'夜スグリ'

  …悪魔の果実は夜の色――

ウィズ1

2011-01-12 01:51:12 | 日記
進めてもいないウィザードリィを纏めて小説にしてみる。
一応その、ネタバレ的なね、ものも出てくるかと思われますのでお気を付けて。
でも殆どただの創作。自作キャラ6人もいると、そりゃあ、妄想甚だしいのであります。
改めて、死んだらどうする気だ。

***

Wizardry ~忘却の遺産~
冒険者カルナとその仲間たちの場合

***

「アタシと一緒に、冒険しない!?」

叫んで、一瞬だけ静まる酒場。
伝説が始まる。

***

「断る」
「え~っ」
もうこれで何人目だろうか。イシュタルの酒場で、カルナは仲間を求めて断られ続けていた。声を掛けた長身のエルフはカルナを見下ろして冷たく続ける。
「当たり前だ。お前のような素人冒険者の面倒を見るなど御免被る」
断られる理由の大方はこれだった。冒険者のメッカとも言われるこの街で、カルナのように際立って強いわけでもない戦士などは特に、供給に見合うだけの需要がないのだろう。
「そこを何とかさぁ」
「無理だ」
「もー。じゃあさ、アタシ、カルナって名前だから。仲間になりたくなったらいつでも来てよ」
「なったらな。とっとと他へ行け」
辛辣な言葉に苦笑いを返し、カルナはその場を離れた。

どうしよう、と思う。この街には着いたばかりだ。もう数日この酒場で粘ってもよいのだが、そうするには少々懐が寂しい気がする。かといってひとりではできることも限られてしまうし――。
と、俄かに酒場の扉が開き、裸足の少年が飛び込んできた。
カルナを認め、指を差し、彼女に驚く暇さえ与えず彼が言うことには、
「仲間探してる戦士のねえちゃんってオマエ?それって盗賊でもいい?っていうかまだ枠ある?」
「え。あ、ゴメン、もっかいお願い」
一気にまくし立てられて、カルナには何が何だか理解できなかった。
ただひとつ、ここへ来てようやく仲間候補が現れたのだということ以外は。
「オレさ、こー見えてワケアリで追っかけられてて殺されそうだったんだけどさあ」
軽い調子の割になかなかに笑えないことを口にして、彼は肩をすくめた。
少年の風貌にその仕種はイマイチ似合わず、ちょっと滑稽。
「あ、けど、たぶんもう逃げ切れてんだけどね?でも怖えじゃんか。だから、どこにでも行くし宝箱ガンガン開けっから、ヤバいときはお互い様みたいな感じで守ってくれたら超嬉しい」
話を聞いて、カルナは大きく頷いた。大体が答えなどはじめから決まっていたのだ。
「任せろ、今日からアタシらは仲間だ!」
「やりぃっ!オレはロイバー、言い忘れてたけどポークルで盗賊だ!」
「よろしくなロイバー!アタシはカルナだ、人間で戦士!」
二人は狭い酒場の狭いスペースで手を取り合って跳びはねた。酔っ払った厳つい冒険者たちからすかさず罵声が飛んだが知ったことではない。

思うままはしゃぎまわっていると、きゃっという小さな悲鳴、続いてどさっと何かが落ちる音。ロイバーが背後の人物に気づかずぶつかってしまったようだった。
「わ、ゴメンな、大丈夫か?」
ロイバーが不安げに声を掛けたのは、相手がこんな酒場にはいかにも不釣り合いな少女だったから。緑色の髪、複数生えた角――ノームの少女だろうか。取り落とした大きな鞄の中身を慌てた様子で改めている。
「大丈夫、あの…わたしがトロいから…」
ぼそぼそと、ギリギリで聞き取れるくらいの声量で言う様子は、周囲の厳つい連中とはあまりに似合っていなかった。鞄の中身は無事だったらしく、少女は大きく安堵の息をついた。
「ご…ご迷惑をおかけ、しました、です」
「んーん、今のはロイバーが悪いよ」
「はぁ!?だとしたらぜってーカルナも共犯だろ!」
ぺこりと頭を下げる少女の鞄を、カルナが横から覗き込む。赤や青色をした――よくわからない液体の入った瓶。フラスコ、とか云うのだったか。ということは、彼女は。
「ね、もしかしてあんたって錬金術師なの?」
「はい、あ、いえ…。その、一応見習い…です」
馬鹿にされるとでも思ったか、顔を赤くして俯いた少女にカルナが掛ける言葉は決まりきっている。
「アタシらの仲間になんない?」
「ふぇ、で、でも」
「あ、――もうパーティ組んでるか?だったら無理だけど、よかったら」
「あ、あの、あの」
慌てたような戸惑ったような反応の少女に、答えを聞く前にロイバーがまた肩をすくめた。
「おいカルナ、コイツ困ってんじゃん。仲間増やしたいのはわかるけどさ――」
「うーん、そうだよなあ。そんなにフリーの冒険者が都合よく現れるわけないかあ――」
「あ――あのっ!」
思ってもいない大声に、立ち去りかけていたカルナとロイバーは同時に振り返った。少女自身、予想したよりも大きな声を出してしまったのか、目を瞬いた後に事態を把握して再び赤面する。
「な、仲間に…なりたい、です、…して、くださいっ」
そして、オリーブと名乗った見習い錬金術師の少女はこの直後勢いよく飛びついてきたカルナとロイバーをいなしきれず、またも見事にすっころんで鞄の心配をする羽目に陥るのだけれど――
――今日のところは、お話はここまで。


F・O

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