『日本書紀』神代上 3
一書曰、天地初判、始有倶生之神、號國常立尊、次國狹槌尊。又曰、高天原所生神名、曰天御中主尊、次高皇産靈尊、次神皇産靈尊。皇産靈、此云美武須毗。
一書曰、天地未生之時、譬猶海上浮雲無所根係。其中生一物、如葦牙之初生埿中也、便化爲人、號國常立尊。
一書曰、天地初判、有物、若葦牙、生於空中。因此化神、號天常立尊、次可美葦牙彥舅尊。又有物、若浮膏、生於空中。因此化神、號國常立尊。
≪英訳≫
In a different tradition (Part Four) it is said:
“When the heavens and the earth were first separated, there emerged two deities, One of them was named Kuninamitsu no Kami, another was named Kunisatsuchi no Kami. The name of the diety who came forth in the Heavenly High Plain(高天原) was Ame no Minakanushi. Next was Takamimusubi no Kami. These are called the ancestral deities.”
In another tradition (Part Five) it is said:
“When the heavens and the earth had not yet solidified, amidst the drifting state, like the roots of a cloud floating on the sea, something was born. It appeared as if the first reed sprouted from the mud. This became a person named Kuninamitsu no Kami.”
In another tradition (Part Six) it is said:
“When the heavens and the earth were first separated, something existed and was born in the sky, resembling a reed sprout. The diety who emerged from this was called Ama no Tokotachi no Kami. Next was Umashikabihikoji no Kami. There was yet another existence, which formed in the sky like floating oil. The diety born from this was also called Kunino Tokotachi no Mikoto.
≪この英文の和訳≫
〔一書に曰く〕別の言い伝え(第四)によれば、次のように述べられています:
「天地が初めて分かれたとき、初めて生まれた神々が存在しました。その中で、国常立尊(くにのとこたちのみこと)という名前の神が一柱いました。また、国狭槌尊(くにのさつちのみこと)もいました。天にお出でになる神の名前は、天之御中主(あめのみなかぬし)と言われました。次に、高御産巣日尊(たかみむすひのみこと)でした。皇産霊(こうざんれい)とは、一般的に美武須毗(みむすび 祖神)と呼ばれています。
〔一書に曰く〕別の言い伝え(第五)によれば、次のように述べられています:
「天地がまだ固まらない時、海上に浮かぶ雲の根のないように漂っていた中から、一つの物が生まれました。まるで泥の中から初めて葦の芽が生え出したかのようでした。それが人となり、国常立尊(くにのとこたちのみこと)と名づけられました。」
〔一書に曰く〕別の言い伝え(第六)によれば、次のように述べられています:
「天地が初めて分かれた際、ある物が存在し、葦の芽のように空の中から生まれました。そこから出てきた神は、天常立尊(あまのとこたちのみこと)と呼ばれました。次に、可美葦牙彦舅尊(うましあしかびひこちのみこと)が続きます。さらに、浮かんだ油のように空の中にできた別の存在がありました。そこから生まれた神もまた、国常立尊(くにのとこたちのみこと)と呼ばれました。」
〔一書に曰(いわ)く〕一つ目の伝承によれば、天と地が初めて分かれた際に、二つの神、すなわち「国常立尊(くにのとこたちのみこと)」と「国狭槌尊(くにのさつちのみこと)」が現れたと言われています。また、「高天原から生まれた神の名前は「天之御中主(あめのみなかぬし)」であり、それに続いて「高御産巣日尊(たかみむすひのみこと)」と「皇産霊」(ミムスヒ)も登場します。
〔一書に曰く〕二つ目の伝承(第一バージョン)によれば、天と地が創造される前、まるで海の上に根も持たないまま浮かんでいる雲のようなものが存在していました。その中に、葦の芽の初めての生え出しに似たものが生まれ、それが「国常立尊(くにのとこたちのみこと)」として神格化されました。
〔一書に曰く〕二つ目の伝承(第二バージョン)によれば、天と地が初めて分かれる時、空中に葦のようなものが現れました。この中から「天常立尊(あまのとこたちのみこと)」と呼ばれる神が誕生し、その後「可美葦牙彦舅尊(うましあしかびひこちのみこと)」も現れました。また、空中に浮かぶ油のようなものからもう一つの神、つまり「国常立尊(くにのとこたちのみこと)」が誕生しました。
〔一書に曰く〕四つ目の伝承によれば、天と地が初めて分かれる際に、同時に生まれた神々がいました。これには「国常立尊(くにのとこたちのみこと)」、「国狭槌尊(くにのさつちのみこと)」、「天之御中主(あめのみなかぬし)」、「高御産巣日尊(たかみむすひのみこと)」、そして「皇産霊(ミムスヒ)」が含まれています。
〔一書に曰く〕五つ目の伝承によれば、天地がまだ固まっていない時、海の上に根を持たない雲が漂っていた中に、初めてのものが生まれました。それは葦の芽が初めて泥から生え出したようなもので、最終的に人間に変化しました。この神は「国常立尊(くにのとこたちのみこと)」として知られています。
〔一書に曰く〕六つ目の伝承によれば、天と地が初めて分かれたとき、葦の芽のようなものが空中に存在していました。この中から誕生した神は「天常立尊(あまのとこたちのみこと)」と呼ばれ、それに続いて「可美葦牙彦舅尊(うましあしかびひこちのみこと)」も現れました。また、空中に浮かんだ油のようなものからもう一つの神、「国常立尊(くにのとこたちのみこと)」が生まれました。
令和5年10月6日(金) 2023