透明な瓶に手紙をつめてインターネットの海へ

むらさきとんぼの羽ばたきは聞こえない

君を捜すために

2006年01月28日 | うつせみの
この季節になるといつも思い出す風景がある。

君は少し緊張して疲れた顔で、小さな声で「さよなら」と言った。けれどそれはいつもと同じのいつものあいさつ…だったはずだった。
けれどもあれから一度も君に会ってはいない。賢い大人達の賢明な判断で、僕たちはふたたび会うことを許されない。

それでもはじめはお互いがどこにいて、今何をしているかをちゃんと把握していた。
解っていても会わない方がよかったに違いない。けれどもいつか僕らは近くに存在しないことが普通になり、いつのまにか消息を失った。


風のうわさは…風のうわさでしかない。風はそれを知ってはいても、ちゃんとした言葉で伝えてはくれないから。

僕は今このインターネットの海に向けてビンにつめたメッセージを送ろうと思う。いつか遠い日、君の元に届くように。いくつもいくつもメッセージを流そう。それが君の手に届けられるまで。

君を捜し出すために。自分を捜し出すために。
いつの日か普通の顔して会えるように。