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History, Strategy, Ideology, and Nations

11月28日

2009年11月28日 | NEWS & TOPICS
 昨日のニュースによると、核密約に関する有識者の検討チームが発足したとのことである。
 何人かの事務次官経験者が「存在する」といっているのだから、
 あえて検討チームを結成しなくても、ちゃんと探せば絶対に見つかるはずである。
 もし存在しなかったとなれば、これこそ米国との外交関係上、著しい信頼の喪失につながる。
 従って、この検討チームが到達する答えはすでに見えているのであって、
 忖度すると、鳩山政権(岡田外相)が脱官僚依存を演出するためだけのポーズに使われているにすぎない。

 ところで、核密約自体、そんなに大きな外交上の課題なのだろうか。
 率直に言って、軍事的観点で言えば、日本に核兵器を持ち込むことはまったく合理的である。
 むしろ「非核三原則」などという荒唐無稽な原則を掲げることの方が、よっぽど非現実的であるし、
 何より佐藤栄作自身が米国側に核持ち込みを秘かに打診しているのだから、
 空いた口が塞がらないとはこのことである。

 思えば、佐藤栄作は大衆への説得から逃げ続けた、言葉の力に乏しい政治家であった。
 最後になって記者会見場から新聞記者を追い払って、一人、テレビに向かって国民に呼びかけたが、
 結局、誰の胸にも響くことなく退陣していった。
 最大の不幸は、そうした姿勢の政治家が、戦後最も長く政権を担っていたということなのかもしれない。
 そして、そこで重ねた様々な嘘や妥協が今、あらゆる面で齟齬を生み出しているのである。
 思えば、核密約もそうだが、赤字国債を乱発し始めたのも佐藤政権であった。
 社会党や公明党への妥協から年金・社会保障費が増大したのも、この頃である。

 日本の国家戦略は、基本的には吉田路線(吉田ドクトリン)に従って進められてきた。
 これまでは、その成功部分が学術的にも評価されてきたが、
 今後はその負の遺産をどう歴史的に評価していくかという点が問われることになる。
 しかし、それは現実主義という名の現状追認主義でしかなかったという事実を、
 白日の下にさらすことになるだろう。
 モラリティなき外交に堕し続けた日本の宿痾を受け止める勇気が、
 政治家のみならず学者や専門家にあるだろうか。