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History, Strategy, Ideology, and Nations

12月12日

2009年12月12日 | NEWS & TOPICS
 今回で最終号となる『Far Eastern Economic Review』は、
 香港を拠点にして、長年、東アジア情勢を伝え続けてきた歴史と伝統を持った雑誌である。
 廃刊に追い込まれた理由は、インターネットの普及による読者の減少に歯止めがかからなかった上に、
 先のリーマン・ショックによる資金繰りの悪化で、
 親会社であるダウ・ジョーンズ社の部門縮小の影響を受けたことが挙げられる。
 多くの有力なジャーナリストを育成し、権威ある東アジア情報誌として有名だっただけに、
 こうした結果になったことは何とも残念でならない。

 しかし、巻頭に寄せた元編集長ブルース・ギリーの論稿によると、
 単に経済的な理由だけでなく、
 アジアの国際的地位や影響力の変化にも少なからず影響を受けたことが分かる。

 周知の通り、アジアは戦前、欧米列強の植民地であった。
 FEERもまた、植民地の視点を重視し、現地のエリートによって愛読されてきた。
 第二次大戦終結後、そうした国々は次々に独立を果たしていったが、
 辺境からの視点を保ち続けることによって、独自性を発揮してきたのである。
 英語雑誌であったため、ナショナリストが多いアジア各国の指導者からは嫌われる傾向にあったが、
 その反西欧主義的な主張は、彼らにとっても共感し得る部分が多かった。

 ところが、もはやアジアは辺境ではなくなった。
 経済的にも政治的にも、21世紀の国際社会を牽引する中心地として台頭するまでに至った。
 その結果、アジアは辺境からの視点ではない視点を求めるようになったのである。
 
 そう考えた時、FEERは歴史的役割を終えたと言うことができるのかもしれない。
 辺境から中心へと位置づけを変えたアジアの行方は、
 新たな役割を見出した別の雑誌によって、今後、報じられていくことになるのだろう。