供としてアメリカで生まれ、ほぼ移民一世と言ってもよい極貧の境遇から、ハリウッドの頂点にまで登りつめた真の「叩き上げ」です。

アメリカではこの「叩き上げ」精神が重宝され、彼はアメリカ映画の基盤を築いた偉大な監督として、後世の映画人達から熱い支持を受け続けております。

「グレイプ オブ ワース」に話を戻しますと、私はこの小説を本で読んだコトがあり、それは28歳の夏に北海道を自転車で一周した時でした。
これはかなり分厚い本で、旅しながら読んでちょうど1月で一周した頃に読み終えました。

この小説では人物の心理描写が無く、場面描写とセリフだけなので、映画の台本にかなり近いモノです。
私も物語を描くのに、こうしたクールでテンポの良い手法を用いたく、映画化向きの作品にしたいと思ってます。

「最低な葡萄」の場合は、クールと言うよりもむしろ「乾いた」と形容した方が当てはまる文章で、それは中西部農業地帯の乾燥化を表しているかの様です。
農業を大規模化する為に邪魔な木は切り尽くされ、表土は保水力を失い風で飛び去ってしまい、地下水を汲み上げ灌水して来ましたが、その地下水も涸渇する時は迫って来ております。

こうした「乾いた」アメリカ農業の現状から、枯れ行く人類の未来を暗示した映画「インターステラー」も前に紹介しましたが、アメリカではこうした収奪的な農業に対抗するカウンターカルチャーも支持を広げて来ており、それを力強くサポートしているEMRO USA (ROは研究機構の略、ナバホ族エリアに在る)を応援して行きたいと思います。

最後にまた「怒りの葡萄」に話を戻しますと、主人公のトム-ジョードは真のアメリカン-ヒーローとして祭り上げられていて、ブルース-スプリングスティーンが「Ghost of Tom Joad」というオマージュ-アルバムを出しており、 これはブルース作品の中でも最もシブいアルバムです。

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