「彼はいささか、野心が勝ちすぎる傾向がありましてな。」
「野心結構じゃないですか。最近の若いのは自分だけの世界に逃げ込んで満足しちまう奴ばかりだ。たまにはこちらが度肝を抜かれるほどの、ギラギラした野心を見せ付けて欲しいもんです。」
「産婦人科にセクハラも関ヶ原もあるかい!」
「君は、私の意見を批判するのかね?」
「医は仁術やのうて、医は算術やからな。」
「いいか、人間金が出来たら名誉が欲しなんねん。人間の究極の欲望は名誉や。名誉が出来たら金も人も自然について来るけど、金はどこまで行ってもただの金に過ぎん。」
「ほれとっとき。」
「いやしかし、こんな高価なものは・・・」
「ククッ所詮は女の股覗いて手に入れたもんや。遠慮せんでもええ。」
「理想というのは大いなる魂に宿るものですが、野心というのはちっぽけな魂にとりつくものでね。」
「自信家ほど梯子外されやすいものよ?登りつめたかったら、もっと陰険な用心深さ持たないと。」
「国立大学は公平な所です。苦労人も金持ちも一切関係ない。実力の世界です。」
「おおそうか、そりゃすまんかったな。町医者の僻みかもしれんけど、権威が横行している世界かと思ってなぁ、フフ。」
「インフォームドコンセントなんだと専門的な言葉を並べて患者に媚びを売るより、絶対に大丈夫という強い一言のほうが、患者は安心するものだ。」
「医者は神様じゃない。患者と同じ人間だ。」
「何か?つまり君は私が見落としをしたと言いたいのかね?」
「もういいよ!君の子供っぽい屁理屈を聞いてる暇は無い。」
「何故謝るんだね?君が意図したことじゃないなら、謝る必要は無い。」
「簡単に頭を下げられるとね・・・・こちらの出ようがないよ。」
「君は技術は確かだが、肝心なところで間違ってる。」
「教授だから助教授だからと立場ばかり考えているからおかしくなるんだ。正しいことも言えなくなるんだ。」
「(息子が書いた父親の似顔絵を見て)俺はこんな立派じゃないな・・・。」
「お袋も考えて贈ればいいんだ。贈り物は相手が喜ばなきゃ何にもならないからな。」
「君のお父さんによく言われてるからな。医者は趣味を持たなきゃダメだって。」
「だから・・・そんな旧態依然としたタブーに縛られてはいかんと言って・・・」
「医学部は旧態依然とした所なんだよ。正しい診断より、教授の権力の方が強大だというのが現実なんだ。」
「ただ医者というのは技術だけじゃなく、人格も優れてなくてはいかんと言ってるだけだ。」
「彼は厳しい思想家だ。君が何か言ったくらいで彼は考えを変えないよ。しかし、厳しさというのは、えてして周囲を傷つけることがあるからねぇ。そして、自分をもね。」
「あの失礼ですが先生、もうちょっと器用に動いた方がいいんじゃないですか?」
「大学じゃ話せん。」
「何故だ?」
「場合によっては、君を殴るかもしれん。」
「真実を言って飛ばされるのなら、未練はないよ。」
「正義漢ぶるのもいい加減にしろ!君は自分が正しいことをしているということに酔ってるだけだ。」
「ド田舎で真実を叫んでも誰も聞きはしないぞ。医者をやるなら、医学部の教授にならなければ意味がない。金も患者も集まる一流の国立大のな!」
「君の考えはおかしい。」
「ああ、おかしいとも!しかしおかしくなければ、平気で人の身体を裂いて、内臓を縫い合わせたりできんよ。」
「でもあの人は、偉くても偉くならなくても正しいことが出来る人だわ。偉くなりたいゴロウちゃんは、それだけで負けてるんじゃないかしら。」
「私はゴロウちゃんに教授になって欲しいわけじゃないの。成り上がっていくところを見ていたいだけ。」
「溺れたら助けてくれるのか?」
「いいえ。だって・・・どんな溺れ方するのか見てみたいもの。」
「結局君と僕はいくら話しても・・・・考え方の違いに行き着くみたいだな。」
「あなたはご自分の心の中で思っていることをあたくしに言わせ、あたくしのせいにし、ご自分の良心の呵責を少なくしようとなさってるだけですわ。でもそれであなたの気が済むなら結構です。」
「奉公が報われると思うとったらあかんがな。世の中皮肉にできてんのや。一生懸命やったのに結果が出んと、いい加減にやったことが上手くいったりすんのや。けど金だけはちゃうで。金は対価を払おうたら、大概の事は手にはいんのや。」
「ええ女の一人くらいおらなんだら、いい医者とはいえん。」
「婿養子にも冒険が必要だからな。」
「ゴロウちゃんを揺さぶるのは偉い人でもない。強い人でもない。里見先生みたいに自分を信じている人だわ。」
「(助かる見込みのない患者のためを思うなんて)安っぽい同情に振り回されるより、助かる患者を助けるんだ。」
「持つべきものはお金ね。これが、名も無き一般患者だったら死んでたかもしれない。」
「お前だって一緒だろう。同じ酒でも人を見て値段もサービスも変える。やってることは同じじゃないか。」
「そうね、あたしが扱うのはお酒で、ゴロウちゃんが扱うのは命。それだけの違いだもんね。」
「ひとつの症例に徹底的に向き合う。医学の根本姿勢だ。そして、それこそが皆が現在忘れかけてることに他ならない。」
「医学部は理不尽なことが色々起こるところなの。」
「そ、面倒くさいこともな。」
「君はおかしな男だな。強引に事を進めるかと思えば、こうやって弱みを見せる。したたかというのは、君のようなのを言うんだろうね。」
「彼は政治家にでもなったつもりか?医者の本分を忘れている。」
「気休め言わないでよ!私、知ってるのよ!ガンになった人がどういう死に方するのか!」
「私、信頼してる人に最期を看取られたいんです。」
「教授、結婚23周年だそうですなぁ。23いう数字はほんまにめでたい。ほいならどうぞ。(200万円)」
「教授選というのは、愚かな強引さより、賢い妥協だからね。」
「こんな不確かな世の中で、辛うじて伸び伸びと生きるには、新しきものより、古さに身を委ねたほうがいいと考えておるのではないでしょうか。」
「あいつ、偉くなりたいわけじゃないらしい。かといって怠けたいわけでもない。そんな奴、本当にいるのかね?嘘くさいとしか思えんな。俺は自分のためだけに生きている。誰だってそうじゃないのか。」
「困るんだよ。あいつの言ってることが嘘じゃなきゃ、俺は困るんだ。」
「頑張るべきか、頑張らず受け入れるべきか、患者に会うたびに考える日々です。」
「一人で崖から落ちるのが怖くて、誰かの手を掴んでしまうかもしれません。」
「私は平凡な人間だから、時々楽したくなっちゃうのよね。」
「そういう風に人の人生を笑うものじゃないよ。」
「生きるか死ぬかの戦いで、そんな綺麗事言ってられるか!」
「戦いって、どっちが優れてるか競うものじゃないのね。いかに卑怯で、いかに相手を憎めるか競うものなのね。」
「僕はこの件に関しては、聞かなかったことにさせてもらう。」
「医者にとって、慎重さは何よりも必要なんだよ。」
「僕は医者にとって決断力が何よりも必要だと思うがね。」
「判断を誤ったら、取り返しのつかないことになるんじゃないのか。」
「僕は判断を誤ることはないよ。」
「里見君、僕に意見するのはこれで最後にしてくれるかな。年が明ければ僕は教授に就任する。いち助教授の言う事にいちいち耳を傾けてられないからね。」
「そういえば、君からはまだ“おめでとう”の一言をもらっていなかったな。実は僕は、君に一番祝ってもらいたかったんだが。」
「俺は祝えないよ。悪いが、君が教授になったことを喜べる日が来るとは思えない。」
「こうして椅子があれば、座りたくなる。一生立ちっぱなしでいいって言ってる奴は、やせ我慢してるだけさ。」
「俺はただ、自分の足で歩きたいだけだ。」
「医者は治療の技術を売って、金を稼ぐ商売だ。君だって給料を貰って患者を診察している。自分だけ特別な顔するなよ!」
「君は割り切ることで医者であり続けるなら、俺は悩むという一点で、医者であり続けるのかもしれん。」
「私、惨めだなんて思ってないわ。働くと決めた以上、恥をかくのも覚悟している。」
「悪いけど私、上から下を見下ろす趣味なんてないわ。」
「あなたを見てると、人間とは底なしの欲張りに見えてきますよ。」
「だが、これだけは言わせてくれ。患者を看ようとしない財前はおかしいが、知っていて看ようとしない君もおかしいよ。」
「あれで良かったのよ。何か捨てないと、一人前の外科医にはなれないのよ、きっと。」
「惚れるのには理由はいらないが、別れるのには理由がいるだろう」
「今が最高ってことは、それ以上望めないってことでしょ?こんなに怖いことはないわ。」
「奥さん、解剖はご主人の最期の声を聞くことでもあるのです。」
「極論を言えば、君が取り返しのつかない誤診をしたとしても、遺族が納得していれば構わんのだよ。」
「医師が患者の葬式に行くなど、軽率だよ。」
「医師に私人の瞬間などないよ。君が病院で患者を看ようが、安酒屋で酒を飲もうが、医師なんだ。」
「医師として責任を果たすということは、大学を守るということなのか?」
「無論、そうだよ?」
「お前が傷つくだけだよ。」
「傷ついても構いません。」
「自信の無い人間はえてして・・・偽善者になりますからね。」
「これからどうするんですか。」
「まだ決めてない。じっくり自分に合う病院を探すつもりだ。」
「そんな病院ありませんよ。先生みたいに馬鹿な人に合う病院なんてどこにもありません。」
「そうか・・・。」
「ここにいると、きっと誰も好きになれなくなる。私自身も。だから辞めるの。」
「ヤケ酒は二流の男のやることよ。」
「本当のことを言う奴は、皆辞めていくんだな。」
「大学病院の人間は、大学病院の中でしか死ねないんだ」
「お金にならない涙は出さない主義なのに・・・」
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