偏頭痛になりかけている。
この日は友人達と町田のカンボジア料理店へ行く予定。
本格的な痛みが来る前に治さねば、と病院で貰った
偏頭痛の薬を服んだ。
するとほどなく、脳内に少しずつ薄い泥水を流しこまれて
いるような、喉が詰まるような、全身が重だるいような
いや～な気配が体に生じてきた。
薬の副作用だ。
偏頭痛の薬は何度も変えて貰い、これは副作用が軽い方だと
思ったのだが、この日の体調がそもそもよくなかったらしい。
そのうち、くしゃみ、鼻水が始まり、止まらなくなった。
鼻炎スプレーもまったく効かない。
たちまち体力切れになり、ベッドに倒れ込む。
カンボジア料理はあきらめざるをえなくなった。
翌日は句会に出席する予定だったのだが、回復ならず、これも欠席。
今年に入ってからは、句会に出られないときも投句だけは
続けていたのだが、一句もうかばず、やむなく断念。
籠城の用意をしなければと、ふらつく足で近くのコンビニへ。
こういう時は便利な都会暮らしでよかったとつくづく思う。
寒気もしていたし熱っぽくもあったから、鍋焼きうどんを
こしらえて食べようと思った。
コンビニにあったのは、３玉パックの茹でうどん。
あんまりおいしそうじゃない。
アルミの容器に入った冷凍の鍋焼きうどんも、いまいちそそらないし。
仕方なく、その３玉入り茹でうどんを買った。
味付け油揚というありがたいものもあったので、籠に入れる。
強壮ドリンクも買った。
夕方になり、さあ、鍋焼きをつくろうと冷蔵庫を見ると、
あれ、うどんがない！ 間違えていれたのかと冷凍庫もくまなく
捜したが、どこにも見あたらない。
どうやら、コンビニで買おうかどうしようかと迷って、
籠にいれなかったようだ。
がっくりした。もう一度買いに行く元気はない。
台所の引き出しをごそごそ捜したら、いつ買ったのか
わからない乾麺が出てきた。なぜか賞味期限が記されていない。
おそらく切れているだろうが、この際、仕方がない。
それを茹で、小さな土鍋を仕立てて、味付け油揚げや椎茸、
ネギ、玉子などと一緒に、茹で上がったうどんを入れて煮た。
古い乾麺のせいか、雑な料理のせいか、病んでおかしくなった
味覚のせいか、とてもおいしいとはいえず、半分食べるのが精一杯。
独り暮らしは病むと辛い。
心細いから、なんとかして誰かと繋がっていたくて、
フェイスブックなど覗いてみる。
これがいけない。
世間は元気だ。みんな、いろんなことをやっている。
私だけが取り残され、忘れられ、コンクリートの箱の中で
しょんぼりしている……そんな、よろしくない気分に陥っていく。
唯一の家族である猫を、猫なで声で呼んでみるが、
もとから無愛想な彼らは、私が病気の時はさらに冷たくなる。
帯状疱疹や結石の痛みで声を上げて唸っていた時など
２匹揃って寝室の入り口から覗いていた。
「気味悪いな、悪魔に取り憑かれてんのか？」
「いまに体がひっくりかえったり白目剥いたりするぜ」
という顔で。
「ねえ、お願いだから寄ってってよ、おにいさんたち」
と、必死に呼ぶも、２匹肩を並べて去ってしまった。
我と我が身の哀れさが、こういう瞬間は倍増する。
一番の救いになってくれたのは、リンゴジュースだった。
先日、横浜公園で開催された中区民祭に、知人が出店していたので
出かけたのだが、その際、信州でつくられたリンゴジュースを
一箱、お土産にいただいた。
重いので、別の知人に預けたのだが、病みついたこの日、
「近くに来てるので、あのジュース、持って行きましょうか」という電話。
病んだ時って、りんごの擂りおろしが食べたくなるのよねえ。
だけど、「擂る」という行為はけっこう力を要するから
作ってくれる人がいなきゃ、あきらめるしかないもんねえ。
そこへ登場したこのジュース。一回飲むのにちょうどいい大きさの
瓶に入ってて、りんごのつぶつぶがいっぱい！
しかも甘くないから口中がさっぱりする。
中区民祭へ一緒に行った友達には、「ジュースが届いたら
お裾分けするね」と約束したけど、ごめん、飲んじゃった。
さて、とりあえず回復して、まあ、いつもの「きょうも肩こりが
ひどいねえ」という体調。
スーパーへ買い出しにでも行くかな。
救いの神となってくれた信州発のリンゴジュース。
近々、横浜でも売り出されるそうだ。
